名盤を様々なミュージシャンがカバー
Title:JUST LIKE HONEY-「ハチミツ」20th Anniversary Tribute-
これはなかなかユニークなカバーアルバム。1995年にリリースされ、アルバムで初のチャート1位を記録。160万枚以上の売上を記録したスピッツを代表する名盤「ハチミツ」。そのリリース20周年を記念してアルバム収録曲をそのままの曲順でカバーしたアルバムに対するトリビュートアルバム。アジカンや9mm Parabellum Bullet、クリープハイプなどサブカル系のギターロックバンドを中心に、ちょっと変わったところではゴールデンボンバーの鬼龍院翔がソロで参加しています。
今回のトリビュートの特徴はどのミュージシャンも基本的にシンプルなアレンジでメロディーラインと歌詞を重視したカバーを行っている点。「ハチミツ」自体も比較的シンプルにその美しいメロディーラインと歌詞を聴かせるアルバムなのですが、そういう意味ではアルバムの意図に沿ったカバーと言えるかもしれません。
そんなカバーアルバムを聴いてまず第一に感じたのは、「ハチミツ」ってここまで素晴らしいアルバムだったっけ?いや、「ハチミツ」は私自身もリアルタイムに聴いており、かつその当時はお気に入りとして繰り返し聴いたアルバム。それだけにこのアルバムが「名盤」だということは重々承知していたはずなのですが・・・どの曲も十分シングルカットできそうな名曲、美メロの連続にあらためて驚かされました。
そう感じるのもなによりどのカバーもシンプルにメロディーを重視したものが多かった、というのが大きな理由でしょう。もっともその一方できちんとそれぞれのミュージシャンの「色」を入れてきているのも印象に残ります。例えばASIAN KUNG-FU GENERATIONの「グラスホッパー」はアジカンらしいへヴィーなパワーポップ風のアレンジに仕上げていますし、「あじさい通り」も影を帯びた哀愁たっぷりのカバーに仕上げているのもクリープハイプらしいといったところでしょうか。
カバーの中でも特に秀逸さを感じたのがゲストボーカルに曽我部恵一を迎えた初恋の嵐による「君と暮らせたら」。どこかノスタルジックさを感じるバンドサウンドとボーカルが曲にピッタリ。曲間に感じられるサイケな要素もまたひとつの味になっています。また、原曲の雰囲気からかけはなれたような冒険的なカバーは少なかったのですが、数少ない冒険的なカバーが赤い公園の「ハチミツ」。キラキラしたシンセの音を前面に入れたドリーミーな雰囲気にダイナミックなバンドサウンドを織り交ぜるという彼女たちらしいユーモラスで冒険的なカバー。こういうカバーを1曲目に持ってくるあたりもおもしろさを感じます。
「ハチミツ」というアルバムの良さをきちんと引き出しつつ、それぞれのミュージシャンの良さも感じられる素晴らしいカバーアルバムに仕上がっていたと思います。なによりもスピッツというミュージシャンのすばらしさも再認識できるアルバムだったと思います。久しぶりに「ハチミツ」を引っ張り出して聴いてみようかな。
評価:★★★★★
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