アルバムレビュー(邦楽)2015年

2016年5月19日 (木)

再メジャーデビュー作!

Title:ブリトラ依存症
Musician:ブリーフ&トランクス

復帰後3作目、さらにメジャーからの再デビュー作となるブリーフ&トランクスの新作。「半径5メートル以内の日常」をテーマとしたコミカルな楽曲が特徴的な彼らですが、今回の作品もそのスタンスが1ミリもぶれることがありませんでした。

タイトル通りな内容の「ケータイ依存症」や世代間ギャップ(?)をコミカルに描いた「良くなくない?」、夢と現実をコミカルながらもシビアに描いた(?)「タイムカプセル」など、あるあるネタ・・・というよりもユーモラスな描写の中に、そのテーマ性に微妙に共感できる内容が特徴的。テーマとしてもあくまでも「半径5メートル以内の日常」という彼らのスタンスの通り、実に身近な・・・というよりも身近すぎてなかなか曲のネタになりそうもないテーマをあえて取り上げています。

また今回のアルバムでちょっと目立ったのが下ネタ。手術の時に下の毛を剃ることをテーマとした「剃毛」なんて曲もありましたし、また「パチンコ」「まんげつ~ブリトラバージョン~」は歌詞にするとなんてことない普通の歌詞の曲にも関わらず、歌い方によって非常に卑猥な内容に聴こえる、というかなり笑える楽曲。ただ、非常につボイノリオ臭がしてくるような内容なのですが(苦笑)。

そんな訳で今回の作品も実にブリーフ&トランクスらしいユニークな作品に仕上がっていました。ただ、デビュー当初のような勢いを取り戻した前々作、前作と比べると、3作目となってしまって若干ネタ切れ感が否めないかな?とも思ってしまう部分も感じてしまいました。

それこそ上にも書いた「まんげつ」などはもともと伊藤多賀之ソロ作のブリトラバージョンですし、「パチンコ」も基本的にその延長線上。他にもコミカルさはあるものの真面目なネタが多かったにも気になりましたし、「幻の宝」なども出だしは非常にユニークながらも「え、落ちがそれ?」と感じてしまうような中途半端な終わり方になってしまっていて残念に感じました。

再メジャーデビュー決定ということで、前作からわずか1年というスパン。ネタがたまる前にリリースが決まってしまったのかな、なんて邪推すらしてしまいたくなってしまいました。全体的にはもちろんブリトラらしさはきちんと出ていますし、それなりに楽しめる内容ではあったのですが・・・。ここ2作が非常に出来のよい傑作だっただけにちょっと残念。次はあまり急がずに、またユーモラスなネタを聴かせてほしいです。

評価:★★★★

ブリーフ&トランクス 過去の作品
グッジョブベイベー
ブリトラ道中膝栗毛


ほかに聴いたアルバム

TOKYO BLACK HOLE/大森靖子

一部で高く評価されている女性シンガーソングライター大森靖子のメジャー2枚目となるフルアルバム。その独特の世界観が評判のシンガーで、これで彼女のアルバムを聴くのは3作目なのですが、どうもいまひとつピンと来ない・・・。その歌詞やスタイルがいかにも狙ってます的な感じが否めず、正直、ハイプという言葉が頭に来ています。今回の作品はメジャー2作目ということでかなりポップで聴きやすい内容にはなっていたのですが・・・。

評価:★★★

大森靖子 過去の作品
洗脳
トカレフ(大森靖子&THEピンクトカレフ)

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2015年12月29日 (火)

なにげにはじめての9枚目

Title:JUNGLE9
Musician:ザ・クロマニヨンズ

ザ・クロマニヨンズといえば、ご存じ、元ブルーハーツ、ハイロウズとして活躍していた甲本ヒロトと真島昌利が2006年に結成したバンド。これが9枚目となるアルバムですが、実はブルーハーツもハイロウズも8枚目のシングルをリリースした後、解散(活動休止)しており、ヒロト&マーシーのバンドでアルバムを9枚リリースするのはこれがはじめてだそうです。ザ・クロマニヨンズはおととしから昨年にかけ、ベスト盤やMV集などを出しており、ひょっとしてまた解散か?という憶測もかけめぐったのですが、無事、彼らにとって9枚目となるオリジナルアルバムがリリースされました。

ヒロト&マーシーのバンドといえば、ブルハからハイロウズ、そしてクロマニヨンズとかけて、どんどんサウンドがシンプルになっていっている印象があります。特にこのザ・クロマニヨンズに関してはまさに「シンプル・イズ・ベスト」を地で行っている印象がありました。

ただ、前作「GUMBO INFERNO」あたりから単なるシンプル・イズ・ベストからちょっと方向転換したように感じました。もちろん、基本的にはシンプルなパンクロックという路線で変わりはないのですが、ブルースやレゲエ、歌謡曲の要素を取り込んでおり、単純な勢いだけのパンクロックとは異なる路線を感じました。

今回のアルバムに関しても、単なるパンクロックではなく、そこから一歩進んだバリエーションを感じられます。例えば「這う」ではノイジーなサウンドでガレージロック色の強い楽曲になっていますし、「原チャリダルマ」はフォーキーな雰囲気を感じる曲になっています。

他にも軽快ではねるようなリズムの「生きてる人間」があったり、逆に歩くようなリズムで聴かせる「オバケのブルース」があったり、一言でシンプルなパンクといってもそのバラエティーの豊かさに、ベテランとしての実力を感じました。

