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2015年11月

2015年11月30日 (月)

20年目にして新たな挑戦も

Title:FOLLOW ME UP
Musician:坂本真綾

今年、音楽活動20周年を迎える人気女性声優坂本真綾。女性声優が今のように「アイドル的」に音楽活動をする以前から積極的に、それも良質なポップソングを歌ってきたということで声優人気の枠組みを超えて人気を確保してきた彼女ですが、今年はそんな彼女の音楽活動20周年を記念して、様々な企画が行われています。以前紹介したトリビュートアルバムもその一環なのですが、約2年半ぶりとなるニューアルバムも、そんなデビュー20周年を記念されてリリースされた1枚です。

ここ最近の彼女は、デビュー以来のパートナーだった菅野よう子の手を離れ、様々なミュージシャンとのコラボを実施。その上で再び菅野よう子の曲を歌ったり、また、前作「シンガーソングライター」では彼女自身が全曲の作詞作曲を行うなど、意欲作を発表。デビュー20年を経てなお、新たな挑戦を感じる活動を続けています。

今回のアルバムの特徴は、実に様々なミュージシャンたちが参加しているという点。おなじみ菅野よう子も1曲参加しているほか、鈴木祥子や北川勝利といった最近ではおなじみの作家陣に、the band apartやandropの内澤崇仁、さらに大貫妙子に、先日の攻殻機動隊のサントラ盤でも共演したcorneliusも参加しています。

さてそんな今回のアルバムは全体的には爽やかなシティポップ路線を感じる方向性。これは、ここ最近の彼女の作風に共通しているのですが、本作に関してもその音楽性のベクトルが続いている、といった感じがします。

アコースティックな作風の曲も多く、「SAVED.」「かすかなメロディ」「アイリス」など、シンプルでアコースティックテイストのサウンドが、彼女のクリアなボーカルにピッタリとマッチしており、清涼感あふれる世界を作り出しています。

全体的にはパッと聴いた感じ、地味な雰囲気すら感じる曲が多いのですが、そんな中でもこのアルバムのハイライトはcornelius作曲の「東京寒い」から、菅野よう子提供の「アルコ」、スウェーデンのDJ、Rasmus Faberによる「幸せについて私が知っている5つの方法」に大貫妙子作詞作曲による「はじまりの海」への流れじゃないでしょうか。

特にcorneliusに関しては、攻殻機動隊のサントラ盤でも感じたのですが、なにげに坂本真綾との相性が抜群。corneliusのシンプルながらも透明感のあるサウンドと、坂本真綾のボーカルという、それぞれ個性的なパーツが上手くピッタリ組み合わさっています。

さらに大貫妙子も今回初参戦ながらも、彼女の書く、シンプルなシティポップに坂本真綾のクリアに聴かせるボーカルが見事にマッチ。以前、大貫妙子が参加していたシュガーベイブの「DOWN TOWN」を彼女はカバーしたことがあるのですが(こちらは山下達郎作詞作曲)、今の彼女が目指している方向性というのは、この路線なのでしょうか。

逆にちょっと残念だったのはthe band apartやandropといったバンド勢。下手な気負いがあったのでしょうか?ダイナミックでインパクトを狙った楽曲を書いているのですが、逆にベタなアニソン風になってしまって、このアルバムの中ではちょっと浮いてしまったかも。

様々なミュージシャンが参加したため、アルバム全体にちょっとバラバラな部分もなきにしもあらずなのですが、坂本真綾のボーカルがアルバムにひとつの統一感を持たせていますし、爽やかでアコースティックなシティポップテイストというのがきちんとひとつの軸となっていたように感じます。これからにつながりそうなミュージシャンとの出会いもありましたし、これからの活動にさらなる可能性を感じるアルバムだったと思います。デビュー20年を経て、いまなお新たな挑戦を続けようとする彼女。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

坂本真綾 過去の作品
かぜよみ
everywhere
You can't catch me
Driving in the silence
シングルクレクション+ ミツバチ
シンガーソングライター


ほかに聴いたアルバム

GOSPE☆RATS ~ぺラッII~/ゴスペラッツ

ラッツ&スターとゴスペラーズからの選抜メンバーによるコラボグループ、ゴスペラッツ。2006年に結成され、アルバム1枚をリリースした後、活動休止していたのですが、なんとこのたび再結成。なんと9年ぶりとなるアルバムがリリースされました。

ただ、久々のアルバムながらも既発表曲も多いし、ラッツ&スターの曲からのカバーも前作と同様。ポップで明るい作風はとても楽しさも感じられるのですが、全体的にはちょっとやっつけ感も否めなかった印象が。それなりに楽しめたアルバムなのですが、久々のアルバムとしては物足りなさも残る作品でした。

評価:★★★★

Santa Fe/Czecho No Republic

メジャー3作目となる新譜。軽快なシンセポップ路線で、ファンタジックな楽曲もあり、祝祭色あり楽しい雰囲気のアルバム。前作同様、サウンド面でちょっと軽すぎると感じる部分もあり、それがプラス要素にもマイナス要素にもなっている感じが。聴いていて文句なく楽しめる作品なのですが、もうちょっとひっかかりも欲しいような印象も。

評価:★★★★

Czecho No Republic 過去の作品
MANTLE

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2015年11月29日 (日)

13年ぶりの新作

Title:CHABO
Musician:仲井戸麗市

ご存じRCサクセションのギタリストで、フォークデゥオ古井戸や麗蘭としての活動でも知られる仲井戸麗市のソロアルバム。フルアルバムとしては2002年の「TIME」より13年ぶりとなるアルバムで、個人的にも彼のライブは何度か見たことあるのですが、CD音源としてははじめて聴いてみたアルバムとなります。

イメージ的には正統派のブルースロックを演ってるのかな、という漠然としたイメージがあったのですが、聴いてみて驚いたのは、そのバリエーションの多さでした。例えば「灰とダイヤモンド」などはまさにそんなイメージ通りのブルースロックですし、DISC2に収録されている「ブルース2011」「セルフポートレート2015」は完全にルーツ志向のブルースを聴かせてくれています。

ただ一方で、冒頭を飾る「やせっぽちのブルース」はキャバレーロック風で、ブルースはブルースでも歌謡曲の「ブルース」風。それに続く「祝祭」はバルカン音楽風で、「QUESTION」はディスコ調。タイトル通り、歌詞もコミカルな「何かいい事ないかな?子猫ちゃん」はサーフロックで「ま、いずれにせよ」はラグタイム風と、実にバリエーション豊か。正直、ここまで様々なタイプの音楽に手を広げているミュージシャンとは知りませんでした。

また、楽曲の雰囲気としては忌野清志郎に通じるような部分もあり、そこはさすがRCサクセションの盟友同志、ということになるのでしょうか。もっとも、ブルースやサザンソウル、ニューオリンズの影響が強かったキヨシローに比べると、彼の音楽に関してはもっと日本風に泥臭さも感じます。特にメロディーラインに関しては歌謡曲風に感じる部分が多く、もともとはフォークの枠組みから出てきたミュージシャンということもあるのでしょうが、フォークソングからの影響も強く感じました。

しかしそんな彼の楽曲の中で圧倒的にカッコよかったのがそのバンドサウンド。エッジの効いたCHABOのロックンロールなギターや渋さのある彼のボーカルももちろんのこと、そんな彼を支えるバンド勢もバリエーションのある楽曲の中でしっかり主張してロックンロールなサウンドを聴かせてくれています。やはりこのCHABOのギターと、それを支えるバンドサウンドのロックンロールとしての文句なしのカッコよさが、このアルバムの最大の魅力のように感じました。

「老い」と呼びかけの「オイっ!」とかけた「オーイっ!」や、タイトル通りの「NOW I'm 64」など、アルバム発売当時64歳となっていた彼自身のことを綴った作品をはじめ、ユーモラスを感じる彼の歌詞も大きなインパクト。ただ彼のボーカルやギターを含めて、現役感バリバリ。正直、64歳という年齢を信じられない若々しさも感じられます。

彼のニックネームであるCHABOをそのままアルバムタイトルとしたところからも、彼のこのアルバムにかける意気込みを感じることが出来ますが、その意気込みそのままの勢いを感じることが出来る傑作でした。文句なしにロックのカッコよさを感じる傑作。「老い」をネタとしていますが、まだまだ彼が「老いる」日は遠い先になりそうです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

ROCK'N'ROLL PANDEMIC/THE PREDATORS

the pillowsの山中さわお、GLAYのJIRO、ELLEGARDENの高橋宏貴によるバンド。それぞれメインとなるバンドを持っているミュージシャンたちが、サイドプロジェクト的にはじめたバンドですが、なにげに長く活動が続き、これが5枚目となるアルバムとなります。ただ、楽曲的には良くも悪くもいつも通りのオルタナ系ギターロック。メインボーカルが山中さわおということでthe pillowsをもっと激しくした感じ、という印象なのですが、これならthe pillowsでも出来るじゃん、といった感想は変わらず。ポップでパンクなギターロックということで、楽しむことは出来る内容なのは間違いないのですが。

評価:★★★

THE PREDATORS 過去の作品
牙をみせろ
THIS WORLD
Monster in my head

カランコロンのレンタルベスト/東京カランコロン

Karankoron_best

東京カランコロンの初のベスト盤はレンタル限定でのリリース。彼らの代表曲が収録されているほか、新曲「シンクロする」が収録。さらにはライブ音源を収録しているほか、これが初のCD化となる「走れ、牧場を」の替え歌、「走れ、ナニワを」も収録されています。

ベスト盤に収録された曲に関してはいずれも楽しい楽曲ばかり。彼らの曲に「J-POPって素敵ね」という曲があるのですが、まさにポップの楽しさを伝えてくれるワクワクする曲ばかりでした。ライブ音源に関しても、そのワクワク感がそのまま伝わってくるような曲ばかり。彼らのライブはまだ一度も足を運んだことないのですが、一度ライブを見てみたいと感じるような楽しそうなライブの雰囲気が伝わってきます。

レンタルベストながらもなかなか豪華な内容で、すべてのアイテムを持っているファンにとっても楽しめそうな内容。気軽に楽しめるアルバムなだけに、入門盤としてもピッタリです。

評価:★★★★★

東京カランコロン 過去の作品
We are 東京カランコロン
5人のエンターテイナー
UTUTU

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2015年11月28日 (土)

古き良きロックを今にアップデート

Title:Dodge and Burn
Musician:The Dead Weather

ご存じ元ホワイト・ストライプスのジャック・ホワイト率いるロックバンドによる3枚目のオリジナルアルバム。前作「SEA OF COWARDS」リリース後、しばらく活動がなかったのですが、2013年に久々となるシングル曲2曲をレコードにてリリースし活動を再開。5年ぶりとなるニューアルバムが本作です。

ただ、久々となるニューアルバムですが、基本的なスタンスは以前と全く変わりありません。「レッド・ツェッペリンみたいな」という形容詞で語られることが多い彼らですが、まさに70年代あたりのハードロックの影響をダイレクトに受けたようなヘビーなギターリフを中心に構成された「古き良きハードロック」というスタイルは本作も健在。それは冒頭を飾る「I Feel Love(Every Million Miles)」の、ハードなギターリフとボーカルアリソン・モシャートのハイトーンボイスという組み合わせからも顕著でした。

一方で、「古き良き音楽」をそのままコピーしてくる訳ではなく、今の音もきちんと入れつつ、2010年代にアップデートしている、という点も以前と同様。例えば「Three Dollar Hat」では軽くエレクトロサウンドを入れていますし、「Mile Markers」ではラップも入れてきたり。アルバム全編で鳴り響いているギターのサウンドにしても、激しいノイズ音は70年代のハードロックとはまた異なります。

またジャック・ホワイトは基本的にドラムスに専念。へヴィーなドラムスでバンドサウンドを下支えしており、なおかつメロディーメイカーとしてもバンドを支えています。「Buzzkill(er)」のように哀愁を漂わせたり、「Be Still」のようにメロを聴かせたり、ハードなバンドサウンドを聴かせつつ、メロディーラインにもしっかりとしたインパクトを持たせているのも特徴的。その結果、アルバム全体としては実は「ポップ」で聴きやすい内容になっていました。

最後はストリングスとピアノを取り入れた壮大なスケール感を覚える「Impossible Winner」で締めくくるという構成も見事。いままでの彼らのアルバムと同じく、なによりもロックのダイナミックさを楽しめるアルバムになっていました。久々ながらも待ったかいのある納得の傑作です。

評価:★★★★★

THE DEAD WEATHER 過去の作品
HOREHOUND
SEA OF COWARDS

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2015年11月27日 (金)

90年代J-POPからの影響を感じる壺をついたサウンド

Title:POSITIVE
Musician:tofubeats

相変わらず数々のミュージシャンのリミックスなどを手掛けて注目を集めつづけているtofubeats。前作から1年弱、早くもメジャー2枚目となるフルアルバムがリリースされました。

毎回、豪華なミュージシャンがゲストとして参加している彼の作品ですが、今回も幅広いジャンルから様々なミュージシャンが参加しています。今回もEGO-WRAPPIN'の中納良恵やくるりの岸田繁といった実力派から、Dream Amiといったアイドル、さらにはなんとあの小室哲哉とのコラボ作も収録されており、話題を集めました。

さて、前作「First Album」では彼らしいポップな作風の中、幅広い音楽性を感じられる作品が並んでおり、それ以前に聴いたEP盤では一部しか感じられなかったtofubeatsの実力を感じさせる内容になっていました。

一方今回のアルバムに関してはtofubeatsのポップな部分がより強調されたアルバムになっていたように感じました。特に今回のアルバムで強く感じたのは彼がつくるトラックがリスナーの壺をうまくついてくるな、という点でした。もともと彼自身、90年代のJ-POPから強く影響を受けているそうなのですが、悪い意味ではなくリスナーの期待を裏切らない、リスナーが聴いていて気持ち良いと感じさせる壺を上手くついています。

