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2015年10月11日 (日)

日本ポップスの歴史を知る

ちょっと気になるディスクガイドが発売されたので聴いてみました。「昭和歌謡ポップスアルバムガイド1959-1979」。音楽評論家の馬飼野元宏氏が監修したディスクガイドなのですが、これがおもしろいのがタイトル通り、1959年から79年にかけての昭和歌謡曲のアルバムのディスクガイド、という点。ちなみに1959年から79年という西暦で書かれると微妙にわかりにくいのですが、年号に直すと昭和34年から54年。昭和歌謡曲が全盛期だった時期のアルバムを集めています。

本書がなによりユニークなのは、歌謡曲のアルバムを集めたというところでしょう。歌謡曲というと通常はシングル勝負。アルバムはシングルの寄せ集めに、何曲かシングルからはずれたような曲をつけた、いわば「おまけ」のようなイメージがあります。その傾向は今も続いており、例えばあれだけシングルチャートを賑わせているアイドル勢は、アルバムではあまり見かけることがありません。

そんな歌謡曲の脇役というアルバムにあえて焦点をあてた本作。ただ、コラムの中では歌謡曲におけるアルバムの位置づけについて、時代毎に説明がされており、歌謡曲の中でもアルバムの果たした役割を知ることが出来ます。

このディスクガイドを読み、アルバムという媒体が歌謡曲で果たした役割、それはシングルでは表現できない歌手の「本音」の部分を詰め込んだ作品、ではないでしょうか。特に顕著なのがグループサウンズ勢のミュージシャンで、シングルではベタベタな歌謡曲路線を歌いつつ、アルバムでは洋楽路線となっていたりするようです。

もっとも歌謡曲はシングルが中心として廻っているだけに、アルバムのディスクガイドだけ眺めていても、どうしても全体像は見えにくい部分があり、それはコラムで補っているものの、「歌謡曲入門」的に読むと、物足りなさを感じる部分もあるかも。とはいってもアルバムという観点から歌謡曲を眺めるというユニークな試みで、ある意味歌謡曲のアナザーサイドを興味深く知ることが出来ました。昭和歌謡曲に興味があれば必読の1冊でしょう。

で、同じく馬飼野元宏氏監修の元、発売された音楽のガイド本をもう1冊、読んでみました。

「日本のフォーク完全読本」。歌謡曲と同時並行的に日本のポップスシーンを形作ってきたフォークミュージックを網羅的に取り上げた本。代表的なミュージシャン毎に簡単な紹介とアルバムの紹介を行った構成となっています。

こちらも基本的にアルバムを中心とした構成。歌謡曲ほどではないもののフォークミュージックもやはりシングルでのヒット曲も「歴史」を語る重要な要素。それだけにアルバムだけを羅列した内容だと「完全読本」というとちょっと物足りなさも感じてしまいました。

とはいえ、比較的若い世代の評論家が書いているようなので、フォークソングに必要以上の思い入れがなく、それだけに逆に客観的に描かれているように感じました。特に今回の本書を読んで、フォークというと社会派な主張が多いというイメージがあったのですが、社会派なフォークは全体のうち一部。むしろ個人的なテーマを歌にした曲がメインであったことが書かれています。

また、必要以上の思い入れがないことが理由なのでしょうか、60年代70年代のフォークソングのみならず、その後フォークソングに影響を受けたフォーク歌謡や、さらには平成に入ってからのネオフォークと呼ばれるゆずやらコブクロまで取り上げています。そういう意味では「フォーク」をキーワードに幅広いミュージシャンが取り上げられており、その点では「完全読本」という名前も伊達ではない印象も受けました。

そういう意味では日本のフォークを概観するのは最適なガイドブックにも感じます。物足りなさを感じる部分もありつつも、数々の魅力的なミュージシャンの紹介に、フォークの名盤を聴きたくなってくる1冊でした。

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