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2015年12月 1日 (火)

よりわかりやすく

Title:Bremen
Musician:米津玄師

もともと、初音ミクなどのVOCALOIDを使用し、動画サイトに楽曲を発表するいわゆる「ボカロP」として人気を博していた彼。その後、本名で、自らボーカルをとって楽曲を発表し、メジャーデビューを果たし、これが3枚目のアルバムとなります。本作は、なんとアルバムチャートで1位を獲得。「ボカロP」出身という枠組みを超えて、今、最も勢いのあるミュージシャンの一人といって間違いないでしょう。

そんなメジャー3枚目となるアルバムは、まず感じたのはいい意味でわかりやすいアルバムになった、ということでした。ネットコミュニティーという狭い世界から飛び出したいままでのアルバムは、狭い世界から広い世界に自らの表現をアピールしつつ、ネットコミュニティーの良さをいかそうと、模索しているように感じました。そんな新人にありがちな粗くも勢いのある楽曲もまた大きな魅力だったのですが。

今回のアルバムについても基本的な路線についてはいままでの作品と変わりません。バンプやアジカンから影響を受けたと公言するとおり、オルタナ系のギターロックを主軸にしつつも打ち込みのサウンドを入れつつ、ロックにこだわらないポップソングを作り上げてくるスタイル。ファンタジックな世界観についてもそのままですし、また、ネットコミュニティー発らしく、歌詞にしてもサウンドにしても情報量は多め、というスタイルも変わりません。

ただその一方で、悪く言えば少々ごちゃごちゃしていた「情報量が多い」という特徴が、今回のアルバムではかなり整理されたように感じます。特に歌詞に関しては、いままでは歌詞カードを見ながら聴かないとわかりにくい部分があったのですが、本作に関しては詰め込まれた歌詞がきちんと曲ともマッチし、ちゃんと曲を聴きながらも歌詞が頭に入ってくるように整理されていました。

メロディーに関してもきちんと米津玄師らしさを出しつつ、十分なインパクトのある壺をついたメロディーに仕上げています。絶妙なタイミングでの転調が心地よい「ミラージュソング」のようにちょっとひねったようなメロもインパクトあるのですが、必要以上にひねくれていたり、奇抜な展開は本作に関してはあまり感じません。比較的ストレートなメロディーになっているのですが、それだけに米津玄師のメロディーメイカーとしての才も感じました。特に「メトロノーム」など、歌詞も相まって切ないメロディーラインがとても心に響いてきました。

歌詞についても彼らしいファンタジックな世界観を描きながらも、どこか現実を達観したような歌詞はいままで通りながらも、テーマ性についてはストレートなものが目立ちます。具体的に言えば、前向きな歌詞とラブソング。例えば「アンビリーバーズ」にしても、「信じない人」というタイトルをつけつつも、信じないものとして「残酷な結末」「果てのない悲しみ」と、マイナス要素を歌詞にならべつつ、実は前向きな内容になっていますし、「あたしはゆうれい」にしても、切ない片思いを「幽霊」に例えて綴る歌詞に、彼らしさを感じます。

そんな訳で、全体に感じる「わかりやすさ」はマイナスと捉える向きもあるかもしれませんが、いままでのネット発ミュージシャンらしい良さはきちんと残っており、個人的には彼にとって大きな成長のように感じます。良い意味でポップミュージシャンとしての「壺」を得ることが出来たアルバムのように思います。彼にとって大きな一歩を踏み出した、そんな傑作でした。

評価:★★★★★

米津玄師 過去の作品
diorama
YANKEE

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