ただ一方ではtofubeatsのトラックは、決して押し付けがましいような「癖」はあまり感じません。だからこそ多くのミュージシャンとのコラボが上手くまとまっているのでしょう。そして、その逆を行くのが小室哲哉。まさに彼の個性をこれでもかといったくらい押しつけてくるサウンド。今回のtofubeatsとのコラボ作「Throw your laptop on the fire」もトランシーなサウンドは完全に小室哲哉の音になってしまっています。若干、アルバムの流れの中で浮いてしまっている部分もありますし、このコラボは賛否ありそうですが、コムテツ好きにとっては必聴の作品なのは間違いないかと思います。

特にこのアルバムの中でも、この作品から「I know you」「Without U」にかけてはダンスチューンが並んでおり、コムテツとのコラボでアゲアゲになったリスナーが、そのままテンションの高いまま楽しませるような構成になっています。その後、軽快な(ちょっと渋谷系が入ったような)ポップソングの「すてきなメゾン」をかませて、ピアノの和音とエッジの効いたエレクトロトラックのからみがおもしろい、ミディアムテンポの「くりかえしのMUSIC」へと流れていく構成もさすが。高いテンションで盛り上がったリスナーをほどよくチルアウトさせつつ、「聴かせる」タイプの曲にうまく誘導しており、ある種のわかりやすさを感じつつも、リスナーを卒なく楽しませる構成に仕上げています。

ただ、「癖」がうすく、押し付けがましさがない、と感じたtofubeatsのサウンドですが、一方では確実に彼の個性も感じられたのも今回のアルバム。特に冒頭を飾る「DANCE&DANCE」のような、ちょっと90年代の入ったようなハウス風のエレクトロトラックに、ピアノが重なるサウンドはまさにtofubeatsらしい音といった感じ。今風の音を入れつつも、ベースには90年代風の雰囲気を感じさせるtofubeatsらしい音は、アルバム全体に強く感じました。この新しさと、一昔前のちょっとした懐かしさをあわせもったといった彼の音の特徴こそ、リスナーの壺を上手くついてくる大きな要因なのかもしれません。

そんなtofubeatsの魅力がしっかりとつまった傑作だったと思います。ポップな作風の中、要所要所にひとひねりしたようなサウンドも入れていたりして、それもまたユニーク。聴いていて楽しくなるポップなアルバムでした。

評価:★★★★★

なお、このアルバムに関して、「tofuの日」である10月8日に、本作のインスト盤がフリーダウンロードでリリースされました。

Title:POSITIVE instrumental
Musician:tofubeats

内容はもちろん「POSITIVE」からボーカルトラックを抜いただけの内容。ただ正直言うと、「POSITIVE」から印象の大きな差はありませんでした。まあ、「POSITIVE」自体、ボーカルが入っていたとはいえ、やはりサウンドの部分を前に押し出したような音のバランスになっていたからでしょう。インスト盤になってはじめて気づいた新たな発見、という部分は少なかったようにも感じます。

ちなみに本作、10月8日の24時間限定でのリリースだったそうですが、現在でもSOUND CLOUDにアップされており聴くことは出来る模様。興味ある方は要チェック。

評価:★★★★

tofubeats 過去の作品
Don't Stop The Music
ディスコの神様
First Album
STAKEHOLDER

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2015年11月26日 (木)

こちらは女性陣がベスト3

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

ベスト3が男性陣だったシングルチャートとは対照的に、アルバムチャートはベスト3を女性陣が占めました。

まず1位はAKB48「0と1の間」。シングルで1位獲得曲のみを集めたベスト盤。初動売上は62万5千枚と、前作「ここがロドスだ、ここで跳べ!」の74万6千枚(1位)から大幅減。ベスト盤という内容ながらも初動売上が大幅減となるあたり、アイドルグループではよくありがちなのですが、固定ファン層以外の浮動層を全く確保していない、ということでしょう。

2位3位は西野カナ。シングルのカップリングやアルバム収録曲をまとめたアナザーベスト「Secret Collection ~GREEN~」「Secret Collection ~RED~」がそれぞれランクインです。初動売上はそれぞれ6万5千枚、6万1千枚。2013年にリリースしたベスト盤「Love Collection~mint~」「Love Collection~pink~」の14万7千枚(1位)、14万6千枚(2位)からはそれぞれ大幅ダウン。直近のオリジナルアルバム「with LOVE」の10万枚(1位)からもダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、4位には聖川真斗(鈴村健一),神宮寺レン(諏訪部順一) 美風藍(蒼井翔太)「うたの☆プリンスさまっ♪シアターシャイニング BLOODY SHADOWS」がランクイン。恋愛ゲーム「うたの☆プリンスさまっ♪」より、ドラマCD。初動売上2万5千枚。アルバムチャートでは昨年2月にリリースされた「うたの☆プリンスさまっ♪ 劇団シャイニング JOKER TRAP」以来で、そちらの初動4万2千枚(2位)からはダウン。

5位初登場はCHiCO with HoneyWorks「世界はiに満ちている」。ボカロ&アニソンに特化したオーディション「ウタカツ!」でグランプリに輝いたCHiCOと人気動画サイト「ニコニコ動画」でVOCALOID楽曲をアップして人気を博している音楽グループHoneyWorksによるコラボ作。初動売上は2万4千枚。HoneyWorksの前作「好きになるその瞬間を。」の2万1千枚(4位)からはアップしています。

6位にはロックバンドSPYAIR「4」が入ってきました。2014年の活動休止後初となるオリジナルアルバム。初動売上2万枚は、直近のリリースであるベスト盤「BEST」の2万6千枚(3位)からダウン。オリジナル盤として前作となる「MILLION」の2万2千枚(2位)よりもダウンしていますが、活動休止を挟んでのアルバムとしてはまずまず健闘といった感じか。

最後は韓流の男性アイドルグループNU'EST「Bridge the World」が7位に入ってきています。前作は韓国でリリースされた曲を集めたベスト盤「NU'EST BEST IN KOREA」でしたので、こちらは純然たるオリジナルアルバムとしてはデビュー作となります。初動売上1万8千枚は、その「NU'EST BEST IN KOREA」の5千枚(13位)からアップし、初のベスト10入りです。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2015年11月25日 (水)

ベスト3は男性陣

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

まず今週は男性陣がベスト3に並びました。

まずは男性アイドル勢。1位を獲得したのがKinki Kids「夢を見れば傷つくこともある」がランクイン。作詞秋元康、作曲伊秩弘将によるミディアムテンポの歌謡曲ナンバー。ちょっとあざとさを感じるタイトルが秋元康っぽい感じが。初動15万4千枚は前作「鍵のない箱」の15万2千枚(1位)から若干のアップ。

3位に韓流の男性アイドルB1A4「HAPPY DAYS」が入ってきました。タイトル通り、明るいEDMナンバー。ただ初動3万9千枚は前作「白いキセキ」の6万8千枚(3位)から大幅ダウンしています。

男性アイドルグループはもう1組。10位にスターダスト・プロモーション所属の男性アイドルグループカスタマイZ「解」が入ってきています。TBSテレビ系アニメ「K RETURN OF KINGS」エンディング・テーマ。アニソンを歌うことを目的としたロックバンド形式でのアイドルらしく、この曲もロック風のアレンジになっています。初動売上1万4千枚は前作「鎮魂歌-レクイエム-」の1万1千枚(7位)からアップ。

さてベスト3に戻って、もう1曲の男性陣はロックバンド。back number「クリスマスソング」が2位に入ってきています。フジテレビ系ドラマ「5→9~私に恋したお坊さん~」主題歌。タイトルもそのまんまですが、楽曲もストリングスや鐘の音を入れた、いかにもなアレンジ。初動売上4万3千枚は前作「手紙」の2万4千枚(4位)から大幅にアップし、2位はシングルでは自己最高位で、初のベスト3入り。確実に人気を伸ばしてきています。

一方、4位以下では女性アイドル勢が目立ちました。4位にはE-Girlsの一員でもあるDream「ブランケット・スノウ」、6位に日テレの企画から登場したアイドルグループ、フェアリーズ「Mr.Platonic」、7位に志倉千代丸と桃井はるこの共同プロデュースのアイドルグループアフィリア・サーガ「Embrace Blade」がそれぞれランクイン。Dreamは初動3万1千枚で前作「こんなにも」の1万8千枚(3位)から増加。フェアリーズは初動2万6千枚で、前作「相思相愛☆destination」の2万7千枚(5位)から微減。アフィリア・サーガはアニメ「対魔導学園35試験小隊」オープニング・テーマ。初動2万2千枚は前作「Never say Never」の1万8千枚(4位)からアップ。

初登場組その他には・・・まず5位にaiko「プラマイ」が入ってきました。NHKドラマ「仮カレ」主題歌。相変わらずaiko節ともいうべき癖のあるコード進行が印象的なナンバー。初動売上2万9千枚は前作「夢見る隙間」の3万2千枚(7位)からダウン。

最後8位には今週唯一のキャラソン。橘ありす「THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 036 橘ありす(in fact)」。ゲーム「アイドルマスター シンデレラガールズ」登場人物によるキャラソン。「THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER」シリーズの第8弾として036から040まで同時にリリースされましたが、こちらが唯一のベスト10ヒット。初動売上は1万5千枚。同シリーズの第7弾では4位から7位を独占。ただ、そのうち最高位だった鷺沢文香「THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 031 鷺沢文香(Bright Blue)」の初動1万4千枚(4位)からは微増となっています。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に!

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2015年11月24日 (火)

SIMI LABのトラックメイカーによる新作

Title:Think Good
Musician:OMSB

SIMI LABのトラックメイカーとして活躍しているOMSB。SIMI LABとしての活躍だけではなく、以前からソロとしての作品のリリースや数々のミュージシャンへの客演などで活躍してきましたが、待望の3枚目となるソロアルバムがリリースされました。

まずSIMI LABの活動でも定評とあるトラックがめちゃくちゃカッコいい!様々な音源をサンプリングして構成しているのですが、バリエーションにとんだトラックが最後まで聴く者を飽きさせない一方、アルバム全体に一本、OMSBらしさがしっかり貫かれており、アルバム全体として統一感ある内容になっています。

具体的にはピアノのジャジーな音色がカッコいい「Storm」に、トライバルなリズムが印象的な「黒帯(Black Belt Remix)」、タイトなエレクトロトラックを聴かせる「Memento Mori」などなど、基本的には必要な音のみに絞ったトラックは非常に硬派な印象。一種の緊張感が音の間から伝わってくるようなトラックに耳を奪われます。

リリックにも強いインパクトを感じます。アメリカ人と日本人のハーフというマイノリティーである彼らしい、どこか厳しい現実を淡々とつづるようなトラックが印象的。「Lose Myself」はそんなリリックの中に鳴り響くサイケでノイジーなトラックがまた、彼の心象を反映しているように感じます。

ただ一方ではそんな中、どこか前向きで力強いメッセージ性も感じます。

「だいじょぶだぁlike a 志村けん
意味はねぇ 前見て走るだけ」

なんてユニークなリリックも飛び出すのはタイトルチューンでもある「Think Good」。他にも力強いリリックの曲も多く、現実を吐露したようなトラックの一方、その向こうにある希望も同時に感じられるアルバムのように感じました。

SIMI LABの直近のアルバムも傑作でしたが、このソロ作も文句なしの新作。リリックもトラックも、そしてもちろん彼自身の力強いラップも、耳と捉えて離さない名盤でした。

評価:★★★★★

OMSB 過去の作品
Kitajima "36" SubLaw


ほかに聴いたアルバム

八奏絵巻/和楽器バンド

バンド名通り、和楽器によりポップソングを奏でるバンドとして話題となったグループ。本作はチャートでも1位を獲得しており、人気上昇中のバンドです。ただ、前作「ボカロ三昧」でもそうだったのですが、基本的に洋楽器のパートを和楽器に置き換えているだけで、特に日本独特の音楽のリズムなどはほとんど感じられません。「これが日本のロック」と言われると、ちょっと首はかしげたくなってしまうような部分も。意外とへヴィーロック志向な部分も感じるのですが、全体的には平凡なJ-POPといった印象。

評価:★★★

和楽器バンド 過去の作品
ボカロ三昧

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2015年11月23日 (月)

ジャケ写含め地味な印象ですが

Title:B'lieve I'm Goin Down…
Musician:Kurt Vile

もともとはThe War On Drugsのギタリストとして活躍していたKurt Vileの6枚目となるソロアルバム。ピッチフォークで高評価だったので気になって今回聴いてみました。正直言うとまずはリゾネーター・ギターをかかえた長髪の男、というジャケット写真がなんともいえず地味な印象(^^;;一昔前のブルースロックを奏でるミュージシャン、という印象も受けます。

楽曲自体もまずは地味、という印象が先に立ちます。まず1曲目「Pretty Pimpin」はアコースティックなブルースロック。哀愁奏でるメロが耳を惹きますが、派手さはありません。続く「I'm An Outlaw」もリズムマシーンを入れているあたりはちょっと今風なのですが、カントリーギターで哀愁たっぷり聴かせるナンバーは、こちらもインパクトという面では薄さを感じます。

ただ、そんな地味な印象のある作品なのですが、そんな中でもしっかりと聴かせてくれる味わい深いメロディーラインが実に魅力的な内容に仕上がっていました。まず「That's Life,Tho(Almost Hate To Say)」。美しく鳴り響くギターのアルペジオに淡々としたシンプルなメロディーながらもしんみり胸をうつメロデイーが魅力的。「Kidding Around」もアコギのアルペジオを美しき聴かせつつ、郷愁感あふれるメロディーが心に残る作品でした。

そんなシンプルでフォーキーなサウンドを奏でつつ、その合間に、サイケなサウンドが紛れ込んでいるサウンドが実にユニークなことにも気が付かされます。例えば「Wheelhouse」は本編はフォーキーな作風ながらもアウトロではミニマルテイストのギターインストになっていて、軽いトリップ感がありますし、「Life Like This」もピアノの音色に軽く重なるノイジーなギターにサイケな隠し味を感じます。最後を飾る「Nicotine Blues」も基本的にはアコースティックなカントリーナンバーなのですが、そこに歪んだギターノイズが加わり、一癖ある作風に仕上がっています。

