« 2015年6月 | トップページ | 2015年8月 »

2015年7月

2015年7月31日 (金)

一世を風靡したスカパンクバンドの記録

Title:SKA BRAVO
Musician:KEMURI

今年で結成20周年を迎えるスカパンクバンドKEMURIのオールタイムベスト。KEMURIと言えば言わずと知れた、日本における「スカパンク」の代表的なミュージシャン。「結成20年」といっても途中、メンバーの交通事故死という悲劇の後、活動休止。さらには2007年には一度、解散も経験。その後、2012年に再結成し、今を迎えています。

スカパンクというと、ホーンセッションに奏でられた軽快なスカのリズムにのせたパンクロック。ただ、どうしてもリズムパターンは似たような感じになってしまい、勢いがありライブでは盛り上がりそうだけど、一本調子で単調、というイメージがあります。

実際、彼らのアルバムに関してもそういうイメージを持ってしまった作品もあるにはありました。今回のベスト盤でも、やはりKEMURI節と言われればその通りだけども、似たようなタイプの曲が少なくなかった、というのも事実です。

ただ、今回のベスト盤で彼らの代表曲を聴くと、やはりKEMURIというバンドは非常に魅力的なバンドだなぁ、ということを実感します。そう感じたのは、まず意外と、といっては失礼なのかもしれませんが、スカパンクというカテゴリーの範疇ながらも、様々な引き出しを持っているという点。しんみり横ノリのレゲエチューンである「Slow Lights」が一番わかりやすい例なのでしょうが、それ以外にも「Ato-Ichinen」はパンク以上にポップ色が強い作品になっていますし、「Along the longest way…」はギターロックの色合いが濃いパンクナンバーになっています。

そういうバリエーションの豊富さも魅力的だったのですが、それ以上に魅力的に感じたのは、ホーンセッションが奏でる軽快なリズムと、ガツンと来るバンドサウンドのへヴィネスさの絶妙なバランスでした。このアルバムの1曲目に収録されており、彼らのデビューアルバム「Little Playmate」の1曲目でもある、まさに彼らのスタート地点である「New Generation」などはまさに典型例。軽快なサウンドの中に流れるインパクトあるバンドサウンドが耳に残るナンバー。「I am proud」などもへヴィーなサウンドが印象的なパンクロックに仕上がっていました。

彼らは自らのバンドスタイルを「P・M・A(Positive Mental Attitude =肯定的精神姿勢)」と称していますが、そんな彼らの前向きな歌詞も魅力的。もっとも、英語詞が多い彼らの歌詞は、聴いていてその内容がダイレクトに入ってこないものも多いのですが、「ima-sorewo-hikarini-kaete-susume!」のように日本語詞で、ポジティブな歌詞が印象的な曲もちゃんと収録されています。楽曲自体、陽性の楽曲がほとんどであって聴いていて楽しくなってくるような曲ばかりで、そんな楽曲たちも大きな魅力となっています。もちろん「前向きな歌詞」といってもJ-POPによくありがちなノーテンキな前向きソングとは違います。

さらにオールタイムベストといいつつ、全14曲入りでわずか40分強という長さもいいですね。最初から最後までサクッと聴けてしまうのも魅力的。上にも書いた通り、どうしても似たタイプの曲も少なくないのですが、1曲あたり3分程度の短い楽曲が並んでいるだけに、そこらへん気にせずに、最後まで一気に聴けてしまう構成なのもこのベスト盤の大きな魅力に感じました。

そんな訳でKEMURIというバンドの魅力を存分に伝えてくれた、非常にすばらしいベスト盤でした。彼らがもっとも人気があった時期が2000年代初頭でしたので、ここ最近の若い世代はパンク好きでも聴いたことない方もいるかも・・・そういう方にこそ、是非とも聴いてほしいベスト盤。また、昔からのファンにとっても新録の曲も多く、再度聴きなおすにはもってこいの1枚です。

評価:★★★★★

KEMURI 過去の作品
ALIVE Live Tracks from The Last Tour "our PMA 1995-2007"
RAMPANT

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月30日 (木)

ドリカム強し!その2

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

これで3週連続の1位獲得です。

今週1位はDreams Come Trueのベストアルバム「DREAMS COME TRUE THE BEST! 私のドリカム」。これで3週連続の1位獲得となりました。売上は11万9千枚から7万9千枚とさすがの3週連続の10万枚超えはなりませんでしたが、根強い人気を感じさせる結果となっています。

1位ドリカムはベスト盤でしたが、今週は2位以下もベスト盤が並びました。2位にはUNISON SQUARE GARDEN「DUGOUT ACCIDENT」が初登場。ポップでキュートなメロで人気上昇中のバンド、UNISON SQUARE GARDENですが、こちらは「10周年記念アルバム」だそうで、彼らの過去の曲をセレクトしたアルバムなのですが、シングル表題曲を含んでいないという選曲。裏ベスト的な企画盤、といっていいでしょうか。2位はシングルアルバム通じて自己最高位。初動売上2万5千枚は直近のオリジナル「Catcher In The Spy」の1万6千枚(5位)からアップしています。

さらに3位もベスト盤。シンガーソングライター高橋優「高橋優 BEST 2009-2015『笑う約束』」が入ってきています。たった6年間でベストはちょっと早すぎない?という感じもしないではないのですが・・・。初動売上2万4千枚は、直近のオリジナル「今、そこにある明滅と群生」の1万4千枚からアップ。こちらも3位はシングルアルバム通じて自己最高位となります。

ちなみに4位はTUBEのベスト盤「BEST of TUBEst~All Time Best~」が先週から2ランクダウンでこの位置につけていますので、これで1位から4位までベスト盤(裏ベスト的企画盤も含む)が並びました。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まず人気女性声優のアルバムが2枚ランクイン。5位にfripSideのボーカルとしても活躍している南條愛乃「東京 1/3650」、9位に、こちらは最近話題のμ'sにも参加している内田彩「Blooming!」がランクインしています。

南條愛乃はシングルアルバム通じてこれがベスト10初登場。初動売上1万9千枚で、前作「カタルモア」の1千枚(83位)より大幅アップ。内田彩もこれがはじめてのベスト10入り。こちらは初動1万枚で、前作「アップルミント」の9千枚(13位)から微増となっています。

続いて6位には東方神起「Rise as God」がランクイン。こちらは韓国でのアルバムの輸入盤。メンバーそれぞれが近日中に徴兵を受ける予定だそうで、それを前にリリースされた「スペシャルアルバム」だそうです。初動売上は1万8千枚。直近の日本盤アルバム「WITH」は初動23万3千枚(1位)なので、さすがにこちらよりは大幅ダウン。

韓流男性アイドルの輸入盤が今週はもう1枚ランクイン。8位にSUPER JUNIOR「Devil」が、こちらは発売日の関係で、先週のベスト50圏外から一気にランクアップしてきました。こちらもデビュー10周年を記念した企画盤的な「スペシャルアルバム」だそうです。今週の売上は1万1千枚。

最後に10位初登場は4人組ロックバンドBLUE ENCOUNT「≒」。これがメジャーデビューアルバムで、フルアルバムとしても2枚目のアルバムとなります。初動売上は1万枚。前作「BAND OF DESTINATION」の2千枚(25位)より大幅アップで、初のベスト10ヒットとなりました。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月29日 (水)

ベスト3は女性陣

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

今週はベスト10がすべて新曲というチャートとなりました。

そんな中、1位を獲得したのは先週に続きAKB系。乃木坂46「太陽ノック」がランクイン。良くも悪くも何の変哲もない、乃木坂46らしい優等生的な爽やかポップス。初動売上60万9千枚は前作「命は美しい」の50万枚(1位)からアップ。

2位はハロプロ系女性アイドルグループ、アンジュルム「七転び八起き」が初登場。以前はスマイレージと名乗っていたグループが改名してこれが2枚目のシングル。ゴシック色の強いちょっとダーティーな雰囲気に。初動売上4万2千枚で、前作「大器晩成」の4万3千枚(2位)より若干のダウン。四字熟語シリーズですか・・・。

3位初登場は水樹奈々「Exterminate」。水樹節というか、相変わらずのマイナーコード全開のアップテンポな様式美ポップス。アニメ「戦姫絶唱シンフォギアGX」オープニング・テーマ。初動売上3万8千枚。直近作は同じ「戦姫絶唱シンフォギアGX」のキャラソン、マリア×翼「戦姫絶唱シンフォギアGX キャラクターソング1(星天ギャラクシィクロス)」で、こちらの1万2千枚(7位)からはアップ。水樹奈々名義では前作「Angel Blossom」の3万9千枚(4位)からは若干のダウンとなりました。

初登場は続きます。4位はEXILE SHOKICHI「Don't Stop The Music」。流行のEDM風歌謡。初動売上3万6千枚は前作「The One」の2万9千枚(5位)よりアップ。

5位初登場は女性4人組バンドSCANDAL「Stamp!」。バンドサウンドがへヴィーになってロック色が増した印象。初動売上2万枚は前作「Image」の1万2千枚(14位)からアップし、2作ぶりのベスト10ヒット。ただし、前作はアルバム先行シングルで売上を落としていました。そのため前々作「夜明けの流星群」と比べると、こちらは初動3万2千枚(5位)から大きくダウンという結果となっています。

これに続いたのはゲームのキャラソン。男性アイドル育成ゲーム「アイドルマスター Side M」よりHigh×Joker 「THE IDOLM@STER SideM ST@RTING LINE -04 High×Joker(HIGH JUMP NO LIMIT)」が6位に、Beit 「THE IDOLM@STER SideM ST@RTING LINE -03 Beit(スマイル・エンゲージ)」が8位にそれぞれランクイン。どちらのキャラクターのユニット名。初動売上はそれぞれ1万9千枚と1万7千枚。「アイドルマスター Side M」としては、同じ「ST@RTING LINE」シリーズの第1弾Jupiter「THE IDOLM@STER SideM ST@RTING LINE -01 Jupiter」と第2弾DRAMATIC STARS「THE IDOLM@STER SideM ST@RTING LINE -02 DRAMATIC STARS」がそれぞれ1万枚(10位)、9千枚(11位)でランクインして以来となります。

7位にはもう1組、女性アイドルグループが。愛乙女★DOLL「カレンダーガール」がランクイン。PVといいジャケット写真といい昭和のアイドルを意識しているのでしょうか?その割には楽曲が平凡なJ-POPなのですが。初動売上1万7千枚は前作「Bargain girl」の1万9千枚(8位)よりダウン。

9位は韓流の男性アイドルグループF.CUZ「two of us」が入ってきています。いかにも男性アイドルといった感じのあま~い雰囲気のポップス。初動売上1万6千枚は前作「もう一度だけ~Remind~」の1万2千枚(7位)からアップ。

最後も男性アイドル。10位初登場は名古屋のローカルアイドルグループBOYS AND MENのメンバー、小林豊のソロシングル「恋するスイーツレシピ4 ~君が恋に落ちる一つの方法~」。もともとパティシエだったそうで、彼がオリジナルスイーツ・レシピを作り、それに基づき、漫画家・水城せとなが作詞を手掛けたそうです。楽曲はラテン風ナンバー。なんかこの内容を聞くだけで悪い意味で鳥肌がたってくるんですが(苦笑)。初動売上1万5千枚は前作「恋するスイーツレシピ3 ~君が恋に落ちる一つの方法~」の6千枚(11位)からアップで初のベスト10入り。小林豊といえば、同姓同名のアナウンサーがいたよなぁ。最近、ほとんど見なくなってしまったんですが・・・。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月28日 (火)

不遇の名盤

Title:シングル・マン+4
Musician:RCサクセション

RCサクセションが1976年にリリースしたサードアルバムで、RCの代表作のひとつで、日本ロック史においても代表的な名盤のひとつとして取り上げられることの多い作品です。今年でデビュー45周年となるRCですが、忌野清志郎の命日である5月2日にあわせてリリースされたリマスターアルバム。本作の直後にリリースされたシングル「わかってもらえるさ」とそのB面「よごれた顔でこんにちは」、アルバムの直前にリリースされた「スローバラード」とそのB面「やさしさ」のシングルバージョンをボーナストラックとして収録。またSHM-CDという高音質の規格でリリースされています。

今日では名盤の誉れ高い本作ですが、リリースに際しては様々な困難が生じていたことでも有名な作品。当時、彼らのマネージャーを務めていた奥田義行が、RCも所属していたホリプロを独立。本来、RCも彼と行動を共にする予定だったものの、契約の都合でホリプロに居残りとなったのですが、奥田氏の独立劇がホリプロへの造反的なものであったため、あてつけに事実上、干された状態となったRCが、事務所に内緒で作成を進めたのが本作だそうです。ただ、完成後もリリースは出来ず、結局、RCもホリプロから離れた後にようやくリリース。しかし、売上は芳しくなく、わずか1年で廃盤という状況になってしまったそうです。

