美しいボーカルとサウンドに魅了
Title:My Love Is Cool
Musician:Wolf Alice
北ロンドン出身の4人組バンドのデビュー作。「BBC sound of 2015」に選出されて話題となったほか、今年のサマソニにも出演。日本でも徐々に話題となっているようです。狼とアリスと相反する名前を連ねたネーミングもインパクトあるのですが、女性ボーカルによるオルタナ系ギターロックバンドという点も個人的には興味を持ち、アルバムを聴いてみました。
楽曲は、女性ボーカルEllie Rowsellの澄んだ歌声を生かしつつ、メロディーラインは少々ベタさすら感じるポピュラリティーの高いもの。基本的にはオルタナ系のギターロック路線なのですが、所々に入るギターのホワイトノイズからはシューゲイザー系の強い影響を感じます。はい、一言で言ってしまえば、個人的に思いっきり壺です(笑)。完全にはまってしまいました。
もともとはこの紅一点のボーカルEllie RowsellとギターのJoel Ameyのアコースティックデゥオからスタートしたとか。1曲目「Turn To Dust」からして、アコギのアルペジオを入れつつ、Ellie Rowsellの美しいファルセットボイスを聴かせる、美しも幻想的なナンバーで、その歌声や音色にしんみり。いきなりはまってしまいました。
その後、もっとも耳についたのは、シューゲイザー直系のドリーミーなホワイトノイズで美しく彩られた楽曲の数々。「Your Loves Where」なども典型的なドリームポップに仕上がっていますが、特に印象の残ったのは後半。「Swallowtail」は前半、アコギ1本で美しく聴かせつつ、途中からノイジーなギターが入り、最後はホワイトノイズで埋め尽くす展開にはゾクゾクとさせられましたし、「Fluffy」などもノイジーなギターサウンドが全面的に展開。80年代的なにおいを感じる点も、シューゲイザー好きにはピッタリはまりそう。
ただ、そのような楽曲をメインとしながらも、アルバム全体として音楽的なバリエーションは豊富。例えば「Silk」はダークで、ちょっとゴシック色も感じられるポップになっていますし、「Giant Peach」はハードロック風なギターリフでスタートしつつ、ボーカルが入ると80年代パンクの様相の強い曲になっています。「Soapy Water」も、シンセのメロにEllie Rowsellのウィスパー気味の歌声を重ねることにより、幻想的なポップに仕上げていました。
メロディーラインもまた大きな魅力。上にも書いた通り、わかりやすくインパクトあるポップなメロディーになっているだけに、良く言えばだれにでも耳なじみやすいメロ。悪く言えば少々ベタさも感じるメロデイーになっているのですが、それをノイジーで幻想的にコーティングしたサウンドにうまく溶け込ませることにより、ベタさを必要以上に目立たせず、耳なじみやすい心地よいメロディーに仕上げています。
また「ベタさ」という観点で言えば、楽曲のあちことで感じられる「80年代的」な要素もまた、耳なじみやすさの大きな理由のように思います。「Fluffy」「Giant Peach」の紹介でも80年代的と書いたのですが、楽曲によってはどこか懐かしさを感じる部分もありました。ただこれも、一歩間違えれば「ベタ」「古臭い」と捉えられる恐れのある展開を、ドリーミーなサウンドとポップなメロで包むことにより、耳なじみやすさだけが残る結果になっているように感じました。
個人的に壺にはまったということもありますが、間違いなく、今年のベスト盤候補の傑作!いや、サマソニでのステージ、見たかったなぁ、といまさらながら感じてしまいます。アルバムの最初から最後まで実に心地よく夢見心地で楽しめた作品。要チェックの新人バンドです。
評価:★★★★★
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コメント
シューゲイザー、グランジ、アメリカン・ロックにニュー・ウェイヴと様々な音楽のいいところ取りをしているだけでなく、普遍的なメロディを奏でてそれでいて流麗かつ荒々しいサウンドをぶっ放しているところが素晴らしいですね。
投稿: ひかりびっと | 2019年4月 1日 (月) 21時17分