アルバム全体としてはアコースティックでフォーキーな色合いが濃く、ジャケット写真の雰囲気にもマッチした、良くも悪くも「地味」な作風に仕上がっていたと思います。ただ、聴き進めていくと、そんな単純な作品ではないと気が付いてくるのが中盤あたりから。最後まで聴いた時は、その独特の作風に知らず知らずのうちに魅了されるアルバムになっていました。なにげに癖になりそうな傑作です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

BLACC HOLLYWOOD/WIZ KHALIFA

ビルボードチャートで初の1位を記録した、アメリカのラッパー、WIZ KHALIFAの新作。以前聴いたオリジナルアルバム「Rolling Papers」はちょっとベタにポップな作風で、いまひとつだったのですが、今回は前半、ダークな作風のHIP HOPにまずは惹きつけられます。一方後半はポップな作風になったのですが、それでも全体的にはへヴィネスとポップスさがそれなりに良いバランスが取れていたような印象になっていました。

評価:★★★★

Wiz Khalifa 過去の作品
Taylor Allderdice
Rolling Papers
28 Grams

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2015年11月22日 (日)

歌を聴かせる

Title:SONGS
Musician:踊ってばかりの国

サイケな作風と、それに反して歌謡曲調にすら感じられるポップなメロデイーラインが特徴的な4人組ロックバンド、踊ってばかりの国。フルアルバムとしては約1年2ヶ月ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。

フルアルバムとしては前作となるセルフタイトルの「踊ってばかりの国」は非常に社会的な歌詞が特徴的でした。反原発の「セシウムブルース」や反風営法の「踊ってはいけない国」、さらに「東京」でも強烈な反体制のメッセージを出していました。

一方、今回のアルバムでは社会派な歌詞はほとんどありません。あえて言えば「唄の命」で歌われる「いまだ止まぬ鉄の雨」といったような歌詞くらいでしょうか? 全体的にはとてもやさしい雰囲気の歌詞が多かった印象を受けました。「僕が太陽さ 君たちの太陽さ」と歌う「太陽」といい、「俺はIt's OK」と歌う「OK」といい、どこか包容力のあるやさしさを歌詞から感じます。

サウンド的にもやさしい雰囲気を感じられます。ちょっとハワイアンなテイストの「君を思う」や前述の「太陽」も、爽やかな雰囲気のフォーキーなサウンドが特徴的。もっとも、このサウンドに関してはいままで彼らの曲に特徴的だった「浮遊感」というキーワードは今回のアルバムでもマッチしています。「口づけをかわそう」「時を越えて」など、浮遊感あるサイケフォークを今回のアルバムでもきちんと聴かせてくれています。

また「OK」ではへヴィーなギターを入れたブルースロックを聴かせてくれたり、ラストを飾る「ほんとごめんね」ではバリバリのギターノイズのサイケロックを聴かせたりと、フォーキーなサウンドとはある意味対照的なノイジーなバンドサウンドも大きなインパクトになっていました。基本的にフォークやロック、レゲエなどの様々な音楽的要素を入れてきているのもいつもの彼ららしい、といった感じでしょう。

また、メロディーラインもしっかりインパクトのあるメロディアスなものを聴かせてくれる、というのもいつも通りの彼らの特徴。特にそんな「踊ってばかりの国」らしさを一番感じたのは、このアルバムでもひとつの核になっている「Hero」。10分にも及ぶ長い曲なのですが、フォーキーでメロディアスなメロディーラインをきちんと聴かせつつ、サイケなサウンドも楽しませてくれる曲で、10分、まったくダレることなく聴かせてくれる、彼らの実力を感じさせてくれるナンバーです。

要するに、アルバム全体として踊ってばかりの国らしさをきちんと出すことが出来たアルバムだったと思います。特に「SONGS」というタイトル通り、シンプルに「歌」を楽しむことが出来たアルバムだったと思います。主張の強さ、という意味では前作「踊ってばかりの国」のインパクトが強かったのですが、これはこれで魅力的な傑作でした。

評価:★★★★★

踊ってばかりの国 過去の作品
グッバイ、ガールフレンド
世界が見たい
SEBULBA
FLOWER
踊ってばかりの国
サイケデリアレディ

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2015年11月21日 (土)

ハナレグミの人柄の良さが反映(?)

Title:What are you looking for
Musician:ハナレグミ

ハナレグミといえば、様々なミュージシャンとのコラボやトリビュートアルバム、カバーアルバムへの参加でよくその名前を見かけます。それだけ彼自身、顔が広いミュージシャン、ということなのでしょうか。そんな彼の、オリジナルアルバムとしては久々、4年ぶりとなるニューアルバムには数多くのゲストが参加しています。作曲という面でもかつての盟友、レキシこと池田貴史にキセルの辻村豪文、元キリンジの堀込泰行にYO-KING、作曲では大宮エリーが参加しているほか、ちょっと意外なところではRADWIMPSの野田洋次郎が作詞作曲で1曲、楽曲提供しています。

ただ非常におもしろいのはそんな様々なミュージシャンが楽曲を提供しているにも関わらず、アルバム全体は非常に統一感のある内容になっています。それはやはり基本的には作詞はハナレグミこと永積崇が手掛けているということ。さらには彼の脱力感がありつつも同時に包容力もある独特のボーカルが、アルバム全体に統一感を与えているのでしょう。

そんな中でもちょっと異質さを感じたのは、野田洋次郎作詞作曲の「おあいこ」。かなり熱量の強いラブソングで、楽曲的にはいかにもRADWIMPSらしい感じ。ただアレンジはピアノで静かなアレンジであって、さらにハナレグミのボーカルによってなんとかアルバムの中ではおさまっています。とはいえ、どちらかというとラブソングにしてもどこか肩の力が抜けたようなハナレグミの曲の中ではちょっと異質な感じ。ひょっとしたらアルバムの中で、この異質感をひとつのインパクトとして狙ったのでしょうか?

というのも今回のアルバム、この「おあいこ」とは対照的な、全体的にはかなりアットホームな雰囲気ののんびりした空気で統一されていたからです。アレンジはアコギをベースとしたアコースティックテイストのシンプルな内容。「フリーダムライダー」みたいにホーンセッションを取り入れて明るくまとめあげたアレンジもあるのですが、そんな曲を含めて、基本的にはシンプルなアレンジにまとめています。いままでのアルバムは比較的バラエティー富んだ作風が多かったのですが、今回は比較的シンプルなポップで統一されている印象がありました。

歌詞についてもアットホームで暖かみを感じさせる内容。歌詞のイメージとしてはありのままをそのまま受け入れるという、彼のボーカルの雰囲気にもピッタリあっている包容力を感じさせる歌詞が特徴的でした。アルバム的には、冒頭「Overnight trip to Chiang Mai」なんてインストの曲からスタートし、「旅に出れば」なんてナンバーがあったり、最後は「逃避行」で締めくくられるあたり、「旅」という印象も強く感じさせるのですが、楽曲自体はむしろ「自分の半径5mの世界」とすら感じられるほど、アットホームな雰囲気を強く感じる内容になっていました。

ちょっと残念なのは、いままでのハナレグミの魅力のひとつだった、ユーモアな言葉遣いでコミカルな楽曲があまりなかった点でしょうか。ただそんな中でユーモラスを感じられたのが「いいぜ」。女の子の生態をユーモアをまじえて、ちょっとエロティシズムに描いているのがユニークな楽曲に仕上がっていました。

そんな訳で、アルバム全体としてはほっこりとした気分で楽しく聴ける傑作アルバムだったと思います。なによりもハナレグミらしい暖かさのつまったアルバムのように感じました。聴いていて、とても暖かい気分になれる1枚です。

評価:★★★★★

ハナレグミ 過去の作品
あいのわ
オアシス
だれそかれそ
どこまでいくの実況録音145分(ハナレグミ,So many tears)

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2015年11月20日 (金)

マディが今のミュージシャンとコラボ?

Title:Muddy Waters 100

シカゴ・ブルースの巨人にして、おそらくブルースを聴こうとすれば一番最初にその業績に触れることとなるブルース・ミュージシャン、Muddy Waters。その生誕100年を記念したトリビュートアルバムがリリースされました。マディ・ウォーターズのバンドにおいて、最後のギタリストをつとめたジョン・プライマーが中心となり、デレク・トラックス、ケブ・モ、ゲイリー・クラークJRなどといった豪華なゲストが参加しています。特に「I'm Ready」では昨年7月に亡くなったブルース・ギタリストのジョニー・ウィンターが参加。亡くなる5ヶ月前の演奏だったそうで、大きな話題ともなりました。

このアルバム、ちょっとユニークなのが一般的なトリビュートアルバムのようにマディの曲をそれぞれのミュージシャンが各々カバーするスタイル、ではなく、あくまでも演奏はジョン・プライマー率いるバンド。またすべての曲に関して基本的にはボーカルはジョン・プライマーがとっています。そこにゲストとして、豪華なミュージシャンたちが参加するスタイル。そういう意味では、あくまでもジョン・プライマーのバンドによるマディのカバーアルバム、という形となっています。

そんなジョン・プライマーの演奏は、自身マディのバンドの一員だったので当たり前でしょうが、はっきりいってマディの雰囲気そのまんま。特にジョンのボーカルがともすれば「物まね」とも言えてしまうレベルにマディの歌い方を忠実にカバーしており、まさにマディが現在の様々なミュージシャンとコラボしているかのような錯覚に陥ります。

そんな中でもゲストミュージシャンたちがそれぞれの個性をしっかりと発揮しています。デレク・トラックスは「Still A Fool」でへヴィーで実に力強いギターサウンドを聴かせてくれますし、「40 Days and 40 Nights」で聴かせてくれるゲイリー・クラークJRのファンキーなギターも耳に残ります。ジョニー・ウィンターのギターはやはり亡くなる直前ということでちょっと弱くも感じてしまうのですが、それでも曲の中でしっかりとした主張を感じさせます。

基本的にはオリジナルの雰囲気を残しつつのカバーになっているのですが、そんな中でもちょっとずつ雰囲気を変える工夫が入っているのがおもしろいところ。「Rosalie」ではバイオリンの音色を入れてきたり、「Why Don't You Live So God Can Use You」ではゴスペル風なコーラスを入れてきたり、ケブ・モがギターで参加した「Last Time I Fool Around With You」では軽快なリズムの作風に変えてきたりと、ユニークにまとめあげています。

ほかにも「Mannish Boy」「Trouble No More」では軽快なリズムマシーンを導入し、今風のリズムに仕上げています。これに関しては賛否両論ありそうな感じで、個人的には1曲だけでよかったのでは?とも思うのですが、それを差し引いてもユニークな試みに感じます。

マディの作品の再解釈としてもおもしろいですし、純粋にブルースのアルバムとしても聴かせることが出来る傑作。最近ではマディの生まれたのは2013年だったという説が有力だそうですが、それは御愛嬌(笑)。満足度の高い1枚でした。

評価:★★★★★

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2015年11月19日 (木)

欧米からのアイドル

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

ここ最近、すっかりアイドル勢が席巻しているヒットチャートですが、今週は欧米でアイドル的人気を博しているミュージシャンが2組ランクインしています。

まずイギリスの4人組ボーイズグループONE DIRECTION「MADE IN THE A.M.」が3位にランクイン。メンバーのゼイン・マリクが脱退し、4人組となって初となるアルバム。初動売上4万2千枚は、初の1位獲得となった前作「Four」の6万7千枚からダウン。

もう1人は・・・「欧米」って書いたけど、カナダ人なんですけどね・・・Justin Bieber「Purpose」が7位に入ってきました。ONE DIRECTIONと同時発売ということで、どちらがチャートの上位に立つのか注目されていたようですが、とりあえずオリコンではONE DIRECTIONの圧勝。初動1万3千枚は前作「Believe」(7位)から順位、枚数共に横バイ。本作は世界発売にあわせて金曜日リリースだったことを考えると、事実上、初動売上は増加していると言えるかも。

さて上位に戻って今週の第1位は、こちらも日本からの男性アイドル勢。関ジャニ∞「関ジャニ∞の元気が出るCD!!」が獲得です。初動売上31万5千枚は前作「関ジャニズム」の29万4千枚からアップ。

2位にはご存じ人気女性声優水樹奈々「SMASHING ANTHEMS」がランクイン。初動売上6万1千枚は前作「SUPERNAL LIBERTY」の7万6千枚(1位)からダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤。まず6位に中島みゆき「組曲(Suite)」が入ってきました。「組曲」と書いて「スウィート」と読むんだそうです。前作「問題集」からちょうど1年ぶりとなる新作。初動売上2万2千枚は、その前作の初動2万6千枚(4位)からダウン。

8位初登場アルスマグナ「ARSWORLD」もアイドル色が強いグループ。ニコニコ動画の「踊ってみた」で人気を博した男性5人組グループ。初動売上1万枚。シングルではベスト10入りを記録していましたが、アルバムではこれが初のベスト10ヒット。

初登場あと2枚は、ゲーム「アイドルマスター」の登場キャラクターによるアルバム。双海亜美「THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 3 12 双海亜美」が9位、秋月律子「THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 3 13 秋月律子」が10位にそれぞれランクイン。「MASTER ARTIST3」で、初動売上はどちらも1万枚。前回は10弾、11弾がリリースされており、高槻やよい「THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 3 10 高槻やよい」(6位)、三浦あずさ「THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 3 11 三浦あずさ」(8位)のどちらも初動1万枚と横バイという結果になっています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2015年11月18日 (水)

今週はアニソン

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

週替わりで女性アイドルやら男性アイドルやらが目立つチャートとなっていますが、今週はアニソン系がやたら目立つチャートとなっています。

まずアニメ「ご注文はうさぎですか?」より、オープニングテーマPetit Rabbit's「ノーポイッ!」が4位、エンディングテーマ、チマメ隊「ときめきポポロン♪」が9位にランクインしています。どちらもいかにもキャラソンといった感じのアニメ声でリスナー以外は受け付けなさそうな楽曲。いずれも初のベスト10ヒット。Petit Rabbit'sは女性声優のユニットで初動売上2万2千枚は前作「宝箱のジェットコースター」の4千枚(19位)よりアップ。チマメ隊はアニメのキャラクターによるユニットで、初動1万4千枚は前作「ぴょん’sぷりんぷるん」の3千枚(22位)よりアップ。

