ポップスさがより増して
Title:Currents
Musician:Tame Impala
前作「LONERISM」が音楽誌「NME」で年間1位を獲得するなど絶賛され、一躍話題となったオーストラリア出身のサイケロックバンド。本作はそんな傑作「LONERISM」に続く3年ぶりとなる新作。まさに待ちに待ったニューアルバム、といった感じでしょう。
その前作「LONERISM」の大きな特徴は幻想的なサイケサウンドに対して、非常に人なつっこいメロディーラインを奏でてくる、という点でした。70年代いや時としては60年代の雰囲気すら感じられるメロディーラインがとても魅力的な作品となっていました。
この人なつっこいポップなメロディーラインというのは本作も健在。これでもか、というほどキュートなポップソングがアルバムの中に散りばめられています。美メロと称するにふさわしいメロディーラインをしっかりと聴かせてくれる「Yes I'm Changing」、ドリーミーなサウンドに哀愁たっぷりのメロを聴かせる「Past Life」、ちょっと80年代的な軽快なポップソングの「Disciples」などなど、魅力的なポップソングがたくさん並んでいました。
そんな訳でドリーミーでサイケなサウンドとポップなメロ、という構造は前作と同じ。ただ、同じベクトルの中に微妙にそのスタイルを変えているのがユニークなところ。まず今回の作品、前作に比べてあまり60年代、70年代という香りは感じませんでした。どちらかというとキュートなポップソングは80年代的?・・・といってもあくまでも「雰囲気」という程度の問題なのですが。
また、ノイジーなギターサウンドが押し出されていた前作と比べると、ギターサウンドは後ろに下がり、ドリーミーなシンセの音が前面に出てきた作品となりました。シンセを前に押し出したというのもまた、ちょっと80年代的に感じた要因かも?また、ギターノイズが後ろに下がったからでしょうか、前作に比べてよりポップスさが増して、いい意味で聴きやすくなったようにも思いました。
前作は60年代70年代的な空気が強く、その結果、新鮮味にちょっと欠ける部分も感じたのですが、今回の作品に関しては、Tame Impalaとしてのスタイルがより強まったように感じました。今回も確かにいままで聴いたことないような、というタイプのサウンドではないかもしれませんが、Tame Impalaだからこそ出せるようなサウンドをきちんと聴かせてくれたように思います。
前作から変化があったとはいえ、基本的な方向性は一緒。そういう意味では前作で気に入った方は文句なしに本作も気に入りそう。今回も文句なしの傑作でした。
評価:★★★★★
Tame Impala 過去の作品
LONERISM
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