反原発のフェスにて
Title:NO NUKES 2012
Musician:Yellow Magic Orchestra
現在、坂本龍一が中咽頭癌により休養中となっているYellow Magic Orchestra。その彼らのライブアルバムがリリースとなりました。本作は、タイトル通り2012年に幕張メッセで脱原発テーマに開催された「NO NUKES 2012」の音源を収録したものとなっています。
ここ最近、坂本龍一というと政治的な発言が目立ちます。反原発運動にしても数多くの発言を行ってきました。今回のアルバムも「NO NUKES」というタイトルは単純にライブイベントの名前だから、ということも言えるかもしれません。ただ、ジャケット写真に福島第一原発の写真を使ってきていることからも、反原発というメッセージを感じることが出来ます。
ただ、そんなタイトルとジャケット写真に反して、インスト曲ばかりなので当たり前といえば当たり前なのですがアルバムの内容自体からはメッセージ性はさほど強くありません。当日のライブレポートによると、当日は「NO NUKES,MORE TREES」と書かれた旗を教授が振ったそうですが、もちろんライブアルバムからはそんなことはわかりませんし、ライブの最後に、教授が「NO NUKES」とつぶやいて終わったそうですが、そちらの模様も収録されていません。
今回のライブ盤でおそらく唯一、メッセージ性を感じられるのは1曲目がクラフトワークの「Radioactivity」のカバー。もともとから暗い雰囲気の曲なのですが、今回のライブ盤の演奏ではさらに不気味さが増しています。それはちょうど福島第一原発の事故と重ね合わせているよう。この1曲から、YMOの強いメッセージ性を感じることが出来ます。
ただ、そこから続くのは「Firecracker」という明るくポップス性の高いナンバー。その後も「中国女」や「東風」などおなじみのナンバーが続き、最後は「Rydeen」という下手なひねりなしに王道のナンバーが続いています。「NO NUKES 2012」という多くのミュージシャンが参加したイベントだったから、ということもあるのでしょうが、反原発というメッセージ性以上に、初心者も純粋にライブで楽しめることが出来るような選曲になっていました。
演奏はおなじみギターで小山田圭吾に高田漣、さらにanonymassの権藤知彦が加わった体制。エレクトロサウンドに加えて生音の割合も多く、バンド色が強く感じます。特に「Thousand Knives」ではギターのアグレッシブな演奏も聴くことが出来ます。ただ基本的にはベテランのバンドらしい安定した演奏。良くも悪くも安心して聴いていられるステージだったと思います。
そんな訳で、既に3年前の演奏になってしまいましたが、今のYMOの位置づけを確かめられるライブ音源。ライブ音源であり、演奏も良くも悪くもベテランらしい内容なだけに初心者の最初の1枚としては微妙な感じですが、ファンなら間違いなくチェックしておきたい内容。「NO NUKES」というイベントはいまでも続けて実施していますし、はやく教授には元気になってもらって、また「NO NUKES」のステージでの演奏を聴きたいです!
評価:★★★★
Yellow Magic Orchestra 過去の作品
LONDONYMO-YELLOW MAGIC ORCHESTRA LIVE IN LONDON 15/6 08-
GIJONYMO-YELLOW MAGIC ORCHESTRA LIVE IN GIJON 19/6 08-
YMO
ほかに聴いたアルバム
其れは、繙かれた『結晶』の断片。或いは赫奕たる日輪の残照。/te'
毎回、インパクトの強い長いアルバムタイトルと曲名をつけるポストロックバンドte'のニューアルバム。今回のアルバムは、比較的ポップで軽い雰囲気のサウンドが印象的。最後の「私は舞う枯葉。風任せな躍動を自律と『錯誤』する縹渺たる虚体。」みたいに彼ららしいダイナミックな演奏を聴かせてくれる曲もあるのですが、良く言えばポップで聴きやすい、悪くいえばちょっとパンチ不足が気になる、そんなアルバムでした。
評価:★★★★
te' 過去の作品
まして、心と五感が一致するなら全て最上の「音楽」に変ずる。
敢えて、理解を望み縺れ尽く音声や文字の枠外での『約束』を。
ゆえに、密度の幻想は綻び、蹌踉めく世界は明日を『忘却』す。
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