歌詞にしてもシンプルながらも、なにげに心に来るような歌詞をしっかり書いているのがさすが。例えば「生きてる人間」なんかでも

「腹がへったら食べよう 何か食べよう
食べよう 食べよう 何か食べよう」
「眠くなったら眠ろう とっとと眠ろう
眠ろう眠ろう とっとと眠ろう」

というシンプルな歌詞を歌いつつ、サビでは

「イェー! 生きてる
人間」

(「生きてる人間」より 作詞 真島昌利)

と人生讃歌になっている歌詞が実に素晴らしい。シンプルで、かつユニークながらも非常に心に来る歌詞になっています。

そんな訳でヒロト&マーシーでは初となる9枚目なのですが、まだまだザ・クロマニヨンズとして出来ることはありそうです。いい意味でベテランらしい実力を感じさせる傑作でした。

評価:★★★★★

ザ・クロマニヨンズ 過去の作品
CAVE PARTY
ファイヤーエイジ
MONDO ROCCIA
Oi! Um bobo
ACE ROCKER
YETI vs CROMAGNON
ザ・クロマニヨンズ ツアー2013 イエティ対クロマニヨン
13 PEBBLES~Single Collection~
20 FLAKES~Coupling Collection~
GUMBO INFERNO


ほかに聴いたアルバム

TOUR 2015 "SUKIMASWITCH" SPECIAL/スキマスイッチ

一体、何枚目??なスキマスイッチのライブ盤。正直、目新しい部分はなく、無難な内容といった感じ。ライブで大きくアレンジを変えてくるというタイプでもないし、迫力のある演奏を聴かせるライブバンドといった感じでもないし、なぜここまで毎回毎回ライブアルバムをリリースしてくるのが不思議なのですが・・・。熱心なファン向けアイテム

評価:★★★

スキマスイッチ 過去の作品
ARENA TOUR'07 "W-ARENA"
ナユタとフカシギ
TOUR2010 "LAGRANGIAN POINT"
musium
DOUBLES BEST
TOUR 2012 "musium"

POP MAN'S WORLD~All Time Best 2003-2013~
スキマスイッチ TOUR 2012-2013"DOUBLES ALL JAPAN"
スキマスイッチ 10th Anniversary Arena Tour 2013“POPMAN'S WORLD"
スキマスイッチ 10th Anniversary“Symphonic Sound of SukimaSwitch"
スキマスイッチ

WINDOW/SPECIAL OTHERS

メジャーデビュー10周年を迎えたSPECIAL OTHERSの、10周年第1弾となる3年ぶりのオリジナルアルバム。エレピを主軸に軽快でメロディアスなインストチューンが並んでいるのはいつも通り。というよりも、メジャー10年記念作という感じで、集大成的ともいえる内容にもなっています。そのため、よくも悪くも目新しさがなかったのと、後半はちょっと地味だったような印象も・・・。

評価:★★★★

SPECIAL OTHERS 過去の作品
QUEST
PB
THE GUIDE
SPECIAL OTHERS
Have a Nice Day
Live at 日本武道館 130629~SPE SUMMIT 2013~
LIGHT(SPECIAL OTHERS ACOUSTIC)

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2015年12月28日 (月)

もう10年か・・・

Title:GOLD TRASH
Musician:The Birthday

今年、結成10年を迎えたThe Birthdayの、初となるベストアルバム。The Birthdayといえば、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのチバユウスケとクハラカズユキらが結成したバンド。「元ミッシェルの」と語られることがまだ少なくないのですが、もう結成から10年も経ってしまったのか・・・としみじみと感じてしまいました。

今回のベスト盤は2枚組となっていますが、この2枚の分け方が明確。DISC1は、2010年に脱退したギタリスト、イマイアキノブ在籍時の楽曲が収録しており、DISC2には2011年から加入したギタリスト、フジイケンジ在籍時の楽曲が収録されています。

そしてこの2枚のアルバムを聴くと、新旧ギタリストで2枚のCDにわけた意味は明確。イマイアキノブ在籍時とフジイケンジ在籍時ではバンドの音が全く異なりました。具体的に言うと、イマイアキノブ時代の曲はバンド全体でひとつの音を鳴らしているような印象。ここのプレイヤーの音があまり目立ちません。一方、フジイケンジ時代の曲に関しては、ガンガンとギターが全面に押し出され、個々のプレイヤーが自己主張している印象。ガレージバンド色がより強まったようにも感じました。

基本的にガレージロック、パブロックというスタイルは変わらないものの、バンドとしては明確に別物という印象すら受けてしまいます。ギタリストが変わり、それぞれのプレイスタイルに沿った演奏、という見方もできるかもしれませんが、むしろバンドとしての方向性を変え、その結果、あらたなバンドのスタイルにあったギタリストを選んできたのではないか、という印象すら受けてしまいました。

イマイアキノブ時代とフジイケンジ時代の曲、どちらが好きかはそれぞれかもしれません。個人的には、バンドの個々の音が目立ち、よりガレージ色が強まったフジイケンジ時代の曲の方が好きかな。もっとも、どちらの曲も間違いなくカッコイイと思うのですが・・・。The Birthdayのカッコよさに触れつつ、もう10年か・・・という時間の流れる早さも感じてしまったベスト盤でした。

