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2016年2月22日 (月)

20年目の再構築

Title:re:evergreen
Musician:MY LITTLE LOVER

2015年にデビュー20周年を迎えたMY LITTLE LOVERの新作は、彼女たちが20年前にリリースしたデビューアルバム「evergreen」を再構築したアルバム。2枚組のアルバムでDisc2にはその「evergreen」を再プロデュースしたアルバムがついてきています。

その「evergreen」は280万枚という大ヒットを記録し、いまだにMY LITTLE LOVERを代表するアルバムとなっています。私もリアルタイムで聴いていたのですが、おもいっきりはまり、確か最初はレンタルで聴いたもののその後CDで買い直したという思い出深いアルバムだったりします。

今回、このアルバムで久しぶりに「evergreen」を聴きました。原盤と聴き比べはしていないので正直「再プロデュース」といっても大きく雰囲気が変わったわけではありません。楽曲はシンプルなポップソング。ボーカルakkoは決して声量があって上手いボーカリストではないのですが、その透明感ある声色と淡々とした歌い方を生かしたメロディーとアレンジが見事に壺にはまっています。マイラバとしてはもちろんのこと、その当時メンバーであり、プロデューサーであり、かつメインのライターであった小林武史の脂ののった仕事ぶりを感じることが出来ます。

その「evergreen」を再構築した本作はジャケット写真からして「evergreen」を意識した作品なのですが楽曲自体も「evergreen」と対比できるような曲が多く収録されています。顕著なのが「pastel」で楽曲的にはおもいっきり「Man&Woman」を意識したような作風。また最後を飾るタイトル曲「re:evergreen」も、「evergreen」のタイトル曲を明らかに意識したスケール感あるミディアムチューンに仕上げてきています。

楽曲的にも「evergreen」同様シンプルなポップソングがメイン。akkoの声を上手くいかした楽曲が多く、ここ最近オーバープロデュース気味な仕事が目立つ小林武史としては珍しく(?)抑え気味のプロデュースでしっかりとakkoを前に押し出した仕事ぶりが好印象です。個人的にお気に入りなのが「今日が雨降りでも」。爽やかな曲調ながらもどこか切なさを感じさせるあたり、全盛期のマイラバを彷彿とさせるポップソングに仕上がっています。

一方でバンドサウンドを取り入れた「夏からの手紙」やギターがどこかファンキーなリズムを奏でる「舞台芝居」は「evergreen」の方ではちょっとお見掛けしないタイプの曲。基本的にはシンプルで爽やかなポップという「evergreen」から「re:evergreen」へとつながる軸を大きくはずすものではありませんが、単なる「evergreen」のコピーとは異なる部分も感じられました。

正直言って、名盤「evergreen」と比べると「re:evergreen」の出来は劣ってしまうというのは否めません。ただその点を差し引いても良く出来たポップスのアルバムなのは間違いないと思います。MY LITTLE LOVERらしさを変に奇をてらわずに素直に表現した作品でした。特に20年を経てもあの頃の雰囲気から全く変わらないakkoのボーカルには驚かされるばかり。だからこそ「evergreen」の再構築という試みが出来たのかもしれません。

かつてマイラバにはまったことのある人ならば純粋に楽しめる作品だと思います。「evergreen」もついてくるし、マイラバ、懐かしいな、と感じた方、是非とも手にとって聴いてみてください。20年前からいい意味で変わらないポップソングがここにはありました。

評価:★★★★★

MY LITTLE LOVER 過去の作品
アイデンティティー
そらのしるし
Best Collection-Complete Best-
acoakko debut

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