しかしその後、ライブでの活動から徐々にRCサクセションというバンドが評判となっていきます。そんな中、音楽評論家の吉見佑子を中心に、アルバムの再発を求める活動がスタート。自主制作盤での再発を経て、80年にようやくポリドールから再発が決定するまでに至りました。

そんな紆余曲折を経て今にいたる本作。以前にも日本ロック史を代表する名盤ということで聴いたことはあったのですが、あらためて今回のリマスター盤を聴いてみました。うん、今聴いても全く遜色ない傑作だよね、これ。特にあらためて聴いて感じたのは、この段階でキヨシローのスタイルが既に出来あがりつつあったの驚き。ホーンセッションが入って軽快な「ファンからの贈りもの」はニューオリンズからの影響を感じますし、「冷たくした訳は」でではガッタガッタ言ってますし(笑)、後のキヨシローの個性といえるスタイルが既に本作では見て取ることが出来ます。「ぼくはぼくの為に」のような皮肉たっぷりの歌詞も彼らしいと言えるでしょう。

今回のリマスター、以前私が聴いたCDと比べると、明らかに音圧が増え、音のクリアさが増した印象。今回、このアルバムを聴いて、今でも全く遜色ない傑作と感じた理由のひとつがおそらくこのリマスターにあって、リマスターを経て今の音に生まれ変わった結果、今、リリースされているアルバムと純粋な比較が出来るようになったため、と感じます。正直、ちょっとフォーク色の強い楽曲に関しては時代を感じさせる部分もあるのですが、それを差し引いても、今の時代のリリースされたアルバムといっても全く違和感のない内容になっていました。

そんな訳で、以前のヴァージョンを持っている方も、再度要チェックなアルバム。もちろん、いままでこの作品に触れたことがない方もこれを機に是非。ロック好きなら、とりあえずはチェックしておきたい名盤です。

評価:★★★★★

RCサクセション 過去の作品
悲しいことばっかり

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月27日 (月)

シンプルなオルタナロック

Title:Star Wars
Musician:WILCO

アメリカのロックバンドWILCOのニューアルバムが突然、フリーダウンロードでリリースされて話題となっています。

【参考サイト】ウィルコが新作『Star Wars』を突如リリース、フリー・ダウンロード可能に

彼らにとっては約4年ぶりとなるニューアルバム。その前作「THE WHOLE LOVE」も傑作だっただけに迷わずダウンロードを実施し、さっそくその新作を聴いてみました。

楽曲は全11曲入りながらも、アルバム全体としてはわずか34分という内容。1曲あたり2、3分程度の曲がメインになっています。その影響かまず感じたのはシンプルで聴きやすいアルバムという印象。前作「THE WHOLE LOVE」でもそうだったのですが、彼らの作品は、意外とポップで人なつっこいメロディーラインが特徴的なのですが、今回のアルバムに関しても、そんなポップなメロディーラインと、1曲あたり2、3分という長さが影響して、ポップソング的な感覚で気軽に聴けるアルバム、というのが最初の印象でした。

特に「Taste the Ceiling」「Where Do I Begin」はシンプルで、かつメロディアスなギターロック。基本的にオルタナ系のギターロックサウンドにカントリーの要素を入れたような楽曲は、広いリスナー層が違和感なく楽しめそうな内容になっていました・・・・・・と思いきや、「Where Do I Begin」の最後の方ではゆがんだギターサウンドが展開されており、ちょっとしたひねりの要素が入っていたりするのですが。

もっとも、そんな人なつっこいポップという要素はあくまでもメロディーラインに注目したら、という話。そこに鳴っている音は、ゆがんだノイジーなギターサウンド。「More…」にしろ「Random Name Generator」にしろ、メロディーこそポップなのですが、一方ではゆがんだギターサウンドが心地よいロックチューンになっています。

特にアルバムの核ともなっているのが本作の中で唯一5分を超える「You Satellite」。本作の中で唯一、ドリーミーでサイケなサウンドを主軸とした曲。5分という長さはこの手の曲としては決して長くはないのですが、その短い時間の間で軽くトリップできるような作品になっています。

そんな曲も入りつつも、ただやはりギターを中心としたバンドサウンドのみが鳴っているシンプルな曲が多く、アルバム全体としても「シンプル」という印象は何度か聴いても変わりませんでした。とはいえ一方ではWILCOらしい魅力も、この30分強という短い中にちゃんとつまっており、WILCOの新作として間違いなく傑作と言える出来だったと思います。ちなみに無料配信は8月13日までということなので(その後はCDでリリース)、興味ある方は今のうちに急げ!

評価:★★★★★

WILCO 過去の作品
Wilco(This Album)
THE WHOLE LOVE


ほかに聴いたアルバム

The Hunting Party/Linkin Park

Linkin Parkのニューアルバムは、いわば「王道」的な作品。彼ららしいラップメタルのへヴィーなサウンドに、ともすれば日本人受けしそうな哀愁ただよう意外とポップなメロディーラインが載るスタイル。新鮮味はないものの、安心して聴けそうな作品でした。

評価:★★★★

LINKIN PARK 過去の作品
A THOUSAND SUNS
LIVING THINGS

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月26日 (日)

偏差値の高いポップス

Title:Quarter Century of Odrelism(1990-2015)
Musician:青山陽一

1985年、現在カーネーションとして活躍している大田譲らとバンドGRANDFATHERSで活動。その後、1990年にソロデビューし、現在まで活動を続けているシンガーソングライター青山陽一のオールタイムベスト。2枚組になっており、1枚目は25年のソロキャリアを網羅したベスト盤、もう1枚は、現在の彼のサポートバンドthe BM'sによる再録音と新曲1曲を収録した内容になっています。

青山陽一というミュージシャンの名前自体は以前からよく聞いたことがありました。ただ、いままでアルバムがリリースされてもいまひとつ手が出ず、今回、オールタイムベストということでこれを機にはじめて彼の音源を聴いてみました。

正直、青山陽一という名前、最近はミュージシャンというよりも、特にミューマガ系近辺でよく原稿をみかける「音楽評論家」的なイメージが強くありました。それだけミュージシャンとしての知識をよく持っているということなのでしょう。今回のベスト盤を聴いてまず思うのは、非常に偏差値の高い音楽を演っているな、というイメージ。この「偏差値の高い」という表現は先日のceroでのレビューでも同じようなことを書きましたが、様々なジャンルの音を卒なく自分の音楽として取り入れ、きちんと音楽のルーツを「勉強」したような音をつくっているという意味。ルーツがしっかりしているだけに安心して聴ける音楽であることは間違いありません。

彼の音楽は、ソウルやファンクの要素の強いシティポップ。そういう意味では先日のceroと同じようなベクトルを向いている感じもします。そこにジャズ、ブルース、ポップス、さらにはカントリーなどの様々なジャンルを加えているのが特徴的。ブラスバンドを入れて明るい雰囲気に仕上げている「休符を数えて生きるのは」やちょっとトラッド風味の「Los Angeles」、軽快なサマーチューンの「水に浮かぶダンス」など、バラエティー富んだ作風に、彼の実力のほどがうかがえる作品が並んでいます。

ただ・・・一方気になった部分としてはアルバム全体として非常に地味という点でした。正直言って、卒なくこなしている楽曲は間違いなくクオリティーは高いもののインパクトは弱め。もちろん、1曲1曲取り上げれば文句なしの傑作なのですが、青山陽一だけが持っているような個性がちょっと薄かったような・・・。また、ちょっとボーカルとしてもいまひとつ印象に残らなかったのもとても残念でした。

また、25年間のベストという内容なのですが、通して聴いても時代性をほとんど感じなかったのも印象に残りました。要するにデビュー当初から音楽的に完成しており、時代を超えたエバーグリーンな輝きを持っている、ということなのでしょう。ただ、この点もちょっとネガティブな側面もなきにしもあらずで、ある程度時代に寄り添った曲の方が強いインパクトを感じるようにも思えます。先日紹介したceroのアルバムがまさにそんないい意味で時代に寄り添ったような部分が強かっただけに・・・。

そんな訳で、ミュージシャンとして文句なしに実力のあるということはアルバムを聴いて嫌というほど伝わってくるのですが、ポピュラリティーという意味でちょっと物足りなさも感じたベスト盤でした。なんとなく、良くも悪くもベスト盤を聴くイメージ通りだったかも。

評価:★★★★

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月25日 (土)

今時のシティポップ

Title:Obscure Ride
Musician:cero

前作「My Lost City」が高い評価を得て一気に注目のバンドとなった3人組バンドcero。約2年7ヶ月ぶりとなるニューアルバムも高い評価を得ただけではなく人気も急上昇し、なんとオリコンアルバムチャートでベスト10入りを記録!正直、決して派手なバンドではないし、ロケノンで推されているようなバンドでもないので(「Music Magazine」では大プッシュのようですが)ビックリしてしまいました。

今回の彼らの作品を聴いてまず感じたのは、このアルバムに収録されているのは「今の時代のシティポップ」という印象でした。まず顕著なのが1曲目。自らのバンド名を付した「C.E.R.O.」は音数を絞ったファンキーかつHIP HOPの要素を感じるトラックに、ラップを入れつつ淡々と進んでいくスタイル。イメージとしたは完全にD'Angeloからの影響を感じさせる楽曲で、昨年末リリースされて全世界で話題を呼んだ「Black Messiah」に刺激を受けたのか?なんて勘繰りを入れてしまうようなナンバーになっています。

他の曲に関しても、シティポップという枠組みで語られる彼らですが、むしろブラックミュージックからの影響が強く、ファンク、ネオソウル、あるいはHIP HOP的な要素を強く感じる作品が並んでいます。比較的シンプルなサウンドに、淡々と流れるジャズの要素も加えたバンドサウンドには独特のグルーヴ感も感じられます。ただループするサウンドはどこかHIP HOP的というか、トラックからはサンプリングっぽい雰囲気も感じられます。

そんなHIP HOP的なトラックという点もこのバンドが今風と感じられる大きな要素なのですが、それ以上に私が彼らのことを「今風」と感じたのは楽曲から感じられる熱量。シンプルなサウンドを淡々と奏でるから、でしょうが彼らの楽曲から感じられる熱量は非常に冷めたものを感じます。この妙に冷めた感じに、今風なものを感じました。

彼らはHIP HOP、ソウル、ジャズ、ファンクなど様々なジャンルを取り入れており、いわば「非常に偏差値の高いサウンド」を奏でているにも関わらず、ルーツ志向といったイメージはありません。また、この手の偏差値の高いサウンドを奏でているバンドってちょっと前のバンドなら一種のスノビズムを感じたり、どこか一歩下がって鼻にかけるようなスタイルを感じたのですが、彼らに関してはそんな雰囲気もありません。ある意味、非常に自然体で、そういう意味でも冷めた熱量を感じます。そこがまた今時のバンド、といった印象を受けました。

ただ、今時のバンドといっても決して10代向けの勢いだけのバンドではないことは説明するまでもないでしょう。淡々とした中に色濃く流れるグルーヴ感は、ある意味噛めば噛むほど味わい深くなるような感じ。こういうバンドがチャートでベスト10に入ってきちゃうあたり、とてもうれしく感じてしまいます。高い評価も納得の文句なしの傑作です。

評価:★★★★★

cero 過去の作品
My Lost City

| | コメント (3) | トラックバック (0)

2015年7月24日 (金)

時局迎合の中に皮肉も?

