降谷建志という人物
Title:Everything Becomes The Music
Musician:降谷建志
Dragon Ashのボーカリストでメインのライターである降谷建志のソロデビューアルバム。「すべてのものが音楽になる」というタイトルのアルバムですが、パソコンのキーボードを打つ音が徐々にリズミカルになり音楽になっていくイントロがアルバムのタイトルにマッチしており、なかなか洒落たオープニングとなっています。
Dragon Ashといえば、HIP HOPあるいはラテンミュージックとロックを融合させたいわゆるミクスチャーロックのバンドです。一方、今回のアルバムは基本的にオルタナ系のギターロックをメインとした作風。また、全12曲中日本語詞によるものは3曲のみ。他はイントロ的な曲はあるものの、基本的に英語詞による作品になっていました。
ただ、オルタナ系のギターロックがメインとはいえ、楽曲としてはメロディーと歌詞、要するに「歌」を前面に押し出した構成となっています。「Colors」のように力強いドラムのリズムを押し出した曲もあったのですが、その曲でもきちんと歌が響いてくる内容になっていました。
そんなニューアルバムは降谷建志という人物像がそのままアルバムに反映させた内容になっていたように感じます。そういう意味で、実にソロアルバムらしいアルバム、と言えるでしょう。
降谷建志の人物像。まずこのアルバム、メロディーラインからは非常な繊細さを感じます。美メロという言葉がふさわしいメロディアスで美しい、そして繊細さを感じるメロディーラインはDragon Ashの作品でも特徴となっていますが、今回のアルバムでももちろん健在。降谷建志といえばご存じの通り、俳優古谷一行の息子で、小学校から高校まで(高校は中退のようですが)青山学院という生粋のお坊ちゃん。そんな育ちの良さがメロディーラインに反映されているように感じます。
一方同時に感じられるのは、音楽に対する自信と力強さ。その力強さは特に歌詞から強く感じます。例えば「Angel Falls」では
「so I sing when an angel falls, and a demon smiles at me」
(訳詞 たとえ天使が堕ち、悪魔が微笑みかけても私は歌う)
(「Angel Falls」より 作詞 降谷建志)
という歌詞からは、自らのミュージシャンとしての強い自信を感じますし、一方で「Wish List」の
「見よう見まねでいいよ 始まりは怖いもんさ
僕らは全て望むんだ 取り留めなく
好きな色で塗りたくれ 恥じらいなく書きなぐれ
それを希望と呼ぶんだ 掲げてごらん」
(「Wish List」より 作詞 降谷建志)
という歌詞からも強い自信と、前向きな力強さを感じます。
この自信と力強さは、今年で19年目となるDragon Ashとしての音楽活動から生まれたものではないでしょうか。ご存じの通りDragon Ashといえば、特に初期においてはラップを音楽に取り入れたことで各所からバッシングを受けました。この歌詞から感じられる自信と力強さはDragon Ashとしてそんなバッシングを乗り越えてきた今だからこそ得ることのできた、今の降谷建志を形作るもののように感じました。
そんな訳でDragon Ashとしても垣間見せていた降谷建志のメロディーメイカーとしての才能を発揮しつつ、彼のパーソナリティーを上手くアルバムに反映させた、ソロアルバムらしい傑作だったと思います。今回のソロアルバムの経験がまた、上手くバンドにも反映されるのではないでしょうか。Dragon Ashとしての次の作品も楽しみになってくるような傑作でした。
評価:★★★★★
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コメント
降谷建志という1人のミュージシャンの才能をDA以上に実感できる1stソロ・アルバムだと思います。
投稿: ひかりびっと | 2019年2月 4日 (月) 17時50分
>ひかりびっとさん
ご感想ありがとうございました。
投稿: ゆういち | 2019年3月 7日 (木) 22時31分