解散が惜しまれるベスト盤
Title:best+ 2009-2015
Musician:FACT
もともとは1999年結成。日本のみならず海外での活動も注目をあつめ、さらに全員、能面をかぶるというインパクトあるスタイルも話題となったバンドFACT。結成から10年を経た2009年にメジャーデビューし、アルバム「FACT」をリリース。その後、メジャー2作目となる「In the blink of an eye」ではオリコンアルバムチャート最高位6位を記録するなど人気を集めました。
2014年には新ギタリストAdamが加入し、6人組バンドになるなど「成長」を続けてきた彼らですが、残念ながら今年4月に年内いっぱいでの解散を発表。本作はそんな彼らが、2009年のメジャーデビュー後に発表してきた曲を、発表順に並べたベストアルバムです。
彼らの音楽はスクリーモ、ポスト・ハードコアと呼ばれるようなジャンルだそうで、デス声も使ったハードでメタリックなサウンドを展開する一方、ポップでメロディアスなメロディーラインも展開する点も特徴的。私はメジャーデビュー後の「FACT」ではじめて彼らの音楽を聴いたのですが、シンセのサウンドなども取り入れつつ、洋楽っぽいエッジの効いたサウンドに、メロディーラインについては逆にどこか「歌謡曲」的、例えば「paradox」のような和のテイストも感じられる哀愁を帯びたようなメロディアスなものが強いインパクトを持っていました。
また、音楽性についても幅広いものがあり、例えばベスト盤に収録されている曲に関しても「slip of the lip」はパンク色の強いナンバーですし、「FOSS」はエレクトロテイストの強いナンバー。「ape」ではレゲエを取り入れるなど、ハードコア的なジャンルにとどまらず、幅広い音楽性を取り入れていることによりリスナーを飽きさせません。
そんな彼らの代表曲が収録されている今回のベスト盤。彼らのアルバムについては基本的に聴いている私ですが、今回のアルバムを聴いてひとつ彼らについて誤解していたことに気が付かされました。このベスト盤を聴くまで、彼らについてひとつ思っていたことがあります。それは、デビュー作「FACT」が最高傑作で、その後はデビュー作ほどの勢いもなく、またバラエティー富んだ音楽性が逆に散漫に聴こえてしまう作品・・・そんなイメージで聴いていました。
しかし、今回のアルバムでその印象が誤解だったと気が付きました。というか、最近の作品になるほどカッコいい(^^;;特にバンドサウンドの分厚さが圧倒的に増し、へヴィーで迫力あるバンドサウンドが耳に突き刺さるようなナンバーが並んでいます。特に「wait」など、わずか1分30秒程度のナンバーながらもハイテンポなシャウトとちょっと哀愁を感じるメロディーラインの対比が見事なナンバー。また、本作の1曲目「look away」と2曲目「choices」は新曲なのですが、こちらも彼らの特徴であるへヴィネスさとポップスさがバランスよく融合されたカッコいいナンバーに仕上がっています。
そういう意味ではこのベスト盤を聴いて、このタイミングで解散か、と逆に残念に感じてしまいました。新曲も傑作だったし、まだまだこれからも名曲を作ってくれそうな予感もするのですが・・・。仕方ないことかもしれませんが、非常に残念です。これからのそれぞれのメンバーのさらなる活躍を期待したいところです。
評価:★★★★★
FACT 過去の作品
FACT
In the blink of an eye
burundanga
witness
ほかに聴いたアルバム
FEVER/三浦大知
約2年ぶりとなるニューアルバム。楽曲に関しては、正直、よくありがちな今風のエレクトロポップであまり面白味はありません。ただ一方で、彼の伸びやかなボーカルが実に魅力的。このボーカルを聴くだけで一聴の価値ありな内容。ただ、作風としては前作、前々作からほとんど変わっておらず、そろそろもう一工夫ほしいところなのですが。
評価:★★★★
三浦大知 過去の作品
D.M.
The Entertainer
LIFE is BEAUTIFUL/ROTTENGRAFFTY
今年で既にデビュー14年目を迎えるベテランバンドなのですが、このアルバムで初となるベスト10ヒットを記録し、話題となりました。私も彼らの名前は以前から知っていたものの、音源を聴くのはこれがはじめて。ただ・・・正直、期待したほどじゃなかったなぁ。へヴィーなギターサウンドにエレクトロのサウンドを取り入れつつ、メロディーはポップというスタイルなのですが、エレクトロサウンドとポップなメロを前に押し出しすぎ、バンドとしてのダイナミズムが失われているように思います。またメロディーもいかにもな歌謡曲風でおもしろみはほとんどなく、いまひとつ。期待はずれの残念な作品でした。
評価:★★★
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