Title:芸能宝船・歌は戦線へ ~戦争と喜劇人~

戦前SP盤の貴重な音源を復刻しているインディーレーベル「ぐらもくらぶ」。先日も「軍国音頭」なる曲を集めた企画盤を紹介しましたが、おなじく戦後70周年を記念して企画された戦時歌謡のオムニバス盤。この作品では、「戦争と喜劇人」と題して、当時の喜劇人がSP盤に収録した歌、漫才、あるいは講演といったものをCDに復刻した内容になっています。

それも全2枚組のフルボリュームな内容。DISC1は二村定一、岸井明、古川ロッパなど戦前に一世を風靡した歌手、喜劇人の曲、漫才などが収録されています。一方DISC2は「もうひとつのエノケン全集」と題して、おそらく戦前の芸能事情に詳しくなくても名前くらいは聴いたことあるであろう「日本の喜劇王」と呼ばれたエノケンこと榎本健一の曲のうち、2003年にリリースされたCD「唄うエノケン大全集」に収録されなかった未発表曲や、戦時中の時局迎合ソングなどを収録した企画になっているそうです。

さて、そんな本作ですが、コミカルな内容が多いのですが、これがおもしろいことに今聴いても、さすがに大爆笑とまではいかなくても「ニヤリ」としてしまいそうな楽しい作品が少なくありません。確かに作品によっては「何が面白いんだ?」と思うようなネタや、その当時の事情をわからないと理解できないようなネタも少なくないのですが、今聴いてもコミックソングとして純粋に楽しめる曲も少なくありませんでした。

ただ、音楽は人々をプラスの方向にもマイナスの方向にも導くことができる、と以前書いたのですが、お笑いもある意味全く同じ。題材がコミカルなだけに、プロパガンダ的メッセージがむしろ強く印象に残ってしまう部分もありましたし、今から考えると、非常に差別的と思われる笑いの要素も多く含まれていました。

一方、ここのサイトで何作か紹介してきた「プロパガンダ的な楽曲」と比べて、本作に収録されている曲や漫才の中には、戦時中を生きた庶民や兵隊に駆り出された人々の素直な心境が覗かれるような作品も多く、さすがに時局柄、政府批判や戦争批判などは出来ないものの、その時代に暮らす人々のリアリティーが伝わってくるような部分がありました。

また非常におもしろいのは、お笑いだからこそ一見時局に沿ったような曲や講演などの中に、社会の世相を軽く皮肉ったようなメッセージを忍び込ませているような感じる作品もありました。例えば以前も紹介したことがあるのですが、岸井明の「代用品時代」は戦時中の統制経済の中で代用品を奨励するような歌詞なのですが

「会社帰りの にわか雨
スフは弱いと 言うけれど
ぐっしょり濡れても 大丈夫
水に弱いは スフじゃなく
ハックショイ風邪引いた 僕の方だよ」

(「代用品時代」より 作詞 上山雅輔)

なんて歌詞は、代用品である合成繊維のスフ(=ステープル・ファイバー)を奨励するようにみせかけつつ、結局水に濡れているということは、スフは水に弱いってことじゃないの?と思わせてしまうあたり、代用品を皮肉っているようにも感じますし、石田一松の「みなさん、みなさん」では、プロパガンダ的な内容かと思いきや、どこか皮肉を込めたような内容に「おやっ」と思ってしまいます。

戦争が厳しくなってくる中、どこかユーモアのセンスを忘れない作品に、戦時中の人々のたくましさも感じた作品でした。差別的、好戦的内容も多く、またそれらの内容がプロパガンダ的にはっきりしているわけではない部分もあるため、「取扱い注意」な側面もあるのですが、戦前のSP盤などに興味がない方でも十分に楽しめそうな内容になっていました。収録曲も今となっては貴重な資料で、そういう意味でも価値あるコンピ盤だったと思います。

評価:★★★★★

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月23日 (木)

ドリカム強し!

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週はベテランミュージシャンのベスト盤が1位2位に並びました。

まず1位は、先週1位だったDreams Come Trueのベストアルバム「DREAMS COME TRUE THE BEST! 私のドリカム」が2週連続で1位を獲得。さらに売上も11万9千枚と2週連続10万枚超えを達成し、根強い人気を感じさせる結果となっています。

で、それに続いたのが2位初登場TUBE「Best of TUBEst ~All Time Best~」。こちらもデビュー30周年を迎えた彼らのオールタイムベスト。全4枚組というフルボリュームですが、全50曲入りというのは奇しくもドリカムのベストと同じ曲数。初動売上は5万5千枚で、直近のオリジナルアルバム「Your TUBE + My TUBE」の3万枚(4位)よりはアップ。ただベスト盤としては前作の2000年リリース「TUBEst III」の初動25万枚(1位)よりは大きくダウンしています。

そのベテラン勢に続いて3位に初登場したきたのはJUNHO(From 2PM)「SO GOOD」。ミュージシャン名通り、韓流の男性アイドルグループ2PMのメンバーによるソロミニアルバム。初動売上4万8千枚は前作「FEEL」の4万5千枚(2位)よりアップ。

続いて4位以下の初登場作ですが、まず4位にHoneyWorks「好きになるその瞬間を。」がランクイン。人気動画サイト「ニコニコ動画」でVOCALOID楽曲をアップして人気を博しているグループ。初動売上は2万1千枚で、前作「僕じゃダメですか?~『告白実行委員会』キャラクターソング集~」の2万6千枚(4位)からダウン。

5位初登場はハロプロ系の女性アイドルグループJuice=Juiceのファーストアルバム「First Squeeze!」がランクイン。初動売上は1万3千枚。

6位には「TVアニメ『血界戦線』オリジナル・サウンドトラック」がランクイン。劇中音楽は、映画「SR サイタマノラッパー」シリーズや、映画「モテキ」の音楽も手掛けた岩崎太整。オープニングテーマBUMP OF CHICKENの「Hello,world!」のTV size versionも収録されています。

もう1枚サントラが続きます。8位初登場は「『Deemo』Song Collection」。スマートフォン向け音楽ゲームに使用されている楽曲を収録したサントラ盤だそうです。

9位初登場は沖縄を拠点に活動を続けるバンド、HYのニューアルバム「LIFE」がランクイン。ベスト10入りは昨年2月にリリースされたベスト盤「HY SUPER BEST」以来。またオリジナルでのベスト10入りは2012年にリリースされた「Route29」以来3作ぶり。ただし、初動売上7千枚は前作「LOVER」の1万枚(12位)よりダウンしています。

最後に返り咲き組が1枚。10位にカナダの女性シンガーソングライター、Carly Rae Jepsen「Emotion」が先週の18位よりランクアップしベスト10返り咲き。売上も4千枚から5千枚にアップしています。これは先月末から今月にかけてプロモーションのために来日した効果によるものと思われます。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2015年7月22日 (水)

μ'sが快進撃

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

先週はアニメのキャラソンが多くランクインしてきましたが、今週目立ったのは、先々週、先週とランクインしているアニメキャラによるアイドルプロジェクト、μ's。今週も先々週、先週と同じく映画「ラブライブ!The School Idol Movie」挿入歌「僕たちはひとつの光」が2位初登場。初動売上9万6千枚は先週2位の「SUNNY DAY SONG」の8万6千枚からさらにアップ。さらに今週は、その「SUNNY DAY SONG」が6位、先々週に2位初登場だった「Angelic Angel」も9位にランクイン。これでベスト10圏内にμ'sの曲が3曲同時ランクインということになりました。

さて、そんな中で1位を獲得したのはAKB48の姉妹グループNMB48の新作「ドリアン少年」。大阪のユニットだけに「ネタ系」に走っている曲が多いように思うのですが、本作もその流れでしょうか。初動売上37万1千枚は前作「Don't look back」の44万7千枚(2位)から大幅ダウンしています。

先週のアニメのキャラソンに対して、今週はこのNMB48を筆頭に、相変わらずの女性アイドルグループが目立ったシングルチャート。4位にアイドリング!!!「Cheering You!!!」、5位フェアリーズ「相思相愛☆destination」、7位夢みるアドレセンス「サマーヌード・アドレセンス」がそれぞれランクインしています。

アイドリング!!!はこの10月末に活動を休止する予定で、これがラストシングルになるそうです。初動売上3万枚は前作「ユキウサギ」の2万5千枚(6位)からアップ。ただ、ラストシングルということを考えると少々さびしい結果にも思います。フェアリーズは初動2万7千枚で前作「Kiss Me Babe」の2万8千枚(5位)から微減。ちなみにアイドリング!!!はフジテレビの企画から、フェアリーズは日テレの企画から登場したグループだそうで、期せずしてテレビ局がバックにいるアイドル同士の対決となっています。最後の夢みるアドレセンスはティーンズ向けファッション雑誌のモデルを中心としたアイドルグループ。ちなみにこの曲は真心ブラザーズの「サマーヌード」を「再構築」した曲になっているそうです。作曲はクラムボンのミトなのですが、やはりあの曲はYO-KINGの泥臭いボーカルがいいんだよな、と思っちゃいます。サブカル受け狙いで、第2第3のももクロ狙いでしょうか?

そんな中、孤軍奮闘(?)が3位初登場DOBERMAN INFINITY「SAY YEAH!!」。とはいえこちらもHIP HOPユニットとはいえ、EXILEの事務所に所属するグループでアイドル色が強いグループなのですが。以前はDOBERMAN INC.として活動しており、改名後初のシングル。ミニアルバムとしてはベスト10入りを果たしていたのですが、シングルでは初のベスト10入り。初動売上は3万6千枚。

で、初登場はあと1曲。THE ALFEEの高見沢俊彦ことTakamiy「誘惑の太陽」が8位初登場。打ち込みのダンスチューンなのですが、しっかりタカミー節がさく裂しています。初動売上1万4千枚は前作「ULTRA STEEL」の1万5千枚(9位)より若干のダウンとなっています。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月21日 (火)

12年目の初期衝動

Title:サンボマスターとキミ
Musician:サンボマスター

うわぁ、サンボマスター、カッコイイ!!!サンボマスターに関しては「新しき日本語ロックの道と光」以来、アルバムはリアルタイムで一通りチェックしています。パンキッシュなサウンドにファンクやソウルといったブラックミュージック的な要素を載せたロックには惹かれ、楽曲単位ではカッコいい曲もあるなぁ、と思いつつ、正直言って、アルバム単位でこのバンドをカッコイイ!と思ったのはこのアルバムがはじめてです。

このアルバムで彼らのことを「カッコいい」と感じたのはまずはバンドサウンド。いままでの彼らの楽曲は、確かにパンキッシュなロックサウンドが魅力的だったのですが、ブレイク後の楽曲に関しては一方ではどこかストッパーがかかったのかのような、抑制された部分を感じてしまいました。

それに対して今回のアルバムのバンドサウンドにはかなりの荒々しさを感じます。一言でいえば「初期衝動」とでも言うべきでしょうか。実はこれほど荒々しいサンボマスターを聴くのははじめてではありません。今回の楽曲に関しては、以前聴いたことあるインディーズ時代のサンボマスターに近い部分を感じました。そういう意味では「初期に戻った」と言えるのかもしれません。ただ一方ではブレイク後身につけたポップという要素もきちんと残っており、そういう意味ではインディーズ時代の彼らと似たよう場所にいるように見せつつ、実はインディーズ時代よりもっと高みにいる、といっていいのかもしれません。

カッコいいと感じたのはバンドサウンドだけではありません。歌詞に関しても「もてない男の鬱屈した心の叫び」というサンボマスターのパブリックイメージから離れた歌詞が多く収録されていました。特に社会派の歌詞の曲が目立ち、例えば「自由なステップ」では、「ただちに武器を捨てて踊れ」「自由なステップ 踏むぜ」と歌うメッセージ性の高い曲になっていましたし、「ケイサツ来るまで踊りまくれ」はタイトル通り、おそらく反風営法を意識しつつ、社会からの抑圧に対するアンチを高らかに歌い上げるロックナンバーになっています。

また、力強く前向きな歌詞の曲も並んでおり、「可能性」「キミの手に未来の花」などはタイトル通り、前向きな彼らのメッセージが込められています。前向きソングというとどうしても売れ線のJ-POPも彷彿させられてしまいそうですが、パワフルなバンドサウンドをバックにシャウトで歌い上げるメッセージは、良くありがちなJ-POPの前向きソングとはあきらかに一線を画しています。

そしてなんといっても印象に残ったのが最後を飾る「私をライブに連れてって」。スカやハードロック的な要素を入れつつ、荒々しくパンキッシュにまとめあげた曲は、このアルバムの集大成ともいうべきサウンドを聴かせてくれますし、

「どんなにクソみたいな日々が続いたとしても
ダンスフロアは僕の革命を信じている
これ以上かなしみが 続かないように 世界中を爆音で祝福しておくれよ」

(「私をライブに連れてって」より 作詞 山口隆)

という歌詞は彼らのバンド、音楽にかけた想いを強く感じることが出来る、彼らの新たなアンセム登場の予感がする名曲でした。

個人的に、サンボマスターのアルバムの中で最高傑作だったかも。メジャーデビューから12年目を迎えた彼らですが、その段階でこれだけ初期衝動にあふれたアルバムをつくってくるとは正直驚きです。いや、サンボマスターのバンドとしての実力は十分知っているつもりでしたが、あらためてそのほどを再認識した傑作でした。

評価:★★★★★

サンボマスター 過去の作品
音楽の子供はみな歌う
きみのためにつよくなりたい
サンボマスター究極ベスト
ロックンロール イズ ノット デッド
終わらないミラクルの予感アルバム

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2015年7月20日 (月)

踊る動員

Title:みんな輪になれ~軍国音頭の世界~

戦前のSP盤復刻を手掛けるレーベル、ぐらもくらぶの新作。今年は戦後70周年ということで軍事歌謡の復刻が相次いでいるようですが、本作は「軍国音頭」がテーマ。「軍国音頭」とは、解説によれば「満州事変から太平洋戦争の間にリリースされた時局的な音頭」ということ。戦時色の強いプロパガンダの傾向が強い「音頭」が数多く収録されています。

本作に収録されている軍国主義的な音頭のことを監修を手掛けた辻田氏は解説で「踊る動員」と称しています。以前、その彼が著者である新書本「日本の軍歌」の感想で、「音楽というのは(略)ポジティブな世界に導くだけではなく、一歩間違えると破滅へ導く可能性もある」ということを書いたのですが、本作に収録されている曲は国民を破壊へと導かせる音楽の具体例と言えるでしょう。プロデューサーの保利氏は解説で「『絆』と言う名のもと身体的動員が知らず知らずのうちになされてないか、音楽によって同調圧力の醸成がなされていないか、このCDを聴いて過去・現在・未来を考えていただく材料にしていただければと思う」とまとめていましたが、いろいろときな臭い話が飛び交うようになった今現在において、実に興味深いコンピレーションアルバムだと思います。

