真・電気グルーヴ入門
Title:DENKI GROOVE THE MOVIE?-THE MUSIC SELECTION-
Musician:電気グルーヴ
昨年末から今年にかけて公開され大きな話題となった電気グルーヴの活動遍歴を追ったドキュメンタリー「DENKI GROOVE THE MOVIE?」。本作は、その映画のサントラ的立場になる企画盤的なアルバム。映画でも取り上げられた彼らの代表曲が収録されているのですが、単に過去の曲がそのままの音源で収録されている訳ではなく、一部についてはライブ音源となっており、過去の音源をすべて持っているような熱心なファンにとってもうれしい作品となっています。
ただ、この収録曲の選曲がなかなかおもしろく、「ベスト盤」というよりはむしろ電気グルーヴの活動遍歴の中で、要所要所のポイントとなりそうな曲が収録されています。例えば、過去のベスト盤ではあまり収録されていなかった最初期の、コミカルな毒舌ラップ時代の曲「電気ビリビリ」が収録されていますし、彼らにとって「失敗作」とされ、活動の中で大きな挫折を味わうことになるアルバム「ORANGE」から「ママケーキ」が収録されていますが、こちらは歌詞が、まさに「ORANGE」の頃の彼らの心境を映し出した内容だから、ということなのでしょう。
アルバム「VITAMIN」からの選曲が、ライブではおなじみの代表曲「富士山」ではなく「新幹線」なのもコミカルな路線よりもテクノミュージシャンとしての彼らの実力が発揮されたインスト曲の方が、よりこの時期の電気グルーヴの方向性を明確に示しているからでしょうし、2001年に活動を休止した後、活動再開直後の選曲も「モノノケダンス」ではなく「少年ヤング」なのも、ナゴムレコード人脈の映画主題歌への曲提供という意味で、彼らなりに吹っ切れたと解釈できる曲だから、ということなのかもしれません。
一方ではベスト盤なら収録していそうな「富士山」や「誰だ!」、「Nothing Gonna Change」あたりは未収録になっています。この選曲については、映画を観ればよりその意味もわかるでしょう。また、電気グルーヴの活動にとってポイントとなる曲という意味では、彼らの代表曲を網羅していない、という意味では「ベスト盤」とは言えないかもしれません。しかし、彼らの活動を知る上でポイントとなる曲を網羅しているという意味では、「ベスト盤」以上に電気グルーヴというのはどんなミュージシャンであるのか、ということがわかる内容になっているように感じました。
そういう意味では電気グルーヴの入門盤として最適な1枚であると言えるかもしれません。下手に既存のベスト盤を聴くよりも、まずはこちらのアルバムを1枚チェックした方が効率的かも・・・。その上で(近日中にDVDで発売されるようなので)「DENKI GROOVE THE MOVIE?」を見れば、下手なファンによりもよっぽど電気グルーヴのことを知っていると胸をはって言えるようになる・・・かも?昔からのファンにとってもライブ音源が収録されていますし、最後には「N.O.」の新録「N.O.2016」も収録されていますし、聴いて損のない内容だと思います。意外と熱心なファンでも気が付かなかった電気グルーヴの一面を感じることもできるかもしれないですね。
評価:★★★★★
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