メジャーデビューで変わってしまったのか?
Title:猫とアレルギー
Musician:きのこ帝国
今回、メジャーデビューを果たしたきのこ帝国の、メジャーからの1stアルバム。きのこ帝国といえば、楽曲を埋め尽くす圧倒的なギターノイズの、王道ともいえるシューゲイザーフォロワー的なバンドで、その迫力あるサウンドがインディー時代から話題になっていました。そんな彼女たちがメジャーでどんな音楽を展開していくのか・・・楽しみでもあるメジャーデビューでした。
ただ一方で、インディーズ最後のアルバムとなった前作「フェイクワールドワンダーランド」は聴きやすさを追求した結果、ノイジーなギターサウンドが後ろに下がってしまい、確かにポップな作風になったもののシューゲイザー色は後退してしまい、ちょっと残念な作品に仕上がっていました。そのため、今回のメジャーデビュー作で彼女たちがどのような方向性に進むのか、不安でもありました。
そんな彼女たちのメジャーデビュー作だったのですが、残念ながら不安の方が的中してしまいました。ポップ路線にシフトした前作よりもさらにポップにシフト。シューゲイザーの影響はほとんど皆無。残念ながら普通のギターロックバンドになってしまいました。
それでもギターロックバンドとしてバンドサウンドにしろメロディーにしろそれなりの独自性を発揮しているのなら、それはそれで新たな方向性としてアリかもしれません。ただ、残念ながらそんな独自性はあまり感じられません。メロディーラインにしても正直、至って平凡。メジャーデビューシングルとなった「桜が咲く前に」に至っては、サビ先という典型的なJ-POPスタイル。いかにも売れ線狙いといった感じでガッカリしました。
終盤の「YOUTHFUL ANGER」や「ひとひら」に至って、ようやくギターのノイズが前面に押し出されたシューゲイザーっぽいポップスが顔をのぞかせましたが、とりあえずいままでの作風も入れておきました的なおざなり感も。前作同様「これじゃない」感は最後まで否めませんでした。
それでもそれなりにシューゲイザーという方向性とポップという方向性がマッチした曲もあった前作に比べて、今回の作品はそういう曲も皆無。はっきり言ってしまえば、平凡なギターロックのアルバムといった印象から最後まで抜け出せていませんでした。非常に残念な作品。いまどき、メジャーデビューで売れ線にシフトというバンドは逆に珍しいようにも思うのですが・・・インディー時代は好きなバンドのひとつだっただけに、非常に残念です。
評価:★★★
きのこ帝国 過去の作品
渦になる
eureka
ロンググッドバイ
フェイクワールドワンダーランド
ほかに聴いたアルバム
人生はまだまだ続く/キュウソネコカミ
メジャーでは初となるキュウソネコカミのフルアルバム。シンセをつかった強烈にハイテンポなサウンドと、毒の効いた歌詞はそのまんま。ただ、メジャーデビュー後のミニアルバム2枚「チェンジ ザ ワールド」と「ハッピーポンコツランド」が似たようなノリの曲が多かったのに対して、今回のアルバムはノリのパターンがいままでとはちょっと異なる印象が。勢いがあり、一気に畳みかけるような曲は聴いていて楽しいことは間違いないのですが、ただ、歌詞はネタに走りすぎて若干違和感を覚えるのもあったりするのが気にかかります。良くも悪くも若さゆえの勢いがあるバンドといった感じ。
評価:★★★★
キュウソネコカミ 過去の作品
チェンジ ザ ワールド
ハッピーポンコツランド
We are DISCO!!! ~tribute to the telephones~
今年11月に活動を休止したロックバンドthe telephones。そのthe telephonesの楽曲を様々なミュージシャンがカバーしたトリビュートアルバムです。参加メンバーはなかなか豪華。POLYSICSやTHE BAWDIES、ストレイテナーや、LUNA SEAのJなど、豪華な面子が揃っています。カバーは基本的には原曲そのままディスコテイストにカバーするか、バンド色を前に出して「ロック」であることを強調するかどちらか。そういう意味では意外性がなかったのですが、ただ、どれも良いカバーに仕上がっていたと思います。特にPOLYSICSとthe telephonesの良さを両立されたPOLYSICSの「Urban Disco」は、ポリとthe telephonesの相性の良さを感じましたし、ストレイテナーの「I Hate DISCOOOOOOO!!!」もファンキーなベースラインがカッコいいカバーに仕上がっていました。the telephonesのファンはもちろん、参加バンドのファンにもお勧めの1枚です。
評価:★★★★★
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