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2015年7月25日 (土)

今時のシティポップ

Title:Obscure Ride
Musician:cero

前作「My Lost City」が高い評価を得て一気に注目のバンドとなった3人組バンドcero。約2年7ヶ月ぶりとなるニューアルバムも高い評価を得ただけではなく人気も急上昇し、なんとオリコンアルバムチャートでベスト10入りを記録!正直、決して派手なバンドではないし、ロケノンで推されているようなバンドでもないので(「Music Magazine」では大プッシュのようですが)ビックリしてしまいました。

今回の彼らの作品を聴いてまず感じたのは、このアルバムに収録されているのは「今の時代のシティポップ」という印象でした。まず顕著なのが1曲目。自らのバンド名を付した「C.E.R.O.」は音数を絞ったファンキーかつHIP HOPの要素を感じるトラックに、ラップを入れつつ淡々と進んでいくスタイル。イメージとしたは完全にD'Angeloからの影響を感じさせる楽曲で、昨年末リリースされて全世界で話題を呼んだ「Black Messiah」に刺激を受けたのか?なんて勘繰りを入れてしまうようなナンバーになっています。

他の曲に関しても、シティポップという枠組みで語られる彼らですが、むしろブラックミュージックからの影響が強く、ファンク、ネオソウル、あるいはHIP HOP的な要素を強く感じる作品が並んでいます。比較的シンプルなサウンドに、淡々と流れるジャズの要素も加えたバンドサウンドには独特のグルーヴ感も感じられます。ただループするサウンドはどこかHIP HOP的というか、トラックからはサンプリングっぽい雰囲気も感じられます。

そんなHIP HOP的なトラックという点もこのバンドが今風と感じられる大きな要素なのですが、それ以上に私が彼らのことを「今風」と感じたのは楽曲から感じられる熱量。シンプルなサウンドを淡々と奏でるから、でしょうが彼らの楽曲から感じられる熱量は非常に冷めたものを感じます。この妙に冷めた感じに、今風なものを感じました。

彼らはHIP HOP、ソウル、ジャズ、ファンクなど様々なジャンルを取り入れており、いわば「非常に偏差値の高いサウンド」を奏でているにも関わらず、ルーツ志向といったイメージはありません。また、この手の偏差値の高いサウンドを奏でているバンドってちょっと前のバンドなら一種のスノビズムを感じたり、どこか一歩下がって鼻にかけるようなスタイルを感じたのですが、彼らに関してはそんな雰囲気もありません。ある意味、非常に自然体で、そういう意味でも冷めた熱量を感じます。そこがまた今時のバンド、といった印象を受けました。

ただ、今時のバンドといっても決して10代向けの勢いだけのバンドではないことは説明するまでもないでしょう。淡々とした中に色濃く流れるグルーヴ感は、ある意味噛めば噛むほど味わい深くなるような感じ。こういうバンドがチャートでベスト10に入ってきちゃうあたり、とてもうれしく感じてしまいます。高い評価も納得の文句なしの傑作です。

評価:★★★★★

cero 過去の作品
My Lost City

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コメント

ceroはスペースシャワーTVで推されていたのでそれで知った人も多そうです。
個人的な話になりますが私はロキノン系のバンドにはピンと来なくていまいち好きになれないなと思っていたのですが、スペースシャワーTVでceroを聴いてこれは!と感じました。
音楽に詳しいわけでもない自分がそう思うということは、他にも同じように思った人がたくさんいたんだと思いますね。

投稿: リリ | 2015年7月25日 (土) 23時59分

ceroはいろんな要素を盛り込んでいるので聞いてるだけで楽しいです
そしてBPM遅めの曲が多いこのアルバムがヒットしたのが素直にうれしいです

これを気にシティポップ勢の浮上を願います

投稿: softman | 2015年7月29日 (水) 00時11分

>りりさん
ceroの本作、いろいろなところで推されているみたいです。確かにロケノン系とは明確に異なる(というか、ミューマガ系?)ですが、とてもいいバンドの名盤だと思います。

>softmanさん
そうですよね。最近ヒットするのはいずれもBPM早めなので、彼らみたいなタイプのミュージシャンがブレイクするのはうれしいですよね。彼らみたいなシティポップ勢がもっとがんばってくれるとうれしいのですが。

投稿: ゆういち | 2015年7月29日 (水) 23時41分

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