12年目の初期衝動
Title:サンボマスターとキミ
Musician:サンボマスター
うわぁ、サンボマスター、カッコイイ!!!サンボマスターに関しては「新しき日本語ロックの道と光」以来、アルバムはリアルタイムで一通りチェックしています。パンキッシュなサウンドにファンクやソウルといったブラックミュージック的な要素を載せたロックには惹かれ、楽曲単位ではカッコいい曲もあるなぁ、と思いつつ、正直言って、アルバム単位でこのバンドをカッコイイ!と思ったのはこのアルバムがはじめてです。
このアルバムで彼らのことを「カッコいい」と感じたのはまずはバンドサウンド。いままでの彼らの楽曲は、確かにパンキッシュなロックサウンドが魅力的だったのですが、ブレイク後の楽曲に関しては一方ではどこかストッパーがかかったのかのような、抑制された部分を感じてしまいました。
それに対して今回のアルバムのバンドサウンドにはかなりの荒々しさを感じます。一言でいえば「初期衝動」とでも言うべきでしょうか。実はこれほど荒々しいサンボマスターを聴くのははじめてではありません。今回の楽曲に関しては、以前聴いたことあるインディーズ時代のサンボマスターに近い部分を感じました。そういう意味では「初期に戻った」と言えるのかもしれません。ただ一方ではブレイク後身につけたポップという要素もきちんと残っており、そういう意味ではインディーズ時代の彼らと似たよう場所にいるように見せつつ、実はインディーズ時代よりもっと高みにいる、といっていいのかもしれません。
カッコいいと感じたのはバンドサウンドだけではありません。歌詞に関しても「もてない男の鬱屈した心の叫び」というサンボマスターのパブリックイメージから離れた歌詞が多く収録されていました。特に社会派の歌詞の曲が目立ち、例えば「自由なステップ」では、「ただちに武器を捨てて踊れ」「自由なステップ 踏むぜ」と歌うメッセージ性の高い曲になっていましたし、「ケイサツ来るまで踊りまくれ」はタイトル通り、おそらく反風営法を意識しつつ、社会からの抑圧に対するアンチを高らかに歌い上げるロックナンバーになっています。
また、力強く前向きな歌詞の曲も並んでおり、「可能性」「キミの手に未来の花」などはタイトル通り、前向きな彼らのメッセージが込められています。前向きソングというとどうしても売れ線のJ-POPも彷彿させられてしまいそうですが、パワフルなバンドサウンドをバックにシャウトで歌い上げるメッセージは、良くありがちなJ-POPの前向きソングとはあきらかに一線を画しています。
そしてなんといっても印象に残ったのが最後を飾る「私をライブに連れてって」。スカやハードロック的な要素を入れつつ、荒々しくパンキッシュにまとめあげた曲は、このアルバムの集大成ともいうべきサウンドを聴かせてくれますし、
「どんなにクソみたいな日々が続いたとしても
ダンスフロアは僕の革命を信じている
これ以上かなしみが 続かないように 世界中を爆音で祝福しておくれよ」
(「私をライブに連れてって」より 作詞 山口隆)
という歌詞は彼らのバンド、音楽にかけた想いを強く感じることが出来る、彼らの新たなアンセム登場の予感がする名曲でした。
個人的に、サンボマスターのアルバムの中で最高傑作だったかも。メジャーデビューから12年目を迎えた彼らですが、その段階でこれだけ初期衝動にあふれたアルバムをつくってくるとは正直驚きです。いや、サンボマスターのバンドとしての実力は十分知っているつもりでしたが、あらためてそのほどを再認識した傑作でした。
評価:★★★★★
サンボマスター 過去の作品
音楽の子供はみな歌う
きみのためにつよくなりたい
サンボマスター究極ベスト
ロックンロール イズ ノット デッド
終わらないミラクルの予感アルバム
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コメント
僕もこのアルバムは名盤だと思います
「私をライブに連れてって」を聴いた時は音楽が好きで良かったと思いました。
元々好きなバンドでしたが…ここまで良いバンドだったとは…。
投稿: ASP | 2015年7月22日 (水) 11時54分
>ASPさん
いや、本当にいいアルバムですよね!「私をライブに連れてって」も本当に名曲です!私も彼らがここまで良いバンドだったとは・・・と驚いています。
投稿: ゆういち | 2015年7月29日 (水) 23時40分
何となくこのサイト内のレビューでサンボの評価はちょいと低いなあと思ったのでこのべた褒めはサンボファンとは嬉しい限り。私をライブに連れてってはライブハウス内の[ここから何かが変わるかも]って幻想を歌い切った傑作ですよねー。
投稿: オジャ | 2015年7月30日 (木) 21時17分
>オジャさん
すいません、確かにサンボマスターはいいバンドとは思いつつも、大絶賛するにはひっかかる部分がありました。ただ今回のアルバムに関しては、そんな「ひっかかる部分」が全くなかった傑作でした。「私をライブに連れてって」は本当に名曲ですよね!
投稿: ゆういち | 2015年8月19日 (水) 22時25分