二宮友和脱退前ラストアルバム
Title:ボトムオブザワールド
Musician:eastern youth
メンバーのひとり、二宮友和が今年の6月をもって脱退を発表。その二宮在籍時のラストアルバムとなってしまった16枚目となるオリジナルアルバム。デビューから20年以上が経つベテラングループで、二宮友和はそんな中でも長く活動を続けてきただけに、ここに来ての脱退劇は正直驚いてしまいました。
そんな現メンバーでのラストとなってしまったアルバムなのですが・・・これがこのメンバーでの最後、という意気込みからでしょうか、ここ近年のeastern youthの中で文句なしに一番の出来に仕上がっていました。正直、ここ最近のeastern youthの作品は、確かに彼ららしいエモコアのサウンドがカッコいい一方で、似たようなタイプの曲が多く、ちょっとマンネリ気味に感じていました。
今回のアルバムに関しても、そんな今の彼らの方向性に大きな違いはありません。基本的に分厚く、ズシリと思いバンドサウンドに、意外とメロディアスなメロディーライン。ここ最近のeastern youthの作品から大きな違いはありません。
確かにそういう意味では今回のアルバムも「マンネリ」と言えるかもしれません。ただ、聴いていて「マンネリ」なんて表現を忘れさせるほど、今回のアルバムには強い力を感じさせました。例えば「街の底」の感情があふれ出しそうな吉野寿のトークスタイルのボーカルから、サビへのシャウトへと展開される流れにはゾクゾクとさせられますし、「イッテコイ カエッテコイ」のエッジの効いたギターサウンドの中で、街の底辺で暮らす人たちが前向きに生きていこうとする歌には、この上ない力強さを感じます。
さらに今回のアルバムは「直に掴み取れ」でゲスとコーラスに元NUMBER GIRL、現ZAZEN BOYSの向井秀徳とbloodthirsty butchersの射守矢雄らがゲストボーカルで参加。ロックシーンでともに戦いゆく盟友といの共演には胸が熱くなるものがあります。
歌詞も基本的には「ボトムオブザワールド」というアルバムタイトル通り、世の中でなかなかむくわれないような、街の中で底辺近くで過ごす人たちが、それでも前向きに生きていこうという力強さを感じる歌詞が魅力的。「ナニクソ節」のようにタイトルそのままの曲なんかもあったりするのですが、基本的にはメッセージはわかりやすく、ストレートに耳に入ってきます。いい意味での聴きやすさがある歌詞が魅力的でした。
今回のアルバムを最後に脱退した二宮は、「eastern youthでできることは全てやりきった」とコメントしているようですが、今回のアルバムは、そんなコメントが出てくるのも納得の、まさにeastern youthとしてやり切ったようにすら感じられる傑作でした。おそらく、今のメンバーで今のスタイルならば、これ以上の傑作は生みだされないのでは?と思えるほどの内容。ただ、eastern youthというバンドはこれからも続いていきます。それだけに次の一歩がどう出てくるのか・・・これからの活動にも注目です。
評価:★★★★★
eastern youth 過去の作品
地球の裏から風が吹く
1996-2001
2001-2006
歩幅と太陽
心ノ底ニ灯火トモセ
叙景ゼロ番地
ほかに聴いたアルバム
DUGOUT ACCIDENT/UNISON SQUARE GARDEN
「リニアブルーを聴きながら」のヒットで一躍ブレイクした彼ら。本作はデビュー10周年を記念してリリースした企画盤。ただ、ブレイク直後によくリリースされるような「ベスト盤」ではなく、未発表曲やアルバム未収録曲のみを集め、シングルの表題曲は一切入れないというアルバム。「シングル抜きでも十分戦える」という彼らの強い意志を感じます。
実際楽曲は、シングル曲ではなくてもインパクトが十分あるような、彼ららしいキュートなポップス中心。彼らもここ最近ブレイクしたバンドと同じく、どうも悪い意味でJ-POPらしいルーツレスな部分を感じてしまうのですが、その一方でこれだけキャッチーでキュートなメロが書ければ、ルーツレスなんて関係ない、とも思ってしまいます。今回の企画盤を聴くと、確かにメロディーだけで勝負できそうな、彼らの実力を感じることが出来ました。
評価:★★★★
UNISON SQUARE GARDEN 過去の作品
CIDER ROAD
Catcher In The Sky
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