評価:★★★★★

で、そんなThe Birthdayが、ベスト盤リリース後、早くもリリースしたオリジナルアルバム。

Title:BLOOD AND LOVE CIRCUS
Musician:The Birthday

ベスト盤から続いて聴くと、やはり路線的にはDISC2から連なるような内容になっています。特に今回は、ギターサウンドを中心に、バンドメンバーそれぞれがそれぞれの音を聴かせてダイナミックな演奏を繰り広げる曲が多かったような印象。特に序盤、「FULLBODYのBLOOD」「MOTHER(BALC ver.)」「ROCK YOUR ANIMAL」とギターリフを中心にバンドサウンドをこれでもかと聴かせる曲が並びました。

その後もバンドサウンドが中心というスタイルを貫きつつ、キャバレーロック風の「LOVE SHOT」やパンク色が強い「Shan Shan」などバリエーション富んだ展開に。最後の「声」は前向きなギターポップ色が強いナンバーになっており、ガレージロックを中心としながらも自由度の高い内容はThe Birthdayならでは、と言えるかもしれません。ベスト盤後、あらたな一歩を踏み出した彼らですが、まだまだ傑作が期待できそうです。

評価:★★★★★

The Birthday 過去の作品
TEAR DROP
MOTEL RADIO SiXTY SiX
NIGHT ON FOOL
WATCH YOUR BLINDSIDE
I'M JUST A DOG
VISION


ほかに聴いたアルバム

ミッドナイト in ジャパン/ガガガSP

ガガガSPの新作は7曲入りのミニアルバム。ミニアルバムとしてはデビューアルバム以来14年ぶりとなるそうです。ただ、正直アルバムの中身としてはかなり薄味。ガガガSPといえば、いけてない男の、好きなあの子に対するどうしようもない心境の吐露が大きな魅力で今回も確かに別れた恋人に対する歌がメインとなっているのですが、心に突き刺さるようなインパクトがなく、またパンキッシュなサウンドもおとなしめ。ミニアルバムというボリュームの少なさもあるのですが、どうにも物足りなさが残るアルバムでした。

評価:★★★

ガガガSP 過去の作品
くだまき男の飽き足らん生活
自信満々良曲集

ガガガを聴いたらサヨウナラ

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2015年12月26日 (土)

ベスト盤+裏ベスト+ライブ盤

今回は、山崎まさよし関連の作品を一挙3作品紹介です。

Title:ROSE PERIOD ~the BEST 2005-2015~
Musician:山崎まさよし

まずはベスト盤。2005年にリリースしたベスト盤「BLUE PERIOD」以降の発売された全シングルを収録したアルバムです。

で、これと対になるのがこのアルバム。

Title:UNDER THE ROSE ~B-sides & Rarities 2005-2015~
Musician:山崎まさよし

こちらは同時期のシングルのカップリングや、アルバム未収録の音源をあつめた「裏ベスト」です。まあ、この手の組み合わせで2枚同時リリースというのは比較的よくある話なのですが、今回のこの2作品、どちらがよかったか、といわれれば、一般的に耳馴染みやすい「ベスト盤」より、「裏ベスト」の方がよかった、というのがちょっと珍しい話。

いや、ベスト盤のシングル曲集ももちろんよかったんですよ。アコースティックベースで優しい雰囲気の楽曲がいかにも山崎まさよしって感じで。ただ、この一般的にイメージしやすい山崎まさよしらしさというのをシングルではいかにも追及しており、それが物足りなさにつながっていました。

まあ、はっきりいってしまえば全体的に勢い不足。残念ながらここ最近、一時期に比べると人気が下火になってしまいましたが、その理由が痛いほどわかってしまうようなベスト盤。特に象徴的だったのが最後に彼の代表曲「One more time, One more chance」が収録されているあたり。この手の、本来ベスト盤の対象ではないような代表曲がわざわざ収録されるのって、この曲を超える代表曲が生まれていない、という証拠なんだよなぁ。

ただ、じゃあ山崎まさよし自体が衰えてしまったか、といわれると、そうではない、とはっきり感じられるのが裏ベスト。実にバラエティー豊かな作風が、山崎まさよしというミュージシャンの懐の深さを感じます。

ガレージ風の「幸せのBefore&After」のようなロック色の強い作品があるかと思いきや、NHKの子供向け番組のために書き下ろした「おなかとせなかがぺっタンゴ」のような、子供向けの歌詞ながらも哀愁たっぷりのタンゴ調にまとめあげてきたり、大竹しのぶとのデゥオ「黄昏のビギン」のような、古き良き歌謡曲調のナンバーもあったりと、山崎まさよしの様々な顔が見えて、まったくあきません。

この2枚を比較すると、ここ最近、山崎まさよしがいまひとつ大ヒットをリリースしていないのは、山崎まさよし自体がネタ切れを起こしているわけではなく、「山崎まさよし」というイメージに固執しすぎて、彼の実力をうまくシングル曲に引っ張り出してこれないことが大きな要因のように感じました。次のベストはまた10年後でしょうか。その頃には、また再び、山崎まさよしの大ヒット曲がリリースされることを期待したいのですが。

