偏差値の高いポップス
Title:Quarter Century of Odrelism(1990-2015)
Musician:青山陽一
1985年、現在カーネーションとして活躍している大田譲らとバンドGRANDFATHERSで活動。その後、1990年にソロデビューし、現在まで活動を続けているシンガーソングライター青山陽一のオールタイムベスト。2枚組になっており、1枚目は25年のソロキャリアを網羅したベスト盤、もう1枚は、現在の彼のサポートバンドthe BM'sによる再録音と新曲1曲を収録した内容になっています。
青山陽一というミュージシャンの名前自体は以前からよく聞いたことがありました。ただ、いままでアルバムがリリースされてもいまひとつ手が出ず、今回、オールタイムベストということでこれを機にはじめて彼の音源を聴いてみました。
正直、青山陽一という名前、最近はミュージシャンというよりも、特にミューマガ系近辺でよく原稿をみかける「音楽評論家」的なイメージが強くありました。それだけミュージシャンとしての知識をよく持っているということなのでしょう。今回のベスト盤を聴いてまず思うのは、非常に偏差値の高い音楽を演っているな、というイメージ。この「偏差値の高い」という表現は先日のceroでのレビューでも同じようなことを書きましたが、様々なジャンルの音を卒なく自分の音楽として取り入れ、きちんと音楽のルーツを「勉強」したような音をつくっているという意味。ルーツがしっかりしているだけに安心して聴ける音楽であることは間違いありません。
彼の音楽は、ソウルやファンクの要素の強いシティポップ。そういう意味では先日のceroと同じようなベクトルを向いている感じもします。そこにジャズ、ブルース、ポップス、さらにはカントリーなどの様々なジャンルを加えているのが特徴的。ブラスバンドを入れて明るい雰囲気に仕上げている「休符を数えて生きるのは」やちょっとトラッド風味の「Los Angeles」、軽快なサマーチューンの「水に浮かぶダンス」など、バラエティー富んだ作風に、彼の実力のほどがうかがえる作品が並んでいます。
ただ・・・一方気になった部分としてはアルバム全体として非常に地味という点でした。正直言って、卒なくこなしている楽曲は間違いなくクオリティーは高いもののインパクトは弱め。もちろん、1曲1曲取り上げれば文句なしの傑作なのですが、青山陽一だけが持っているような個性がちょっと薄かったような・・・。また、ちょっとボーカルとしてもいまひとつ印象に残らなかったのもとても残念でした。
また、25年間のベストという内容なのですが、通して聴いても時代性をほとんど感じなかったのも印象に残りました。要するにデビュー当初から音楽的に完成しており、時代を超えたエバーグリーンな輝きを持っている、ということなのでしょう。ただ、この点もちょっとネガティブな側面もなきにしもあらずで、ある程度時代に寄り添った曲の方が強いインパクトを感じるようにも思えます。先日紹介したceroのアルバムがまさにそんないい意味で時代に寄り添ったような部分が強かっただけに・・・。
そんな訳で、ミュージシャンとして文句なしに実力のあるということはアルバムを聴いて嫌というほど伝わってくるのですが、ポピュラリティーという意味でちょっと物足りなさも感じたベスト盤でした。なんとなく、良くも悪くもベスト盤を聴くイメージ通りだったかも。
評価:★★★★
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