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2016年1月30日 (土)

矢沢永吉の魅力をより深く伝える

Title:ALL TIME BEST ALBUM II
Musician:矢沢永吉

わずか2年前に、レコード会社を横断的に網羅したオールタイムベストをリリースしたばかりの矢沢永吉。そこからわずか2年、またもオールタイムベストをリリースしてきました。ただし、ベスト盤の焼き直し・・・ではもちろんなく、前作に収録できなかった作品を収録したセカンドベスト的なアルバムといった感じでしょうか。今回も3枚組のフルボリューム。ただ「ベスト」と言ってしまえる作品が、前作を含めてCD6枚分も収録できるあたり、さすが長いキャリアで人気を保ち続けた永ちゃんらしい、といった感じでしょうか。

3枚組のアルバムですが、曲順としては特に発表順というわけでもなく、アルバムの流れを考えた選曲になっているようです。とはいえ、Disc1の1曲目に収録されているのがソロデビューシングル「アイ・ラヴ・ユー、OK 」のカップリング「セクシー・キャット」だったり、Disc3に新曲「What Do You Want?」が収録されていたりと、Disc1は比較的初期の作品が、Disc3は比較的最近の作品が多いような印象を受けます。

さて今回のベスト盤、「セカンドベスト」という言い方をしましたが、ただ前作「ALL TIME BEST ALBUM」に比べて楽曲的に劣るか、と言われると全くそんなことはありません。むしろ、「ALL TIME BEST ALBUM」の収録曲よりこちらの方が名曲なのでは、とさえ思うような曲も数多くありました。

特にロックンロールの色合いが濃いナンバーが多かった印象も受けます。「BIG BEAT」「Wonderful Life」「JAMMIN' ALL NIGHT」など、ギターリフ主導の昔ながらもロックンロールナンバーが特にDisc3には多く、彼のルーツロック志向な部分も強く感じます。

また今回のアルバムではなにげに矢沢永吉がストレートなロックにこだわらない幅広い音楽性を模索していることを感じさせる曲も多く収録されていました。この点は前作「ALL TIME BEST ALBUM」でも感じたのですが、この「II」ではその方向性がさらに顕著。モータウンビートを取り入れて軽快に聴かせる「シーサイド#9001」や、シティポップ風の「SEPTEMBER MOON」などの曲もありますし、さらにエレクトロサウンドにギターの音を重ねた「ワン・ナイト・ショー」など、かなり挑戦的にも感じる曲でした。

ただ一方では、特にDisc2の曲に多かったのですが、いかにも80年代的なシンセの音を入れた曲が、今となってはちょっとチープに聴こえてしまいます。これらの曲に関しても、その時代時代の音を積極的に取り込んでいった彼の挑戦心のあらわれでしょう。残念ながら時代に寄り添いすぎたために、今聴くとちょっと古さも感じてしまいますが、それも含めて彼の挑戦心を感じさせるのは事実です。

そんなロックンロールなナンバーや挑戦的なナンバーは文句なしにカッコよかったのですが、正直、個人的にちょっと苦手だったのが、ミディアムテンポのナンバー。感情たっぷりにムーディーに聴かせる彼のスタイルは、楽曲によっては「ムード歌謡曲か?」と思うほど、悪い意味でのベタさすら感じます。もっとも、ファンにとってはこういうムーディーな曲も含めて彼の大きな魅力なんでしょうね。個人的には苦手なのですが、セクシーさも感じさせるこれらのミディアムチューンに感じても、矢沢永吉の魅力がなんとなく伝わってきました。

「ALL TIME BEST ALBUM」がヒット曲中心の選曲だったのですが、今回の「II」がヒット曲にとらわれない、矢沢永吉の人気曲を収録したベスト盤だったからこそ、むしろ矢沢永吉の本質的な魅力をより感じさせるベスト盤になっていたように感じます。私個人としては、「ALL TIME BEST ALBUM」よりむしろこちらの方が好きだったかも。初心者にとっては「ALL TIME BEST ALBUM」だけではなく、こちらも、いやむしろこちらこそ要チェックなベスト盤では?とも感じる作品でした。

評価:★★★★★

矢沢永吉 過去の作品
ALL TIME BEST ALBUM

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