33年ぶりのニューアルバム
Title:First Ya Gotta Shake The Gate
Musician:FUNKADELIC
Pファンクの総帥、ジョージ・クリントンが、Parliamentと並行して1960年代に結成したPファンクの主要プロジェクト、FUNKADELIC。そのニューアルバムがリリースされた、ということで大きな話題となりました。なぜならFUNKADELICとしてのオリジナルアルバムは1981年の「Electric Spanking Of War Babies」以来。なんと33年ぶりとなるニューアルバムとなりました。
そんな話題のニューアルバム、なのですが、正直言うと最初は聴くのをちょっと躊躇してしまいました。というのもこのアルバム、全3枚組、約3時間半という長さの超大作。熱心なファンでもないと、これだけの長さを聴き切るには相当の体力を必要とします。それだけに最初は正直、これだけのボリュームのアルバムを聴くのは辛いんじゃないかなぁ、と思いながら聴き始めました。
ところがこれが聴き始めるとすっかりはまってしまい、一気に3時間半、聴き切ってしまいました。これだけのアルバムをダレずに聴くことが出来た理由、その最大なものは、アルバム全体を貫くグルーヴ感でした。例えばアルバムの冒頭を飾る「Baby Like Fonkin' It Up」。ミディアムテンポながらファンキーなリズムが最初から最後まで続きます。9分にも及ぶ大作ながらも、そのリズム感に身体をあずけていると9分の時間も全く長く感じません。むしろその後もずっと聴き続けていたい中毒性があります。
そんな中毒性の高いリズムを楽しめる曲がアルバムの中に数多くあります。Disc1では他にも「In Da Kar」もワウワウサウンドの中毒性の高いリズムが9分近く続きますし、Disc2では「Roller Rink」も11分に及ぶナンバーながらもミニマルテイストのリズムが心地よいグルーヴ感を作り出しています。そんな、「このまま終わらないでくれ!」と思ってしまうようなリズムを延々と楽しめるようなナンバーが数多く収録されています。
そしてもう1点、3時間半というフルボリュームでも飽きなかった大きな理由、それは本作の中で実にバラエティー豊かな音楽性が楽しめた点でしょう。FUNKADELICは言わずと知れたPファンクのバンド、ということになるのでしょう。ただ一方でこのアルバム、ファンクだけではなくソウルやジャズ、HIP HOP、さらにはロックなどといった様々な要素がアルバムの中で楽しめます。
例えばDisc1の「Creases」はHIP HOP、Disc2の「Dirty Queen」は完全にハードコアなロックチューンですし、Disc3の「Talking To The Wall」は今時のネオソウルに影響を受けているような楽曲になっています。他にも哀愁たっぷりのムード歌謡曲風の「As In」だったり、他にもエレクトロトラックが入っているナンバーがあったり、昔ながらのソウル、ファンクの要素を引き継ぎつつも、一方ではきちんと今時の音にアップデートしているという、幅広い音楽性を感じさせてくれるアルバムでした。
そんな作品だっただけに、本当に3時間半という時間があっという間、むしろまだまだ続いてほしい!とすら感じる傑作に仕上がっていました。ジョージ・クリントンは御年74歳なのですが、全くその年齢を感じさせない、勢いすら感じるアルバム。33年というスパンも全く感じさせません。中毒性の強いリズムにすっかりはまってしまった傑作でした。
評価:★★★★★
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