人気声優へのトリビュート
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今年、デビューから20年目の年を迎える人気声優坂本真綾。声優としての人気もさることながらミュージシャンとしても昔から積極的に取り組み、特に音楽家、菅野よう子とのコラボが話題となり、声優としてと同時にミュージシャンとしても高い評価を受けていました。
そんな彼女のデビュー20周年を記念してリリースされたのが彼女の曲を様々なミュージシャンがカバーしたトリビュートアルバム。この参加したミュージシャンの面子もなかなかおもしろく、the band apartや真心ブラザーズといったロック勢から鈴木祥子、新居昭乃といったポップスシンガー、さらにはAKB48の渡辺麻友、Negiccoといったアイドル勢まで参加しています。まあ、面子的には正直、ある程度予想できた範囲内だったのですが、ちょっと予想外だったのが真心ブラザーズ。彼ら、あまりアニメカルチャー界隈との接点にイメージがわかなかっただけに、彼らの参加はちょっと意外な印象も受けました。
さて、そんなカバーの出来栄えなのですが、元曲の良さを生かした名カバーもあった反面、全体的には出来は悪くないものの無難なカバーが多かったように思います。特に、原曲を大胆に解釈したカバーが少なかったのは残念・・・。そんな中、唯一、原曲のイメージを変えてきたのが、参加したのが意外だった真心ブラザーズの「ポケットを空にして」。原曲の爽やかなポップソングを真心らしいブルースロック調にガラリと変えて、完全に真心の曲として生まれ変わっていました。というか、真心のサウンドとこの曲の相性の良さにビックリ。選曲のうまさにも感心させられました。
他にはKIRINJIのカバーした「うちゅうひこうしのうた」のカバーも見事。ボーカルも曲の雰囲気にピッタリマッチ。基本的に原曲のイメージから大きくはかわらないものの、KIRINJIらしいソフトロックに仕上がっていました。
ユニークだったのはSUGIZO feat. IAの「バイク」。ボーカロイドを使用した作品でスペーシーなアレンジが特徴的。おそらく彼のソロや、彼が参加しているバンドでは出来ないようなことをやったんだな、ということがわかる実験的な作品。ただ、その実験が成功しているか、と言われると、ちょっと微妙な感じはしてしまったのが残念なのですが・・・。
一方、ちょっと残念だったのはthe band apartの「約束はいらない」。いや、バンアパらしいギターロックに仕上がっており決して悪くはないのですが、以前に比べるとやはりバンドサウンドはあまりエッジが効いておらず、勢いもあまりありません。正直言って、10年くらい前だったらもっとおもしろいカバーになっていただろうなぁ、と感じてしまいました。
さて、今回のアルバム、初回版がちょっとおもしろいことになっていて、DISC2として、今回のトリビュートアルバムで選曲された曲の原曲が、トリビュートアルバムと同じ順に収録されたCDがついてきています。いわば原曲と聴き比べてカバーのおもしろさを実感しよう、という趣旨なのでしょうが、こちらのCDが、坂本真綾のアナザーベスト的に、とても楽しめる内容になっていました。
というか、カバーを聴いた後、坂本真綾のオリジナルを聴くと、「え、ここまで良かったっけ?」と彼女の魅力を再認識できる内容に。例えばKIRINJIがカバーした「うちゅうひこうしのうた」など、KIRINJIの出来が良かっただけに、オリジナルが見劣りしてしまうんじゃないか、と思ったのですが、実際聴いてみると、見劣りするどころか、やはりオリジナルの方が良かったか??なんてことすら思うほどの名曲ぶりを再認識してしまいました。
まあ、坂本真綾のアルバムって、中に1、2曲、いかにも「アニソン」的な曲があって、それが悪い意味で「ノイズ」的になっていて、個人的にはいまひとつに感じた部分があったのですが、今回のセレクトにはそんな「いかにもアニソン」な曲が「トライアングラー」くらいだったのがよかったのでしょうか。特にソフトロック系の曲と彼女のボーカルの相性の良さにあらためて実感させられ、ボーカリスト坂本真綾の実力を再認識させられました。
そんな訳で、DISC2は文句なしに★★★★★なのですが、あくまでもおまけ的な内容なので下の評価はトリビュートアルバムのみへの評価ということで。参加ミュージシャンに興味があればお勧め。個人的には、むしろDISC2の方が楽しめました(笑)。
評価:★★★★
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