変態性はさらに薄く
Title:シャンゼリゼ
Musician:モーモールルギャバン
昨年5月にライブ活動を休止。その後の動向もちょっと心配されたのですが、今年に入って無事ライブ活動も再開。約1年ぶりとなる新作もリリース。レコード会社も移籍し、心機一転となるモーモールルギャバンの新譜がリリースされました。
もっとも前作「モーモールル・℃・ギャバーノ」は1曲を除いて過去の曲の再録という内容。そのため、事実上、新譜としては前々作「僕は暗闇で迸る命、若さを叫ぶ」以来3年3ヶ月ぶり、久々のフルアルバムとなります。
その前々作「僕は暗闇で迸る命、若さを叫ぶ」では、それまでの変態性ある歌詞が薄れ、ストレートなロックソングが多くなった作品でした。そして今回は、その方向性がさらに強まった作品になっています。既に以前の彼らのような、歌詞から変態性を感じる部分はさらに薄まった感があり、また、プログレ的な要素は感じられるものの、サウンドに関しても比較的ストレートなロックが多くなっていました。
そのシンプルなロック路線ゆえか今回のアルバム、「歌」の部分がより強く前に出ているように感じます。そうすると改めて感じるのが彼らの書くメロディーラインの良さ。決して「勢い」や「サウンド」などに頼った形ではない、足腰のしっかりしたメロデイーを書いてきています。「虹のベッド」の切ないメロデイーラインなどなかなか絶品ですし、ユコがボーカルを取る「N」のソフトロック路線もなかなか(ボーカル含めてちょっと空気公団っぽいのがおもしろいのですが)。
また今回のアルバム、特に前半に関して、バンドサウンドにエレクトリックピアノの音色が載るスタイルのサウンドが、どこか70年代あたりのロックの匂いを感じるのがユニーク。ぶっといベースラインやパンキッシュなギターは決して「70年代」的ではないはずなのですが・・・。逆に後半はパンキッシュでアバンギャルドな側面が出ていた曲が並んでいました。
ほかにも、まんま「ハイウェイ・スター」な「ザ・ラストトレインスター」なんてお遊び曲があったりするあたり、バンドとしての余裕を感じさせますし、二股男の修羅場を描きながら「愛がすべてさ」なんてうそぶく本編ラストを飾る「バイララ」なんかは、このアルバムでも数少ない変態性を感じるナンバーで、彼ららしい、といった感じでしょうか。間違いなく様々な聴きどころのあるアルバムだと思います。
ただ、その上で思ってしまうのが、メロディー、歌詞、サウンド、どれをとっても一定水準以上の出来なのは間違いない反面、どうも突き抜けてインパクトのある部分が薄いように感じてしまいました。メロディーはインパクトがあるものの、街角で流れて、ふり向くようなレベルではないし、変態性といったも今回のアルバムに関してはさほど強くないし・・・。長らく「話題のバンド」でありながらも、いまひとつブレイクに至らないのは、そんな理由からなのではないでしょうか。いいアルバムで十分楽しめる内容ながら、そんな部分にちょっとひっかかりを感じた作品でした。
評価:★★★★
モーモールルギャバン 過去の作品
クロなら結構です
BeVeci Calopueno
僕は暗闇で迸る命、若さを叫ぶ
モーモールル・℃・ギャバーノ
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