変わらない彼女
Title:MUSIC
Musician:加藤いづみ
アラフォー世代にとってはちょっと懐かしい名前のシンガーのニューアルバムを聴きました。加藤いづみ。1993年にリリースされたシングル「好きになって、よかった」がドラマ「悪魔のKISS」の挿入歌に起用され、ヒットチャート的には最高位22位に終わったのですが、20万枚近く売り上げスマッシュヒットを記録。お,そらうアラフォー世代の方なら、彼女の名前は知らなくてもこの曲はどこかで聴いたことある・・・という方も多いでしょう。またその直後にリリースしたアルバム「Sweet Love Songs」はオリコン10位を記録しています。
90年代に一部でブームとなったガールポップの代表的なミュージシャンの一人である彼女。当時高校生だった私は一時期はまって聴いていた時期もあり、その後もアルバムがリリースするたびにちょくちょく聴いていたりしたのですが、今回のアルバムはなんと前作から7年ぶりとなるオリジナルアルバム。「好きになって、よかった」をはじめ彼女の代表曲を数多く手がけた、彼女の音楽的パートナーとも言える高橋研が本作でもプロデューサーを担当。数多くの楽曲も提供しています。
そんな久々となったニューアルバムですが、聴いてみて衝撃的だったのは私が高校時代の曲から全く変わっていない、ということでした。
そもそもメロディーラインからして全く変わっていません。アコースティックベースのメロディーラインに切なさと暖かさを同時に感じるような、一言で言えば「胸キュン」なメロディーライン。ただ、衝撃的だったのはそんなメロディーライン以上に変わらない彼女の歌声。もともとクリアボイスのかわいらしい歌声をしていた彼女。失礼ながら御年47歳という彼女ですが、その歌声に全く衰えがありません。1曲目を飾る「毎日がEXAMINATION」など、非常にキュートなポップスに仕上がっており、「アイドル」と言われても遜色ない内容かも(笑)。
ただ、「変わらない」というのはミュージシャンにとって必ずしもポジティブな評価とは言えません。特に楽曲自体が変わらないというのはともすれば「マンネリ」に捉えられがち。実際に目新しさという意味ではこのアルバム、新鮮味はなかったかもしれません。
しかし一方で楽曲からはある種の瑞々しさを感じられます。それはこの曲に収録されている曲がエバーグリーンな美メロの楽曲が多いからではないでしょうか。例えば「休息」という曲は、ピアノのみのバラードナンバーなのですが、切ないメロディーが涙腺に触れますし、本人作曲の「銀天街」もアコギのアレンジとノスタルジックあふれる歌詞、そしてシンプルなメロディーが胸をうちます。どの曲も基本的にシンプルなメロディーラインなだけに、「変わらない」楽曲にも関わらずマンネリさを感じさせないのでしょう。
はじめて彼女の曲を聴いてから20年以上の月日がたっているのですが、いい意味での変わらなさに懐かしさとうれしさを感じたアルバムでした。もちろん、ノスタルジックな気持ち抜きに良質なポップスのアルバムとして傑作だったと思います。久しぶりに聴いてみるアラフォー世代ももちろん、若い世代にも要チェックな1枚です。
評価:★★★★★
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