35年目の傑作
Title:BLOOD MOON
Musician:佐野元春&THE COYOTE BAND
今年デビューから35年目を迎えた佐野元春。前々作「COYOTE」以来、深沼元昭や高桑圭ら若手ミュージシャン(といっても十分すぎるほど「ベテラン」の域に入るミュージシャンだと思うのですが・・・)が参加しているTHE COYOTE BANDを率いてのアルバムをリリースしてきましたが、本作はそのTHE COYOTE BANDと制作した3枚目のオリジナルアルバムとなります。
この若手起用という佐野元春の方針はものの見事にアルバムの内容に反映されており、前々作「COYOTE」、前作「ZOOEY」にも共通するのですが、とにかく音に若々しさを感じられることが大きな特徴。デビューから35年という大ベテランにも関わらず、ベテランらしからぬ若々しい勢いと迫力を音から感じることが出来ます。
例えば「いつかの君」はノイジーで分厚いギターサウンドが、今時のギターロックバンドらしい音を奏でていますし、「空港待合室」のロックンロールナンバーも勢いを感じることが出来ます。アルバム冒頭を飾る「境界線」のようにいかにも佐野元春らしいナンバーを挟みつつも、アルバム全体の音には、今時の空気を感じることが出来ます。
他にも「バイ・ザ・シー」のようにAOR的要素を入れたナンバーや「私の太陽」のようなジャズ的な要素を入れたナンバーなど、様々な音楽性を加えつつ、ただアルバム全体としては、間違いなく佐野元春のアルバム以外ありえない、という世界はちゃんと作り上げているのはさすが。佐野元春の世界をTHE COYOTE BANDにより今の時代にアップデートさせているアルバムと言えるでしょう。
佐野元春らしいといえば力強くメッセージ性、社会性の強い歌詞はもちろん本作も健在。前作同様、前向きなメッセージを発している作品が多い中、タイトルの段階から目を惹いたのが「キャビアとキャピタリズム」。
「マヌケな世間を欺け
弱ったやつらにつけこめ
ルールの隙間を突いてけ
裏技を使って売りぬけ
そうさ、世間なんてそんなもん
それが市場原理主義
でも誰がマトモに聞くもんか
結局誰かの都合のせいさ」
(「キャビアとキャピタリズム」より 作詞 Moto'Lion'Sano)
と強烈かつストレートに市場原理主義を否定しています。彼らしい強烈なメッセージを込めた曲になっていました。
前作「ZOOEY」はリアルタイムで聴いた彼のアルバムの中では一番の出来かも?と思ったのですが、本作はそれに負けずと劣らない傑作に仕上がっていました。デビューから35年を経た今にこれだけの作品を作り上げられるというのが驚き。佐野元春というミュージシャンのすごさをあらためて感じた傑作でした。
評価:★★★★★
佐野元春 過去の作品
ベリー・ベスト・オブ・佐野元春 ソウルボーイへの伝言
月と専制君主
ZOOEY
ほかに聴いたアルバム
androp/androp
セルフタイトルとなったロックバンドandropの新作。ドラマ主題歌やCMタイアップ曲など、活動は至って順調そのもの。その影響か今回の新作はポップステイストが強い作風に。「Answer」のようなへヴィーなアレンジや「Alternative Summer」のようなファンキーなロックチューンなどありつつも、サビ先のいかにもJ-POPな「Dreamer」や、前向き応援歌な歌詞がこちらもいかにも売れ線狙いの「Yeah! Yeah! Yeah!」など、ちょっとベタさが目立っちゃった作品も少なくありません。悪いアルバムではないけども、ちょっと「売り」に走った部分が目立ってしまったアルバムでした。
評価:★★★★
androp 過去の作品
door
relight
one and zero
period
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