5位にはnew generations「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS ANIMATION PROJECT 2nd Season 06(流れ星キセキ/心もよう)」がランクイン。アニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ」のキャラクターソング。初動売上は1万9千枚。「シンデレラガールズ」関連としては、Triad Primus/アナスタシア 「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS ANIMATION PROJECT 2nd Season 05(Trancing Pulse/Nebula Sky)」の2万4千枚(4位)よりダウン。また、new generations名義では前作 「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS ANIMATION PROJECT 07 できたてEvo! Revo! Generation!」の2万7千枚(6位)よりダウン。

6位にはsupercellのryoがプロデュースを手掛けるユニットEGOIST「リローデッド」がランクイン。アニメ映画「虐殺器官」主題歌。椎名林檎風のガールズロック調。初動売上1万9千枚は前作「Fallen」の1万8千枚(9位)から微増となっています。

そんなアニソン勢に対して、1位2位はアイドルグループ。まず今週の1位。Kis-My-Ft2「最後もやっぱり君」。映画「レインツリーの国」主題歌。作詞作曲をつんく♂が手掛けたことでも話題のこの曲は、ある意味つんく♂らしいともいえるシンプルなミディアムポップに仕上がっています。初動売上19万1千枚は前作「AAO」の18万1千枚(1位)からアップ。前作「AAO」は前々作の初動35万6千枚から大幅に減少しましたが、本作は若干持ち直しました。

2位にはハロプロ系女性アイドル、以前はスマイレージとして活動していたアンジュルム「出すぎた杭は打たれない」がランクイン。おや、それじゃあつんく♂曲が1位2位か?と思いきや、こちらはつんく♂曲じゃないのね。ハードロック風のナンバー。初動3万9千枚は前作「七転び八起き」の4万2千枚(2位)からダウン。

ちなみに3位には先週1位のEXO「Love Me Right ~romantic universe~」が2ランクダウンでこの位置にランクインしています。

また初登場曲はあと1曲。8位にmiwa「あなたがここにいて抱きしめることができるなら」がランクイン。TBS系ドラマ「コウノドリ」主題歌。彼女らしい伸びやかなボーカルのバラードナンバー。初動1万6千枚は前作「夜空。feat.ハジ→」の1万8千枚(8位)から減少。ここ数作、1万8千枚~9千枚の初動を維持していましたが、本作では少々ダウン。ドラマタイアップ効果はあまりなかった模様。

今週はベスト10返り咲きも1枚。7位にNMB48「Must be now」が先週の46位からランクアップしています。例のごとく、通販分の売上が一時に計上された模様。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日!

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2015年11月17日 (火)

独自のロック史もまた楽しい

今回は最近読んだ音楽系書籍の紹介。今回は、ロック好き、いや日本のポップスが好きならとりあえず読んでおきたいと思わせる本です。音楽評論家で90年代には雑誌「米国音楽」を創刊させた川﨑大助氏によるロック評。日本のロック名盤を100枚選んで紹介した、日本のロック入門書的な一冊です。

実は、この本、一応は日本のロックの名盤をランク付けし、リストアップすることが主題の本なのですが、むしろ核になっているのは、ベスト100に続く第二部にあるように思われます。第二部のタイトルは「米英のロックと比較し検証した日本のロック全歴史」。タイトル通り、日本のロック通史になっているのですが、これが実に興味深い内容になっています。

このロック通史、正直言えばかなり癖があります。「川﨑史観」とでも言ってもいいような内容になっており、ともすれば最近では珍しくなってしまった「ロック至上主義」的な観点からの日本のポピュラーミュージック史にもなっています。

彼がこの通史の中で徹底的に「歌謡曲」「ニューミュージック」「Jポップ」といったものを否定しています。彼はこれらの名称を「人工的」なものとし、このような人工的な名称を生み出すのは、「『目の前にすでにあるものすべて』を、ひと束ねにして『取り込もう』とする」日本人の心情ゆえと分析しています。そして日本人はこのような現状をひとつの言葉で束ねることにより肯定し、「安定した平穏が訪れるように感じられるのだろう」と分析しています。

一方でロックンロール(=ロック)という言葉は「『まだここにない』理想を掲げた言葉」であり、あるべき「理想」を掲げて前進しているからこそロックおよびポップ音楽の文化も発展してきた、と分析しており、結果として日本の「歌謡曲」や「Jポップ」とくくられる音楽文化を痛烈に批判しています。ロック=理想というあたり、若干「ロック至上主義」的な部分を感じてはしまうのですが、確かに日本人の風潮として「現状肯定」という部分は感じます。それはもちろんプラスに働く部分もあるので、必ずしも「欠点」とは思わないのですが、一方で音楽文化についてはマイナスに作用しているという指摘については納得感があります。

またこの通史の中の分析で私がもっとも首肯したひとつが昨今のアイドル文化に対する痛烈な批判。アイドル文化を「性的願望を主軸とした男性の古典的な欲求を、無制限に肯定し続けることで対価を得ようとするビジネス」と評しており、北朝鮮の「喜び組」と等しいとしています。そして「ポルノまがいの『欲望の無制限な肯定』のシステムに負けた」今のロックに対して大いに嘆いていました。

昨今は、ロック系のメディアにおいても女性アイドルを無条件で受け入れる風潮があり、個人的には非常に違和感がありました。別にアイドル文化を全否定するわけではありません。ただ、個人的には川﨑氏がアイドルに対して評しているような、男性の、ある意味男尊女卑的な女性観を押し付けているような風潮は確実に感じられ、そういうシステムを例えば「音楽的に優れている」という理由だけで無条件で肯定するような一部メディアや評論家の論調には疑問を抱いていました。それだけに、彼のアイドル文化に対する指摘については、個人的には非常に溜飲が下がる感すらありました。

もっとも、これだけ独特の主張なだけあるので、よくよく考えると若干疑問に思うような記述もあります。例えばアイドル文化批判についても、じゃあ女性アイドルと同等に人気を博している男性アイドルはどうなんだ?という反論はありそうですし、個人的に一番疑問に感じたのは、60年代のフォークミュージックに対する過小評価。本書の中で日本のフォークに「ルーツ音楽の探求という側面は、ほとんどまったく、なかったように思える」と記しているのですが、え?もっとも著名なフォークシンガーの高田渡とか、日本にしろアメリカにしろ様々なルーツ音楽を楽曲に取り入れているんですが・・・。私自身、それほどフォークに詳しくないのですが、それでも彼のフォークに対する評価に関しては正直疑問に感じました。

それだけに、本書の一番の「売り」である日本のロック名盤ベスト100についても基本的に、この「川﨑史観」を前提としたものとなっています。彼自身は「僕の『パーソナル・ベスト』を記したものではない」と書いており、確かにそれは事実なのでしょうが、例えばフォークに対する評価の低さから、通常この手の名盤リストに登場しそうな岡林信康の「わたしを断罪せよ」や井上陽水の「氷の世界」は入っていません。逆に「米国音楽」を創刊した彼の好みからなのでしょう、いわゆる「渋谷系」のミュージシャンは多数ランクインしており、例えばカジヒデキとかかせきさいだぁとか、確かにいい名盤には変わりないのでしょうが、正直、上位100位に入るレベルか?とは思ってしまいます。

また、X JAPANやBOW WOW、ラウドネスといったロック系メディアでは過小評価されているメタル系は比較的高い評価を与えていますし、また海外での評価をやたら強調しています。この海外での評価という点はかなり疑問。「日本の音楽が海外で受けた」というニュースって、バイアスがかかりまくっていて、正直、かなり眉唾ものの情報が多いんですよね・・・。

ほかにもナンバガやくるりが氣志團より下ってことはないんじゃない?とか、ユニコーンとかSUGAR BABEはなんで入ってないの?とか思う部分はいろいろあるのですが、ただここで選ばれた100枚は間違いなく日本ロックの名盤リストのひとつのたたき台として非常に意義深いリストであることは間違いないと思います。また、ともすればJ-POP的とみなされがちなミスチルやBOOWYがランクインしていたり、ミューマガ近辺では完無視のマキシマム ザ ホルモンがランクインしていたり、アイドルは×だけどPerfumeはありなのね?(同意するけど)なんて面もあったりと、全体的にはそれなりにバランスが取れた「名盤」がきちんと並んでいます。あのミュージシャンがいないよな、とか、あのミュージシャンで選ぶならあのアルバムだよな、なんてことをニタニタしながら考えるのも楽しいかと。

そんなわけで癖がある部分もあるのも否定できないものの、日本のロックに興味がある方ならば必読の一冊だと思います。これをベースにベスト100と呼ばれるアルバムを聴いて、その上で彼の掲げる「川﨑史観」についてあれこれ考えるもの楽しい作業だと思います。自分ももちろん、ベスト100にあげられたアルバムをすべて聴いているわけではないので、これを機に、上位から順番に聴いてみようかな。

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2015年11月16日 (月)

ライブバンドの本領発揮

THE STRYPES JAPAN TOUR 2015

会場 ダイアモンドホール 日時 2015年11月10日(火) 19:00~

Strypes_live

ちょっと家庭の事情でなかなかライブに行けない状況が続いていたのですが、久しぶりに足を運んできました。デビューアルバム「Snapshot」が日本でも大きな話題となったアイルランドのロックバンドTHE STRYPESの来日公演。私も御多分に漏れず「Snapshot」ではまった口で、一度ライブにも足を運びたい!と思っていただけに、待ちに待ったライブでした。

会場はダイアモンドホールという名古屋でも大きめの会場でその人気のほどがうかがえます。会場は超満員、とはいかなかったのですが、9割程度の入りでその人気のほどをうかがえます。客入れのBGMの段階から曲によっては歓声があがるなど、熱気むんむんの会場の中、スタートを待ちました。

19時10分頃、メンバーが会場に登場。で、登場した第一印象としては・・・お、幼い・・・(^^;;まだ若干18歳の彼ら。以前見たライブ映像ではボーカルのロス・ファレリーがサングラスをかけていて、それなりに様になっていたのですが、この日は裸眼で登場。年齢なりといえばその通りなのですが、学生バンドの延長のような、おぼこい雰囲気が出ていました。

ただ、演奏がスタートすると、そんな失礼な(?)印象は一掃するようなハードな演奏を聴かせてくれました。この日のライブは最新アルバムより「EIGHTY-FOUR」からスタート。続いてはデビューアルバムから「WHAT A SHAME」に、最新アルバムから「BEST MAN」、さらにデビューアルバムから「WHAT THE PEOPLE DON'T SEE」と2枚のアルバムから交互の選曲が続いていきます。

合間合間には比較的短い間隔で簡単なMCが挟まれました。そのMCも「ナゴヤーー!」や「アリガトウ」など拙い日本語も。基本的にMCはリードギターのジョシュ・マクローリーが担当しつつ、比較的、MCは短めで次から次への曲が展開していくスタイルでした。

中盤は「THREE STREETS AND A VILLAGE GREEN」や「A GOOD NIGHT'S SLEEP AND A CAB FARE HOME」など、最新アルバムからの曲が続きます。正直、最新アルバムに関しては少々物足りなさを感じていたのですが、やはりライブで聴くと映えますね。例えば「VILLAGE GREEN」など明らかにCD音源に比べるとベースの音がへヴィーになっており、より重低音を聴かせるサウンドになっており、迫力があきらかに増していました。

その後も「QUEEN OF THE HALF CROWN」「GET INTO IT」など最新アルバムからのナンバーを続けつつ、「デビュー作からもやります」という簡単なMCの後、デビューアルバムから「MYSTERY MAN」「HOMETOWN GIRLS」というキラーチューンが続き、会場のテンションも一気にあがります。その後の「SCAMBAG CITY」でももちろん大盛り上がり。「ラストのフレーズではジャンプしてくれ」というMCで、みんな一斉に飛び上がり、会場の盛り上がりは最高潮に達していきます。

さらにデビューアルバムから「BLUE COLLAR JANE」と続いたわけで、個人的にはもっとも暴れまくったのがこの曲。さらに「ラスト1曲」というMCにも関わらず、その後2曲演奏してくれたのはご愛嬌(笑)。最後は「I NEED TO BE YOUR ONLY」で盛り上がりつつ本編の幕を閉じます。最後は「I NEED TO BE YOUR ONLY」というフレーズをシャウトしつつ、ボーカルのロス・ファレリーは唐突にステージ上から去っていきました。

もちろん盛大なアンコールが起こりますが、ここはあっさりすぐに再びメンバーがステージ上に登場。これまたロス・ファレリーがタイトルをシャウトしつつ、MC5のカバー「KICK OUT THE JAMS」を披露。会場を再び盛り上げつつ、その勢いのままに同じくカバー曲「YOU CAN'T JUDGE A BOOK BY THE COVER」で締めくくり。最後も盛り上がったまま唐突にぶち切るような終わり方で、ライブは幕を閉じました。

曲数は多かったのですが、短めの曲を一気に畳みかけるような内容でしたので、予想はしていたのですが、アンコール含めてわずか1時間半のライブ。とはいっても物足りなさはなく、濃密な1時間半のステージでした。

特にこの手のバンドはライブを見ないと魅力はわからないだろうなぁ、と思っていたのですが、確かにCD音源をはるかに上回る力強いステージングが魅力的でした。特にライブで感じたのはベースとドラムの強さ。これは最新アルバムの曲に特に顕著だったのですが、ベースやドラムの重低音をより押し出した演奏となっており、勢いのあるデビューアルバムの曲に比べて、勢いは劣るものの、どっしりと落ち着いた演奏を聴かせてくれていることが、ライブではよりはっきりと感じられました。

