美しいミャンマー音楽の調べ
Title:Beauty of Tradition-ミャンマー伝統音楽の旅で見つけた仏教の歌
今回紹介するアルバムはミャンマーの民族音楽を現地録音で収録したアルバム。もともと本作を知ったのはMUSIC MAGAZINE誌のワールドミュージック年間ベストに載っていたのがきっかけ。昨年発売されたアルバムのうち話題になったアルバムをいろいろと聴きなおしている中、気になった本作もちょっといまさらながら聴いてみることにしました。
アルバムの中の紹介文によると本作は「19世紀の古典歌謡から20世紀前半の近代歌謡まで、仏陀を讃える曲など仏教に関係のあるミャンマーの歌謡作品を集めたもの」だそうです。もっともミャンマーの仏教では戒律上、音楽は禁じられているそうで、今回収録されている曲は一般の信者が仏塔祭や得度式に先立つ音楽ショーなどで演奏され、楽しんでいる音楽だそうです。
仏教に関する音楽というと、日本でも「声明」という音楽があったり、また神様を讃えるという意味では讃美歌をイメージする方も多いでしょう。どちらも荘厳というイメージがあり、良くも悪くも堅苦しいというイメージもあるかもしれません。
しかし本作に収録されているミャンマーの仏教音楽はとてもメロディアスな楽曲が流れてきます。流れてくる演奏もミャンマーの民族音楽をベースとした美しくもシンプルな演奏。また本作ではカインズインシュエというビルマを代表する女性シンガーが歌っているのですが、この歌声もまた伸びやかで美しく心に響いてきます。歌われている言語はおそらくミャンマー語なのでその内容はもちろん全く分からないのですが、仏教音楽という難しいイメージ抜きとして、その美しく優雅とも感じられる音楽の世界を楽しむことが出来ます。
本作の演奏の中でまず印象に残るのがパルウェーと呼ばれる縦笛の演奏。この縦笛の高音の主旋律とピアノの音色の絡みが非常に美しく印象に残ります。特にこのパルウェーの音色はシンプルなだけにどこか懐かしさも感じられる日本人の琴線に触れるような音色が実に魅力的でした。
そして一番印象的だったのはサインワインという打楽器を中心としたミャンマーの合奏。軽快だけど均一なリズムパターンから微妙にずれているパーカッションのリズムもとてもおもしろいのですが、その音色にどこか和風な雰囲気を感じられるのが不思議なところ。同じ仏教国として太鼓の音色は同じ源流を持っているのでしょうか?ただ日本人にもどこか耳馴染みある音色は非常に心地よいものでした。
仏教音楽というテーマ性あるアルバムながらもミャンマー音楽の奥深さと魅力を感じることが出来る素晴らしいアルバムでした。なによりもそのシンプルながらも美しい音色と歌がとても印象に残る作品。これをきっかけにミャンマーの音楽についていろいろと聴きたくなるような、そんな1枚です。
評価:★★★★★
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