評価:
ROSE PERIOD ★★★★
UNDER THE ROSE ★★★★★

Title:FM802 LIVE CLASSICS
Musician:山崎まさよし

こちらは大阪のFM局、FM802に残るライブ音源をまとめたライブ盤。これが貴重なライブ音源を多く収録しており、非常に聴きごたえのある内容になっていました。

基本的にはアコースティックギター1本でのステージ。アコギ1本でしっかりと聴かせるステージングもまた、彼の実力を感じさせ、耳を惹かれる大きな要因となっています。ただ、そんな作品以上に貴重なのが数多くのミュージシャンとのコラボ。「GONE AT LAST」ではちょっと意外にも感じられる谷村有美とのデゥオを聴かせてくれたり、よく比較対象となる斉藤和義と「つぐない」をカバーしていたり、さらには忌野清志郎と「トランジスタ・ラジオ」をデゥオで聴かせてくれたりと、ここでしか聴けない貴重なデゥオが非常にうれしい内容になっています。

また、これらの曲も単に有名どころの名前を並べたというだけではなく、どれも魅力的なデゥオに仕上がっています。特に斉藤和義とのデゥオは、色っぽさを感じるカバーになっており、男2人ながらこんな色っぽい曲になるんだ・・・と実力派ボーカリスト2人のデゥオに感心してしまいました。

そんな訳で、レア物という音源に惹かれるもよし、その内容自体に惹かれるもよし、要チェックのライブ盤。こちらも山崎まさよしの実力がしっかりとパッケージされている1枚です。

評価:★★★★★

山崎まさよし 過去の作品
COVER ALL-YO!
COVER ALL-HO!

IN MY HOUSE
HOBO'S MUSIC
Concert at SUNTORY HALL
The Road to YAMAZAKI~the BEST for beginners~[STANDARDS]
The Road to YAMAZAKI~the BEST for beginners~[SOLO ACOUSTICS]

FLOWERS
HARVEST ~LIVE SEED FOLKS Special in 葛飾 2014~

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2015年12月21日 (月)

過去を振り返る

Title:おまけのいちにち(闘いの日々)
Musician:筋肉少女帯

前作からちょうど1年ぶりとなる筋肉少女帯の新作。今回のアルバムは簡単に言ってしまうと、とても筋少っぽいアルバムということを感じました。比較的、オーソドックスなメタリックのバンドサウンド。そこに三柴理の独特なピアノのフレーズが重なるのがユニーク。「混ぜるな危険」のような、ベタな戦隊モノのテーマ曲のような、これでもかというほど盛り上げる曲があったり、「おわかりいただけただろうか」のようなメタリックなサウンドながらも歌謡曲風な曲があったり。

歌詞にしても、芸能界の大物に、「枕営業」をしにいくつもりがなぜか「枕投げ」を要求されるというユーモラスな「枕投げ営業」なんて曲があったり。そんな中で、「特捜最前線」の主題歌としても知られる、これでもかというほどムーディーな「私だけの十字架」をオーケンが抒情感たっぷりにカバーしていても、アルバムの中で全く浮いていないのもまた、筋少らしさを感じます(笑)。

今回のアルバムはテーマが「過去・現在・未来」だそうで、大人らしいシニカルな視点で現在から過去を振り返るような曲が多いような印象を受けました。「別の星の物語」などはそんな中で歌詞が印象に残った曲。昔の彼女に出会ったという内容ながら、昔の恋愛を「別の星の物語りが絵本になったみたい」とどこか醒めた視点で振り返る描写がユニークながらも、切なさも感じさせる曲になっていました。

ちなみに本作、初回限定盤だと、本編のほか、アルバム収録曲をインストで収録したボーナスCD、今年4月のEX THEATER ROPPONGIでのライブを収録したライブDVD、さらには3曲のうち1曲が任意で収録されるランダム封入CDがついてきており、アイドル並みに複数枚を買わせよう(笑)というセコイ戦略が取られています。

今回初回盤を聴いたのですが、インストCDは、本編だとピアノのフレーズが目立ったのに対して、インストで聴くと、なぜかギターサウンドが目立つように感じました。ただ、基本、曲あっての演奏といった感じで、これだけ単品で聴くとちょっと物足りない印象が。またライブDVDでは演奏がよりへヴィーにメタリックな内容になっており、彼らのライブバンドとしての実力を垣間見ることができました。

なお、ランダム封入CDは、私は「別の星の物語り(Vo.内田 Ver.)」。こちらに関しては・・・うーん、完全におまけといった感じ。ま、本気で複数枚買い戦略を狙ったわけじゃないでしょうからね。よっぽどの熱狂的なファンじゃない限り、全種類網羅は狙う必要性はないかと。

そんなわけで、全体的に今回のアルバムは筋肉少女帯らしい内容で卒なくまとめてきた印象。今回も前作に引き続き、「中2病」的な歌詞はなく、「過去を振り返る」という内容からして、大人のアルバムになっていました。ベテランバンドらしい安定感をおぼえたアルバムでした。

評価:★★★★

筋肉少女帯 過去の作品
新人
大公式2
シーズン2
蔦からまるQの惑星
公式セルフカバー4半世紀
THE SHOW MUST GO ON


ほかに聴いたアルバム

OPERA/OKAMOTO'S

OKAMOTO'Sの新作は、「ロックオペラ」という形態の作品。ロックオペラといえばTHE WHOの名盤「TOMMY」が有名。ひとりの主人公を設定し、アルバム全体をひとつの物語りのよに展開していくテーマ性のある内容。ちなみに「TOMMY?」なんて曲が収録されていたりします。