上にも書いた通り、最新アルバム「LITTLE VICTORIES」に関してはちょっと物足りなさを感じていて、この日のライブもその点は不安でした。正直言って、ライブで聴いてもやはり気持ち的にも盛り上がったのは「Snapshot」からの曲という事実は否定できません。でも、ロックンロールバンドとして「LITTLE VICTORIES」からの曲に関しても、「Snapshot」の曲と並べて聴いても遜色ありませんね。1stアルバム、2ndアルバム通じて、彼らのぶれない核の部分を明確に感じられたステージでした。

Strypes_cd

ちなみに帰り際、アルバム購入者に直筆サイン色紙がプレゼントされていたので、おもわず来日記念のライブ盤を購入(笑)。いや、買おうかどうか迷っていたものだったので・・・。なお、ライブが終わった後、グッズ購入者を対象にサイン会も実施していたみたいです。なにげにファンサービスもしっかりしていますね。THE STRYPESの魅力を存分に感じることが出来た素晴らしいステージでした。

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2015年11月15日 (日)

下ネタ含めエンタテイメント性あふれる作品

Title:祭事
Musician:餓鬼レンジャー

昨年、約8年半ぶりとなるニューアルバムをリリースした餓鬼レンジャー。そこからわずか1年3ヶ月。早くも新作がリリースとなりました。今回のアルバム、まずは聴いていて非常に楽しくなってくる、エンターテイメント性満載のアルバムでした。

イントロ挟んでの1曲目「仏恥義理」はハードコアなサウンドで硬派な部分をガツンと聴かせたかと思えば、続くケンドーコバヤシをゲストに迎えた「神の穴」は真面目そうな歌詞と思いきや、バリバリの下ネタ。続く曲もm.c.A.T.をゲストに迎え、彼のヒット曲「Bomb A Head!」をそのまま取り入れたEDMナンバー「On The Bed」も実にユニーク。こちらもタイトル通り、バリバリ下ネタを加えたナンバーになっています。

その後も硬軟取り混ぜたHIP HOPが実にユニーク。下ネタ満載のユニークなナンバーも楽しいのですが、例えばANARCHYをゲストに迎えた「MAD BOMBER」はロッキンなサウンドがカッコいいですし、leccaをゲストに迎えた「Go!Sign」もエレクトロなトラックにのせられたレゲエのリズムがとても楽しいナンバーになっています。

未来からの手紙というモチーフの歌詞がユニークな「2045」もおもしろいですし、LIBROをゲストにピアノの音色が美しい「Raindrops」もしっかり聴かせます。さらにトライバルなリズムが耳に残る「ADDICTION」は「中毒」をテーマとした歌詞がおもしろく、聴いているこちらがこの曲の「中毒」になってしまいそうです。

そんな訳で、豪華なゲストも数々そろえ、真面目な曲に関してはしっかり聴かせ、コミカルな曲に関しては楽しませる作品に仕上がっていました。特に真面目な曲に関してもフックの効いたサウンドやラップを取り入れており、全編、エンタテイメント性豊かな、ラップがあまり聴かない方でも十分楽しめるアルバムだったと思います。下ネタが苦手、という方にはあまりお勧めできない部分もあるのですが(笑)、そうでなければ幅広い層にお勧めしたい1枚です。

評価:★★★★★

餓鬼レンジャー 過去の作品
KIDS RETURN

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2015年11月14日 (土)

複雑な構成ながらもポップな内容

Title:+ -
Musician:MEW

デンマークのロックバンドMEWの約5年8ヶ月ぶりとなるニューアルバム。2003年にリリースされた「Frengers」は世界的にも大きな話題となり、日本でも評判となりました。残念ながらその後、大メジャーのソニーとの契約が切れ、ベルギーのインディーレーベルからのリリースとなったようですが、日本ではしっかり国内盤もリリースされるなど、一時期ほどではないものの、一定の人気を確保しているようです。

MEWの魅力といえば、ドリーミーなサウンドとポップなメロディーライン。特に高いポピュラリティーがあるのも関わらず、変拍子や複雑なサウンド構成を持つ楽曲が彼らの最大の特徴となっています。

今回のアルバムもそんな彼らの魅力は健在。例えば1曲目の「Satellites」では幻想的なギターのアルペジオとファルセットボイスでドリーミーに入ったかと思えば、途中からダイナミックなバンドサウンドで一気にスケール感あるサウンドへ。最後はシンセのサウンドも加わり、壮大なスケールを感じるエンディングになっています。

序盤、トライバルなサウンドで静かにスタートする「Clinging To A Bad Dream」も非常にユニーク。変拍子なサウンドで複雑なリズムを聴かせてくれるものの、メロディーラインは至ってポップ。楽曲の雰囲気はその後も二転三転してゆき、最後はドリーミーなサウンドで締めくくられます。

10分にも及ぶ長尺の「Rows」も今作のハイライトのひとつでしょう。静かにはじまり荘厳さも感じるスタートからドリーミーなサウンドで楽曲はゆっくりと進んでいきます。後半はサウンドも厚みをまし、サイケな雰囲気が魅力的。こちらも彼ららしい複雑な構成でありながら、全般的にはポップな雰囲気を保っています。

そんな感じで久々の新作ながらもMEWらしさはしっかりとつまったアルバムになっていたと思います。ただ、幻想的なサウンドとキュートなメロが心地よかった前作に比べると、メロのキュートさはちょっと弱まってしまったような感じもします。サウンドにしても狙ったのかもしれませんが、若干チープな雰囲気のサウンドプロデュースにちょっと違和感も。また、全体的に複雑な構成ながらもサウンド面もメロディー面も、これといったインパクトにちょっと薄かったかも。

MEWの魅力はしっかり感じられるものの、残念ながら前作ほどははまれませんでした。とはいえ、魅力的なバンドであることは間違いありません。一時期に比べて少々話題性は低くなってしまったのですが、「Frengers」は聴いたけどその後は・・・という方も、要チェックの1枚です。

評価:★★★★

MEW 過去の作品
No more stories Are told today I'm sorry They washed away No more stories The world is grey I'm tire

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2015年11月13日 (金)

ハイスタメンバーによるソロ作2枚

日本のパンクロックシーンに絶大な影響を与え、1999年にリリースした「MAKING THE ROAD」はインディーズでのリリースながらもミリオンセールスを記録したHi-STANDARD。2003年に活動休止したものの、2011年に活動を再開し今に至っているものの、残念ながらハイスタとしてのアルバムはその「MAKING THE ROAD」以降、リリースはありません。

そんな中・・・と言ってしまっていいのかは微妙なのですが、Hi-STANDARDのメンバーそれぞれのソロ活動でのアルバムが同日にリリースされました。

Title:SENTIMENTAL TRASH
Musician:Ken Yokoyama

まずはハイスタのギタリスト、横山健のソロアルバム。BBQ CHICKENSとしての活動もありますが、ソロ名義でのアルバムとしてはこれが6作目となります。

基本的に彼のアルバムはハイスタと同様メロディアスパンク路線なのですが、今回のアルバムはロックンロールを軸にバリエーションの多いアルバムと事前に聴いていました。そして聴いてみた印象としては確かにバリエーションの多いアルバムには間違いありません。「Boys Don't Cry」は分厚いサウンドでパワーポップ路線の色合いが強い作品になっていますし、「Yellow Trash Blues」はガレージサウンド風、「A Beautiful Song」はストリングスを取り入れて壮大なバラードになっていますし、最後の「Pressure Drop」では軽快なスカのリズムも取り入れています。

ただ、アルバム全体としては言うほどバリエーションは多いという印象はないかも、というのが正直な感想。いや、実際には上に書いた通り様々な作風の曲が入っているのですが、基本路線はメロディアスパンクという意味ではいままでの作品と同様。横山健というミュージシャンがこのアルバムで方向性を大きく変えた、という印象はありません。そういう意味ではファンにとっても良くも悪くも安心して楽しめるアルバムだったと思います。

で、このアルバムと同日にリリースされたのは、ハイスタのボーカル難波章浩率いるバンド、NAMBA48のニューミニアルバムです。

Title:LET IT ROCK
Musician:NAMBA69

こちらもわずか6曲入りのミニアルバムで、「REVOLUTION」のようなハードコア風の曲もありつつも、基本的にはみなメロディアスパンクな曲風。ソロデビュー直後のULTRA BRAiNなどの活動ではハイスタからその作風をあえて変えたような路線をとったのですが、その後、難波章浩名義ではメロパンク路線に回帰し、基本的にその路線が続いている印象です。

メロディアスパンク路線という意味ではKen YokoyamaもNAMBA69もその根っこにあるものは共通している印象が。さすが同じバンドで共に歩んできただけある、といった印象を受けます。ただハードコア志向が強いKen Yokoyamaに比べて、NAMBA69はあくまでもメロディアスな路線を貫いているという点で微妙に異なるところがおもしろく感じました。

どちらの作品もメロパンク好きなら安心して聴けるアルバム。ハイスタファンなら両方ともチェックしておきたい作品でしょう。2人とも今後も精力的にソロでの活動を続けていきそう。で、ハイスタとしてはどういった活動になるんだろう?

評価:
Ken Yokoyama ★★★★
NAMBA69 ★★★★

Ken Yokoyama 過去の作品
Four
Best Wishes

NAMBA69 過去の作品
21st CENTURY DREAMS


ほかに聴いたアルバム

くもゆきのいろ/くもゆき

おおはた雄一とチャットモンチーの福岡晃子が結成したユニット。子供から大人までが楽しめる曲というのがコンセプトで、NHKの子供向け番組「おかあさんといっしょ」にも「じゃくじゃくあまのじゃく」という曲を提供していたりします。ただ楽曲は確かに子供受けしそうな同じ言葉をただ繰り返すような歌詞が多い一方、メロディーやサウンドはフォークやブルースの影響を感じる、意外と「大人」な楽曲。個人的には「じゃくじゃくあまのじゃく」みたいな無邪気に楽しめるポップスをもうちょっと期待していたのですが。

評価:★★★★

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2015年11月12日 (木)

やはり強いビートルズ

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

相変わらずの強さを見せつけました。

今週1位はThe Beatles「The Beatles 1」。もともとは2000年にリリースされた、彼らの楽曲のうち、イギリスのミュージック・ウィークもしくはアメリカのビルボードの両方、あるいはどちらかで1位の曲のみを集めたベスト盤。その後、2011年にリマスター盤がリリースされましたが、このたび、この「The Beatles 1」に彼らのPVを収録したDVD/ブルーレイをつけて再リリース。全世界同時発売ということで金曜日発売となったのですが、初動売上7万8千枚を売り上げ、見事1位獲得となりました。

ちなみに2000年にリリースされた時は月曜日という発売日の都合上、初動売上は22万8千枚(2位)。翌週には46万9千枚を売り上げ、1位を獲得しています。さすがにこの時の初動売上よりは大きく売り上げを落としています。

The Beatlesはここ最近、毎年、なんらかの形でアイテムをリリース。CDがすっかり売れなくなった中、レコード会社にとっては絶好の「ネタ」となっている感じがします。ただ、それでも売れてしまうところが彼らのすごいところで・・・。昨年は6月に、かつて60年代に日本で発売された日本独自編集でのアルバムをボックスセットでまとめた「ミート・ザ・ビートルズ<JAPAN BOX>」をリリース。初動5千枚で19位にランクイン。さらにその前年にはイギリスのラジオ局BBCのライブ音源をまとめた「オン・エア~ライヴ・アット・ザ・BBC Vol.2」をリリースし、初動売上2万5千枚で3位にランクインさせています。

今回は金曜日リリースで初動7万8千枚ということで、その注目の高さをうかがわさせます。さすがプロモーションビデオ収録というのは魅力的だったようで・・・ま、かくいう私も買ってしまったのですが(^ ^;;毎年のように散在を強いられるビートルズファンですが、来年もまだまだ「ネタ」は続くのでしょうか?

2位は韓国の男性アイドルグループMYNAMEの初となるベストアルバム「MYBESTNAME!」がランクイン。初動売上3万5千枚は直近のオリジナルアルバム「I.M.G.~without you~」の4万5千枚(2位)よりダウン。アイドルグループではよくありがちなのですが、浮動層を全くつかめていない結果となっています。

3位には先週まで2週連続1位だった嵐「Japonism」が2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場です。まず4位にWANIMA「Are You Coming?」がランクイン。PIZZA OF DEATH RECORDS所属のパンクバンドで、今年はサマソニやROCK IN JAPANなどをはじめ数多くの夏フェスに参加。徐々に人気を高め、この1stフルアルバムでいきなり初登場4位という結果となりました。初動売上2万3千枚。前作となるミニアルバム「Can Not Behaved!!」の3千枚(21位)より大きくアップしています。

5位には女性シンガーソングライターMACO「FIRST KISS」が入ってきました。これが初のフルアルバム。初動売上1万2千枚。前作はミニアルバム「23」に、インディー時代のミニアルバム「22」の曲を追加して再リリースした「23 plus」で初動4千枚(25位)。また前作のミニアルバム「23」以来のベスト10ヒットで、「23」の初動8千枚(10位)よりもアップしています。

6位初登場はMay J.「May J. sings Disney」。May J.といえば「アナ雪」の主題歌「Let it Go」のカバーで知られていますが、そのあまりのゴリ押しぶりにネットでは大バッシングを受けました。それにも関らず、というかそんな炎上などなかったかのように、ディズニーソングのカバーアルバムを堂々とリリースするあたりが逆にすごい・・・。もちろん、あの「Let it Go」も入っています。で、それなりに売れちゃうあたり、なんだかんだいっても「Let it Go」を歌うMay J.を求めるリスナー層も多いってことなんでしょう。初動売上は9千枚。直近のリリースはベスト盤.「May J. W BEST -Original & Covers-」でこちらの初動1万枚(7位)よりは若干のダウン。直近のオリジナルアルバム「Imperfection」の1万6千枚(3位)よりは大きくダウンしています。

7位には人気女性声優小倉唯と石原夏織によるユニットゆいかおり「Bright Canary」がランクイン。シングルではいままで2作、ベスト10ヒットを記録していますが、アルバムでは3作目にして初のベスト10ヒット。ただし、初動売上8千枚は前作「Bunny」の1万枚(15位)よりダウンしています。