収録曲は1934年録音の楽曲から1945年1月の終戦間近に録音されて楽曲まで順番に並んでいるのですが、後になればなるほど、要するに戦争が激化し、日本が不利になればなるほど表現が過激に、かつプロパガンダ色が強くなってきます。

「物がないなど 贅沢言うちゃ
ほんに済まない 済みません」

(「銃後めをと囃子」より 作詞 松坂直美)

なんて歌詞だったり、

「不平不満はお国をつぶす」
(「常会をどり」より 作詞 藤田まさと)

なんて歌詞が、踊りの中にひょっこりと顔を出すあたり、今の感覚で言うと相当怖さも感じさせますが、日本も今後、おかしな方向にむかってしまったら、ヒット曲の中に、サラッとこんな歌詞がまぎれこんできそうで、ちょっと怖さも感じてしまいます。

また、ちょっとしつこいぐらいの「ハァ日独伊」というフレーズが耳に残る「三国音頭」は1940年に締結された日独伊三国同盟を祝ってつくられた曲だそうですが、解説曰く「ドイツやイタリアには同種のレコードは見られなかった」そうです。ここらへん、海外(特に欧米)と肩を並べると必要以上に浮かれてしまうという、今にも続く日本の欧米コンプレックスを感じます。正直、ここらへん、今の時代も他人事ではない感じがします・・・。

そんな戦時中の雰囲気を知りつつ、今の時代と重ね合わせるには、資料的価値も高い、非常に興味深いコンピレーションアルバム。ただ、今回のコンピ盤に関しては、そんな企画的おもしろさもさることながら、純粋に音楽としても興味深い曲が並んでいました。

というのは、音頭がゆえリズム主体となる今回の楽曲は、今の耳で聴いても興味深い「グルーヴ」を感じさせる曲が少なくありませんでした。例えば「満州音頭」では太鼓のリズムが非常に力強さを楽曲に与えていますし、「銃後めをと囃子」のお囃子のリズムも実に軽快。ジャズ風のアレンジにかなり物騒な歌詞ながらも「どどんと一発 轟沈だ」というフレーズが耳に残る「どんと一発」などなど、純粋に音楽として、非常におもしろさを感じさせる曲が並んでいます。いわば、戦前日本のレアグルーヴといった印象すら受けました。

そんな訳で歴史を通じて今の時代を考えさせる材料としても、資料的な価値という側面でも、非常に興味深いコンピ盤でしたし、また、音楽的にもとてもおもしろさを感じさせる1枚でした。こんなプロパガンダ色の強いダンスミュージックで、私たちが踊らさせるような日が来ないことを切に祈ってしまう作品。今後万が一、プロパガンダ色の強いダンスミュージックがリリースされちゃったとしたら、作詞は間違いなく秋元康なんだろうなぁ(苦笑)。

評価:★★★★★

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月19日 (日)

名盤を完全再現

Title:Sticky Fingers Live
Musician:The Rolling Stones

Stickyfingerslive

ローリング・ストーンズが今年5月、ロサンゼルスのフォンダ・シアターで行った「Sticky Fingers」の完全再現ライブ。そのライブの模様をおさめたライブ盤がリリースされました。ただし、iTunes Storeでのダウンロードオンリーでの販売ということです。

そんな訳で全10曲。曲順は異なるものの、「Sticky Fingers」の楽曲がすべて演奏されています。曲順はもともとのアルバムでは冒頭を飾る「Brown Sugar」がアルバムの最後に来て、1曲目は元のアルバムの2曲目である「Sway」からスタートしています。

ミディアムテンポのナンバーからスタートする影響か、作品全体として元のアルバムに比べてゆっくりとした雰囲気を感じるライブになっていました。もちろん、「Bitch」や「Brown Sugar」ではアグレッシブな演奏を聴けるのですが、それ以上にゆったりとした空気が流れる部分の多いアルバムだったように感じます。

ただ、このミディアムテンポなナンバーに関して、特に今のストーンズの「味」な部分が出ていたようにも感じます。「You Gotta Move」なんかにしても、ボーカルとスライド・ギターに貫録すら感じさせるナンバー。他の曲もそうなのですが、ミックのボーカルにはいわば味わい深さを感じるのは年齢故なのでしょうか?ブルースやカントリーなどルーツ志向の強いこのアルバムにおいて、そんな年齢からくる「味」の要素がピッタリと待ってしているように感じます。

でもこのミック・ジャガーの味わい深いボーカルは、決して同じくらいの世代のミュージシャンによくありがちな「枯れた」といった感じではなく、ちゃんと往年のセクシーさもあわせもっている感じ。一方、キースのギターをはじめバンド勢はいまなお衰えはほとんど感じさせず、ストーンズのグルーヴをしっかりと作り上げています。

「Sticky Fingers」はいまから40年以上前のアルバムですが、今回の完全再現ライブ、40年以上の月日を経たからこそできるような、「Sticky Fingers」の楽曲に新たな魅力を加えたようなライブ盤だったように感じました。ちなみにダウンロードオンリーながらわずか1,000円という安さ。ファンなら間違いなく要チェックの作品です。

評価:★★★★★

The Rolling Stones 過去の作品
Shine a Light: Original Soundtrack
Some Girls LIVE IN TEXAS '78
CHECKERBOAD LOUNGE LIVE CHICAGO 1981(邦題 ライヴ・アット・ザ・チェッカーボード・ラウンジ・シカゴ1981)
(MUDDY WATERS&THE ROLLING STONES
GRRR!
HYDE PARK LIVE
Sweet Summer Sun-Hyde Park Live


ほかに聴いたアルバム

IN THE LONELY HOUR/SAM SMITH

今年のグラミー賞では最多4部門を授賞。間違いなく2014年にもっとも話題になったシンガーソングライターのアルバム。いまどきのエレクトロポップからロック風な曲、フィリーソウル風なナンバーにファンキーなポップまで実に幅広いジャンルをポップにまとめあげています。ちょっと器用貧乏っぽいかも、と感じる部分もあるのですが、いい意味で広い層にアピールできるような良質なポップソングを聴かせてくれており、昨年の話題も納得のアルバムでした。

評価:★★★★

Animal Ambition:An Untamed Desire To Win/50 Cent

純然たるオリジナルアルバムでは5年ぶりとなる新譜。シンプルなトラックでしっかりとラップを聴かせる「Irregular Heartbeat」のような曲に50 Centの実力を感じますが、この曲を含め、比較的シンプルなトラックの楽曲が多かった印象。ラップも淡々としていたため、少々インパクト不足は否めないものの、50 Centの魅力はしっかりと出ていたアルバムに感じました。

評価:★★★★

50 Cent 過去の作品
War Angel LP
Forever King

BEFORE I SELF DESTRUCT(ビフォア・アイ・セルフ・デストラクト~自我崩壊の日)
The Lost Tape

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月18日 (土)

やりたいことを自由にやった曲たち

Title:SUPERNOVACATION
Musician:吉井和哉

先日、タレントの眞鍋かをりと結婚なんていうおめでたい話題も飛び込んできた吉井和哉。3月にアルバムをリリースしたばかりの彼が、わずか2ヶ月のインターバルでリリースしてきたのは、いままでのシングルのカップリング曲をまとめて収録したB面ベスト。昨年リリースしたカバーアルバムも、先日のオリジナルアルバムも素晴らしい内容で、公私ともに脂がのりまくっている彼ですが・・・まあ既発表曲をまとめたB面ベストなんで、そんな勢いとは直接関係ないか(^^;;

シングルのカップリング曲といえば、アルバムにも収録されないケースが多い、いわば「隠れた名曲」的な曲が多く収録されていたりします。特にミュージシャンにとっては、シングルでもアルバム曲でもできないような、ちょっと実験的というか、やりたいことをやった楽曲を収録してきたりするケースが少なくありません。で、このアルバムに収録されたカップリング曲は、まさに吉井和哉のやりたいことを自由にやったような楽曲が多く収録されていました。

例えば「TALI-seaside mix-」は思いっきり大滝詠一なアレンジ。いや、正直「TALI」の元曲よりマッチしたアレンジになっていないか?とすら思ってしまう見事なアレンジになっていました。

また、昨年リリースしたカバーアルバム「ヨシー・ファンクJr. ~此レガ原点!!~」でこれでもかというほど歌謡曲への偏愛ぶりをアピールしましたが、このカップリング曲でも歌謡曲からの影響は顕著。「BLOWN UP CHILDREN」なんかもそうですし「星のブルース」も「ブルース」というのはホンマモンのブルースではなく、歌謡曲のタイトルによく登場してくるムーディーな曲を意味して使われる『ブルース』。「リバティーン」で聴かせるエロティックな歌詞も、一昔前の歌謡曲の匂いを感じさせてくれます。

他にも「MUDDY WATER」もタイトルからしてブルースのナンバーかと思いきや、ファンクの要素を感じさせるナンバーになっていたり、「ギターを買いに」も新しいギターを買った時の喜びを素直に表現するような歌詞が印象的な、タイトル通りのギターロック。「ロックンロールのメソッド」もタイトル通りのロックンロールナンバーと、彼の趣味をダイレクトに反映しつつ、自由にやりたいことをやったような曲が並んでいます。

どれも肩の力が抜けたような曲が多く、吉井和哉の代表曲になりそうな派手な傑作、というのはありません。ただ吉井和哉らしさが満載だけどもあまり主張はしすぎない、ほどよい名曲が多くつまったアルバムだったと思います。シングルのカップリング曲中心なだけに知る人ぞ知る的な曲が多いアルバム。それだけに、オリジナルアルバム感覚で聴ける作品でした。

評価:★★★★★

吉井和哉 過去の作品
Hummingbird in Forest of Space
Dragon head Miracle
VOLT
The Apples
After The Apples
18
AT THE SWEET BASIL
ヨシー・ファンクJr.~此レガ原点!!~
STARLIGHT


ほかに聴いたアルバム

LOCUS/tacica

ドラムスの坂井俊彦が脱退し、2人組となってから初となる、1年10ヶ月ぶりとなるニューアルバム。楽曲はいわば王道のオルタナ系ギターロックバンド。1曲1曲はポップなメロと心地よいギターサウンドでそれなりに聴かせるのですが、どの曲も似たようなパターンの曲が多く、アルバム全体としてはインパクトが弱い・・・というのは以前のアルバムからずっと変わらないんだよなぁ。シンプルなギターロックなので、決して嫌いなタイプではないのですが、それだけにtacicaだけが持っているような特徴がないというか・・・。

評価:★★★

tacica 過去の作品
jacaranda
jibun
HOMELAND 11 blues

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月17日 (金)

ジェネレーションギャップがテーマ

Title:ビールとジュース
Musician:サ上と中江

サイプレス上野とロベルト吉野でMCとして活躍しているサイプレス上野と、アイドルグループ東京女子流の中江友梨によるユニット。MTV JAPANの番組「サイプレス上野と中江友梨の青春日記」から産まれた企画モノのユニットのようです。

現在34歳のサイプレス上野と、若干17歳の中江友梨。ちょうど倍の年の差がある2人だそうですが、今回のユニットは、そのジェネレーションギャップがテーマだそうです。アルバムのリード曲である「SO.RE.NA」はまさにジェネレーションギャップを正面からラップしたユニークなナンバー。サ上が34歳ということは、ちょうど私が大学生の頃、高校生だった世代ということになるのですが、そうだとすると17歳の中江との差を強調しすぎでは?と思う部分もあるのですが・・・ま、それもご愛嬌ということで。ユニークなナンバーに仕上がっていました。

HIP HOPユニットのMCとアイドルの組み合わせというのもちょっと異色に感じられるのですが、よくよく考えればHIP HOPで一番最初にお茶の間レベルでヒットしたEAST ENDxYURIの「DA.YO.NE」もHIP HOPユニットのEAST ENDと、アイドルグループ東京パフォーマンスドールの市井由理とのユニットだったわけで、意外と日本においては相性のよい組み合わせなのかもしれません。というか、「SO.RE.NA」は明らかに「DA.YO.NE」のパロディー的なタイトルですしね・・・って、それに気づくかどうかでジェネレーションギャップがあるのか??

