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2015年10月12日 (月)

14年ぶりのカバーアルバム

Title:UNTED COVER 2
Musician:井上陽水

井上陽水が2001年にリリースした「UNITED COVER」。昭和歌謡曲を数多くカバーしたこのアルバムは、当時80万枚というヒットを記録し大きな話題となりました。それから14年。本作は、その「UNITED COVER」に続くカバーアルバム第2弾となります。今回も昭和歌謡曲を中心に数多くのカバーに挑戦。さらに新曲としてNHK「ブラタモリ」のテーマ曲「女神」「瞬き」を収録しているほか、宇多田ヒカルへのトリビュートアルバムにも収録していた「SAKURAドロップス」、さらには彼の代表曲ともいえる「氷の世界」のセルフカバーも収録されています。

井上陽水といえば、独特なねちっとした中性的なボーカルをすぐ思い浮かべるかと思います。彼のボーカルはかなり特徴的。そんな彼が行うカバーは、楽曲がすすむにつれて独特のボーカルにより彼の「色」にどんどんと塗り固められて行ってしまうような、そんな印象を受けます。もう、この声で歌われれば、どんな曲でも井上陽水の曲になってしまうよね!そんな有無をいわさず井上陽水色に染め上げてしまう、そんなカバーでした。

また今回のカバーアルバムでもうひとつ大きな特徴だったのがサルサバンド、オルケスタ・デ・ラ・ルスが13曲中6曲も参加していること。その結果、アルバム全体としてラテンアレンジの曲が多い構成となっています。マンボ風なThe Beatlesの「I WILL」やラテン調の「氷の世界」などなかなかユニーク。若干違和感のある組み合わせもないことはないのですが、彼のボーカルとラテンサウンドの勢いで乗り切っていました。

もちろん彼の独特の「声」だけではなくボーカリストとしての力量もしっかり発揮されていました。特に絶妙だと思ったのがユーミンの「リフレインが叫んでる」のカバー。メロディーとしては少々感情過多気味のメロディーラインながらも、原曲はあっさりとしたユーミンのボーカルがあるため嫌味は感じません。一方、井上陽水のボーカルは感情たっぷり。とはいえこのカバーでは力を抜いたカバーになっていて、感情過多にならず、かといって彼のねっちりとしたボーカルもしっかり聴かせる、絶妙なバランス感の上に成り立たせていました。ここらへんにボーカリストとしての力量を感じました。

一方で聴き終わった後に一番印象に残ったのは、宇多田ヒカルの「SAKURAドロップス」のカバー。ラテンアレンジとなったカバーで、正直、原曲のイメージからかなり異なります。もともと宇多田ヒカルトリビュートに収録されていたので、今回はじめて聴いた曲ではありません。ただ、原曲からは予想だにしない方向性のカバーは良くも悪くもインパクト満点。今回のアルバムでも一番印象に残ったカバーでした。

そんな訳で、井上陽水しかできない、どこから切り取っても井上陽水らしいカバーアルバムでした。それだけにある程度「予想通り」という部分もあったのですが、それでも十分魅力的なカバーアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

井上陽水 過去の作品
氷の世界-40th Anniversary Special Edition

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