今週、ちょっと珍しいのはシングル主導の女性アイドルグループのアルバムが2枚ランクインしていること。8位にSNSサイト「pixiv」によるアイドルグループ虹のコンキスタドールのデビューアルバム「レインボウスペクトラム」が、10位には同じくアイドルグループP.IDL「モンゴリア~ンチョップ!」がランクインしています。

虹のコンキスタドールは初動7千枚。ちなみにシングルの直近作「THE☆有頂天サマー!!」の2万7千枚(2位)からは大きくダウンしています。一方、P.IDLは初動6千枚でシングルアルバム通じて初のベスト10ヒット。ただしシングルの直近作「夏っ!」の7千枚(13位)からはダウンしています。

アルバム初登場はあと1枚。9位に「TVアニメ『Chalotte』Original Soundtrack」がランクインしています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2015年11月11日 (水)

今週は男性アイドルグループ

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

先週は女性アイドル勢が目立ったシングルチャートでしたが、今週は男性アイドル勢が目立つチャートとなりました。

まず1位は韓流の男性アイドルグループ。EXOの日本デビューシングル「Love Me Right ~romantic universe~」が1位獲得。初動売上14万6千枚で、これは韓国出身歌手のデビューシングルでの歴代最高記録だそうです。

参考サイト EXO、日本デビュー曲が首位 韓国歌手歴代1位の初週14.7万枚

ただいままでも輸入盤という形でアルバムチャートではベスト10入りしており、日本デビューをあえてせずに人気を徐々に高めていったスタイル。ある意味、人気が出るまでCDデビューを避けるジャニーズ系と似たような構造かも。もっとも、最近ではすっかりブームが去ってしまった韓流で、一体どこにこれだけのファンがいるんだ?とは思ってしまうのですが。まあ、11種類同時発売とか、ドーピング仕様も初動売上を高めた要因ではあると思うのですが。

2位初登場も男性グループ。スターダストプロモーション所属の、バンド形式をとっている男性アイドルグループDISH//「俺たちルーキーズ」がランクイン。テレビ東京系ドラマ「釣りバカ日誌 新入社員 浜崎伝助」主題歌。本作は氣志團の綾小路翔が作詞を、西園寺瞳が作曲を手掛けたナンバーだそうです。初動売上4万4千枚は前作「イエ~ィ!!☆夏休み」の2万8千枚(3位)からアップ。

3位にも男性アイドルグループDa-iCE「HELLO」がランクイン。EDMチューンが続いていましたが本作は彼らの持ち味らしいハイトーンのコーラスラインを生かした聴かせるナンバーになっています。初動売上3万5千枚は前作「エビバディ」の3万8千枚(3位)からダウン。

続いて4位以下初登場ですが、こちらはむしろ女性陣が目立つ結果となっています。

まず5位には女性4人組バンドSilent Siren「alarm」が入ってきました。日テレ系ドラマ「いつかティファニーで朝食を」主題歌。90年代J-POPからそのまま抜け出してきたようなアレンジにアイドル色が強いボーカルが良くも悪くもヒットチャート王道系といった印象。初動1万8千枚は前作「八月の夜」の1万5千枚(8位)からアップ。

6位は女優の大原櫻子「キミを忘れないよ」。思いっきりラブソングのバラードナンバーなのですが、こちら映画「ちびまる子ちゃん」挿入歌で、作詞もさくらももこなんですが、今回の「ちびまる子ちゃん」の映画ってこんなラブストーリーなの??少なくとも私のイメージする「ちびまる子ちゃん」とはかなりかけ離れた曲の内容な気がするのですが・・・。

7位初登場も女性陣。「ラブライブ!」などで人気の女性声優Pile「ドリームトリガー」。マイナーコード主体のいかにもアニソンといった感じのナンバー。初動売上1万1千枚で、前作「キミがくれたKISEKI」の8千枚(15位)よりアップで、初のベスト10ヒット。

さらに8位初登場いきものがかり「ラブとピース!」もボーカルは女性陣。テレビ朝日系ドラマ「遺産争族」主題歌。80年代あたりの古き良き(?)歌謡曲を彷彿とさせるような大人っぽいナンバー。初動売上1万枚は前作「あなた」の1万4千枚(10位)からダウン。

最後は今週初登場では唯一の女性アイドルグループ、福岡のローカルアイドルグループHR「トイ・ソルジャー」が9位。初動売上1万枚は前作「夏色キャンディー」の1万4千枚(7位)からダウンしています。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に!

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2015年11月10日 (火)

デイヴ・フリッドマン不在の中

Title:The Light In You
Musician:Mercury Rev

前作「Snowflake Midnight」と、その姉妹盤としてネットでのフリーダウンロードでのリリースとなった「Strange Attractor」から約7年。久々となるMercury Revのニューアルバムがリリースされました。今回、残念だったのはサウンドの面でのブレーンとも言うべきデイヴ・フリッドマンが本作に参加していない点。他のメンバーであるジョナサン・ドナヒューとグラスホッパーの2人だけでつくられたそうで、その結果が気になりました。

そんなことが気にかかったアルバムではあったのですが、アルバムは序盤から彼らの持ち味であるドリーミーなサウンドが全開していきます。冒頭を飾る「The Queens of Swans」ではアコースティックなサウンドで静かに入ったかと思えば、途中からストリングスやバンドサウンドが入る分厚いサウンドになり、ドリーミーに盛り上がっていき、続く「Amelie」もオーケストレーションのダイナミックな構成がドリーミーで魅力的な作品に仕上がっています。

そんなドリーミーなサウンドの中、ちゃんとインパクトを持って主張しているメロディーラインもまた魅力的。「Coming up for Air」はかわいらしさを感じるキュートなメロディーが耳を惹きますし、「Are You Ready?」はホワイトノイズを奏でるギターが印象的なバンドサウンドを前に押し出したサイケな作風でありつつ、メロディーラインもそれにまけないインパクトあるものに仕上げています。

ドリーミーでポップな楽曲が全編に繰り広げられる本作。ラストを締めくくるのが「Rainy Day Record」というホーンセッションも入ったポップでにぎやかな曲でライブでも盛り上がりそう、というのがまた楽しいところ。久々の新作でデイヴ・フリードマン不在という条件の中、ファンにとってはまずまず満足できる出来だったのではないでしょうか。

ただ彼らの作品の中で手放しで傑作と言えるかといわれるとちょっと躊躇するところ。ドリーミーな作風にするのにストリングスに頼りすぎな感じがして、作風として独特な構成、おもしろみみたいなものはちょっと薄いようにも感じました。期待通りではあるけれどもプラスアルファがない、意外性がないように感じられました。

アルバムとしては決して悪くはなく、それなりに楽しめた作品ではあるとは思うのですが・・・次回作はさらなる傑作を期待したいところ。もっと短いスパンで聴ければいいのですが。

評価:★★★★

Mercury Rev 過去の作品
The Essential Of Marcury Rev
Snowflake Midnight
Strange Attractor


ほかに聴いたアルバム

Strut/Lenny Kravitz

これが10枚目となるレニー・クラビッツの新作。冒頭を飾る「Sex」はじめファンキーなロックンロールナンバーはやはりカッコよく耳を惹きます。良くも悪くもレニー・クラビッツ節が全開しているアルバム。前作でも感じたのですが、リスナーの壺をついたサウンドには器用さも感じられました。

評価:★★★★

Lenny Kravitz 過去の作品
Black and White America

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2015年11月 9日 (月)

不思議な感触のアルバム

Title:セロファンの空
Musician:湯川潮音

湯川潮音の1年半ぶりとなるニューアルバム。微妙なダサジャケとなった本作ですが(笑)、聴いてみて、なんともいえない不思議な感触を覚えたアルバムになってみました。

聴き始めて序盤に関しては、幻想的な世界観は感じるものの、インパクトも薄く平凡なアルバム、という印象をまず抱きました。アコースティックサウンドがベースの「birch」にしても「未来のルーシー」にしても、輪郭のはっきりしたポップなメロディーラインが流れているがゆえに、「普通のJ-POP」的な捉え方をしてしまい、「普通のJ-POP」としてはインパクトが薄いな、という印象をまず受けました。

ただ、この「わかりやすいメロディーライン」の曲が単なるつかみだった、と気づくのはその後。続く「役者」は複雑なドラムスとリズムとアコギのからみが非常にユニーク。そこに流れるフルートとストリングスの音色が奏でるファンタジックな雰囲気にまずは「おや?」といった印象を受けます。

さらに強く印象に残ったのが続く「i l l i...」。タイトルからして奇妙なこの曲は細かいリズムトラックにシンセやホーンの音色が複雑にからみあい、さらにそこに重なるハイトーンボイスで、ファンタジックながらも奇妙な世界を作り出しています。

もともと湯川潮音の曲といえば、アコースティックなサウンドで幻想的な世界観を作り出していました。ただここ最近の彼女のアルバムはその雰囲気は魅力的だったのですが、サウンドも含めていまひとつインパクトが薄い、という印象をうけていました。

しかし今回のアルバムは、その幻想的な世界観という方向性はそのままに、アコースティックメインだったここ最近の作品から一転、ギターサウンドやドラムス、ホーンセッションやシンセのサウンドなどを積極的に取り込み、その音の世界を一気に広げています。

その後に続く「ハイエナのイエナ」ではアカペラからスタートし、美しい世界観を広げつつ、中盤から登場するバンドサウンドでアカペラで築き上げた幻想的な世界が崩されるスタイルがユニーク。さらに「ジョーカー」でもノイジーなギターサウンドとへヴィーなドラムスが繰り広げるダイナミックな音が魅力的。ここ最近の彼女の曲にはないサウンド構成でありながら、ちゃんと湯川潮音の世界を作り上げていました。

もともとその世界観には独特の魅力があっただけに、サウンドできちんとインパクトを出してきたら、そりゃあ傑作が産まれるでしょう。そしてそんな傑作がまさに本作。様々に繰り広げられる音の世界に、聴き終わった後、実に不思議な感触を覚える作品になっていました。彼女の魅力を存分に感じることが出来る傑作でした。

評価:★★★★★

湯川潮音 過去の作品
灰色とわたし
Sweet Children O'Mine
クレシェンド
濡れない音符


ほかに聴いたアルバム

DOGMA/the GazettE

約2年ぶりとなる新作。前作「BEAUTIFUL DEFORMITY」はバンドのへヴィネスさを前に押し出した作品になっていましたが、本作も特に前半、ハードコア路線を前面に押し出した作品になっていました。後半は耽美的なボーカルのいかにもビジュアル系といった雰囲気の曲が多かったものの、全体的にはビジュアル系が苦手な層にもアピールできそうな内容になっていました。ただ、ハードコア路線が全体的に「どこかで聴いたような」感があり、個性が若干薄いのが残念なのですが。

評価:★★★★

the GazettE 過去の作品
TRACES BEST OF 2005-2009
DIM
TOXIC
DIVISION
BEAUTIFUL DEFORMITY

夢のおかわり/フラワーカンパニーズ

今年12月、初の武道館ライブを予定しているフラワーカンパニーズのミニアルバム。派手な活躍がなくても一生懸命がんばっている人たちへの応援歌「消えぞこない」や、大人になっても子供の時のような夢を見続ける人たちを歌った「三十三年寝太郎BOP」など彼ららしい歌詞を骨太なロックにのせて歌い上げます。ある意味、非常にフラカンらしい楽曲が並んでいて、武道館を前にフラカンとはどんなバンドか知るためにはうってつけの1枚。ただ、短い内容なだけに一度聴いたら忘れられないような核になるような曲がないのがちょっと残念なのですが。

評価:★★★★

フラワーカンパニーズ 過去の作品
フラカン入門
ハッピーエンド
新・フラカン入門
Stayin' Alive

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2015年11月 8日 (日)

アラフォー世代になじみの深いアレンジャー

Title:LIFE IS A SONG

80年代から数多くのヒット曲のアレンジを手掛けてきたアレンジャー清水信之。そのアレンジャー歴35周年を記念したアルバムがリリースされました。彼がアレンジを手掛けた楽曲を2枚組全39曲を収録した作品。さらに最後には新曲「終わらない歌」を収録。清水信之with Best Friends名義のこの曲は、作詞秋元康、作曲大江千里、さらにボーカルには彼がかつてアレンジを手掛けた岡村孝子、谷村有美、渡辺美里などなど豪華なメンバーがズラリと参加しています。

今回、このオムニバスアルバムを聴いたのはやはり清水信之というアレンジャーに個人的に思い入れがあったから。私にとって清水信之といえばなんといっても渡辺美里の楽曲のアレンジを数多く手がけたアレンジャー。今回のアルバムでも「恋したっていいじゃない」が収録されていますが、他にもアルバム曲が中心になるのですが、数多くの楽曲のアレンジを手掛けています。

他にも、このアルバムにも収録されている大江千里や岡村靖幸、谷村有美や平松愛理など、90年代のエピックソニー、ソニーレコード系のミュージシャンのアレンジを数多く手掛けている彼。個人的にこのあたりのミュージシャンは高校生や大学生の頃よく聴いたミュージシャンたちであり、そういう意味でも個人的に最も馴染みのあるアレンジャーの一人だったりします。

ただ、昔、渡辺美里をよく聴いていた頃の清水信之のアレンジのイメージというと無味無臭。まあ特に小室哲哉によるこってりとしたインパクト満点の曲との比較になってしまっていたということもあるのですが、良くも悪くもあまり独特の「色」がないアレンジをするな、という印象を、漠然としてですが抱いていました。

もっとも、この強い色を持たないアレンジをするからこそ、今回のアルバムに収録された曲を見てもわかる通り、幅広いタイプの曲のアレンジを手掛けることが出来たのではないでしょうか。今回のアルバムでも、シンガーソングライターから岡村ちゃんのようなファンク系、ゴスペラーズのようなアカペラシンガーにさらに「たこやきなんぼマンボ」のような「おかあさんといっしょ」の楽曲まで手掛けています。また、比較的アイドルの曲のアレンジを多く手掛けているのですが、アレンジよりまずは歌手の歌自体が重要となってくるアイドルソングもまた、彼のアレンジとの相性が良かったのではないでしょうか。