アルバム全体としては「オペラ」という形式を反映させたように、様々なタイプの楽曲が展開していく内容に。彼ららしいギターロックやブルースロックから、ディスコ、バラード、シティーポップ、さらにはラップまで取り入れており、歌詞の面で統一されているからこそ、逆に音楽的な面ではあえてバラバラな作風を目指したようにも感じます。バラエティー富んだ内容が最後まで楽しめるアルバムでした。

評価:★★★★★

OKAMOTO'S 過去の作品
10'S
オカモトズに夢中
欲望
OKAMOTO'S
Let It V
VXV

 

PACK TO THE FUTURE/真心ブラザーズ

真心ブラザーズの新作はカバーアルバム。それもユニークなことに70年代80年代の女性アイドルソングのカバーアルバムに仕上がっており、松田聖子の「風立ちぬ」からはじまり、安田成美「風の谷のナウシカ」や太田裕美「木綿のハンカチーフ」などをカバーしています。

選曲については申し分なし。アレンジについても真心らしいロックサウンドにまとめており、ちゃんと真心の曲になっているのですが・・・。ただ正直なところ、YO-KINGのボーカルで、これから女性ボーカル曲を聴くのはちょっと辛かった・・・。1曲2曲なら、逆にユニークな組み合わせがおもしろいのですが、11曲も続くと、聴いていてちょっと厳しいところがありました。こればかりはボーカルの声質の問題なのでいかんともしがたいのですが・・・。

評価:★★★

真心ブラザーズ 過去の作品
DAZZLING SOUND
俺たちは真心だ!
タンデムダンデイ20
GOODDEST

Keep on traveling
Do Sing

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2015年12月20日 (日)

計6万人相手にアコギ2本で

今日紹介するのは、アコースティックデゥオ、ゆずの2枚同時に発売されたライブアルバムです。

Title:二人参客 2015.8.15~緑の日~
Musician:ゆず

Title:二人参客 2015.8.16~黄色の日~
Musician:ゆず

8月15日、16日に横浜スタジアムで約6万人を動員して行われた弾き語りライブの模様を収録した、2枚同時リリースのライブアルバム。ライブの日からわずか3週間でのリリースという点が話題になったほか、オリコンチャートで1位2位を独占したことでも話題となりました。

さて、今回のライブアルバムでなによりも感じたのはゆずのライブミュージシャンとしての実力でした。ご存じかと思いますがゆずといえば横浜松坂屋前での路上ライブが大きな話題となりデビューしたミュージシャン。彼らがブレイクした直後、全国各地に第2のゆずを目指した路上ミュージシャンが溢れかえりましたし、いまだにその流れを受けたような路上ミュージシャンがいたるところで目にします。

いわばアコースティックギター2本だけでのしあがってきた彼らなだけに、そのライブの実力は伊達ではありません。今回のライブは、横浜スタジアムという広大な会場の中で、彼らはわずか2人、アコギ2本のみの演奏で挑んでいます。そして、1日あたり3万人という大観衆の心を見事つかんでいますし、その迫力の演奏は、このライブアルバムを通じても十分すぎるほど伝わってきました。

8月15日のライブももちろん素晴らしかったのですが、特に素晴らしかったのは16日のステージ。MCを聴く限り、途中、雨が降ってきたみたいなのですが(それも結構な雨だったように感じます)、その逆境をパワーに代えているような力強い演奏を聴かせてくれていますし、会場の一体感も伝わってきます。

楽曲の中にうまくトークを組み込んで会場を盛り上げたり、もちろん会場のみんなと合唱をしたり手拍子をしたりして盛り上げたり。文字で起こせばどのミュージシャンもやっていることなのかもしれませんが、その盛り上げるタイミングもやり方も非常に上手いものを感じます。さすが路上ライブから伸し上がってきただけある彼らの実力を感じることが出来ました。

ちなみに彼らのライブアルバムは、14年前にリリースされた「歌時記 ~ふたりのビッグ(エッグ)ショー篇~」以来。その14年前のアルバムは、正直あまりに黄色い歓声が強くて、聴いていてちょっと引いてしまった部分があったのですが、今回のアルバムに関しては、確かに黄色い歓声が多かったものの、やはり落ち着いた感じが(笑)。そういう意味でも余計な雑音抜きで、ゆずの魅力を感じることが出来るアルバムでした。

評価:
どちらも ★★★★★

ゆず 過去の作品
WONDERFUL WORLD
FURUSATO
2-NI-
YUZU YOU[2006-2011]
LAND
新世界


ほかに聴いたアルバム

Moments [Best 45 fabulous tracks by FPM]/FPM

ハウス系ミュージシャン、田中知之のソロプロジェクト、Fantastic Plastic Machine略してFPM。彼のミュージシャン活動20年を記念してリリースされた3枚組となるオールタイムベスト。「Alone」と題されたメロウなナンバーを中心としたCD、「Rapture」と題されたアップテンポなダンスナンバーを中心としたCD、「Lust」と題されたメロディアスな曲を中心としたCDの3枚からなっており、それぞれ別に単体でもリリースされています。

楽曲は基本的にラウンジ系のメロディアスで楽しい雰囲気のポップナンバー。the HIATUS、MONOEYESの細美武士、キリンジ、m-floのVERBALなどの豪華なゲストも参加しつつ、カバー曲も多く、またCMなどで使われたも多いため、耳馴染みあるポップスが多く収録されています。そういう意味では3枚組というフルボリュームながらもダレることなく聴きとおすことが出来る内容で、また、クラブ系の音楽をあまり聴かない人でも楽しめるかも。心地よいポップのアルバムでした。