そんな中江のラップはそれほど悪くなく、リズム感のよいラップを聴かせてくれます。ラップ未経験でも問題なくラップをリズムにのせられるあたり、若いなぁ・・・ということを感じます。ここらへんもジェネレーションギャップというところなのでしょうか(笑)。

わずか7曲入りのミニアルバムでそのうち1曲はリミックスなのですが、その短い中で、サ上と中江というユニットの魅力をきちんと伝えている構成になっています。「よっしゃっしゃっす(REMIX)」はサイプレス上野とロベルト吉野の代表曲の、サ上と中江ヴァージョン。HIP HOPの楽しさを伝える内容になっているかと思えば「売命行為」はスモーキーなトラックがカッコいいハードなナンバー。本格的なHIP HOPナンバーになっていて、こちらは彼らの実力を伝えています。

さらに「Too Shy Boy」はアイドルポップ風のナンバー。こちらはサイプレス上野とロベルト吉野では演れないような、サ上と中江というユニットならではのナンバー。わずか7曲という内容ですが、HIP HOPという音楽の楽しさをきちんと伝えてくれる魅力的な構成になっていたと思います。

企画モノのユニットなのですが、サイプレス上野とロベルト吉野が好きなら間違いなく要チェックのアルバム。アイドルという企画モノユニット、と馬鹿に出来ないHIP HOPのアルバムになっていました。これだけ出来がいいと、ロベルト吉野が嫉妬しちゃうんじゃない???(笑)

評価:★★★★★

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月16日 (木)

こちらもアニメ系が

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

シングルチャートはアニメのキャラソンが目立ったチャートでしたが、アルバムチャートにもアニメキャラによるアルバムが今週は一挙に3枚ランクインしています。

4位 如月千早「THE IDOLM@STER MASTER ARTIST3 07 如月千早
5位 萩原雪歩「THE IDOLM@STER MASTER ARTIST3 09 萩原雪歩」
7位 双海真美「THE IDOLM@STER MASTER ARTIST3 08 双海真美」

と並んでいます。どちらもゲーム「アイドルマスター」に出てくるキャラクターアイドルによるアルバム。タイトル通り第7弾から第9弾となるアルバムで、初動売上はそれぞれ1万5千枚、1万4千枚、1万3千枚となっています。前作は同シリーズの第4弾から第6弾で初動売上は上位から四条貴音「THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 3 06四条貴音」の1万4千枚(4位)、水瀬伊織「THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 3 05水瀬伊織」の1万4千枚(5位)、星井美希「THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 3 04星井美希」の1万3千枚なのでほぼ横バイとなっています。

さて、そんな3組のアニメキャラアルバムが目立つチャートでしたが、やはりそれ以上に目立ったのは今週1位。Dreams Come Trueのベストアルバム「DREAMS COME TRUE THE BEST! 私のドリカム」がランクインです。

ベスト盤としては5作目となる本作。もっともベスト盤の第2弾「GREATEST HITS "THE SOUL 2"」はアルバム「DO YOU DREAMS COME TRUE?」の初回限定盤についてきた附属盤でしたし、第3弾「THE SOUL FOR THE PEOPLE ~東日本大震災支援ベストアルバム~」はタイトル通り、東日本大震災支援のためリリースされた企画盤的で、そういう意味では2000年にリリースされた「DREAMS COME TRUE GREATEST HITS "THE SOUL"」以来となります。

初動売上は34万4千枚。さすがに「DREAMS COME TRUE GREATEST HITS "THE SOUL"」の初動60万7千枚(2位→最高位は1位)にはかなわないものの、「THE SOUL FOR THE PEOPLE」の3万7千枚(4位)よりは大幅アップ。直近のオリジナルアルバム「ATTACK25」の9万枚(1位)も大幅に上回っており、ちゃんとファン以外のリスナー層も確保し、その人気のほどを見せつける結果となりました。

続く2位初登場はKinki Kidsの堂本光一によるソロ作「Spiral」。ソロ4作目となる本作は初動売上7万枚で、前作「Gravity」の10万枚(1位)よりダウン。ソロデビュー以来、1位→2位→1位→2位と推移していますが、初動売上はここ数作、14万枚→10万枚→7万枚と減少傾向なのが気になります。

3位には氷川きよし「新・演歌名曲コレクション~さすらい慕情~」がランクイン。自身のオリジナル6曲にカバー6曲から構成されたアルバム。いままでも同じくオリジナル+カバー曲の構成で「演歌名曲コレクション」と題したシリーズをリリースしていましたが、今回、装いも新たに新シリーズスタートだそうです。初動売上は2万5千枚。前作「演歌名曲コレクション20 ~ちょいと気まぐれ渡り鳥~」の2万2千枚(3位)よりアップ。

初登場はあと1枚。8位にさだまさしのニューアルバム「風の軌跡」が入ってきました。初動売上1万3千枚は前作「第二楽章」の1万1千枚(7位)から若干のアップ。根強い人気を感じさせます。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月15日 (水)

キャラソンが目立つ中

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

今週はアニメのキャラソンが目立ったチャート。2位にμ's「SUNNY DAY SONG」がまずはランクイン。先週も2位に「Angelic Angel」が入ってきましたが、これで2週連続の2位という結果となりました。アニメキャラによるアイドルグループというキャラソンで映画「ラブライブ!The School Idol Movie」挿入歌。初動売上も8万6千枚と先週の8万2千枚からアップ。ちなみに先週2位の「Angelic Angel」も今週5位にランクインしています。

で、キャラソンがもう1曲。7位初登場マリア×翼「戦姫絶唱シンフォギアGX キャラクターソング1(星天ギャラクシィクロス)」。アニメ「戦姫絶唱シンフォギアGX」挿入歌。日笠陽子と水樹奈々という人気声優同士のユニット。水樹奈々の歌声が妙に耳につくんですが、キャラソンとしてこれっていいの?初動売上は1万2千枚。マリア×翼名義としては前作「不死鳥のフランメ」の1万6千枚(4位)からダウン。「戦姫絶唱シンフォギア」がらみとしては、2013年9月にリリースされた小日向未来(井口裕香) 「戦姫絶唱シンフォギアG キャラクターソング8(歪鏡・シェンショウジン)」の1万2千枚(9位)から横バイとなっています。

アニメキャラによるアイドルグループという、正直ちょっと狙いすぎて安直っぽいキャラソンが並ぶ中、アニメとアイドルの融合としては8位に「ドリームパレード」がランクインしてきたi☆Risはアイドルグループなのですが、声優としても活動することを目指すグループだそうで、本作は初のベスト10入り。初動売上7千枚は前作「Realize!」の6千枚より若干のアップです。でも、こういうグループってアニメファン的にはどうなんでしょうか?昔なら、「声優をなめるな」と叩かれそうな感じなのですが・・・。

ちなみに正統派(??)の女性アイドルグループとしてはチャオ ベッラ チンクエッティ「表参道」が3位にランクイン。誰??と思ったのですが、THE ポッシボーが改名したみたいですね。ただ、初動売上は2万1千枚で、前作「勇気スーパーボール!」の初動2万5千枚(5位)からダウンで改名効果はあまりなかった模様。曲も「オー・シャンゼリゼ」の替え歌で「オー・シャンゼリゼ」と「表参道」にかえたやっつけ感漂う楽曲ははっきりいって寒いです。

他に女性アイドルグループとしては返り咲き組でHKT48「12秒」が圏外から4位にランクアップ。通販がらみの売上が今週にまとめて集計された模様。

さて、ようやく1位に戻ります。

1位初登場は三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE「Summer Madness」。ANAのCMソングに起用されたトランシーな夏向きのダンスチューン。初動売上19万4千枚は前作「STORM RIDERS feat.SLASH」の10万7千枚(3位)から大幅アップ。ただし、前々作「starting over」は43万9千枚だったので・・・ってこちらはライブチケットを付けてくる商法で大幅に水増しさせた結果なのですが・・・。

こんなチャートの中、ある意味「異色」なのが6位初登場Ken Yokoyama「I Won’t Turn Off My Radio」。ご存じHi-STANDARDとしても活躍しているパンクロッカーの約8年5ヶ月ぶりとなるソロシングル。彼らしいパンクナンバーで全英語詞。こういう曲でもきちんとシングルチャートで上位に入ってくるあたりに彼の人気の高さを感じます。初動売上1万3千枚は前作「Not Fooling Anyone」の1万7千枚(8位)からダウン。

最後10位にはJUJU「PLAYBACK」がランクイン。エレクトロアレンジの軽快なダンスポップ。前々作「ラストシーン」以来2作ぶりのベスト10入り。初動売上6千枚は前作「Hold me,Hold you」の5千枚(15位)から若干のアップです。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に!

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2015年7月14日 (火)

メンバーがやりたい音楽

Title:candy
Musician:geek sleep sheep

MO'SOME TONEBENDERの百々和宏、凛として時雨の345、そしてL'Arc~en~Cielのyukihiroによって結成されたスリーピースロックバンドの2枚目となるアルバム。1年半ぶりとなる新作でライブツアーも実施。今後もコンスタントに活動を続けていきそうです。

前作もそうだったのですが、楽曲はおもいっきり王道のシューゲイザーサウンド。特に前半の曲に関してはそのままシューゲイザーな楽曲に仕上げてきており、1曲目の「kaleidoscope」といい、2曲目のタイトルそのもの「feedback」といい、ギターのホワイトノイズにポップなメロという組み合わせが非常に心地よいナンバー。3曲目「planet ghost」に至ってはイントロのドラムといい、その後に入るギターのフレーズといい、そのまんまマイブラな楽曲になっています。

ラルクはともかくとして、モーサムも凛として時雨もシューゲイザーからの影響も感じられなくはないバンド。ただし楽曲的にはラルクにしろモーサムにしろ時雨にしろシューゲイザーサウンドを前面に押し出したような曲はありません。おそらくこのバンドは、それぞれバンドを離れての別プロジェクトということもあってメインのバンドではできない好きな音楽を好きなように演奏した結果なのでしょう。

そういうこともあって、好きなように演奏していると感じる一方、特にこれといった意気込みも薄いため、楽曲としての目新しさは薄く感じます。前作同様、345のボーカルを楽曲の中で効果的に使用しているのも特徴的。ただ、こちらにしてもシューゲイザーサウンドに透明感強い女性ボーカルという組み合わせは(前作のレビューでも書いたのですが)ちょっとスーパーカーっぽい雰囲気も・・・。

一方後半に関してはシューゲイザーの枠組みから離れて様々なタイプの曲が登場してきます。「lost song」「Addicted」はメロディーから歌謡曲のテイストを感じさせますし、「happy end」は軽快なギターポップといった感じ。また「Candy,I love you」はガレージ風に仕上がっており、ここらへんはちょっとモーサムすら彷彿とさせます。

ここらへんのバリエーションの多さもいい意味で好き勝手にやっているバンドらしさを感じさせます。ただ一方で、残念ながらアルバム全体としては統一感を失っていた結果になっていました。

シューゲイザーなサウンドも含め、全体的には好みのタイプの音ですし、メンバーが好きにやっているスタイルにも好感が持てます。楽曲も決して悪い出来ではないのですが・・・同時にいろいろな面で惜しさも感じてしまうアルバム。まあ、ただ今後も下手に凝ったことするよりは、このまま突き進んだ方がおもしろいとは思うのですが。

評価:★★★★

geek sleep sheep 過去の作品
nightporter

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月13日 (月)

ソロ2作目でソロの決意?

Title:旅立ちの日
Musician:藤巻亮太

現在、活動休止中のレミオロメンのボーカリスト、藤巻亮太によるソロミニアルバム。ソロデビュー作「オオカミ青年」以来、約2年半ぶりとなる新作。そんなスパンをあけながらもようやくリリースされた作品がミニアルバム。ちょっと制作ペースの遅さが気になります。

ご存じの通り、レミオロメンといえば、初期は素朴で暖かみのあるギターロックで注目を集めたにも関わらず、プロデューサーに小林武史を起用したことにより大味なサウンドを押しつけられて崩壊。ただ、活動休止前最後にリリースした「花鳥風月」ではセルフプロデュースとなり、比較的、初期を彷彿とさせるような作風に戻っていました。

ソロデビュー作「オオカミ青年」は、そんな「花鳥風月」を踏襲した次の作品といったイメージでしたが、今回の「旅立ちの日」はそれに続く作品というイメージを受けました。比較的シンプルな作風できちんとメロディーラインを聴かせるような曲が並んでいます。

ただ、初期に戻ったかと言われるとそうではなく、歌詞にしてもサウンドにしてもやはり初期の素朴さとは明確に違います。例えば「春の嵐」にしても「春の日だまりを君と歩いてた」という出だしこそ、初期の作風を彷彿とさせるのですが、抽象的な表現となる中盤以降の歌詞は、やはり初期とは明確に異なります。

アレンジにしても表題曲「旅立ちの日」はバンドサウンドにピアノやストリングスなどを重ねてスケール感を出している、良くも悪くもいかにもJ-POP的な作風に仕上がっていますし、「指先」にしても同じような傾向がみられます。

イメージとしたはブレイクした頃のレミオロメンといった感じでしょうか。ただ残念ながらその頃のような勢いはなく、一方ではその頃になかった安定感を良くも悪くも感じます。曲調もわずか6曲のミニアルバムながらもスケール感あるJ-POP風な味付けから、アコギのみのシンプルな作品、ギターをもっと前に出してきたアレンジと様々に仕上げています。

