日本を代表する作詞家へのトリビュート
Title:松本隆 作詞活動四十五周年トリビュート 「風街であひませう」
伝説のロックバンドはっぴいえんどのメンバーであり、解散後は、作詞家として活動し、数多くのヒット曲を量産した、間違いなく日本歌謡史における代表的な作詞家のひとり、松本隆。「木綿のハンカチーフ」やら「ルビーの指環」やら「SWEET MEMORIES」やら手掛けた作品で誰もが知っているような曲の数は、両手でもとても足りません。
今回のアルバムはそんな彼の作詞活動45周年を記念して、彼が作詞を手掛けた曲を様々なミュージシャンがカバーしたトリビュートアルバム。45周年ということは起点は1970年ということで、はっぴいえんどのデビューから45年ということでもあります。
そんなトリビュートアルバムにはスピッツの草野マサムネが、自ら楽曲を提供した「水中メガネ」をセルフカバーしたり、YUKIが斉藤由貴(ユキつながり・・・)の「卒業」を歌ったり、まさクラムボンがアニメ「マクロスF」の挿入歌「星間飛行」を歌ったりと様々。さらには元andymoriの小山田壮平が小山田壮平&イエロートレイン名義で松田聖子の「SWEET MEMORIES」をカバーしていたりしています。
そんなトリビュートアルバムの方は、実力あるミュージシャンたちが並んでいるだけあって、基本的には良カバーが並んでいます。草野マサムネの「水中メガネ」はやはり本人作曲の作品だけあって、きちんと草野マサムネの作品になってしまっていますし、薬師丸ひろ子の「探偵物語」をカバーした中納良恵も、なにげにこのボーカルもボーカルで曲にマッチしていましたし、アコースティックカバーの「SWEET MEMORIES」も、予想外に小山田壮平の声色にもマッチしていました。
あまり原曲のイメージを大きく変えるようなカバーもなく、良く言えば期待通りで安心して聴ける、悪くいえば「無難」という印象も受けたカバーでした。ただ、個人的に強く印象に残ったのは、このカバーアルバムの方ではなくむしろ生産限定盤の方に収録されていた「ポエトリーリーディングアルバム」の方。こちらは宮崎あおいやら山田孝之やらといった俳優勢が松本隆の歌詞を朗読したアルバム。かなり豪華な俳優勢が並んでいる作品なだけに最初は「参加メンバーの名前で売ろうとした宣伝目的のアルバムでは?」なんていぶかしがったりもしたのですが、実際に聴いてみるとむしろこちらの方があるべきトリビュートアルバムなのでは?とすら思ってしまいました。
実際、参加している俳優勢が松本隆の歌詞をゆっくりと丁寧に読んでいくアルバムだからこそ、松本隆の歌詞の魅力がよりはっきりとわかる内容になっていました。このポエトリーリーディングを聴いてあらためて感じた松本隆の魅力、それは歌詞が非常に純朴なこと。恋愛経験が多いような主人公が登場していても、松本隆の描く恋愛の世界にはどこか純朴さが感じられます。また、彼の描く歌詞は決して具体的、説明的描写が少ないにも関わらず、聴いていて頭の中に歌の中の風景が一気に広がるような、そんな絶妙な風景描写を歌詞から感じられます。そんな松本隆の世界の魅力が、ポエトリーリーディングではよりはっきりと伝わってきたように感じました。
このポエトリーリーディングが生産限定というのはちょっと残念。個人的にはむしろこちらがメインでもいいのでは?とすら思ってしまいました。最後に松本隆本人がはっぴいえんどの名曲「風をあつめて」を朗読して終わり、という構成も素晴らしいものを感じましたし・・・。このポエトリーリーディングアルバムだけでも後日、別途販売されないかなぁ。
そんな訳で、今からでも可能なら「完全生産限定盤」を是非。もちろん、ミュージシャンによるカバーも聴いて損のない良カバー揃いだとは思うのですが・・・。
評価:★★★★★
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