ポップな作風だが・・・
Title:The Catastrophist
Musician:Tortoise
アメリカはシカゴのポストロックバンド、Tortoiseの約6年ぶりとなるニューアルバム。今回のアルバム、制作のきっかけとなったのはシカゴ市から作成の依頼があったとか。音楽ファン的な評価は高いものの、決してヒットチャートの上位にあがってくるようなバンドではない彼らのようなミュージシャンに「市」から楽曲制作の依頼が来るというのは驚き。それと同時に、アメリカの音楽文化への幅広い許容も感じさせる出来事でした。
前作「Beacons Of Ancestorship」は音響派という彼らのイメージとは裏腹に、非常にポップで聴きやすいという印象を受けたのですが、今回のアルバムに関しても同じような印象をまずは抱きました。1曲目に配置された表題曲の「The Catastrophist」からしていきなりポップで軽快なエレクトロサウンドからスタート。続く「Ox Duke」も変拍子の複雑なリズムを聴かせつつ、シンプルなサウンドとはっきりしたメロディーラインでまずはポップという印象を受けさせられます。
さらに印象的だったのがこのアルバムの核になっているような「Yonder Blue」。Yo La Tengoのジョージア・ハブレイがボーカルとして参加している本作は、切ないメロディーラインが心に響く、とても暖かさを感じるポップナンバーとなっています。
ただ、そんなポップな印象がアルバム全体に貫かれている作品ながらも、決して「ポップ」である、だけでは終わっていないのが彼ららしいところ。例えば上にも書いた通り、「Ox Duke」はポップな雰囲気を醸し出しつつもリズムは複雑な構造となっていますし、「The Clearing Fills」などは最初、アコースティックな雰囲気で暖かみのある作風からスタートしながらも最後は不気味なノイズで終わるという構成に。「Hot Coffee」などもノイジーながらもシンプルなギターサウンドのインストかと思いきや、その後ろに流れるリズムが複雑に展開しており、こちらも聴いていると、その独特なリズムにはまってしまいそうな内容でした。
パッと聴いた感じだとポップなものの、楽曲にはいろいろなアイディアと複雑な構成が組み合わさっており、聴いているうちに「おやっ」と普通のポップスではないことに気付く・・・これってちょうどこのアルバムのジャケ写と似たようなものを感じます。このアルバムのジャケ写、パッと見た感じだと普通の「顔」なのですが、見た感じ違和感があり、よくよく見ると、おかしな部分がたくさん・・・今回のアルバム、例えればそんなジャケ写のようなアルバムでした。
もちろん、6年間、待ったアルバムなだけあって文句なしの傑作アルバム。ベテランとしてのいい意味での安定感も感じられるアルバムでした。
評価:★★★★★
TORTOISE 過去の作品
IT'S ALL AROUND YOU
Beacons Of Ancestorship
Why Waste Time?
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