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2016年2月21日 (日)

15年目のベストアルバム

Title:All Time Request BEST~しばづくし~
Musician:柴田淳

今年デビュー15周年を迎える女性シンガーソングライターのしばじゅんこと柴田淳。その15周年企画の第1弾となるのが本作。タイトル通り、ファンからのリクエストにより収録曲が決定したリクエストアルバム。いままでシングルコレクションやB面ベストはリリースしたことがありましたが、アルバム収録曲も含めオールタイムベストとしては本作が初となります。

しばじゅんといえば、このジャケット写真からもわかるように美しくもどこか影を帯びたようなルックスが魅力的。楽曲もそんなルックスのイメージから紐づくような切ない片思いや失恋の歌が多く、ミュージシャンイメージにマッチした統一感ある曲調がひとつの特徴だったりします。

今回のアルバムは2枚組のアルバム。ほぼリリース順に従った曲順となっています。そしてどの曲も、彼女のイメージにマッチした曲が並んでいます。ただこの1枚目と2枚目で同じ片想い、失恋の歌でありながらも微妙にその方向性が異なることを今回のベスト盤からは感じることが出来ました。

1枚目、要するに初期の作品に関してはピアノやストリングスを入れた基本的にシンプルなメロディーラインに、ドラマ性ある歌詞を聴かせるスタイルが特徴的。彼女の代表曲ともいえる「片想い」をはじめ、歌詞の描くドラマがストレートに頭に入ってくるのがこの時期の作品。ある意味もっとも柴田淳らしい作品が並んでいる、とも言えるかもしれません。

一方2枚目に収録されている曲は歌詞に関しては比較的抽象的。初期の作品ほどのドラマ性は感じません。ただ一方楽曲のバリエーションがグッと増しています。へヴィーなギターサウンドを入れてきた「救世主」や、シティポップテイストの「マナー」、ちょっとジャジーな雰囲気の「哀れな女たち」など楽曲の幅が一気に広がっています。新しい柴田淳像を模索している、といった感じでしょうか。もっとも軸にある悲しい恋の歌を哀愁帯びたメロディーラインで聴かせるというスタイルは初期からかわらず、そういう意味ではきちんと柴田淳らしさを保ったままあらたなスタイルを模索しているという印象も受けました。

デビュー15年にリリースされた本作でひとつの区切りといった感じもするベスト盤。あらたな柴田淳像を模索している今のしばじゅんですが、これからどんな方向に進むのか、それとも原点に回帰するのか、次の一歩も気にかかるベスト盤でした。これからも彼女の活動に要注目です。

評価:★★★★★

柴田淳 過去の作品
親愛なる君へ
ゴーストライター
僕たちの未来
COVER 70's
あなたと見た夢 君のいない朝
Billborda Live 2013
The Early Days Selection
バビルサの牙


ほかに聴いたアルバム

OFF COURSE BEST"ever"/オフコース

オフコース初のファンによるリクエストに基づくベストアルバム。オフコースといえば「さよなら」「YES-YES-YES」みたいないかにも小田和正節の楽曲の印象が強いのですが、このベストを聴くと、初期は60年代フォーク風ですし、楽曲によっては産業ロックバリの曲もあったり、後期になるとAORの色合いが濃くなったりと時代によってその姿を徐々に変えているのがわかります。結果としてチープなシンセの作品があったり今となっては時代を感じさせる曲もあるのですが、それも含めて彼らの魅力といった感じでしょうか。なによりメロディーセンスの良さには抜群のものを感じることが出来ます。

評価:★★★★★

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