ストリングスのみのアレンジでも
Title:Vulnicura Strings
Musician:Bjork
昨年3月にリリースされ大きな評判を得たアルバム「Vulnicura」。そのアルバムのリアレンジアルバムが本作。全面的にストリングスをバックとしたアレンジに生まれ変わったアルバムとなっています。
そんな原曲のアレンジをガラリと変えた本作なのですが・・・原曲のイメージから大きく変わったのか、と言われるとアルバム全体の雰囲気としてはそれほど変わっていません。もともと「Vulnicura」のオリジナル自体、ストリングスにエレクトロサウンドを混ぜた構成のアルバム。そのため本作は、基本的に原曲からエレクトロの要素を差し引いたアルバムと言っていいかもしれません。
もっとも原曲からひとつ大きく変わった部分もあります。それはサウンドとボーカルのバランス。原曲ではボーカルを前に押し出してサウンドは後ろに引いたバランスになっていましたが本作ではストリングスを前に押し出したアレンジとなっています。もちろんBjorkも力強いボーカルを聴かせるため歌がサウンドの中に埋没、といった感じではないのですが、より「音」を聴かせる意図が強まったようにも感じます。
またユニークなのは基本的に使われている音がストリングスのみにも関わらず、楽曲によって様々なバリエーションを聴かせてくれる点でした。「Atom Dance」はタイトルの通りテンポの良いリズミカルなサウンドを聴かせてくれますし、「Stonemiler」はクラシカルな音が印象的。さらに最後を飾る「Family」では不協和音を重ねつつ、ストリングスのみでサイケな雰囲気を醸し出している曲に仕上がっており、ストリングスのみで幅広い楽曲の雰囲気を生み出している展開に非常に惹きこまれる内容になっています。
「Vulnicura」のアレンジももちろん良かったのですが、本作は本作で原曲に負けずとも劣らないサウンドを聴かせてくれたと思います。ストリングスのみの混じりっ気ないアレンジゆえに、メロディーラインの良さがよりクリアになっていたという意味ではむしろ原曲を上回った部分すらあるのかも?とすら感じてしまいました。「Vulnicura」の単純なリアレンジという意味だけではなく、Bjorkの新たな作品として要チェックなアルバムです。
評価:★★★★★
で、Bjorkがらみではもう1枚。
Biophilia Live/Bjork
前作「Biophilia」の後にリリースされたライブ盤。2013年9月にロンドン・アレキサンドラ・パレスでのライブの模様を収録した作品。「Biophilia」は非常にコンセプチュアルな作品だったのですが、本作も、特にCD以上にDVDの方はライブを収録したというよりはひとつの映像作品として成り立っているような作品。ただその分、完成度が高すぎてライブの臨場感がいまひとつだったのは残念。エレクトロと生のサウンドの融合という試み自体は高い次元で成功しているように感じたのですが。ボーナストラックで収録されている「日本科学未来館」でのライブはドキュメンタリーでライブ映像がないのがかなり残念。
評価:★★★★
Bjrok 過去の作品
biophilia
2012-02-12 NY Hall of Science,Queens,NY
Bastards
Vulnicura
ほかに聴いたアルバム
Seeds/TV on the Radio
アメリカのインディーロックバンドによる3年ぶりの新作。いままで様々な作風のジャンルをロックに組み込んでロックのこれからを模索しているような作風だった彼らですが、今回はノイジーなギターサウンドを前面に出した比較的シンプルでパンキッシュなギターロック。メロディーラインもポップで聴きやすく、以前のようなアバンギャルドな雰囲気は控えめ。要所要所に様々なアイディアはつめこまれているものの、スタンダードなギターロックに近い作風になっています。ただ逆に彼らのロックバンドとしての魅力、メロディーメイカーとしての魅力をより感じられる作品になっていました。
評価:★★★★★
TV on the Radio 過去の作品
Dear Science
NINE TYPES OF LIGHT
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