新たな試みも
Title:EYES WIDE,TONGUE TIED
Musician:The Fratellis
イギリスのロックバンド、The Fratellisの4枚目となるアルバム。2007年にリリースされたデビューアルバム「Costello Music」が大ヒットを記録。特にこのアルバムに収録され、シングルとしてもリリースされた「Flathead」はiPodのCMソングにも起用されて、日本でも大きな話題となりました。
その後2009年にはその活動を休止したものの、2013年には見事復活。3枚目となるアルバム「We Need Medicine」はデビューアルバムを彷彿させるような軽快なロックンロールのアルバムに仕上がっていました。
それに続く4枚目のアルバムとなった本作はデビューアルバム「Costello Music」のプロデュースを手掛けたトニー・ホッファーを再びプロデューサーとして迎えた作品。前作は原点回帰的な印象が強かった作品だったのですが、本作もそれに続いてデビューアルバムっぽい色合いが濃い作品なのか・・・と期待して聴いてみました。
しかし、全体的には決してデビューアルバムのように軽快で踊れるようなロックンロールナンバー、といった感じではありません。むしろカントリー風の「Desperate Guy」やジャズのサウンドを取り込みムーディーに聴かせる「Moonshine」など、様々なタイプの作風への挑戦も感じられます。
そういう意味ではデビューアルバム「Costello Music」に続き、バラエティー豊かな作風に挑戦した2ndアルバム「Here We Stand」と立ち位置が似ているアルバムと言えるかもしれません。しかし一方では様々な作風に挑戦した結果、統一感がなくなり彼らの良さが消えてしまっていた「Here We Stand」と比べると、今回のアルバムは必要以上に音楽性がバラバラになることなく、ポップなメロディーラインにきちんとThe Fratellisらしさを感じられたアルバムになっていました。
特によりガレージロック色が強まった「Baby Don't You Lie To Me!」やノイジーなギターロックに陽気なメロディーが重なる「Too Much Wine」などはキュートでポップなメロディーのインパクトも十分。聴いていてワクワク楽しくなってくるロックンロールでポップな、これぞThe Fratellisといった感じの楽曲に仕上がっていました。
そういう意味では音楽性を広げようとした結果、彼ららしさを見失ってしまった「Here We Stand」に対して、本作では同じく音楽性を広げつつも、彼ららしさをきちんと発揮することが出来た傑作と言えるでしょう。2ndアルバムで出来なかったことが見事本作では成功したのは、プロデューサートニー・ホッファーの力量によるところも大きいのでしょうか?今度の彼らの可能性を感じさせるアルバムでした。
ただひとつ残念なのは本編が11曲40分強の内容ながらも、国内盤だとボーナストラックが10曲40分弱もの長さがついてくるんだよなぁ。正直、完全に蛇足。軽快でポップな作風だからこそ、40分程度の長さがちょうど良いと思うんだけども、なんでこう「ボリュームがあればあるほどいい」という単純な発想になってしまうんだろうか(苦笑)。アコースティックアレンジの曲が収録されたボーナストラックは悪くはないのですが、必聴というほどの出来といった感じではなく、熱心なファンの方なら・・・といった程度。無理に容量いっぱいにつめこむ必要はないんだけどなぁ。
評価:★★★★★
The Fratellis 過去の作品
Here We Stand
We Need Medicine
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