メロディーラインがより前面に
Title:Fading Frontier
Musician:Deerhunter
ここ最近、毎作非常に高い評価を受けるアメリカのインディーロックバンドDeerhunterの2年ぶりとなる新作。今回のアルバムも、名盤として評判の高い「Microcastle」ほどではないものの、とても評判の良いアルバムとなっているようです。
さて、シューゲイザー色が強かった前々作「HALCYON DIGEST」、ガレージ色あるいはオールドファッションなサイケ色が強かった前作「MONOMANIA」とアルバムによって少しずつそのイメージを変えている彼ら。ただ一方、前々作、前作とイメージが変わらない部分もあって、それはメロディーラインが美メロともいえるポップなものという点。そこがまた彼らの大きな魅力でもありました。
今回のアルバムに関しては、そのポップなメロディーが前面に押し出された作品になっていました。もちろん、いままでの作品同様、フックが効いてインパクトがある、といった感じではありません。そのためちょっと地味に感じるかもしれません。ただ、それでもいままでの作品の中では、いい意味でパッと聴いた印象として「聴きやすさ」を感じることが出来るのではないでしょうか。
ポップで聴きやすいという意味では柔らかい雰囲気のサウンドとメロディーが特徴的な「Breaker」や、キラキラ感のあるシンセポップが耳を惹く「Duplex Planet」あたりでしょうか。また、軽快なギターロックに仕上げている「Snakeskin」も、まずは聴いていて楽しくなってくるようなポップなナンバーになっています。
ただそんな中で、少しずつゆがんだ音が入ってきたり、サイケでドリーミーな音が入って来たりして一筋縄ではいかない感じがとてもおもしろいのが本作の特徴。例えば前述の「Duplex Planet」にしても、爽やかなシンセポップと思いきや、微妙にひねくれたシンセの音が耳に残りますし、「Snakeskin」にしても後半に行くにつれてサイケな音が繰り広げられてきます。
また、今回のアルバムは、サウンドにスカスカさを感じた前作とは異なり、比較的ドリーミーな音に埋められた印象を受けます。そこらへん、いかにもインディーバンド然としていた前作にはちょっと違う印象を受ける部分もあるかもしれません。
ただ、最初に書いた通り、メロディーが美しいという彼らの特徴は本作も健在。最初聴いてピンと来なくても、2度3度聴くうちにはまっていってしまう「スルメ」なアルバムというのもいままでの作品と共通する大きな魅力でした。今回もまた、何度か聴くうちにもっとはまっていってしまいそう・・・。
評価:★★★★★
DEERHUNTER 過去の作品
HALCYON DIGEST
MONOMANIA
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