最後を締める「名もなき道」はソロとしてこれから歩んでいこうという決意を感じさせる曲。ソロ2作目となる今回のアルバムなのですが、いまさらながらなのですが、ソロとして進んでいく決心を固めた、ということなのでしょうか。

個人的には上にも書いた通り、ブレイクした頃のレミオロメンから勢いを抜いた感じでちょっと物足りなさも感じるのですが、それでもメロディーラインのセンスの良さには本作でもキラリと光るものを感じます。次はフルアルバムで藤巻亮太の本領発揮、といってほしいのですが、さてさて。

評価:★★★★

藤巻亮太 過去の作品
オオカミ青年

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月12日 (日)

解散後、初のソロ作

Title:the First Night
Musician:Diggy-MO'

昨年、残念ながら解散したラップユニットSOUL'd OUTのメインMCによるソロアルバム。ソロとしてはこれが3枚目のアルバムになるのですが、SOUL'd OUT解散後は初となるソロアルバムとなります。

そんなアルバムなだけに、基本的にはSOUL'd OUTの延長戦上にあるような作品といっても間違いないかと思います。特に先行シングルとなった「Lovin' Junk」なんかは、巻き舌たっぷりのラップといい、ファルセットの抜けるような合いの手といい、完全にSOUL'd OUT節。SOUL'd OUTとしての新曲、といっても間違いなく通用しそうな曲になっていたと思います。

そんな「Lovin' Junk」をはじめ、全体的にSOUL'd OUT自体と同様、フックの効きまくった、ベタともいえるメロディーラインや、特徴ある巻き舌ラップを聴かせてくれたアルバム。SOUL'd OUT解散後のアルバムとして、SOUL'd OUTのファンを満足させてくれる作品になっていたように思います。

ただ一方ではSOUL'd OUTとの違いや、彼の以前のソロアルバムとの違いも目立った作品にもなっていました。まず第一に、サウンドプロダクションが比較的シンプルになっていた点。彼のソロアルバムとしての前作「DiggyismII」ではかなり音を詰め込んでおり、その点がちょっとうんざりもさせられたのですが、今回に関してはもちろんそれなりに過剰気味な音の作り方とはなっていたものの、ソロ前作やSOUL'd OUTの作品に比べると比較的すっきりしたトラックになっていたように感じます。

また、今回の作品、ジャジーな味付けのトラックが多かったように感じます。例えばジャジーでムーディーな雰囲気に仕上がっていた「ノンシャランにゆけば」やジャジーな要素を入れた歌モノの「Christmas Dream」、さらに最後の「Un Deux Trois」は軽快なジャズピアノが非常にカッコいいトラックに仕上がっている曲になっています。

トラックに関しては他にもエレクトロを取り入れた「クビライ・カーン」やファンキーな「Lost Ones」など、いままでのソロ作やSOUL'd OUT時代の作品と比べてもバラエティーあり凝った作品にまとまっているという印象を受けました。解散後のソロ初作品としての彼の意気込みを感じさせる内容だったと思います。

もうひとつの違いは、歌謡曲的なメロディーラインの曲が少なかった点。確かに先行シングル「Lovin' Junk」は、そんなわかりやすいメロディーラインをした曲なのですが、その他の曲に関しては歌謡曲的なわかりやすいサビを持った楽曲が少なかったように感じました。これもいままでのソロ作やSOUL'd OUT時代の作品とは異なる傾向にように感じます。

そんな訳でSOUL'd OUTのファンが楽しめる内容ながらも一方ではSOUL'd OUTとは異なる新たな道を進むという意気込みも感じされたアルバムでした。いままでの彼のソロ作とも異なるだけに、この方向性がどう展開していくのかこれから要注目なのですが・・・とりあえずSOUL'd OUTが好きだった方、間違いなく要チェックの1枚です。

評価:★★★★★

Diggy-MO' 過去の作品
Diggyism
DiggyismII

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月11日 (土)

過去のアルバムとリンク

Title:Nein
Musician:Sound Horizon

途中、ベスト盤のリリースや、Linked Horizonとしての活動があったためか、オリジナルアルバムとしては約4年4ヶ月ぶりとなる新作。オリジナルアルバムとしては8作目となるのですが、「9th Story CD」と銘打たれているそうです。

今回のアルバムは過去の楽曲の「if」ストーリーで構成されているそうです。いままでのサンホラの曲も、歌詞の中で様々な情報を詰め込み、凝った構成を作り上げ、ファンはその考察を楽しむという構図がありました。これって非常にネット時代だからこそ、といった印象を受けます。

要するに、様々な情報を容易に入手できるからこそできる楽しみ方。まあ、こういう楽しむためには「考察」を前提としているようなスタイルは広い層が気軽に楽しむげきエンタテイメントとしては若干どうかな、と思う部分もあるのですが、ネット時代らしいエンタメのスタイルであることは間違いないでしょう。

そういう意味では過去の楽曲とリンクしており、過去の曲と聴き比べ考察することを前提とした今回のアルバムはもっともネット時代らしい作品と言えるのかもしれません。またそのため、このアルバムを100%楽しめるのはコアなファンであり初心者やライトリスナーには敷居の高いアルバム、という見方もできるかもしれません。

ただ、ライトリスナーである私にとっても、1曲1曲それぞれがひとつの「物語」としてそれなりに成り立っており、そういう意味ではコアなファンにとっては「本当の意味で楽しんだ」と言えないのかもしれませんが、十分楽しめるアルバムであったと思います。

サウンド面では相変わらず「押し」の側面が強い過剰なアレンジ。確かに演劇という側面では多少過剰なアレンジの方が盛り上がるかもしれまえんが、音楽的にはもうちょっとシンプルにして歌詞を前に持って来たり、音の隙間を聴かせてもいいのでは?とも思うのですが、このスタイルは以前からほとんど変わらないので、こればかりはRevoのスタイルなんでしょう。

いろんな意味で癖も強い作品で、聴き手は選ぶ部分はあるのですが、非常にユニークなアルバムであり、ある意味、現代的な作品であることは間違いないと思います。「ネット時代の」と散々書いてきましたが、一方ではCDでアルバム全体を聴く必要がある、という意味では配信やストリーミングで1曲毎で消費されるような今の時代から逆行している部分ある、というのはおもしろいところ。そういう意味ではなにげに彼の音楽のスタイルはオールドリスナーに共感できる部分もあるのかも?

評価:★★★★

Sound Horizon 過去の作品
Moira
Marchen
Chronology[2005-2010]

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月10日 (金)

「食」をテーマにゆる~くラップ

Title:ジャスタジスイ
Musician:DJみそしるとMCごはん

まずその名前からしてユニークなDJみそしるとMCごはん。名前からして2人組・・・と思ってしまうのですが、ジャケットに写っている女の子のソロ。彼女はれっきとしたHIP HOPのMCなのですがユニークなのはその題材。以前、一度ライブを見たことがあるのですが、その時の曲が「ピーマンの肉詰め」に「ぶり大根」に「スクランブルエッグ」・・・いずれも歌詞がそのままレシピになっていて曲の通りつくっていけばちゃんとお料理が完成する内容。要するに、お料理のレシピをそのままラップにしちゃったという歌詞。もともと大学の卒業研究で「歌って覚えられるレシピ」というテーマで楽曲をつくったのが最初だそうで、聴いていてお腹がすいてくるようなユニークな曲をラップしていました。

そんな彼女も見事メジャーデビューを果たし、このアルバムはメジャーデビュー後初となるミニアルバムとなります。そんなメジャーデビューアルバムも、見事全曲「食べること」をテーマとした楽曲が並んでいます。これほどワンテーマにこだわったミュージシャンも珍しいのではないでしょうか。もっとも、「食」は人間にとって最も重要なテーマのひとつであるため、「食」のみにこだわっていてもネタはつきないのかもしれません。

ただ、「食」をテーマに、といっても今回のアルバム、ライブで聴かせたような料理のレシピをそのままラップにしたような曲といった感じではありません。例えばタイトルナンバーである「ジャスタジスイ」では、はじめての自炊あるあるをネタにしつつ、一人暮らしの孤独と楽しみを描いていますし、「凍狂まんじゅう」は食事ネタを織り込みつつ、都会での生活への不安を描いたりしています。要するに基本的には「食」をテーマとしつつも、そこから派生したテーマも織り込んでおり、意外とバラエティーは豊富。下手にネタを広げるより、「食」にこだわった方がおもしろい歌詞が書けるのかもしれません。

また、そんなある意味ゆるさを感じるテーマを反映したかのような、ゆる~いトラックも印象的。ただ、以前ライブで聴いた時は、カセットテープに録音したチープなトラックをバックにラップをしていたのですが、そこに関してもさすがにメジャーデビュー作なのでプロダクションはしっかりとしていました。

食べ物をラップということでちょっとおふざけ感もあるようにも感じるのですが、ただきちんと韻は踏んでおり、トラックもシンプルにまとめつつきちんと聴かせる部分は聴かせています。「あの素晴らしい味をもう一度」では「あの素晴らしい愛をもう一度」をサンプリングしており、そういう意味でもきちんと「HIP HOP」しているのは間違いありません。非常にゆるいラップですがHIP HOP的なマナーはちゃんと踏まえた内容という点も魅力的な部分でしょう。

とりあえずメジャーデビューごあいさつ代わりといった感じのミニアルバム。個人的にはもっとゆるくてもおもしろいかな、なんてことも思ったりするのですが(笑)こういう多様なスタイルのラップが出てくることも日本のHIP HOPシーンの大きな魅力のようにも思います。次のアルバムはどんなネタを持ってくるのか・・・楽しみです。

評価:★★★★

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月 9日 (木)

初登場は男性陣ばかり

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週のアルバム初登場は5枚。いずれも男性ボーカルでした。

そんな中でも1位はやはりジャニーズ系。Kis-My-Ft2「KIS-MY-WORLD」。これが4枚目となるオリジナルアルバム。初動売上30万枚は前作「Kis-My-Journey」の24万5千枚(1位)よりアップしています。

2位は矢沢永吉「ALL TIME BEST ALBUM II」。2013年にリリースされた「ALL TIME BEST ALBUM」に収録されなかった代表曲を収録した、オールタイムベストの第2弾。初動売上は3万7千枚で、残念ながら第1弾「ALL TIME BEST ALBUM」の8万5千枚(1位)から大幅ダウンとなっています。

3位にはMr.Children「REFLECTION」が先週の5位からランクアップし、ベスト3に返り咲き。2週ぶりのベスト3入りとなり、いまだに根強い人気をみせています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まずは4位に人気声優小野大輔のミニアルバム「Doors」が入ってきています。初動売上1万5千枚でこれがアルバムでは初となるベスト10ヒット。前作は「UP STAIRS」「DOWN STAIRS」の2枚のミニアルバムが同時にリリースされています。前作の初動売上はそれぞれ9千枚(14位)と9千枚(16位)で、こちらよりは大きくアップしています。

残り2枚の初登場アルバムはいずれも韓国の男性アイドル。まずは5位に東雲 DONG WOON from BEAST「KIMISHIKA」がランクイン。ミュージシャン名義通り、アイドルグループBEASTのメンバーによるソロデビュー作。

最後6位にはキム・ヒョンジュン「THE BEST OF KIM HYUN JOONG」。こちらも韓流アイドルグループSS501のメンバー。いままでソロでシングル4枚、アルバム2枚をリリースしていますが、こちらが初となるベストアルバム。初動売上は1万2千枚。前作「今でも」の2万8千枚(3位)から大幅ダウン。

ちなみに今週はこれ以下も7位GReeeeN「C、Dですと!?」、8位Hey!Say!JUMP「JUMPing CAR」、そして10位ナオト・インティライミ「THE BEST!」と男性ボーカル勢が並んでいます。今週のアルバムチャートで唯一の女性勢は9位の安室奈美恵「_genic」のみという結果となっています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月 8日 (水)

男女アイドルに二次元アイドルが?

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

まず今週の第1位。例のごとくジャニーズ系。Sexy Zone「Cha-Cha-Cha チャンピオン」。「FIVBワールドカップバレーボール2015」大会テーマソング。どことなくPet Shop Boysの「GO WEST」みたいな雰囲気が漂っているのですが・・・?初動売上は10万枚。前作「君にHITOMEBORE」の33万6千枚(1位)より大幅ダウン。これは前作、MUSIC CARD12種発売などのドーピングを行っていたものの、今回はオリコンがMUSIC CARDの合算集計をやめたため、この手がつかえなくなった結果。MUSIC CARD廃止の効果がここまで如実にあらわれたのははじめてかも?

1位の男性アイドルに対して2位に入ってきたのがアニメキャラによるアイドルグループμ's「Angelic Angel」。映画「ラブライブ!The School Idol Movie」挿入歌。初動売上8万2千枚は前作「ミはμ’sicのミ」の3万2千枚(5位)より大幅アップ。映画が大ヒットを記録しており(特典商法という批判もあるようですが)その影響でしょうか。下手に凝ったり、サブカル狙いだったりする昨今のアイドルグループに比べて「素直な」アイドルグループといった感じで、本物と比べてスキャンダルもなかったり年も取らなかったりするのが良いのでしょうか?

