個性あふれるカバー
Title:Cover Songs
Musician:小島麻由美
昨年、デビュー20周年を迎えた小島麻由美。そのデビュー20年を記念してリリースされたのが本作。かなりそのまんまなタイトルですが、彼女が歌ったカバー曲を集めた企画盤です。いままでもアルバムなどで数多くのカバーを歌ってきた彼女。そんな曲をまとめた上で、今回、新曲も収録。小島麻由美のボーカリストとしての側面を強調したアルバム、ともいえるかもしれません。
彼女がカバーした曲はなかなかユニークかつ多岐に及びます。越路吹雪の「ろくでなし」や由紀さおりの「夜明けのスキャット」あたりはもうおなじみのカバー。昭和レトロな雰囲気が彼女のイメージもマッチした、ある意味「よくわかる」カバーと言えるかもしれません。それだけに小島麻由美らしさを存分に発揮したカバーになっています。
ほかにもスピッツの「夏の魔物」のようなJ-POPに、松田聖子の「SWEET MEMORIES」のようなアイドルソング、スキータ・デイヴィスの「この世の果てまで」やリンジー・ディ・ポールの「恋のウーアイドゥ」のような洋楽勢、さらには「ニーナ」「愛の喜び」といったイタリアのスタンダードナンバーまでバリエーションに富んでいます。
アレンジもジャズの要素を入れつつ、ムーディーな雰囲気に仕上げたレトロ調のアレンジが多いのですが、「恋のウーアイドゥ」ではナイアガラサウンド風に仕上げていたり、大滝詠一の「朝寝坊」ではラグタイム風に軽快にまとめていたり、こちらも曲によってなにげにそのスタイルを少しずつ変えており、これがまたとても楽しいカバーに仕上がっていました。
ただそんな様々なジャンルの曲を取り上げつつ、様々なスタイルでカバーにながらも、どの曲にも共通しているのは・・・言うまでもなく小島麻由美のボーカル。これがまた、独特の味になっており、おもしろさを感じます。彼女の歌い方は、いかにも感情を込めた、といった感じではなく、シンプルな歌い方。ともすれば「淡々」と言ってしまえる歌い方かもしれません。
しかし、聴き方によっては子供っぽさを感じる部分があり、でも別の聴き方では、セクシーさすら感じさせるボーカルは、まさに彼女にしか出せない個性。また、感情を必要以上に込めていないにも関わらず、きちんと表情を感じさせるボーカルになっている点もまたおもしろいところ。シンガーソングライターとしての才能を取り上げられることが多い彼女ですが、ボーカリストとしても唯一無二な個性と実力の持ち主ということが、このカバーアルバムでは実感できます。
そんなカバーアルバムの中でおもしろかったのが、かなり意外な選曲だった尾崎豊の「I LOVE YOU」と「シェリー」。特に「シェリー」ではオルゴール風のアレンジにリコーダーがのるという極めてシンプルなアレンジで、原曲との違いにビックリします。ただ、尾崎豊がこれでもかというほど感情をこめて歌った原曲と対極のようなシンプルなアレンジと歌い方ゆえに、メロディーと歌詞の魅力がよりはっきりとわかるカバーになっていました。
最後を締めくくるのも、日本におけるカバーの典型。もう何組がこの曲をカバーしたんだ?と思うような「君の瞳に恋してる」。こちらに関しては小島麻由美のカバーであらたな発見、といった感じはなかったのですが、ホーンや手拍子も加わった祝祭色あふれるカバーに仕上がっており、最後はハッピーな気分でアルバムで終えることができます。
小島麻由美だからこそできる、彼女ならではのカバーがつまっているアルバム。また、彼女の個性がしっかり出ていたからこそ、彼女のオリジナルアルバムのような感覚で楽しむことのできたアルバムでした。あらためて彼女の実力を認識することができるアルバムです。
評価:★★★★★
小島麻由美 過去の作品
a musical biography KOJIMA MAYUMI 2001-2007
ブルーロンド
渚にて
路上
With Boom Pam
セシルの季節 La saison de Cecile 1995-1999
ほかに聴いたアルバム
BACK BAD BEAT(S)/JUN SKY WALKER(S)
活動再開後、3枚目、2年9カ月ぶりとなるニューアルバム。スタイルとしては、依然かわらないポップなパンクロック。さすがキャリアを重ねただけあって演奏には安定感もありますし、楽曲もきちんとまとまっている感じ。ただ、それは彼らのスタイルにとって必ずしもプラスじゃないんだよなぁ・・・。
評価:★★★
JUN SKY WALKER(S) 過去の作品
B(S)T
LOST&FOUND
FLAGSHIP
Your Christmas Day III/佐藤竹善
佐藤竹善がおくるクリスマスアルバム第3弾。基本的に洋楽のカバーで構成されたアルバム。1曲目「After The Rain」はロック風、続く「Please Come Home For Christmas」はソウルバラード風と続くも、アルバム全体としてはジャジーなアレンジで彼の透き通ったボーカルをしんみり聴かせる楽曲がそろっています。最後は1曲のみ彼のオリジナルナンバー。世界的パティシエとして名高い「パティシエ エス コヤマ」のオーナーシェフ・小山進氏とのコラボレーションだそうで、最後に収録された「The Lost Treasure ~The Adventures of Jaime~」は、小山氏が新作ショコラに込めた物語を元に、佐藤竹善が書き下ろした曲だそうです。
これがいわゆる「組曲」になっているのですが、比較的シンプルだったほかのカバーに比べるとちょっと仰々しすぎる感じが。パティシエのスイーツとのコラボってのもあまりにもいかにもすぎて狙いすぎな感じも・・・。まあ、その点を差し引いても良質なカバーのクリスマスアルバムなのは間違いありません。紹介するのがちょっと遅くなってしまったのですが・・・興味ある方はいまからでも是非。
評価:★★★★★
佐藤竹善 過去の作品
ウタジカラ~CORNER STONE 4~
静夜~オムニバス・ラブソングス~
3 STEPS&MORE~THE SELECTION OF SOLO ORIGINAL&COLLABORATION~
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