評価:★★★★

FPM 過去の作品
FPM
QLASSIX
Scale

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2015年12月12日 (土)

コミカルな歌詞だけではなく

Title:ジパング
Musician:水曜日のカンパネラ

今、最も注目されているミュージシャンの一組、水曜日のカンパネラ。ケンモチヒデフミの作るエレクトロなトラックと、歴史上の人物などをモチーフに、ちょっとひねくれた視点からつむぐユーモラスな歌詞。さらにはそれを難なくリズミカルに、時としてコミカルにラップするボーカルのコムアイ。ジャンル的にはHIP HOPユニットとされているみたいですが、どちらかというとエレクトロの枠組みで捉えた方が間違いミュージシャンかと思われます。

私は昨年11月にリリースされたミニアルバム「私を鬼ヶ島に連れてって」ではじめて彼女たちの音楽を聴いて気に入ったのですが、今回のアルバムで完全にはまってしまいました!(笑)最近、毎日のように彼女たちのYou Tubeを見て、このアルバムも何回も繰り返し聴いております(^^;;

今回のアルバムも、前作同様、コミカルな歌詞がまずはユニーク。カレーライスの向こうにエジプトの太陽神を描く(なぜ?)「ラー」や、小野妹子という女性と間違いそうな名前をネタとした「小野妹子」など、またユーモラスな歌詞が冴えまくっています。また、ケンモチヒデフミの書く歌詞を、上手くラップするコムアイのリズム感も見事なものがあります。今回のアルバムでもそんな彼女のリズム感に感心するのが「シャクシャイン」。北海道の地名を淡々と並べただけの歌詞なのですが、それを上手くラップしています。

ただ、今回のアルバムでそんな歌詞やラップ以上にはまった要素だったのが、ケンモチヒデフミのトラック。「私を鬼ヶ島に連れてって」でももちろん魅力的なトラックを聴かせてくれたのですが、今回のアルバムではより彼のトラックが前に押し出されたように感じました。

リズミカルなエレクトロなトラックは、1曲1曲様相の異なるバラエティーに富んだものだったのですが、そんな中、本作では本人もインタビューで述べたように、比較的流行に音を多く取り込んだように感じます。トライバルなビートでパンキッシュな「ウランちゃん」や重低音を聴かせつつファンキーなサウンドに仕上げた「ライト兄弟」など実に魅力的。ダンサナブルな「メデューサ」は軽快なベース音がある意味非常にベタさを感じるのですが、それがとても心地よく感じます。「シャクシャイン」のようなシンプルなパーカッションのみのサウンドで、コムアイのラップと一体化したようなトラックも実に見事でした。

さらに終盤、ピアノを入れつつ、悠久の川の流れを感じる(でもネタは多摩川にあらわれたあざらしのタマちゃん!)「西玉夫」に、ピアノを入れつつ、ジャズの要素も加えた「マッチ売りの少女」で締めくくり。しっかりと「聴かせる」トラックで締めくくられます。

コミカルなラップだけではなく、音楽性の高いトラックをより聴かせる今回の作品は、はじめてのフルアルバムということもあり、より彼女たちが本気モードにシフトしたようにも感じました。コミカルな歌詞にまず惹きつけられつつ、聴けば聴くほど音楽的な奥深さにはまっていってしまう傑作。まだまだしばらく彼女たちにははまってしまいそうです。

評価:★★★★★

水曜日のカンパネラ 過去の作品
私を鬼ヶ島へ連れてって

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2015年12月11日 (金)

戦前歌謡の奥深さと魅力

戦前のSP盤の復刻レーベルとして、様々な話題のアルバムをリリースしているぐらもくらぶ。個人的にはまってしまい、こちらでも何作か紹介してきましたが、今回は2作同時にリリースされた2枚のアルバムです。

Title:The LOST WORLD of JAZZ 戦前ジャズ歌謡全集・タイヘイ篇

まずは戦前のジャズをおさめたオムニバス。こちらは関西の代表的なレコード会社、タイヘイレコード。そこに残された戦前ジャズを収録したアルバムです。

Title:日本の軍歌・軍国歌謡全集 Vol.1 1932-1943

こちらはタイトル通り、日本の軍歌・軍国歌謡を収録したオムニバス。「Vol.1」というタイトルから今後はシリーズ化を予定しているようで、第1弾は日本ポリドール蓄音機商会からリリースされた曲を取り上げたそうです。

ここ最近、ぐらもくらぶからはやけに軍国歌謡を取り上げた曲が多かったり、あるいは企画色の強いアルバムが続いていましたが、本作はギミックなしに、戦前歌謡をレーベル別に収録したオムニバス盤。資料的価値も高い企画といった感じでしょうか。

一方はジャズ、もう一方は軍歌・軍国歌謡。イメージとしては庶民の「本音」としてのジャズ、「建て前」としての軍歌・軍国歌謡といった感じでしょうか。戦前SP盤を、レーベル別に網羅的に紹介する、という似た方向性の企画ながらも、対照的な音楽のジャンルのオムニバスを同時にリリースするというのがユニークなところです。

もっとも、じゃあ両者が全くかけ離れたものだったか、と言われるとそうではなく、「戦前ジャズ歌謡全集」の中でも「月はよいもの」では、「せめて戦地を 言付けを」という歌詞が登場してきますし、逆に「軍歌・軍国歌謡全集」でも「ボルネオ第一信」はジャズ風のアレンジとなっており、両者が決してかけ離れたものではないことを感じさせます。