とはいうものの、このアルバムで彼のアレンジの曲を並べて聴くと、やはり彼のアレンジの特徴が良く見えてきます。その特徴は、大江千里の「REAL」や中山美穂の「色・ホワイトブレンド」あたりに顕著なのですが、軽い質感のシンセのメロを比較的前に押し出したようなアレンジ。もちろん、このタイプの曲ばかりではないものの、シンセを積極的に取り入れたアレンジの曲は数多く見受けられました。

その傾向は最近の楽曲までも強い特徴として持っており、例えば比較的最近手掛けた、AKB48渡辺麻友のソロ作「麻友のために」などもまさにその傾向が顕著に出たアレンジとなっています。

そんなアレンジャー清水信之の楽曲を網羅的に楽しめるアルバム。前述の通り、基本的にいろいろなタイプの曲を手掛ける彼だけに、清水信之の癖が前面に出ていることはなく、どちらかというと80年代から最近のポップソングまで、ヒット曲集的に楽しめるオムニバスアルバムにもなっていました。

その中でちょっと気になったのが、前述のここ最近の曲まで、90年代風のアレンジが普通に通用してしまっている点。もちろん、清水信之のアレンジにそれだけの普遍性がある、とポジティブに評価することもできるのですが、一方で、90年代J-POPが20年以上を経過しても、それほど進化していない、というネガティブにも評価できてしまうんですよね。確かに、いまだに90年代風のJ-POPが普通のヒットしていたりするからなぁ・・・。彼の仕事を通じて、そんな現在のシーンに対する問題点まで感じてしまったオムニバスアルバムでした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

娑婆ラバ/パスピエ

前作「幕の内ISM」ではよりポップ路線に走ったパスピエですが、本作はさらにポップ路線に。もともと、ハイトーンボイスのボーカルはアイドルっぽい雰囲気を出していましたが、本作ではあまり良くない意味で「アイドル歌謡曲」的な雰囲気が強くなってしまっている感が。今時のJ-POP風のアレンジ過剰気味な方向性も気にかかります。悪い意味で今時のバンドだよなぁ、といった印象を受ける作品でした。

評価:★★★

パスピエ 過去の作品
ONOMIMONO
演出家出演
幕の内ISM

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2015年11月 7日 (土)

1位に返り咲き

Title:Keep The Village Alive
Musician:Stereophonics

日本では「そこそこ」の人気にとどまっているものの、本国イギリスでは国民的人気を誇るロックバンド、Stereophonics。2ndアルバム「Performance and Cocktails」から6thアルバム「Pull the Pin」までアルバムチャート連続1位記録を続けました。7thアルバム「Keep Calm and Carry On」はチャート11位と不調だったようですが(ただ、アルバムの内容としては傑作でしたが)、前作でもある「Graffiti on the Train」は最高位3位と盛り返し、そして本作「Keep the Village Alive」は3作ぶりとなるチャート1位に返り咲いています。

そんなStereophonicsの魅力は、悪い意味ではなく、ベタなわかりやすさだよな、という印象を受けます。例えば「I Wanna Get Lost With You」とか「Sunny」とか哀愁あふれるメロディーラインは、日本人の琴線にも触れそうですが、いかにもイギリスのロックといった感じの湿気が高いメロディーライン。こういうタイプの曲って、日本で言うところの「歌謡曲」のイギリス版と位置づけられそう?

また、ロックという観点から見ても分厚いギターサウンドに軽快なリズムとポップなメロディーが心地よい「C'est La Vie」からはじまり、「White Lies」はスタジアムバンドの彼ららしいスケール感あるミディアムテンポなナンバー。さらにガレージ風なギターサウンドが軽快な「Sing Little Sister」とバラエティー富みながらも、「いかにも」な感じのギターロックチューンが続きます。前作「Graffiti On The Train」の感想では「ロックを聴いたなぁ、と感じさせる作品」と書いたのですが、今回のアルバムもそんな満足感を覚える楽曲が多く含まれています。

ただ今回のアルバムで特徴的だったのは中盤以降、例えば「Song For The Summer」「Into The World」など、アコースティックギターやピアノ、あるいはストリングスを積極的に取り入れた、アコースティックテイストに憂いを帯びたメロディーラインを聴かせるようなナンバーが目立っていたように思います。もちろん、上に書いた通り、ロックバンドとして、そのバンドサウンドを聴かせる曲をきちんと収録しつつ、彼らの魅力はそれだけではない、ということをより強調した作品だったように感じました。

まあ、確かにこれらの曲に関しては決して目新しいといった感じではありませんし、メロディーラインにしても一度聴いたら思わず口ずさむほどのインパクトがある、といった感じでもありません。だから、残念ながら日本ではメディアでもあまり大きく取り上げられないのかもしれません・・・。

ただ、ロックリスナー、特にイギリスのロックが好きな方なら文句なく楽しめる作品。これは「良くも悪くも」になってしまうのですが、安心して聴ける1枚だと思います。逆にだからこそイギリスでは高い人気を誇っているんでしょうね。今後もこの人気は続きそうです。

評価:★★★★

STEREOPHONICS 過去の作品
Decade In The Sun-Best Of Stereophonics
KEEP CALM AND CARRY ON
Graffiti On The Train

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2015年11月 6日 (金)

いままで以上に強いメッセージ性

Title;にじむ残響、バザールの夢
Musician:中川敬

ソウルフラワーユニオンの中川敬によるソロアルバム第3弾。自称「大物新人フォーク歌手」である彼のソロアルバムは、毎作、アコースティックギターがメインの構成となり、フォーク色が強い作品なのですが、今回の作品はよりフォーク色が強くなったように思います。冒頭の「十字路の詩」など、爽やかなアコギの音色など、もろ四畳半フォークといった雰囲気ですし、「ひとつの小さな名前」なども三線が入っていてソウルフラワーらしい雰囲気がありつつも、フォークギターを前に押し出したアレンジは、そのまんまフォークソングといった雰囲気になっています。

さて、中川敬、あるいはソウルフラワーユニオンといえばご存じの通り、その活動、MCやTwitterでの発言などでリベラル寄りの政治的発言が多くみられます。特に最近は、安保法案や原発問題、ヘイトスピーチや米軍基地の辺野古移設問題などで積極的な発言、あるいは活動を続けています。そんな中、安保にしろ辺野古にしろ政府による強権的な施策が特に目立つようになってきましたし、露骨な差別を繰り広げるいわゆる「ヘイトスピーチ」も残念ながら全くやんでいません。

そんな現状からでしょうか、いままでの彼のソロ作はどちらかというと素朴な感じの曲が多かったのですが、今回のアルバムに関してはまず非常に「重さ」を感じました。重さというのは音楽的な話ではありません。爽やかなアコースティックギターが鳴り響く作風には重さは全くありません。また、今回の作品でも声高に政治的な主張を直接的に叫んでいる部分はあまりありません。

ただ、今回の作品で彼が書いた歌詞からは、明確に昨今の日本に対するメッセージを読み取ることが出来ます。例えば「十字路の詩」で描かれている風景は、デモの現場の状況を描写した内容になっていますし、東京大空襲の後の戦災孤児を描いた「地下道の底で夢を見てる」は戦争反対というメッセージから、昨今話題の安保法制に対するメッセージ性を感じることが出来ます。

一方今回のアルバム、後半はカバーソングが並んでいます。前半の重いメッセージ性を込めた曲に比べると、こちらは比較的優しい歌が並んでいます。シーナ&ロケットや忌野清志郎、あるいはルー・リードなどのカバーが並び中、その筆頭に来ているのが朝鮮民謡の「アリラン」というのもまた、中川敬からのメッセージ性は感じる並びになっています。

そんな訳でオリジナルからは強いメッセージ性と、カバー曲からは優しさを感じさせるアルバム。アルバム全体としてはやはり「重さ」を感じさせる部分が多く、個人的には気軽に聴けるこれまでのアルバムに比べると、少々頭でっかちさを感じてしまいました。また、ちょっと気になったのは、この現状を打破するためのおそらくメッセージとして最後に収録されたイギリスのミュージシャン、ビリー・ブラッグのカバー「団結は力なり」「聞け 万国の労働者 団結こそが力なり」と歌われる、それこそここ100年くらいの単位で何ら変わり映えのしないメッセージ性に、ここ最近、リベラル勢力が退潮である理由をイタイほど感じてしまいます。個人主義が広がり、多様性が重視される現在において、こういうメッセージが広く支持されるとは、正直とても思えません。自分たちの主義主張を広めるのならば、正しいことを声高に叫ぶのではなく、自分たちの主張を受け入れてもらうためには伝え方にどのような工夫をすればよいのかというのが重要だと思うのですが・・・昨今のリベラル勢はこの視点がもっとも欠けているように思えてなりません。

そんな気になる部分もありつつ、ただアルバム全体としてはやはり強いメッセージ性含めて中川敬というミュージシャンの魅力と、そして信念が伝わってくる傑作だったと思います。さすがは「大物新人フォーク歌手」です。

評価:★★★★★

中川敬 過去の作品
街道筋の着地しないブルース
銀河のほとり、路上の花


ほかに聴いたアルバム

es or s/凛として時雨

全5曲入りのミニアルバム。急かすようなハイテンポの演奏に男女ボーカルが交互に展開される「SOSOS」を主軸に、ガレージ風のギターリフが展開するロック色強い「Karma Siren」や悲しげなメロディーが印象的な「end roll fiction」などそれなりにバリエーションを展開させつつも、結局はあのハイトーンボイスで聴いた後、似たような後味しか残らない点、ボーカルが彼らの強みでもある一方、弱みでもあるんだよなぁ。

評価:★★★★

凛として時雨 過去の作品
just A moment
still a Sigure virgin?
i'mperfect
Best of Tornado

岡本真夜 20th Anniversary ALL TIME BEST~みんなの頑張るを応援する~/岡本真夜

いや、お前が頑張れ・・・と思わず言いたくなってしまう岡本真夜のベストアルバム。さすがにそろそろこの手の「前向き応援歌」を歌い続けるには年齢的に厳しいのでは・・・なんて思ってしまいます。デビュー当初から「Alone」みたいな大人のポップスも歌ってきた彼女なだけに、無理に「前向き応援歌」スタイルを続ける必要はないと思うんだけど。とはいえ、なんだかんだいってもやはり耳に残るポップソングは書き続けているな、とは思います。それだけに、失礼ながらも年齢なりの曲を・・・とも思ってしまうのですが。

評価:★★★★

岡本真夜 過去の作品
seasons
Crystal Scenery II
My Favorites
Close To You
Tomorrow

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2015年11月 5日 (木)

2週連続

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

まず1位は先週に引き続き2週連続の1位となりました。「Japonism」。売上は先週の82万枚から5万6千枚に大幅ダウンしていますが、今週も1位をキープしました。

初登場組でのトップは2位初登場斉藤和義「風の果てまで」。前作は「斉藤」と「和義」の2枚組で、2位3位とランクインしてきたので、事実上、「45 STONES」から3作連続の2位獲得となりました。ただ初動売上2万4千枚は前作「斉藤」「和義」のそれぞれ3万2千枚、2万8千枚のいずれからもダウン。ここ数作、上り調子が続いていましたが、残念ながら頭打ちになってしまいました。

3位初登場はスターダストプロモーション所属の名古屋在住のアイドルから結成されたチームしゃちほこ「ええじゃないか」。9月にリリースされた「いいじゃないか」に続く2ヶ月連続リリース。順位は前作の6位から3位とあがりましたが初動売上は1万3千枚と横バイ。

続いて4位以下の初登場です。まず4位にゲーム「アイドルマスターミリオンガールズ!」からのキャラソンのアルバム「THE IDOLM@STER LIVE THE@TER DREAMERS 02」がランクイン。初動売上1万2千枚。同シリーズの第1弾はシングルでのリリースで、春日未来(山崎はるか),最上静香(田所あずさ),伊吹翼(Machico) 「THE IDOLM@STER LIVE THE@TER DREAMERS 01 Dreaming!」。こちらの初動4万7千枚(3位)よりダウン。また、アルバムとしては今年4月に2枚同時ランクインしてきたミルキーウェイ「アイドルマスター ミリオンライブ! THE IDOLM@STER LIVE THE@TER HARMONY 09」、ARRIVE「アイドルマスター ミリオンライブ! THE IDOLM@STER LIVE THE@TER HARMONY 10」以来。こちらはいずれも1万1千枚(前者が5位、後者が6位)で、若干のアップとなっています。

5位初登場はFunky Galaxy from 超新星「Funky Galaxy」。ミュージシャン名通り、韓流の男性アイドルグループ超新星からグァンス、ゴニル、ジヒョクの3名で結成した派生ユニット。初動売上は1万枚。超新星本体の直近アルバム「7IRO」の2万6千枚(3位)から大幅減。また同じ超新星からのソローレビュー組としてはユナク 「STARTING OVER」が初動1万1千枚(5位)、ソンモ「Tiramisu love」が初動2万5千枚(3位)でしたので、いずれからもダウンしています。

6位には人気男性声優柿原徹也のミニアルバム「orange」がランクイン。シングルアルバム通じて初のベスト10ヒット。初動8千枚は前作「ダンディギ・ダン」の5千枚(12位)よりアップ。

7位にはGLAY「SPEED POP Anthology」が入ってきました。1995年にリリースされた彼らのメジャーデビューアルバム「SPEED POP」をリマスター。さらにDisc2として未発表音源やデモ音源、ドキュメンタリーをおさめたDVDをつけてのリリースとなります。「Anthology」シリーズとしては第3弾。過去作のリマスターとしてはインディー時代の「灰とダイヤモンド」に続く2作目となります。初動売上は7千枚。直近のアルバム「MUSIC LIFE」の5万7千枚(2位)よりはさすがに大きくダウン。Anthologyシリーズの前作「灰とダイヤモンド Anthology」の1万3千枚(10位)よりもダウンしています。

