コミカルな歌詞だけではなく
Title:ジパング
Musician:水曜日のカンパネラ
今、最も注目されているミュージシャンの一組、水曜日のカンパネラ。ケンモチヒデフミの作るエレクトロなトラックと、歴史上の人物などをモチーフに、ちょっとひねくれた視点からつむぐユーモラスな歌詞。さらにはそれを難なくリズミカルに、時としてコミカルにラップするボーカルのコムアイ。ジャンル的にはHIP HOPユニットとされているみたいですが、どちらかというとエレクトロの枠組みで捉えた方が間違いミュージシャンかと思われます。
私は昨年11月にリリースされたミニアルバム「私を鬼ヶ島に連れてって」ではじめて彼女たちの音楽を聴いて気に入ったのですが、今回のアルバムで完全にはまってしまいました!(笑)最近、毎日のように彼女たちのYou Tubeを見て、このアルバムも何回も繰り返し聴いております(^^;;
今回のアルバムも、前作同様、コミカルな歌詞がまずはユニーク。カレーライスの向こうにエジプトの太陽神を描く(なぜ?)「ラー」や、小野妹子という女性と間違いそうな名前をネタとした「小野妹子」など、またユーモラスな歌詞が冴えまくっています。また、ケンモチヒデフミの書く歌詞を、上手くラップするコムアイのリズム感も見事なものがあります。今回のアルバムでもそんな彼女のリズム感に感心するのが「シャクシャイン」。北海道の地名を淡々と並べただけの歌詞なのですが、それを上手くラップしています。
ただ、今回のアルバムでそんな歌詞やラップ以上にはまった要素だったのが、ケンモチヒデフミのトラック。「私を鬼ヶ島に連れてって」でももちろん魅力的なトラックを聴かせてくれたのですが、今回のアルバムではより彼のトラックが前に押し出されたように感じました。
リズミカルなエレクトロなトラックは、1曲1曲様相の異なるバラエティーに富んだものだったのですが、そんな中、本作では本人もインタビューで述べたように、比較的流行に音を多く取り込んだように感じます。トライバルなビートでパンキッシュな「ウランちゃん」や重低音を聴かせつつファンキーなサウンドに仕上げた「ライト兄弟」など実に魅力的。ダンサナブルな「メデューサ」は軽快なベース音がある意味非常にベタさを感じるのですが、それがとても心地よく感じます。「シャクシャイン」のようなシンプルなパーカッションのみのサウンドで、コムアイのラップと一体化したようなトラックも実に見事でした。
さらに終盤、ピアノを入れつつ、悠久の川の流れを感じる(でもネタは多摩川にあらわれたあざらしのタマちゃん!)「西玉夫」に、ピアノを入れつつ、ジャズの要素も加えた「マッチ売りの少女」で締めくくり。しっかりと「聴かせる」トラックで締めくくられます。
コミカルなラップだけではなく、音楽性の高いトラックをより聴かせる今回の作品は、はじめてのフルアルバムということもあり、より彼女たちが本気モードにシフトしたようにも感じました。コミカルな歌詞にまず惹きつけられつつ、聴けば聴くほど音楽的な奥深さにはまっていってしまう傑作。まだまだしばらく彼女たちにははまってしまいそうです。
評価:★★★★★
水曜日のカンパネラ 過去の作品
私を鬼ヶ島へ連れてって
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