さて、そんな2枚のアルバム。まず「戦前ジャズ歌謡全集」ですが、ジャズというカテゴライズをしていますが、戦前は「ジャズ」という言葉を今のジャズという意味合いより広く、「洋楽風」に近い意味で使われていたようで、「ジャズ」にとらわれないジャンルを楽しむことが出来ます。

例えば「南京豆売り」はラテン風ですし、「ハロー青春ウエルカム」「夢見るワイキキ」はハワイアン。「プレガリア」はタンゴ風ですし、最後を締めくくる「雨の夜港」は、今の感覚で言えばおもいっきりムード歌謡曲な曲になっています。

ただそれだけ当時、幅広いジャンルの音楽が日本に入ってきていた、という証拠であり、戦前歌謡の奥深さを感じさせてくれる選曲になっていたと思います。楽曲の雰囲気としても二村定一が歌ってコミカルさのある「エアーガール」からスタートし、エキゾチックな「土人のお祭り」、軽快で楽しいダンスチューン「艦隊を追って」など様々。戦前歌謡の魅力にたっぷり触れられるオムニバスです。

もう一方の「軍歌・軍国全集」。こちらは「初復刻となる貴重な音源を中心に構成する」という記載があるようにマニアにとってもうれしい内容(と思われる)反面、「敵は幾万」「愛国行進曲」などともすれば軍歌を全く聴かない人でも「どこかで聴いたことあるような・・・」と思う有名曲もしっかりと収録されており「全集」らしい選曲になっています。

正直言ってしまえば、この2枚のうち、どちらがより楽しめたかと言われると「軍歌・軍国全集」。こちらの方が圧倒的にメロディーがわかりやすくインパクトがあり、また「愛馬進軍歌」のような物語性があり、歌い手の心境も織り込んだ、より心に響く曲もあったりします。それはおそらく、「軍歌・軍国歌謡」が聴き手を鼓舞する、という目的のはっきりした音楽だからでしょう。

ただこちらは純粋にお勧めできるか、と言われると、これは以前にも書いたのですが、明らかに今となっては受け入れられないような帝国主義的な価値観の下に書かれた歌詞は、変にはまってしまうと思想が「偏ってしまう」危険性は間違いなくあると思います。そういう意味では聴き手を選ぶオムニバスかもしれません。下の1つマイナスはそういう理由。ただ、「これはこういうもの」という割り切りの上で聴く分には非常に楽しめる1枚だと思います。

どちらも戦前歌謡、SP盤の魅力がしっかりと伝わってくるオムニバス。どちらも続編がリリースされそうな雰囲気なだけに、次の作品も楽しみです。

評価:
戦前ジャズ歌謡全集 ★★★★★
軍歌・軍国全集 ★★★★


ほかに聴いたアルバム

空からの力 20周年記念デラックス・エディション/キングギドラ

ZEEBRA、K DUB SHINE、DJ OASISの3人が所属しているHIP HOPユニットキングギドラ。日本のHIP HOP黎明期に活躍していた「伝説」とも言えるユニット(現在はKGDRの名前で再結成中)なのですが、そんな彼らが、1995年にリリースしたアルバムが本作。日本のHIP HOP史に残る名盤としても知られる本作ですが、リリース20年を記念してリマスター。さらにボーナストラックとして1996年にリリースされたリミックスアルバム「影」と、DVDとして1998年にリリースされた「影 The Video」が付属された豪華な仕様となっています。

本編はなによりもジャジーな雰囲気のダークなトラックがカッコいい。今聴いても十分カッコよさを感じるトラックに、これが名盤と言われても納得のクオリティーを感じます。リリックは社会派なリリックで若干中2的なリリックもあるのですが、「誰かの夢が又、行方不明」といったインパクトあるパンチラインを書いてくるのはさすがです。

付属のDVDはわざとピントをはずしたエフェクトはいかにも80年代的で時代を感じさせます。そのため、今見ると、ちょっと古さも感じてしまうのは残念。こちらは貴重な映像資料といった感じでしょうか。

とはいえ、アルバムの内容としてはさすが「名盤」の誉れ高い作品だけある内容。最近、HIP HOPを聴きだしたような方は間違いなく聴くべき1枚だと思います。

評価:★★★★★

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2015年12月 8日 (火)

爽やかシティポップ

Title:Almost A Rainbow
Musician:アナログフィッシュ

前作「最近のぼくら」までは「社会派三部作」としてメッセージ性の高い作品をリリースしてきたアナログフィッシュ。その前作からわずか11ヵ月、早くも新作がリリースされました。

その社会派な作品から一転、今回の作品はメッセージ性という部分は後退。歌詞においてはラブソングがメイン。

「Tululu 目と目が合った Boys&Girls
Tululu 抑えきれない Boys&Girls
Tululu 恋に墜ちてく Boys&Girls
Tululu 手と手を繋ぐ Boys&Girls」

(「Baby Soda Pop」より 作詞 佐々木健太郎)

なんて歌う「Boby Soda Pop」からはじまり、

「君は君らしく生まれた
僕に愛されるために」

(「Walls」より 作詞 下岡晃)

「きみをあいすしかない
それができそうにない」

(「こうずはわからない」より 作詞 下岡晃)

