「食」をテーマにゆる~くラップ
Title:ジャスタジスイ
Musician:DJみそしるとMCごはん
まずその名前からしてユニークなDJみそしるとMCごはん。名前からして2人組・・・と思ってしまうのですが、ジャケットに写っている女の子のソロ。彼女はれっきとしたHIP HOPのMCなのですがユニークなのはその題材。以前、一度ライブを見たことがあるのですが、その時の曲が「ピーマンの肉詰め」に「ぶり大根」に「スクランブルエッグ」・・・いずれも歌詞がそのままレシピになっていて曲の通りつくっていけばちゃんとお料理が完成する内容。要するに、お料理のレシピをそのままラップにしちゃったという歌詞。もともと大学の卒業研究で「歌って覚えられるレシピ」というテーマで楽曲をつくったのが最初だそうで、聴いていてお腹がすいてくるようなユニークな曲をラップしていました。
そんな彼女も見事メジャーデビューを果たし、このアルバムはメジャーデビュー後初となるミニアルバムとなります。そんなメジャーデビューアルバムも、見事全曲「食べること」をテーマとした楽曲が並んでいます。これほどワンテーマにこだわったミュージシャンも珍しいのではないでしょうか。もっとも、「食」は人間にとって最も重要なテーマのひとつであるため、「食」のみにこだわっていてもネタはつきないのかもしれません。
ただ、「食」をテーマに、といっても今回のアルバム、ライブで聴かせたような料理のレシピをそのままラップにしたような曲といった感じではありません。例えばタイトルナンバーである「ジャスタジスイ」では、はじめての自炊あるあるをネタにしつつ、一人暮らしの孤独と楽しみを描いていますし、「凍狂まんじゅう」は食事ネタを織り込みつつ、都会での生活への不安を描いたりしています。要するに基本的には「食」をテーマとしつつも、そこから派生したテーマも織り込んでおり、意外とバラエティーは豊富。下手にネタを広げるより、「食」にこだわった方がおもしろい歌詞が書けるのかもしれません。
また、そんなある意味ゆるさを感じるテーマを反映したかのような、ゆる~いトラックも印象的。ただ、以前ライブで聴いた時は、カセットテープに録音したチープなトラックをバックにラップをしていたのですが、そこに関してもさすがにメジャーデビュー作なのでプロダクションはしっかりとしていました。
食べ物をラップということでちょっとおふざけ感もあるようにも感じるのですが、ただきちんと韻は踏んでおり、トラックもシンプルにまとめつつきちんと聴かせる部分は聴かせています。「あの素晴らしい味をもう一度」では「あの素晴らしい愛をもう一度」をサンプリングしており、そういう意味でもきちんと「HIP HOP」しているのは間違いありません。非常にゆるいラップですがHIP HOP的なマナーはちゃんと踏まえた内容という点も魅力的な部分でしょう。
とりあえずメジャーデビューごあいさつ代わりといった感じのミニアルバム。個人的にはもっとゆるくてもおもしろいかな、なんてことも思ったりするのですが(笑)こういう多様なスタイルのラップが出てくることも日本のHIP HOPシーンの大きな魅力のようにも思います。次のアルバムはどんなネタを持ってくるのか・・・楽しみです。
評価:★★★★
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