フェス発無国籍ユニット
Title:La Cola Del Dragon
Musician:CUATRO MINIMAL
毎年、富山県南砺市で行われる日本最大のワールドミュージックのフェス、「SUKIYAKI MEETS THE WORLD」。私も何度か足を箱でいる大好きなフェスなのですが、そのフェス発のレーベル「スキヤキ・レーベル」が始動(正確には再開らしいですが)しました。その第1弾としてリリースされたのが、このCUATRO MINIMALというミュージシャンのアルバムです。
このフェス、毎年、ジャンル的に関係ないワールドミュージックのミュージシャンが、このフェスのためにユニットを組んでライブを行うのですが、CUATRO MINIMALもそんなフェスのためのユニットの一組。ボイス・パーカッションやホーミーまで駆使するメキシコのシンガー、ファン・パブロ・ヴィヤ、同じくメキシコのギタリスト、フェルナンド・ヴィゲラス、韓国の打楽器奏者チャン・ジェヒョ、さらには日本から、親指ピアノ奏者として活躍しているサカキマンゴーの4人からなるユニットです。まさに中南米に韓国のミュージシャン、さらに日本のミュージシャンながらも演奏する音楽はアフリカという、音楽的背景の異なったミュージシャンが揃ったユニットとなっています。
彼らが組んだのは2011年のスキヤキのステージに合わせて。大抵は1年限りのユニットなのですが、このユニットは特に評判がよかったらしく、昨年はメキシコツアーを実施。さらに今年、再びスキヤキのステージに立つそうで、ついにはアルバムリリースにまで至りました。
そんな音楽的背景の異なるミュージシャン同士のユニット。さて、どんな音楽が産まれたのか、楽しみにしてこのアルバムを聴いたのですが、このアルバムで奏でられるのは様々なタイプの音楽が融合された「無国籍」な音楽。親指ピアノとパーカッションの鳴り響く「Amagiki」はアフリカ音楽風ですし、続く「Meia Da Shonta」はラテン風。「La Cola Del Dragon」はどこか和風な雰囲気が漂っているかと思えば、「Gottan Ken」はギターサウンドがロック風のナンバーに仕上がっています。
ただおもしろいのは「無国籍」といっても、広く浅くいろんなジャンルを取り入れた、という感じではなく、それぞれの曲でそれぞれのミュージシャンが上手く自己主張をしている点。そのため曲によってはアフリカ風になったり、ラテン風になったり、あるいは韓国の伝統音楽の匂いを感じたり、様々なワールドミュージックの要素を感じます。
さらにおもしろいのはそんな様々なジャンルがバラバラにならず、ちゃんとCUATRO MINIMALの音として成り立っている点でした。その大きな要素が「レジデンスプロジェクト」。彼らは事前にフェスが行われる南砺市で共同生活を行い、その中で音楽をつくっていくというスタイルと取っています。そのため、即興のユニットとは思えないような一体感あるサウンドを作り出しています。
また、様々な国の音楽といっても、そこは同じ人間の奏でる音楽。どこか根底では共通するものがあるのでしょう。このCUATRO MINIMALの音楽を聴いていると、世界中の音楽が根っこではどこかつながっているように感じます。アフリカ風かと思えば、ラテン風のサウンドが顔をのぞかせたり、韓国のパーカッションのリズムに、どこか和の雰囲気を感じたり・・・同じ人間である以上、心動かされるリズムやメロディーには共通項がある、そう感じさせるアルバムでした。
「SUKIYAKI MEETS THE WORLD」に興味がある方もない方も、そのフェスから出てきたバンドという要素を抜きにしてお勧めしたいミュージシャン。ワールドミュージックが好きなら文句なしにはまるアルバムです。
評価:★★★★★
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