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2015年8月 8日 (土)

勝負の2枚目だが・・・。

Title:LITTLE VICTORIES
Musician:THE STRYPES

デビュー時に平均年齢16歳という若さながら、ブルースの影響を強く受けた、昔ながらのロックンロールを奏でて大きな話題となったTHE STRYPES。個人的にも、日本でのデビュー盤以降、すっかりはまってしまったバンドだったりします。その1stフルアルバム「SNAPSHOT」リリース後に発売されたミニアルバム「HARD TO SAY NO EP」では、「SNAPSHOT」の方向性を引き継ぎつつ、よりへヴィーなサウンドを聴かせてくれる彼らの姿があり、この2枚目のアルバムの方向性を占うにはもってこいの内容でした。

確かに今回のアルバム、前作に比べるとハード寄りになったようにも思います。例えば「NOW SHE'S GONE」などはかなりハードロック寄りのギターリフを聴かせてくれます。ただ、それよりも前作に比べて、ブルースに影響を受けたロックンロールという枠組みだけではなく、幅広いミュージシャンから影響を感じるような一気にバリエーションの幅が広がったように感じたアルバムになっていました。

例えば軽快なリズムの「GET INTO IT」は軽快なリズムでポップ寄りになっていましたし、「EIGHTY-FOUR」はARCTIC MONKEYSあたりの影響でしょうか?「(I WANNA BE YOUR)EVERYDAY」の哀愁感あふれるメロディーラインにはちょっとoasisっぽさも感じましたし、「Best Man」はよりパンキッシュなものを感じます。

雑誌のインタビューでもYou Tubeなどのネットメディアの影響で、60年代のロックンロールと最近のロックを同列に聴いている、みたいなことを言っており、さすがは今時のバンドだなぁ、とも思ったのですが、今回のアルバムはそんな彼らのロックに対するスタンスが強くあらわれた作品だと言えるのではないでしょうか。

ただ残念ながらその結果、今回のアルバムはデビュー作の時の魅力が半減してしまったように感じてしまいました。

楽曲はどれも真面目に、ある意味丁寧につくられているのですが、様々なタイプのロックを取り込もうとした結果、デビューアルバムの時にあったバンドの勢いに思いっきりブレーキがかかったように思います。彼らのようなタイプのシンプルなロックを奏でるバンドにとって、勢いというのは非常に重要な要素であるだけに、これは大きなマイナス点のように感じました。

また、様々なタイプの作風を取り込んだ結果、アルバム全体として方向性がぼやけてしまい、良くも悪くも「普通の」オルタナ系ギターロックバンドになってしまったように思います。いろいろなタイプのロックを薄く広く取り込むことによって、もともとルーツ志向というのが彼らの持ち味であったのですが、今回のアルバムは逆にルーツレスになってしまい、1stアルバムでの彼らの良さが大きく薄れてしまったように感じます。

今回、「日本独自デラックス盤」を購入した結果、ボーナストラックが7曲もついていました。その結果、本来40分程度の長さのアルバムのはずが1時間以上の長さになってしまい、彼らみたいなタイプのロックバンドだと正直、「蛇足」的にも感じます。アルバムの流れや勢いを考えれば、CD容量いっぱいに詰めるだけ詰めればよい、という考えはとても賛同できないのですが・・・。

ただ一方で本編よりもむしろボーナストラックの方が、いままでの彼らの良さが生きていた楽曲が入っていたように思ってしまいました。「FILL THE SPAES IN」などはまさに1stの頃の彼ららしい曲ですし、MC5のカバー「KICK OUT THE JAMS」も文句なしにカッコいいガレージロックになっており、アルバム全体でこの曲が一番良かったかも・・・。ここらへんのボーナストラックに収録されているような曲がアルバム本編に入っていないのはとても残念に感じます。

もっともアルバム本編にもカッコいいロックンロールな楽曲は多く収録されており、シンプルなロックサウンドは、1stアルバムを気に入った方には決して聴いて損となるアルバムとは思わないのですが・・・ミニアルバムや企画盤を含め傑作続きだったことを考えると、正直物足りなさは否めないアルバムになってしまいました。ちょっと残念。3枚目はどういう形であれ、再び傑作を期待したいのですが・・・。

評価:★★★★

THE STRYPES 過去の作品
BLUE COLLAR JANE
SNAPSHOT
HARD TO SAY NO EP

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アルバムレビュー(洋楽)2015年」カテゴリの記事

コメント

ボーナストラックが蛇足に感じられた点、よくわかります。
さすがに長すぎてアルバム一枚通して聴く元気がなくなるというか。

最後の曲はこの曲いいセン行ってるんじゃ!?と思ったのですがカバーだったんですね。
ロスのボーカルがいつにも増して力強くて頑張ってるな(?)と思ってたのですが独自に歌い方を勉強したというより原曲の歌い方を参考にしたからああなったんですかね。

投稿: リリ | 2015年8月10日 (月) 12時37分

>りりさん
そう、彼らみたいなタイプのバンドはボーナストラックは蛇足ですよね・・・。ちなみに最後の曲の元曲、MC5はTHE STRYPESが好きなら気に入ると思いますよ。よかったらチェックしてみてください。

投稿: ゆういち | 2015年8月19日 (水) 22時28分

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