で、続く3位は男性アイドルグループ。スターダストプロモーション所属の男性アイドルグループDISH// 「イエ~ィ!!☆夏休み」。作詞大黒摩季、作曲TUBEの春畑道哉というコンビで楽曲は完全にTUBE節。大黒摩季といえばビーイング脱退組なのですが、先日のTUBEのアルバムでもそうだったのですが、ビーイングのミュージシャンと組むことが許されるようになったのでしょうか?初動売上2万8千枚は前作「変顔でバイバイ」の3万1千枚(2位)からダウンしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まずは女性アイドル勢。4位Rev.from DVL「君を見つけたあの日から僕の想いは一つだけ」、6位板野友美「Gimme Gimme Luv」、7位LoVendoЯ「いいんじゃない?」、8位Chu-Z「Tell me why 生まれて来た意味を知りたい」がそれぞれランクインしています。

Rev.from DVLは「天使すぎる」という評判の橋本環奈が所属する福岡のローカルグループ。顔が売りのアイドルで顔の良さが話題になるってなんじゃそれ?って毎回思うのですが、初動売上1万9千枚は前作「君がいて僕がいた」の1万6千枚(9位)からアップ。板野友美は元AKB48メンバー。楽曲は安室奈美恵の亜流狙いな感じ。初動売上1万4千枚は前作「COME PARTY!」の1万5千枚(6位)から微減ですが、ソロデビュー以来、7万2千枚→4万4千枚→3万4千枚→1万5千枚と凋落の一途だったのがようやく下げ止まった感じ。

LoVendoЯは元モーニング娘。の田中れいなが結成したバンドスタイルのグループ。といってもボーカル2人+ギター2人って、誰もベースやドラムスをやりたがらなかった(やれなかった?)んでしょうか?今時、こんな編成で「バンド」を名乗るグループなんてありえないと思うのですが。つんく♂プロデュースなだけにハードロック調のダンスナンバーはちゃんと聴かせる曲ではあるんですが。初動売上は1万1千枚で、これがデビューシングル。最後のChu-ZはPaniCrewのYOHEYのプロデュースのアイドルグループで、こちらもつんく作詞作曲によるナンバー。初動売上1万枚で、前作「花のアーチ」の1万3千枚(5位)よりダウンしています。

で、ようやくアイドル勢以外は5位に俳優の上地雄輔こと遊助「サヨナラマタナ」がランクイン。初動売上1万5千枚は前作「Take me out to the ball game ~あの・・一緒に観に行きたいっス。お願いします!~」の1万6千枚(8位)よりダウン。

最後9位にはロックバンドBRAHMAN「其限 ~sorekiri~」が入ってきています。彼らを追ったドキュメンタリー映画「ブラフマン」の主題歌。初動売上9千枚は前作「露命」の1万枚(11位)より若干のダウンながらも前々作「霹靂」以来2作ぶりのベスト10ヒットとなりました。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月 7日 (火)

ブレーキをかけた作品

Title:WHITE
Musician:Superfly

ここ最近のSuperflyは、間違いなくもっとも勢いのあるミュージシャンの一組でした。特に前々作「Mind Travel」以降の勢いは素晴らしいものがあり、前作「Force」は2012年の私的ベストアルバムで6位に入れるなど、かなりの傑作に仕上がっていたと思います。

今回のアルバムに関してもその勢いもまだ続いている部分は感じられました。例えば冒頭を飾る「White Light」は、へヴィーなギターサウンドとパワフルなボーカルのハードロックナンバーはSuperflyらしいロックを聴く時のカタルシスを得られるようなナンバーですし、「Beautiful」も、スケール感あるボーカルとアレンジに、インパクトのある、ある意味「ベタ」ともいえるメロディーラインはSuperflyらしい楽曲と言えるでしょう。

他にもアップテンポでメロディアスなメロが心地よいハードロックナンバーの「愛をからだに吹き込んで」やちょっとストーンズっぽい雰囲気も感じるカントリー調の軽快な「You You」など、素直にロックを聴いたという楽しさに浸れるようなSuperflyらしい作品も多く収録されていました。

ただ一方でアルバム全体的にはいままでの勢いにブレーキがかけられた、と感じてしまった作品でもありました。おそらくその最大の理由が今回のアルバム、いままでSuperflyのほとんどの楽曲の作曲・編曲を手掛けてきた多保孝一が一歩後ろに下がり、様々なミュージシャンたちが参加したこと。その結果、いままでのSuperflyの良さも残念ながらちょっと後退してしまったように感じます。

まず勢いが止まったと感じる最大の理由は、様々なミュージシャンを起用した結果、アルバム全体の統一感がなくなってしまったこと。いい意味で言えばバラエティー富んだ作風という言い方もできるのかもしれません。ただ、Superflyのアルバムはいままでアルバム全体に統一感があり、その勢いで一気に聴いてしまえるような構成だっただけに、このバラエティー富んだ作風というのはマイナス要素だったようにも思えます。

また、ルーツ志向のハードロックという統一感のあったSuperflyの作品でしたが、この他のミュージシャンが楽曲提供を行った作品に関しては、もっとポップな色付けが濃く、確かにいままでのSuperflyとしては新しい方向性とも感じたのですが、いままでのSuperflyらしさを求めるとちょっと肩すかしを喰らってしまうような楽曲だったようにも思います。

確かに5作目となる今回の作品で、マンネリ傾向から抜け出し、新たな方向性を模索する、という意味では意義深い作品だったと思いますし、いままでのパターンから抜け出そうという意図はよくわかります。ただ、最も勢いのあった今の時期に、あえていままでのベクトルを変える必要性があったかなぁ、という疑問を持ってしまいます。むしろ勢いがある今の時期にこそ、どんどんいままでのパターンの曲をドンドンリリースすべきだったようにも思います。

今回のアルバム、もしあと2、3作後、Superflyとしての勢いが落ち着いてきた頃にリリースされたとすれば、非常に重要なアルバムになっていたと思います。そういう意味ではリリースするタイミングをちょっと誤ったようにも思えました。アルバムとして出来は悪いわけではありませんし、Superflyの今後の代表曲になりそうな曲もチラホラ収録されていたのですが・・・Superflyとしてはちょっとブレーキをかえてしまったアルバムだったように思えます。次回作はまた、いままでのパターンに戻った作品を期待したいところですが。

評価:★★★★

Superfly 過去の作品
Superfly
Box Emotions
Wildflower&Cover Songs:Complete Best 'TRACK3'
Mind Travel
Force
Superfly BEST

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月 6日 (月)

あいかわらずインパクトありまくりのジャケ写

Title:奇麗
Musician:女王蜂

2011年のデビュー後、そのバンドの強烈なルックスとバンドサウンドで一躍、注目を集めたロックバンド女王蜂。3枚のアルバムをリリースし、順調に人気を伸ばしていった・・・かと思った2012年に突然の活動休止を発表。鮮烈な印象だけ与えてあっという間にシーンから消えていった、そんな印象を与えたバンドでした。

しかしその1年後、ライブから活動を再開。さらにはサポートメンバーだったギターのひばりくんがメンバーに加入。そして約2年10ヶ月ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。いつもインパクトありまくりなジャケット写真も強い印象を与えている彼女(?)たちですが、本作も、上の写真の通り、えもいえないインパクトを与える写真をジャケットとして使用しています。

さて、そんな女王蜂の久々となったアルバムを聴いてみたわけですが、聴き終えた後、正直なところどうにも煮え切らないものを感じました。楽曲にはそれなりにインパクトはあります。その中性的で怪しげなミュージシャンイメージと曲もちゃんとマッチしています。でも聴き終わった後に、どうにも物足りなさを覚えてしまいました。

今回のアルバムで特徴的だったのは、いままでのへヴィーなバンドサウンドがあまり表に出てこなかったという点でした。「始発」のようにへヴィーな楽曲もあったものの、裏打ちのリズムが軽快な「一騎討ち」だったり、四つ打ちのダンスナンバーの「ワンダーキス」「売春」だったり、メロディーは相変わらずちょっと怪しげな歌謡曲風だったのですが、サウンドがグッと軽くなっていたように感じます。

ここらへんの軽くなったサウンドに関してもちょっと中途半端さを感じます。それなりにメロディーや歌詞の雰囲気にもあってはいるのですが、妖艶というには軽すぎ、踊れるダンスナンバーとしては少々暗すぎる、いまひとつバンドとしての方向性をぼやけさせているようにも感じました。

また今回のアルバムで歌詞の面で個人的に印象に残ったのが「折り鶴」という曲。男に弄ばれる女性を描いたエロティシズムな歌詞が非常にインパクトがあるのですが、ここでも中途半端に感じるのが歌詞の中に「DVD」「SNS」なんていう今時(まあ「DVD」が「今時」かはともかくとして)の言葉が登場する点。楽曲全体に流れるアングラ風な世界観の中、悪い意味でのミスマッチを感じてしまいました。

非常にインパクトのあるルックス、ファルセットを用いて男声と女声を自在に行き来する中性的なアヴちゃんのボーカル。間違いなくこれでもかというほど、強いインパクトのあるバンドです。ただ、肝心の楽曲が、強すぎるバンド自体のインパクトに負けてしまっているようにも感じました。その結果、アルバムを聴き終わっても、楽曲自体の印象がちょっと薄くなってしまったように思えます。

楽曲自体はメロにしろサウンドにしろ歌詞にしろ、そんなに悪くはないとは思うのですが・・・。ただ、このバンド自体のインパクトに曲が負けているという傾向は、活動休止前から変わらないんだよなぁ。ブレイクするにはこの点を克服しなくてはいけないようにも思うのですが・・・ちょっと残念に感じる惜しい作品でした。

評価:★★★★

女王蜂 過去の作品
孔雀
蛇姫様

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月 5日 (日)

スカパラの歴史

Title:The Last
Musician:東京スカパラダイスオーケストラ

今年、デビュー25周年を迎えた東京スカパラダイスオーケストラ。いまなお高い人気を誇る彼らですが、このたび、25周年を記念したオールタイムベストがリリースされました。タイトルも「The Last」・・・・・・なんてタイトルになると「え?これで解散??」なんてことになりそうですが、そうではない模様。そもそも「Last」には最上の、究極のという意味もあるため、今回のベスト盤はその意味での「The Last」なんでしょう。英語的にも「Last」はお終い、終結という意味ではなく、連続した事象の一番最後をあらわす形容詞だそうで、Last=解散という意味はもともとからなさそうです。

今回のベスト盤ではスカパラの25年の歩みを3枚のCDに収録しています。1枚目は「CHANGE」と名付けられ1989年から99年にかけての作品を、2枚目は「NEW HOPE」と名付けられ2000年から2008年にかけての作品を、3枚目は「AND BEYOND」と名付けられ2009年から2015年までの作品を、それぞれ収録しています。

スカパラというと、よく最近の作品についてポップになったと言われます。特に近年、ゲストボーカルを起用してからその傾向が顕著にあらわれており、今回のアルバムでも特に1枚目と3枚目を聴き比べると、その傾向が良くわかります。

もっとも今回あらためて彼らの楽曲を網羅的に聴いてみても、特にデビュー当初についてマニア向けの小難しい音楽をやっていた、という印象はありません。むしろデビュー時の作品も全然ポップだったじゃん、という印象すら受けます。1枚目に収録された楽曲でもCMソングにもなった「君と僕」のような切ないメロディーが胸に染みるようなポップな名曲も多く残されています。

ただ一方で、1枚目と3枚目を聴き比べた際に、確かに昔のスカパラにあって最近のスカパラからはあまり感じられない要素もありました。それは楽曲から感じるある種の「やばさ」。初期の作品にはダークな雰囲気を醸し出していたり、へヴィネスなサウンドを展開することによって生じるどこか「危険」な匂いが楽曲から感じられました。残念ながらここ最近の楽曲からは、こういうどこかやばげな雰囲気を感じる危険な香りはあまり感じられなくなったように思います。

そういう意味では2枚目に収録されているあたりの曲が最近のスカパラのようなキャッチーともいえるポップスさと、初期スカパラを彷彿させるやばげな曲が両立しており、もっとも勢いがあったかな、と思います。事実、売上的にもこの時期にちょうど大ブレイクし、一番好調な時でしたからね。このベスト盤にも収録されている歌モノシングル3部作の第1弾「めくれたオレンジ」「カナリヤ鳴く空」「美しく燃える森」もそんな初期の匂いとポップスさをきちんと両立されたシングルだったし。

もっともとはいえここ最近の楽曲に関しても、もちろん好き嫌いはあり初期スカパラが好きだった、という方もいるとは思いますが、決して質が大きく落ちたわけではありません。スカパラらしいライブで盛り上がりそうな軽快で楽しいリズムとサウンドは健在なわけで、そういう意味では今のスカパラもこれはこれで魅力的なバンドであることには変わりありません。既存曲としては最後を締めくくる「チャンス」も切ないメロが実に魅力的な名曲ですし、今回のベスト盤ではじめて収録された新曲「The Last」もベスト盤を締めくくるにふさわしい、大団円なナンバーに仕上がっていました。

また、ベスト盤全体に感じたのですが、初期の作品から最近の作品まで、意外とどこかで聴いたことあるような曲が多かったな、ということも感じます。彼らの曲はインストの曲が多いだけに、テレビ番組やらCMやら、いろいろな場面でよく使われており、そのため、スカパラをいままで聴いたことない方でもどこかで聴いたことあるであろう曲がこのアルバムの中には数多く収録されています。そういう意味でもいままでスカパラを聴いたことない方にも要チェックなベスト盤です。

そんな訳で、スカパラの歴史を俯瞰的に楽しめるベスト盤。CDのみの通常盤でも3枚組かつ1枚あたりいずれもCD容量いっぱいに収録されている実にボリュームのある作品ですが、それでも3枚一気に聴けてしまえる魅力が確実にあります。ファンはもちろん、スカパラ初心者にもお勧めできるベスト盤です。

評価:★★★★★

東京スカパラダイスオーケストラ 過去の作品
Perfect Future
PARADISE BLUE
WILD SKA SYMPHONY
Goldfingers
HEROES
Sunny Side of the Street
on the remix
Walkin'
欲望
Diamond In Your Heart
SKA ME FOREVER

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月 4日 (土)

ローリング・ストーンズのビジネス書?

