昭和初期の恋愛模様
Title:思ひ直して頂戴な 昭和エロ歌謡外伝 あゝ哀歌
本作は、ここでも何度か紹介している戦前のSP復刻レーベル「ぐらもくらぶ」の新作。今回のアルバムは以前に紹介した「ねえ興奮しちゃいやよ 昭和エロ歌謡全集 1928~32」の外伝的な位置づけの作品。いわゆる「エロ・グロ・ナンセンス」の時代を象徴するような曲をまとめたコンピ盤となっています。
ただ今回の収録曲は、タイトルにこそ「エロ歌謡」とついていますが「エロ」の要素は残念ながら(?)強くありません。
「お酒のみなら真っ赤な酒を
愛しあなたの口から口へ
死ぬほど飲んでみたいのよ」
(「妾は恋のジプシーよ」より 作詞 塚本篤夫)
なんて歌詞は登場してきますし、楽曲はどの曲も当時の若者の本音を描いたラブソングばかりなのですが、「エロ」に焦点をあてられていた前作と比べると本作で収録されている曲はあくまでも焦点があてられているのは男女の恋模様。広い意味ではエログロナンセンスの一環なのかもしれませんが、「ねえ興奮しちゃいやよ」のような曲を期待するとちょっと期待はずれかもしれません。
また「哀歌」というタイトル通り、哀愁たっぷりの曲が多いのも特徴的。楽曲的には当時の洋楽風流行歌の総称としての「ジャズ」でくくられるような曲が多いのですが、哀愁感あふれるメロディーラインは「和」のテイストの強い作品。後の「歌謡曲」「ムード歌謡」あるいは「演歌」にまでつながりそうな楽曲が並んでいます。
ただ一方で歌詞は当時の若者の心境が描かれた曲が多いだけにその時代の空気感をのぞけるようなリアリティーがあります。
「頬をすりよせ二本の管で
一つカップのカルピスを
飲んだ昔もあったぢゃないの
別れるなどと言わないで
思い直して頂戴な」
(「思ひ直して頂戴な」より 作詞 塚本篤夫)
なんて悲しい曲も目立つのですが、その反面
「妾しゃモガだと 眉墨ひいて
チョンと黒髪 切ってはみたが
脚はみじかし 頭は涼し
そこで鏡と 相談したら
生まれ変わって またおいで」
(「チャキチャキ雀」より 作詞 時雨音羽)
なんていうユーモアたっぷりの曲があったりするのも楽しいところ。また、「想い出のクリスマス」などというクリスマスソングまで登場していたりします。曲目解説によるとやはり戦前のクリスマスソングは珍しく、またクリスマスソングは根付かなかったようですが、それでも戦前に「クリスマス」というイベントが日本にもあったというは、よくよく考えれば当たり前かもしれませんがちょっと意外にも感じました。
「ねえ興奮しちゃいやよ」でも昭和初期の風俗を知ることができ興味深いコンピレーションだったのですが、今回のアルバムも当時の曲を通じて昭和初期という時代を垣間見れることが出来る興味深いコンピレーションでした。取っつきやすさでいえば、エロ歌詞がユニークな「ねえ興奮しちゃいやよ」の方をお勧めしたいところですが、そちらで戦前歌謡を気に入った方は、次にこちらの作品も、是非。
評価:★★★★
ほかに聴いたアルバム
Gone EP/80kidz
前5曲入りのミニアルバム。とはいえうち2作は、前作「Baby EP」収録の「Baby」のリミックスなので新曲は3曲。いずれもRIZE、Dragon Ashで活躍しているKenKenとコラボした作品。80kidzらしいバキバキのロッキンエレクトロサウンドとポップなメロが相変わらず。良くも悪くも変わらないといった印象の作品でした。
評価:★★★★
80kidz 過去の作品
THIS IS MY SHIT
THIS IS MY WORKS
WEEKEND WARRIOR
TURBO TOWN
80:XX-01020304
FACE
THE BEST/AI
約2年ぶりに活動再開したAI。その彼女のデビュー15周年を記念してリリースされたベスト盤が本作。アップテンポな曲がありつつも、その力強い歌声で聴かせるバラードナンバーがメイン。少々ベタさも感じられるR&Bナンバーなのですが、やはりその力強い歌声には惹かれるものがあります。
評価:★★★★★
AI 過去の作品
DON'T STOP A.I.
VIVA A.I.
BEST A.I.
The Last A.I.
INDEPENDENT
MORIAGARO
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