予想外の傑作
Title:Second line&Acoustic collection II
Musician:ACIDMAN
ACIDMANが、自分たちの楽曲を大幅にリアレンジしてシングルのカップリングとして収録している「Second line」シリーズ。その楽曲を1枚のアルバムにまとめたのが本作。タイトル通り、これが第2弾となります。
正直言ってしまうと、今回の本作、聴く前にはさほど期待していませんでした。このシリーズの前作は、既存の作品をジャズ風にアレンジしただけの平凡な内容で期待はずれでしたし、ACIDMANとしても直近のオリジナルアルバムはいまひとつインパクトに欠けており、ミュージシャンとしての勢いが失速してしまっている、と感じられたからです。
しかし、今回の本作はそんな予想をいい意味で大きく裏切る内容になっていました。まずアレンジとしてもジャジーなアレンジに留まらない幅広さが感じられました。「type-A」や「スロウレイン」のようなジャジーな雰囲気の楽曲を取り混ぜつつも、「±0」ではm-floのverbalによるラップを入れてきたり、「I stand free」ではカントリー風、「波、白く」ではちょっとボッサな雰囲気と、楽曲のバリエーションに幅が感じられます。
特にユニークさを感じたのは「swayed」。トライバルなパーカッションにアコギがからみ、さらに途中からストリングスの音色が重なる、ちょっと幻想的にも感じられる音の空間が実にユニーク。強いインパクトを感じさせてくれる曲になっていました。
さらに今回のアレンジで印象的だったのはメロディーラインの美しさ。例えば「Under the rain」の切なく美しいメロディーラインや、「Your Song」の軽快でポップなメロディーなどが印象に強く残りました。
もっともこれに関しては、既存楽曲のアレンジなだけに、今回のアルバム独特なものではありませんが、アコースティックメインのシンプルなアレンジだっただけに、そのメロディーの美しさがより前面に出てきており、ACIDMANのメロディーの良さを再認識できる内容になっていました。
そんな訳で、聴く前はそもそも聴くべきかどうか迷ったほどの内容だったのですが、結果としていい意味で予想を大きく裏切る傑作に仕上がっていました。ともすれば、最近のバンドサウンドメインの曲よりもこちらのスタイルの方が彼らの良さが引き出されているのでは?とすら感じてしまいます。ACIDMANというバンドの良さに気が付かされたアルバムでした。
評価:★★★★★
ACIDMAN 過去の作品
LIFE
A beautiful greed
ALMA
Second line&Acoustic collection
ACIDMAN THE BEST 2002-2012
新世界
有と無
ほかに聴いたアルバム
いのちのかたち/plenty
オリジナルアルバムのフルアルバムとしては2年半ぶりとなるplentyのニューアルバム。基本的にいつも通りシンプルなギターロックに、孤独を歌ったような寂しい歌詞が印象的な内容。アコギやストリングス、ピアノを取り入れ、より美しさが増した印象もあります。バンドとしてのスタイルはほぼ確立しているのですが、以前から同様、歌詞にしてもメロにしてももうひとつひっかかりが欲しいところ・・・。
評価:★★★★
plenty 過去の作品
拝啓。皆さま
理想的なボクの世界
plenty
this
re(construction)
空から降る一億の星
GIRLS/フジファブリック
6月にリリースされたミニアルバム「BOYS」と連動する形でリリースされたミニアルバム。ここ最近のフジファブリックは、メインライターの山内総一郎の成長を感じさせる作品が続いていましたが、残念ながら今回のアルバムに関しては悪くはないが平凡といった印象。明るく爽やかなテイストのポップチューンが並んでいますが、それ以上はさほど印象に残らない作品になっており、同じくミニアルバムながらもフジファブリックの今後の可能性を感じさせた「BOYS」と比べて、ちょっと残念な仕上がりに感じてしまいました。次のオリジナルアルバムこそ、傑作を期待したいのですが・・・。
評価:★★★
フジファブリック 過去の作品
TEENAGER
CHRONICLE
MUSIC
SINGLES 2004-2009
STAR
VOYAGER
LIFE
BOYS
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