マディが今のミュージシャンとコラボ?
Title:Muddy Waters 100
シカゴ・ブルースの巨人にして、おそらくブルースを聴こうとすれば一番最初にその業績に触れることとなるブルース・ミュージシャン、Muddy Waters。その生誕100年を記念したトリビュートアルバムがリリースされました。マディ・ウォーターズのバンドにおいて、最後のギタリストをつとめたジョン・プライマーが中心となり、デレク・トラックス、ケブ・モ、ゲイリー・クラークJRなどといった豪華なゲストが参加しています。特に「I'm Ready」では昨年7月に亡くなったブルース・ギタリストのジョニー・ウィンターが参加。亡くなる5ヶ月前の演奏だったそうで、大きな話題ともなりました。
このアルバム、ちょっとユニークなのが一般的なトリビュートアルバムのようにマディの曲をそれぞれのミュージシャンが各々カバーするスタイル、ではなく、あくまでも演奏はジョン・プライマー率いるバンド。またすべての曲に関して基本的にはボーカルはジョン・プライマーがとっています。そこにゲストとして、豪華なミュージシャンたちが参加するスタイル。そういう意味では、あくまでもジョン・プライマーのバンドによるマディのカバーアルバム、という形となっています。
そんなジョン・プライマーの演奏は、自身マディのバンドの一員だったので当たり前でしょうが、はっきりいってマディの雰囲気そのまんま。特にジョンのボーカルがともすれば「物まね」とも言えてしまうレベルにマディの歌い方を忠実にカバーしており、まさにマディが現在の様々なミュージシャンとコラボしているかのような錯覚に陥ります。
そんな中でもゲストミュージシャンたちがそれぞれの個性をしっかりと発揮しています。デレク・トラックスは「Still A Fool」でへヴィーで実に力強いギターサウンドを聴かせてくれますし、「40 Days and 40 Nights」で聴かせてくれるゲイリー・クラークJRのファンキーなギターも耳に残ります。ジョニー・ウィンターのギターはやはり亡くなる直前ということでちょっと弱くも感じてしまうのですが、それでも曲の中でしっかりとした主張を感じさせます。
基本的にはオリジナルの雰囲気を残しつつのカバーになっているのですが、そんな中でもちょっとずつ雰囲気を変える工夫が入っているのがおもしろいところ。「Rosalie」ではバイオリンの音色を入れてきたり、「Why Don't You Live So God Can Use You」ではゴスペル風なコーラスを入れてきたり、ケブ・モがギターで参加した「Last Time I Fool Around With You」では軽快なリズムの作風に変えてきたりと、ユニークにまとめあげています。
ほかにも「Mannish Boy」や「Trouble No More」では軽快なリズムマシーンを導入し、今風のリズムに仕上げています。これに関しては賛否両論ありそうな感じで、個人的には1曲だけでよかったのでは?とも思うのですが、それを差し引いてもユニークな試みに感じます。
マディの作品の再解釈としてもおもしろいですし、純粋にブルースのアルバムとしても聴かせることが出来る傑作。最近ではマディの生まれたのは2013年だったという説が有力だそうですが、それは御愛嬌(笑)。満足度の高い1枚でした。
評価:★★★★★
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