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2016年2月20日 (土)

35年前の名著が待望の邦訳

昨年5月、惜しまれつつこの世を去ったブルースの王様、B.B.KING。その彼の評伝が先日発売されたので読んでみました。

もともとはアメリカのチャールズ・ソーヤー氏が1980年に手掛けた作品。発売から35年という日々がたっていますが、もともとファンにとっては長らく読みつがれてきたB.B.KING評伝の名著だったそうです。このたび、音楽評論家の日暮泰文氏監修のもと邦訳版が発売されました。

ハードカバーで全383ページという分厚い内容。かなり読み応えある内容なのですが・・・これが実におもしろかった!この分厚い内容でじっくりとB.B.KINGというミュージシャンを分析していっているのですが、グイグイと惹きこまれる実に満足感の高い一冊となっていました。

本書は全3章にわかれており、第1章ではB.B.KINGのある1日を切り取って密着取材した内容。いわば「B.B.KING 24時間」といった感じでしょうか(笑)。第2章はB.B.KINGの生い立ちを描いた伝記。そして第3章ではB.B.KINGの人物像、また音楽の魅力を分析した評論となっていました。

まずこの本が魅力的だったのはチャールズ・ソーヤー氏がB.B.KINGに密着取材を行っており、その上で記された作品という点でした。これはまだB.B.KINGが現役バリバリだった1980年という時期だからこそ実施できたことでしょう。特に第1章ではB.B.の1日を臨場感もって描かれており、密着取材が出来たチャールズ氏ならではの内容になっています。

またチャールズ氏の文体の特徴なのでしょうか、それともB.B.KINGがようやく「キング」となってきた1980年の作品だからでしょうか、比較的シンプルで淡々とした文体なのもまた読みやすかった理由のように思います。どうしても日本の評論家によるB.B.評は思い入れが多い文体になりがちなので・・・。

第2章の伝記は1970年のエド・サリバンショーへの出演をもってアメリカ全土にB.B.KINGの名前が知れ渡り、名実ともに「キング・オブ・ザ・ブルース」となった段階をもって筆がおかれています。こちらに関してもB.B.KINGが成り上がっていくまでの過程に焦点をあてているだけに非常に読みやすくおもしろかったのと同時に、彼の生い立ちである当時の南部の黒人農民の暮らしによりスポットがあてられており、B.B.KINGの伝記だけではなく、アメリカ黒人史という側面でも興味深い記述が多くなされていました。そういう意味で単純なB.B.KINGの評伝という枠組みを超えた部分も感じる作品でした。

第3章ではB.B.の人柄や音楽的な魅力に触れられています。音楽的な部分はそれなりに専門的な部分まで触れているのですが、さほどマニアックになることなく音楽的な素養がさほどなくても楽しめるレベルで止められています。また彼の人柄に触れた部分ではB.B.のとても優しく、そしてオープンな性格が記されています。ここらへんの彼の人柄は死後に日本で発売されたB.B.の特集本などでもよく記載されていました。ただ個人的には死者に対する評価という意味で割り引いて読んでいた部分があったのですが、生前に記されたこの本の記述から、B.B.の性格の非常に素晴らしい人柄を実感することが出来ました。

いまから35年前の作品ながらもいまなお全く色あせておらず、今読んでもB.B.KINGというミュージシャンがどんなミュージシャンだったのか、とてもよく理解できるまさに「名著」という評判は嘘でないと実感できる1冊でした。B.B.KINGのファンはもちろんのこと、ブルースに興味があるならばまずは読むべき1冊です。

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