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2016年1月11日 (月)

確かに「もはや新アルバム」

Title:耳噛じる真打
Musician:マキシマム ザ ホルモン

Mimikajiru_shinuchi

今回紹介するアルバムは、昨日、つらつらと感想を書いたマキシマム ザ ホルモンの映像作品「Deka Vs Deka」の中の1枚としてリリースされたアルバム。彼らが2002年にリリースした「耳噛じる」を大幅にリアレンジ&再録したアルバム。このアルバムのリリースをきっかけに「耳噛じる」は廃盤になったとか。ちなみに本作はあくまでもDVD作品の中の1枚であって、単独にリリースする予定はないそうです。

今回、個人的にホルモンのDVDを買った理由の何割かがこのアルバムを聴きたかったから。そして今回、このアルバムを聴いてみたのでせっかくなので、元の「耳噛じる」の方も聴いて、聴き比べてみました。

DVDの煽り文句で、「これはもはや新アルバム」と書かれているのですが、確かに元の「耳噛じる」と聴き比べると、大きく進化しています。例えば、今のライブの定番曲らしい「握れっっ!」を進化させた「握れっっっっっっっ!!」なども、サウンドがあきらかに分厚くなっている他、歌も間違いなく上手くなっている・・・特にダイスケはんのリズムへの歌詞の載せ方は、特に進化しているように感じます。さらに明確にかわっているのが「薄気味ビリー~濃気味再録編~」で、イントロのリフは薄気味悪さを増し、さらに最初のお経のようなラップも、キレが増して、間違いなくカッコよく進化しています。

全体的には元の「耳噛じる」はパンキッシュで勢いがある反面、サウンドのバリエーションが乏しかった一方、「耳噛じる真打」では、楽曲の中に様々なアイディアが登場してきます。例えば「アブラ・ボブ<アブラ・カプセル・マーケッボブ>」では、THE MAD CAPSULE MARKETSとして活躍し、現在はAA=として活動している上田剛士がプログラミングを手掛けたデジタルロック仕様になっていますし、最後の「パトカー燃やす~卒業~」では、なぜかいきなり児童合唱団による合唱からスタートしています。あ、あと「もっとポリスマンファック」の最後に、なぜかLINDBERGの「BELIEVE IN LOVE」のギターフレーズが入ってくるのはなぜ??

そんな訳で、元の「耳噛じる」に比べると明らかな進化が見え、これはこれで1本の新作として成り立っているといっても過言ではない作品。とはいえ一方で、今も続くホルモンらしさという要素、亮君の書く中2的な歌詞やへヴィーでメタリックなサウンドとそれと相反するようなポップでセンスの良いメロディーラインといったものは、元の「耳噛じる」から健在。そして、そんな良さは、きちんと「真打」にも伝わっていました。

また一方で、元の「耳噛じる」では感じられた若手バンドらしい向こう見ずな勢い、みたいな部分は「真打」ではちょっとおとなしくなってしまい、その点だけは元の方がよかったかも、と思う部分も。亮君は曲解説で元の「耳噛じる」を「ブスなこと!ブスなこと!」と語っていますが、ブスというよりも、お化粧のやり方も知らない田舎の女子大生といった感じでしょうか。そんな彼女が都会に出てきて洗練され、キレイな女性へと生まれ変わったのが「真打」といった印象があります。ただ、かつてのお化粧のやり方も知らなった素朴な時代も、これはこれで良かった・・・という見方もできるわけで(笑)。そういう意味では元の「耳噛じる」が廃盤になってしまったのはちょっと残念にも思います。もっとも、レンタルにしても中古にしても比較的簡単に手には入るのですが。

そんな訳で、マキシマム ザ ホルモンの新作として聴くべき傑作アルバム。これを聴くためだけでも「Deka vs Deka」を購入する価値はあるかも。

評価:★★★★★

マキシマム ザ ホルモン過去の作品
予襲復讐

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