などといった歌詞が展開されていきます。そんな彼らの描く風景は、どこか現在の都会の街角を切り取ったよう。彼らの歌詞の世界観は、まさに「シティポップ」という言葉がマッチするものになっていました。

その「シティポップ」としての要素は今回、メロディーやサウンドからも強く感じられます。前述の「Body Soda Pop」などは山下達郎を彷彿とさせるような爽やかなポップチューンに仕上がっていましたし、「Will」は序盤の入りはどこかスピッツっぽく、サビは山下達郎を彷彿させる、ちょっと一癖あるポップチューンに仕上がっています。

さらに後半に行くにつれて、ポップ路線が続くのですが、なによりもバラエティー富んだサウンドが冴えまくっていました。基本的にシンプルなサウンドにドラムスのリズムを強調した今風のサウンドなのですが、強烈にひねくれたリズムとピアノのからみがユニークな「Walls」や、サイケデリックなギターノイズを聴かせる「Hate You」などなど、ノイジーなギターを入れつつ、必要最小限の音のみから構成されるサウンドに、シンプルさも感じる楽曲が特徴的。ここらへんのサウンドのバランス感覚も、実に絶妙なものを感じます。

アナログフィッシュはアルバムによってその出来にバラつきがあったのですが、前作「最近のぼくら」は傑作で、続く本作も文句なしの傑作アルバムに仕上がっていました。なにげにデビューから10年以上が経過している中堅バンドなのですが、前作と本作を聴く限り、今が一番脂にのっているのでは?と思わせるような出来。爽やかなポップソングもさることながら、それを構成するサウンドの使い方の妙に、彼らの実力を感じさせます。デビューから11年が経過した今現在にも関わらず、これからが楽しみと思わせるアルバムでした。

評価:★★★★★

アナログフィッシュ 過去の作品
荒野/On the Wild Side
NEWCLEAR
最近のぼくら

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2015年12月 1日 (火)

よりわかりやすく

Title:Bremen
Musician:米津玄師

もともと、初音ミクなどのVOCALOIDを使用し、動画サイトに楽曲を発表するいわゆる「ボカロP」として人気を博していた彼。その後、本名で、自らボーカルをとって楽曲を発表し、メジャーデビューを果たし、これが3枚目のアルバムとなります。本作は、なんとアルバムチャートで1位を獲得。「ボカロP」出身という枠組みを超えて、今、最も勢いのあるミュージシャンの一人といって間違いないでしょう。

そんなメジャー3枚目となるアルバムは、まず感じたのはいい意味でわかりやすいアルバムになった、ということでした。ネットコミュニティーという狭い世界から飛び出したいままでのアルバムは、狭い世界から広い世界に自らの表現をアピールしつつ、ネットコミュニティーの良さをいかそうと、模索しているように感じました。そんな新人にありがちな粗くも勢いのある楽曲もまた大きな魅力だったのですが。

今回のアルバムについても基本的な路線についてはいままでの作品と変わりません。バンプやアジカンから影響を受けたと公言するとおり、オルタナ系のギターロックを主軸にしつつも打ち込みのサウンドを入れつつ、ロックにこだわらないポップソングを作り上げてくるスタイル。ファンタジックな世界観についてもそのままですし、また、ネットコミュニティー発らしく、歌詞にしてもサウンドにしても情報量は多め、というスタイルも変わりません。

ただその一方で、悪く言えば少々ごちゃごちゃしていた「情報量が多い」という特徴が、今回のアルバムではかなり整理されたように感じます。特に歌詞に関しては、いままでは歌詞カードを見ながら聴かないとわかりにくい部分があったのですが、本作に関しては詰め込まれた歌詞がきちんと曲ともマッチし、ちゃんと曲を聴きながらも歌詞が頭に入ってくるように整理されていました。

メロディーに関してもきちんと米津玄師らしさを出しつつ、十分なインパクトのある壺をついたメロディーに仕上げています。絶妙なタイミングでの転調が心地よい「ミラージュソング」のようにちょっとひねったようなメロもインパクトあるのですが、必要以上にひねくれていたり、奇抜な展開は本作に関してはあまり感じません。比較的ストレートなメロディーになっているのですが、それだけに米津玄師のメロディーメイカーとしての才も感じました。特に「メトロノーム」など、歌詞も相まって切ないメロディーラインがとても心に響いてきました。

歌詞についても彼らしいファンタジックな世界観を描きながらも、どこか現実を達観したような歌詞はいままで通りながらも、テーマ性についてはストレートなものが目立ちます。具体的に言えば、前向きな歌詞とラブソング。例えば「アンビリーバーズ」にしても、「信じない人」というタイトルをつけつつも、信じないものとして「残酷な結末」「果てのない悲しみ」と、マイナス要素を歌詞にならべつつ、実は前向きな内容になっていますし、「あたしはゆうれい」にしても、切ない片思いを「幽霊」に例えて綴る歌詞に、彼らしさを感じます。

そんな訳で、全体に感じる「わかりやすさ」はマイナスと捉える向きもあるかもしれませんが、いままでのネット発ミュージシャンらしい良さはきちんと残っており、個人的には彼にとって大きな成長のように感じます。良い意味でポップミュージシャンとしての「壺」を得ることが出来たアルバムのように思います。彼にとって大きな一歩を踏み出した、そんな傑作でした。

評価:★★★★★

米津玄師 過去の作品
diorama
YANKEE

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