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2015年9月 6日 (日)

様々な文化が交錯

Title:LIVE in TOKYO
Musician:SukiAfrica"Sukiyaki Allstars"

毎年、富山県南砺市で行われる日本最大のワールドミュージックのフェス、「SUKIYAKI MEETS THE WORLD」。そのフェス発のレーベル「スキヤキ・レーベル」のアルバムとして、先日、CUATRO MINIMALのアルバムを紹介しましたが、本作は再始動の第2弾となるアルバムです。

このフェスは毎年、ジャンル関係なくワールドミュージックのミュージシャンたちがユニットを組むのですが、本作のSukiAfrica"Sukiyaki Allstars"もそんなフェス発のミュージシャンの一組。ジンバブエのチウォニーソ・マライレ、トーゴのピーター・ソロ、カメルーンのエリク・アリアーナといったアフリカ勢のミュージシャンに、韓国のチャン・ジェヒョと日本のサカキマンゴー(この2人はCUATRO MINIMALにも参加してますね)といったアジア勢が参加した、まさに国や地域を超えた組み合わせとなっています。

本作は、2010年8月に行った東京公演の模様を収めたライブアルバム。本作で特に意義があるのが、2013年にわずか37歳という若さで亡くなったジンバブエの親指ピアノ、ムビラの演奏家として知られるチウォニーソ・マライレが参加している点。今となっては残念ながら彼女に関する貴重な音源のひとつとなってしまいました。さらに録音とミキシングに、裸のラリーズや夕焼け楽団として活躍し、近年では阿波踊りのグルーヴを記録した「ぞめき」シリーズのプロデュースでも話題となった久保田麻琴が参加しています。そういう意味でも非常に豪華な内容に仕上がっていました。

SukiAfricaというミュージシャン名通り、作曲は主にアフリカ勢によって行われており、ザックリとした言い方になってしまいますが、一言で言えば「アフリカ音楽」ということになってしまうのでしょう。ただ、アフリカと一言で言ってもジンバブエ、トーゴ、カメルーンと文化も異なる地域のミュージシャンたち。そのため、その3人の作った楽曲でも雰囲気は大きくことなっていました。

具体的に言えば、チウォニーソ・マライレが作曲した楽曲は、メロディーラインのはっきりしたポップス色の強い作品。なによりも彼女のボーカルが包み込むような、とても優しい雰囲気の楽曲になっています。一方、ピーター・ソロは、「Somadja」などアフロビート色が強い作風に。迫力あるリズムの中、CDのライナーツノートにも記載された泥臭さと、同時にどこか洗練されたものも感じました。またエリク・アリアーナの作品は、例えば強烈なポリリズムからスタートする「Moka」などは迫力あるリズムを聴かせたかと思えば、「Tingo」では繊細な雰囲気の歌モノに仕上げており、この音楽性の幅がとてもおもしろくも感じました。

他にも「Sukiafrica」では楽曲の中に日本語が登場。CUATRO MINIMALでも書いたのですが、メンバー全員、レジデンスプロジェクトといって一時期南砺市で一緒に生活を行い、その中で楽曲を作り上げていくそうですが、アフリカ風のリズムの中、日本語が登場してくるあたり、一緒に日本で寝食を共にしたからこそ、生まれてきた楽曲と言えるでしょう。

また一方でアジア勢も参加している影響で、どこか微妙に日本風だったり、アジアな雰囲気があったりと、そういう意味では我々にとっても耳馴染みあるような音も交じっていたりするのもおもしろいところ。ライナーツノートでは「デラックスでカラフルな幕の内弁当」と称していましたが、様々な文化が入り混じって、一種独特の音楽を作り上げていました。

CUATRO MINIMALもそうだったのですが、スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドのレジデンスプロジェクトから生まれるユニットって、彼らに限らず独特でおもしろいバンドばかりなんですよね。そういう意味で、今後も「スキヤキ・レーベル」からどんどん新譜がリリースされるのを期待したいところ!ワールドミュージックが好きなら必聴の傑作です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Csny 1974(エッセンシャル)/Crosby,Stills,Nash&Young

1960年代末から70年代初頭にかけて活躍したアメリカのロックバンド、Crosby,Stills,Nash&Young。本作は、その彼らが74年に行った再結成ツアーの模様をおさめたライブアルバム。基本的には3枚組のアルバム+DVDなのですが、今回聴いたのは、そこから16曲をセレクトし、1枚のCDにおさめた「エッセンシャル」盤。ライブの中からさらにベスト的なセレクトなだけに、その時代の空気、雰囲気がつたわってくるような音源が収録されています。さすがに3枚組は・・・というライトリスナーでも気軽に聴けて、Crosby,Stills,Nash&Youngの魅力を感じられるライブ盤でした。

評価:★★★★★

=

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