8位にはイギリスのへヴィーメタルバンドDEF LEPPARDのセルフタイトル作「DEF LEPPARD」がランクイン。順位は最高位25位だった7年前の前作「Songs From The Sparkle Lounge」から大幅アップ。ただし、初動売上6千枚は前作から横バイとなっています。

最後9位にはイギリスの男性4人組コーラスグループIL DIVO「Amor & Pasión」がランクインです。こちらの初動売上6千枚は前作「A Musical Affair」の1万6千枚(9位)より大幅減となりました。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2015年11月 4日 (水)

あいかわらずの女性アイドルグループ

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

今週のシングルチャートはまた、女性アイドル勢が目立つチャートとなっています。

まず1位はAKB48関連。乃木坂46「今、話したい誰かがいる」。映画「心が叫びたがってるんだ。」主題歌。相変わらず王道の清純派アイドルといった様相のポップ。初動売上62万6千枚は前作「太陽ノック」の60万9千枚(1位)からアップ。

女性アイドルグループは、まずは2位℃-ute「ありがとう~無限のエール~」がランクイン。日本レスリング協会公認選手団讃歌だそうですが、正直、いかにも最近のJ-POPらしい前向き応援歌で薄っぺらい・・・。初動売上6万9千枚は前作「The Middle Management~女性中間管理職~」の6万枚(3位)からアップ。

4位にはPerfume「STAR TRAIN」がランクイン。作詞作曲プロデュースはもちろん中田ヤスタカ。エレクトロアレンジなのですが、ダンス色は薄く、歌って聴かせるタイプのテクノポップになっています。初動売上6万5千枚は前作「Relax In The City」の6万1千枚(2位)よりアップ。

もう1組、10位に放課後プリンセス「消えて、白雪姫」が入ってきています。マイナーコードでアップテンポという、一昔前の歌謡曲スタイルのポップス。初動売上1万4千枚は前作「真夏の夜の夢」の1万1千枚(7位)からアップ。

そんな女性アイドル勢の中で男性アイドルグループの中、日本勢で唯一食い込んできたのが我らが(?)TOKIO「東京ドライブ」が9位にランクイン。へヴィーなギターリフでハードロック色の強いナンバー。良くも悪くもちょっと素人っぽいところが長瀬智也作詞作曲らしいところ。初動1万7千枚は前作「LOVE,HOLIDAY」(4位)から横バイ。

さらに韓流勢からも男性アイドルグループSHINee「Sing Your Song」が5位にランクイン。ピアノの演奏が爽やかなR&B風ポップ。初動売上5万枚は前作「Your Number」の13万1千枚(2位)から大幅減。これは前作が東京ドームライブチケット付CDの売上を合算していた影響。

女性アイドルグループと同じくくらい目立ったのはアニメキャラソン。まず3位にはアニメによるアイドルプロジェクト「ラブライブ! 」よりμ’s「HEART to HEART!」がランクイン。相変わらずの90年代J-POPそのままといった感じの内容。

もうひとつキャラソン。7位にKnights「「あんさんぶるスターズ!」ユニットソングCD Vol.2「Knights」(Voice of sword)」、8位にUNDEAD「「あんさんぶるスターズ!」ユニットソングCD Vol.1「UNDEAD」(Melody in the Dark)」がそれぞれランクイン。どちらもゲーム「あんさんぶるスターズ!」登場人物のキャラソン。男性アイドル育成ゲームらしく、完全にアイドルマスターの2匹目のドジョウを狙った感じ。初動売上はそれぞれ2万6千枚と2万5千枚。

今週、唯一アイドル系でもアニメ系でもなかったのが6位初登場のEXILE SHOKICHI「IGNITION」。まあこちらもアイドル色は強いのですが。初動売上3万1千枚は前作「Don't Stop The Music」の3万6千枚(4位)からダウンしています。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に。

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2015年11月 3日 (火)

懐かしい匂い

Title:ROPEWALK
Musician:THE VIEW

イギリスのインディーロックバンド、THE VIEWの5枚目となるニューアルバム。デビュー当初は非常に注目を浴びたバンドで、デビューアルバム発売前にレディングフェスティバルに出演したり、デビューアルバム「Hats Off to the Buskers」がイギリスのチャートで1位を獲得したりと、大きな話題になりました。

ただ、残念ながらその後はいまひとつ尻すぼみ気味。前作「Cheeky For A Reason」はなんとかチャート9位に入り込んだのですが、本作では最高位21位とベスト20ヒットもできなかった模様。少々残念な結果となりました。

さて、THE VIEWといえばデビュー作からポップなメロディーラインが特徴的なバンド。基本的にギターロックを主軸にしつつも、メロディーの良さを売りにしているようなバンドでした。

そんな中でも今回のアルバムはよりメロディーラインを主軸にするような作品になっていたように感じます。「Cracks」「Tenement Light」のようにギターロック色が強い曲もあったものの全体的にバンドサウンドは後ろに下がり、ポップなメロをメインにしたような構成の曲が並んでいます。

それも今回の作品、全体的にどこか懐かしい匂いも感じられるのも特徴的。例えば冒頭を飾る「Under The Rug」にはどこか70年代の雰囲気を感じますし、軽快なポップの「Voodoo Doll」は80年代風。他にもフォーキーな「Talk About Two」にも一昔前の雰囲気を感じますし、どこか一昔前の雰囲気をアルバム全体から感じます。

ほかにもどこか懐かしいBEN FOLDS FIVEっぽいピアノパンクな「Penny」などバリエーションの豊かさも感じられるアルバム。全体的にちょっと落ち着いた感じがするのはデビューから9年、アルバムも5枚目、既に中堅バンドとなった彼らだからこそ感じられる余裕でしょうか。上にも書いた通り、もともとメロディー主体のバンドでしたが、その方向がより鮮明になったように感じます。

ただちょっと残念なのが、アルバムにいまひとつ核になるような曲がなく、アルバム全体としてのインパクトがちょっと薄い感じがしてしまう点でした。全体として勢いのなさも感じてしまいますし、それが残念ながらチャートにも反映されているようにも思います。

とはいえ、彼らの持っているメロディーラインの良さは大きな武器。下手にブレず、今の方向性を進めば、また傑作、さらには再度のブレイクも期待できるかも??とりあえず、これからも注目していきたいバンドなのは間違いないと思うのですが・・・。

評価:★★★★

the view 過去の作品
Which Bitch?
BREAD AND CIRCUSES
CHEEKY FOR A REASON

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2015年11月 2日 (月)

23年ぶり(!)のソロ

Title:CROSSEYED HEART
Musician:Keith Richards

ご存じローリング・ストーンズのギタリスト、キース・リチャーズ。ストーンズとしてはアルバムは少々ご無沙汰なのですが、そんなストーンズの新作を首を長~くして待っているファンにとっては、うれしいキースの新作がリリースされました。それも前作「MAIN OFFENDER」から23年ぶりとなる新作(!)。ストーンズファンにとっては、非常にうれしい新作のリリースです。

そんな久々となるニューアルバムは、カントリーブルースナンバーの王道を行くようなタイトルナンバー「CROSSEYED HEART」からスタートします。わずか2分弱の久々のご挨拶、といった感じのナンバーなのですが、キースの趣味性が発揮された曲で、静かに、でも力強くつまびかれるアコギの音色に耳をまず奪われます。

その後に続く「AMNESIA」「TROUBLE」などはローリング・ストーンズっぽい、と感じるような軽快なロックンロールナンバー。ここらへんの曲に関しては最初、ソロなのにこんなストーンズっぽいナンバーをやっても・・・と思ったのですが、私が感じた「ストーンズっぽさ」って要するにキースのギターサウンドのことなんだと途中で気が付きました。要するにソロだろうがストーンズだろうがキースは彼らしいギタープレイを続けていただけ、ということ。ソロでも彼のギタープレイに魅了される曲が並んでいます。

また、そんないかにもキースなロックンロールナンバーのみならずバリエーション多い内容になっているのも本作の特徴。例えばブルージーに聴かせる「ILLUSION」ではあのノラ・ジョーンズとのデゥオを聴かせてくれていますし、「LOVE OVERDUE」はレゲエ、「GOODNIGHT IRENE」はカントリー、さらに「LOVER'S PLEA」はソウルバラードとキースの音楽的な幅の広さを感じさせます。

そんなキースの音楽的な趣味性が多いに発揮された本作は、各所で「集大成」とまとめ方をされるのをよく見かけました。確かに、彼の音楽的な趣味が網羅されたような本作は集大成的と言えるのかもしれませんし、御年71歳の彼が23年ぶりのソロをリリースして、次のソロは・・・と考えると「集大成」とも言いたくなるかもしれません。

ただ、アルバムを聴くとそんな「集大成」というような気負いは今回のアルバムから感じません。むしろ、自分のやりたいことを好き勝手演った結果が今回のアルバム、といった印象を受けました。実際、今回のアルバムを聴いて、どの楽曲からもどこか彼の肩の力が抜けたようなリラックスした空気を感じます。

71歳の彼だからこそ出来る、ある種の余裕を感じる傑作。良い意味での円熟した大人のロックンロールを楽しむことが出来ます。次は、是非、ストーンズの新作を・・・。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

JHUD/Jennifer Hudson

約3年半ぶりとなるジェニファー・ハドソンのニューアルバム。半端ない歌唱力を聴かせるボーカルは相変わらず健在で、やはりそのボーカルには惹かれるものがあります。ただ本作のアレンジがどうもチープで、特にリズミカルなナンバーは彼女のボーカルを生かし切れていないような。久々の新作なのですが、ちょっと残念に感じてしまう作品でした。

評価:★★★

JENNIFER HUDSON 過去の作品
JENNIFER HUDSON
I REMEMBER ME

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2015年11月 1日 (日)

BBへ捧ぐ2冊

今年5月、御年89歳で惜しまれつつこの世を去ったB・B・KING。日本でも高い人気を誇る彼らしく、彼を追悼する2冊のムック本が発売されました。

まずはシンコーミュージックのムック本、THE DIG Special Editionという形式での追悼本「B・B・KING」。昨年、同じTHE DIGシリーズでブルースに関するムック本「ブルースの百年」が発売されましたが、その延長線上という形で、「ブルースの百年」を手掛けた音楽評論家の藤田正氏と中村政利氏による編集となっています。

一方、日本で唯一のブルース雑誌「ブルース&ソウル・レコーズ」の増刊号としてもB・B・KINGの追悼本が出されました。

「B・B・キング完全読本」と名付けられた本作は、通常の「ブルース&ソウル・レコーズ」誌のちょうど2倍の大きさの雑誌となっています。

さて、そんな私はB・B・KINGに詳しいのか、と問われれば、「LIVE AT THE REGAL」や「LIVE&WELL」といった定番中の定番を聴いたことがある程度。まあ、はっきりいってしまえば初級者といった感じなのですが、それなので良い言い方をしてしまえば、新鮮な気分で読むことが出来ました。

で、2冊を読み比べた結果、あくまでも初級者という視点なのですが、THE DIGの「B・B・KING」の方がおもしろかったです。冒頭に貴重な音楽が並んでいるのが目を惹くのですが、一番素晴らしかったのが序盤の宇崎竜童と近藤房之助へのインタビュー記事。宇崎竜童のインタビューは、わずか4ページという長さながらもB・B・KINGへの愛情あふれるメッセージで、ともすればブルースらしくないということで一部で批判を集めていたB・B・KINGへの評価に対する痛烈な反論と、それに伴うB・B・KINGというブルースシンガーに対する本質を突いた評価が非常に印象的で興味深いインタビュー記事となっています。

近藤房之助へのインタビューに関しても、B・B・クィーンズについて、ご本家から使用の許可をもらっていたというのが印象的(笑)。こちらも日本のブルースマンからのB・B・KINGへの愛情あふれるインタビューがとても心に残りました。

B・B・KINGの生い立ちを紹介した記事についても物語性ある記述がされており読ませます。特に最初の奥さん、マーサ・リーへのプロポーズのシーンなどはなかなか素敵。貧乏だった彼らはライブ会場に入れず、ライブ会場に開いた壁の穴からルイ・ジョーダンのライブを見た後、その帰り道の馬車でプロポーズというエピソードはその時のB・Bの気持ちも想像でき、読んでいてドキドキしてしまうものもありました。

一方、「B・B・キング完全読本」の方は、少々理屈っぽさが先走っているといった感じ。細に入ったような記述が多く、もうちょっと上級者向けといった印象も。また執筆者がいつもの「ブルース&ソウル・レコーズ」の執筆陣で、それはそれでもちろん悪くはないのですが、ちょっと物足りないような感じもしてしまいました。

両者の違いが最も顕著だったのがディスク・ガイドで、執筆陣を絞ったために、アルバム毎のつながりがあって、ディスク評を読めばB・B・KINGの音楽的遍歴がよくわかるような構成になっていたTHE DIGに比べて、「完全読本」の方は、収録曲1曲1曲の記述が詳しかった反面、B・B・KINGの全体像がディスク評からは読み取りずらかったように感じます。

その違いでおもしろかったのがアルバム「The Jungle」のディスク評。B・Bの代表作のひとつとされるこのアルバムを、「完全読本」では「BBのベスト作となる傑作アルバム」と最大限の評価をしているのに対してTHE DIGでは「代表作とするのはBBへの侮辱でしかない。」とこき下ろしています。このアルバム、実は私自身は未聴のため、どちらの評価が正しいとは言えないのですが・・・真向から異なる見解は読み比べてとても興味深いものがありました。

「完全読本」も決して悪くはなく楽しめたのですが、どちらか1冊、と言われるとTHE DIGの方に軍配があがるなぁ。特に私のような初級者は、THE DIGを手にとってB・B・KINGというのはどんなミュージシャンか知ることがお勧めです。ただこの両者、共通するのは読んでいて垣間見ることが出来るBBの人柄。非常な女好きだけど、包容力があって暖かい人柄に描かれています。どちらもそんな多くの人たちに愛されたBBの魅力をきちんとつかむことが出来た追悼本でした。

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