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2015年10月 6日 (火)

B級歌謡曲の魅力

以前、「ディスコ歌謡夜の番外地」と名付けた、ディスコ歌謡をテーマにB級歌謡曲を集めたオムニバスアルバムを紹介しました。今回は、そのシリーズに続く2枚のオムニバス盤です。

さらに今回は同じシリーズとして、ソロシンガーの単独盤をCD化してリリースされました。

Title:夜の番外地 ディスコ歌謡 キラキラ★ダンシング クイーン

この「ディスコ歌謡」という企画でユニークなところは、サウンド的にはディスコサウンドを取り入れて、英語詞なども入れて表面的には「洋楽的」なものを取り繕いながらも、メロディーラインはベタな歌謡曲というアンバランスさ。この洋楽的でありながら洋楽ではなく、歌謡曲として亜流さの漂う曲調が、実にB級的で、それが一般受けはしないのかもしれませんが、強烈な魅力となっています。

本作でその傾向が最も顕著だったのが神楽坂かおるの「ディスコ芸者」。タイトルからして想像つきそうなのですが、サウンド的には完全にディスコなのですが、こぶしを利かせたボーカルは完全に演歌。このアンバランスさが実にユニークです。

またB級感漂うといえばエロティシズムを押し出したセクシーなディスコソングもまた耳を惹きます。このコンピで言えばアップルズ「ひげのおまわりさん」なんかがそうでしょうか?セクシーさを感じるボーカルが耳を惹くこの曲を1曲目に配するあたり、心憎いところ。「愛の誘惑 LOVE TO LOVE YOU BABY」などもセクシーさ全開の18禁なエロ歌謡ですし、あらんどろんの「ウィ!シャバダバ」は、ある年代以上の男性ならおそらく一度は聴いたことあるはず・・・そう、男子中学生が親の目を盗んでなんとか見ようとした深夜番組「11PM」の主題歌です。

B級感を漂わせるもうひとつの軸となっているのがコミカルなノヴェルティーソング。笑福亭鶴光の「鶴光の新説SOS」なんかがその枠組みでしょう。あと、ウーパールーパー&チェイン「ウーパー・ダンシング」もその枠組みかな?1985年に大ブームとなったウーパールーパーをテーマとしたダンスチューン。このブームのきっかけとなった日清やきそば「UFO」のCMソングだったそうで、私もどこかで聴いたことある記憶がありました。

そんなB級感あふれる楽曲が並んでおり、最後まで飽きさせないコンピレーション。B級B級といってもメロディーラインには十分すぎるほどのインパクトもあり、ポップソングとしては実は高機能な作品なのかも?B級歌謡曲好きでなくてもはまってしまいそうです。

評価:★★★★

Title:夜の番外地 ディスコ歌謡 ライク・ア・ヴァージン

こちらも冒頭から、ご存じマドンナの名曲のカバー、吹田明日香の「ライク・ア・ヴァージン」からスタート。ウィスパー風のボーカルが妙なエロさを持つナンバーで、マドンナとは違った魅力を感じさせ、どこかB級感も漂いカバーになっています。

ただ・・・正直言ってしまうと、こちらのコンピに関してはあまり楽しめなかったです。その大きな理由が典型的な80年代のアイドルポップが並んでいたから。特に特徴のないボーカルと平坦なメロディーライン。もっと時代が下れば「一回りして面白い」的な印象も受けるのかもしれませんが、基本的にはいまのJ-POPのルーツ的な楽曲なので、昔の曲によくありがちな「逆に新鮮」というイメージも受けませんでした。

そのアイドルポップも、基本的には80年代のアイドルソングの王道路線といった感じで特に面白味もありません。悪い意味でのB級がB級であるゆえんの、平凡さを感じてしまいます。ROSE MAX JR.の「GETTAWAY」みたいなファンキーでカッコイイインストナンバーなんかもあったりしたのですが・・・。正直言って、ちょっといまひとつな選曲に感じました。

評価:★★★

で、もう1枚はソロの単独盤。

Title:ギブ・イット・トゥ・ミー
Musician:トミー

トミーと名乗るこのミュージシャンは、もともとはフラワー・キッスというB級アイドルグループの一員、栄ひとみの別名だそうです。グループ脱退後、トミー・ザ・ビッチと名乗り、シングル「ギブ・イット・トゥ・ミー」でデビュー。本作は、そんな彼女が79年にリリースした唯一のアルバムだとか。ちなみに彼女は栄ひとみ名義で日活ロマンポルノにも主演していたそうです。

これもまさにB級歌謡曲!という1枚。おそらく作品的には邦楽だけど洋楽と勘違いさせる戦略なのでしょう。ジャケットもいかにも洋楽チックですし、作詞作曲陣にも外国人風の名前が並んでいます。ただ実態は、主に作詞を手掛けているALAN ROTHCHILDこそ、ロックバンドSHOGUNのメンバーとしても活躍した在日アメリカ人のケーシー・ランキンですが、主に作曲編曲をつとめるKEN DANIELは佐藤健という、おもいっきり日本人ですし、「CALLING U.S.A.」で作曲を手掛けるDANNY LONGはのちにビーイング系の総帥、長門大幸だったりします。

それだけに彼女の楽曲は、ディスコチューンで歌詞も英語と洋楽風を装いながらも、メロディーラインはおもいっきり歌謡曲風。英語詞ながらも発音は完全にジャパニーズ・イングリッシュ。楽曲的にも英語詞の曲よりも日本語詞だった「抱いて、火をつけて」の方がセクシーさも感じて魅力的じゃないの?とチグハグ。洋楽狙いだけど日本人だって完全にばれてましたよね、当時から。いや、このチグハグさがまたB級テイストあふれる感じでユニークだったりするんですが。

こちらもB級歌謡曲ならではの癖がありますし、正直万人に勧められるような傑作、といった感じではないのですが、妙なインパクトがあって、はまりだすと妙にはまってしまう独特の魅力がありました。上の2つのオムニバスを聴いたら、次は是非、この作品も。

評価:★★★★

夜の番外地 ディスコ歌謡シリーズ 過去の作品
抱いて、火をつけて
卑弥呼

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