今回紹介するのは、最近発売されたローリング・ストーンズに関する書籍。「ローリング・ストーンズを経営する」という本。著者は、60年代末から2007年にかけて40年にわたりローリング・ストーンズのマネージャーを務めたプリンス・ルパート・ローウェンスタイン氏。音楽系の本としては珍しく日経の書評でも紹介され、ビジネス書的な感覚も兼ねて、手にとってみました。

まず読んでみて気が付いたのはこの本、タイトルや本の表紙にこそローリング・ストーンズを前面に出していますが、本来的にはローリング・ストーンズの本ではありません。あくまでもローウェンスタイン氏の自伝。そのため、ローリング・ストーンズの話が本格的にはじまるのは第4章から。全体の4分の1程度は、まず彼の生い立ちに関する記述が綴られています。

また、あくまでも自伝であることが主眼であるため、ストーンズの本としても音楽ビジネスの本としてもちょっと中途半端な部分も否めません。ストーンズの本としては、ローウェンスタイン氏がストーンズのマネージャーを離れた理由など、興味深い記述もある一方で、全体的には目新しい記述は少な目。音楽ビジネスの本としても裏話をそう深く突っ込んでいたり、具体的な描写があるわけではないため、少々物足りなさも感じます。

一方で興味深かったのは、当時のイギリスの上流階級がストーンズをどう見ていたか。また、彼自身、ストーンズの音楽に最後まで興味を抱けなかったそうですが、そんな彼がストーンズというバンドをどう見ていたかという描写。ここらへんに関してはローリング・ストーンズというバンドの当時の立ち位置。また、バンドが持っている魅力が描かれており、興味深く読むことが出来ました。

正直な感想を言ってしまうと、若干期待はずれだった、ということは否めません。特に音楽ビジネスに関する描写については、もうちょっと奥深くまで具体的に突っ込んでほしかったような・・・でも、利害関係者がいる限り難しいか。ただ、つまらなかったかといわれると、イギリスの上流階級の現在の社交風景なども覗くことが出来、それなりに楽しむことが出来た1冊だったと思います。

ただし、ひとつ大きく気になった点があります。それは和訳。今回、翻訳を担当した湯浅恵子氏は他にも音楽関係の翻訳を多く手掛けているようで、ストーンズ関連に関しては問題はなかったかと思うのですが、ビジネスがらみで疑問に思うような和訳が散見されました。

例えば文中、「会計決算書」(p87)なる言葉が登場しますが、このような言い方は一般的ではありません。おそらく、「financial statements」を、「financial」と「statements」をバラバラに訳したことから生じた訳だと思われますが、「financial statements」は「財務諸表」と訳することが一般的。「会計決算書」なる言葉は用いられません(そもそも「決算書」といえば会計のことに決まっていますし)。

また「会計監査士」(p128)なんて表現も出てきますが、こんな職業は世界的にありません。こちらは原文を類推できないのですが、「auditor」あたりを訳したのでしょうか?普通は「監査人」と言葉を用います。

会計用語などは典型的なのですが、この手の用語は一般的に決まり文句とそれに対応する和訳がある程度決まっているため、そのお約束を知らないとかなりチンプンカンプンな訳になってしまいます。残念ながら、和訳に関してこのあたりの知識が微妙に思われました。まあ、音楽にもビジネスにも精通する翻訳家というのはほとんどいないのかもしれませんが・・・ビジネス面ではだれか第三者の監修訳をつけた方がよかったようにも思われます。

加えて、音楽面でもビジネス面でも説明がいるような話も多かったのに、注釈が全くなかったのも残念。そのため、ちょっと読みずらい部分もありました。日経の書評では「ストーンズに興味がない方も」みたいな書かれ方をしていましたが、正直、ストーンズに興味がない方が読んだら、かなり厳しい面も多いようにも思われます。

そんな訳でローリング・ストーンズのファンなら読んで損のない1冊だと思います。ただ一方で、いろいろな意味で過度な期待は禁物かも。興味深い記述はチラホラと出会えるとは思いますが。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月 3日 (金)

待ちに待ったライブアルバム

Title:WORKSHOP
Musician:OGRE YOU ASSHOLE

ここ数作、アルバムをリリースする毎にその年を代表するような傑作をリリースし続けるOGRE YOU ASSHOLE。直近のオリジナルアルバム「ペーパークラフト」も文句なしの傑作で、2014年の私的ベストアルバムの第1位を獲得しています。

そんな彼らはライブにも定評があります。ただ、彼らのライブには大きな特徴がありまして、それはライブの演奏がオリジナルアルバムとは全く異なるアレンジによるということ。特にここ最近のアルバムに関しては、CD音源では音数を極力まで減らしたアレンジで空間を聴かせるような楽曲が多いのですが、ライブではバンドサウンドの轟音を前面に押し出し、迫力あるサイケ風にアレンジしてきたりしています。

そのため、逆に言えば彼らの楽曲のライブアレンジはライブの現場に行かなければ聴けませんでした。ただ、そんなライブでのアレンジもまた素晴らしく、そのため、以前からライブアルバムのリリースを待ちわびていました。そんな中、ついにリリースされたライブアルバム!まさにCD音源だけではわからない、OGRE YOU ASSHOLEのアナザーサイドに触れられるアルバムと言えるでしょう。

今回のアルバム、1曲目からライブならではの原曲と大きく異なるアレンジが飛び出します。アルバム「homely」収録の「ROPE」。「meditation ver.」と名付けられたこのアレンジでは、エレクトロサウンドとギターの音色でトランシーなアレンジに大変身しています。さらにこの「ROPE」、「Long ver.」と名付けられたバージョンは毎回ライブでのおなじみの定番曲で、13分にも及ぶ楽曲に、ドリーミーでサイケな音が展開。軽くトリップできそうな、ライブでのOGREの魅力を存分に感じさせるアレンジに仕上がっています。

最新シングル「ペーパークラフト」からの楽曲にしても、「ムダがないって素晴らしい」では、ギターとドラムの音が楽曲全体に鳴り響くアレンジに。ドラムスとリズムは比較的シンプルなリズムを刻んでいるのですが、延々と続くリズムのループにトリップ感の強いアレンジに仕上がっています。「ペーパークラフト」でも分厚くゆがんだギターサウンドが楽曲を覆い尽くすようなアレンジに。こちらも原曲のイメージからかなり異なる雰囲気にまとまっています。

その他の曲も分厚いノイジーなギターサウンドを中心としたサイケデリックな作風に仕上がっており、原曲とは大きく異なる雰囲気の曲が並びます。ここ最近のOGREの曲がマイナスの美学に貫かれたような曲が多いのですが、ライブ音源はその逆。いわばプラスの美学を貫いたようなアレンジにも感じました。

今回のライブアルバムは、ライブ盤なのですが、観客の声援などはほとんど入っていません。個人的には観客の声援などもライブの臨場感を伝えるための重要な要素だと思っているのですが、おそらく純粋にバンドの音のみを拾うことによってライブでの演奏を記録することに重きを置いたからではないでしょうか。

その結果、アルバムとしてはライブ盤という以上にむしろリミックスアルバムのような感覚で聴けるアルバムだったと思います。いや、リミックスといっても原曲が全く別物として生まれ変わっている、という意味ではニューアルバムという感覚で聴ける作品ともいえるでしょう。

ライブ盤だから、とスルーしている方がいたらとてももったいない傑作アルバムだと思います。OGRE YOU ASSHOLEがどんなバンドが知るためには、オリジナルアルバムと同じくらい重要なアルバムだと思います。

評価:★★★★★

OGRE YOU ASSHOLE 過去の作品
しらないあいずしらせる子
フォグランプ
浮かれている人
homely
100年後
confidential
ペーパークラフト

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2015年7月 2日 (木)

ジャニーズvs元ジャニーズ

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週はタイトル通り、ジャニーズと元ジャニーズのアルバムが対決。Hey!Say!JUMPのニューアルバム「JUMPing CAR」と、元KAT-TUNの赤西仁のニューアルバム「Me」が同日にリリース。2枚同時にランクインしています。

もっとも結果としてはHey!Say!JUMPが初動売上17万6千枚で1位獲得。赤西仁は初動売上3万4千枚で3位に留まるという大差がつきました。ただジャニーズを脱退したアイドルは総じてフェイドアウトしていってしまう中、アルバムがちゃんとチャート3位に入ってくるのは立派なのでしょうが。

なお、Hey!Say!JUMPは前作「smart」の初動12万6千枚(1位)からアップ。赤西仁は前作「Mi Amor」の3万5千枚(3位)から微減となっています。

そんな2枚のジャニーズがらみのアルバムに挟まれる形で2位初登場だったのがGReeeeN「C、Dですと!?」。彼らの2作目となるベスト盤。前にリリースしたベスト盤のタイトルが「いままでのA面、B面ですと!?」でしたので、それに連なるタイトルなんでしょう。ただ、相変わらず寒い・・・というか、これで「おもしろい」と思っているところが非常に寒い・・・。初動売上は3万8千枚。ベスト盤としての前作「いままでのA面、B面ですと!?」の初動25万2千枚(1位)からは大きくダウン。直近作「今から親指が消える手品しまーす。」の初動3万3千枚(2位)からは若干のアップとなりました。

続いて4位以下初登場ですが、4位に藍井エイル「D'AZUR」が入ってきています。藍井エイルはアニメソングを中心に歌う女性シンガーでこれが3作目となるアルバム。初動売上2万6千枚は前作「AUBE」の1万4千枚(6位)から大幅アップしています。

8位にはCarly Rae Jepsen「Emotion」がランクインです。カナダ出身の女性シンガーソングライターの3作目。前作「Kiss」は本国カナダやアメリカ、イギリスでもヒットを記録しましたが、日本でも高い人気を誇っています。ただ本作の初動1万2千枚は、その前作「Kiss」の2万9千枚(4位)から半減以下という結果に。次回作あたりが正念場でしょうか?

9位初登場は華原朋美「ALL TIME SINGLES BEST」。タイトルの通り、デビュー作「keep yourself alive」から、16年半ぶりに小室哲哉が楽曲提供したことで話題となった最新シングル「はじまりのうたが聴こえる」まで全シングルを収録したベスト盤。とはいえ彼女ももう、これで6枚目のベスト盤になるんだよなぁ・・・。初動売上は8千枚。直近作はカバーアルバム「MEMORIES 2-Kahara All Time Covers-」で、こちらの初動売上6千枚(9位)よりはアップ。ただしベスト盤としての前作「DREAM-Self Cover Best-」の1万1千枚(15位)よりはダウンしています。

最後、10位には「松本隆 作詞活動四十五周年トリビュート 『風街であひませう』」が入ってきています。伝説のロックバンド、はっぴいえんどのドラマーとして活躍し、その後は作詞家として数多くのヒット曲を手掛けた松本隆。その作詞活動45周年を記念してリリースされたトリビュートアルバム。スピッツの草野マサムネ、クラムボン、斉藤和義といった面子が、斉藤由貴の「卒業」や松田聖子の「SWEET MEMORIES」など、彼が手掛けた数多くのヒット曲をカバーしています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月 1日 (水)

アイドルにアニソンにニコ動に・・・

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

今週はタイトルの通り。ある意味、「今のヒットチャート」(あくまでもヒットチャートで音楽シーンではない)を象徴するようなチャートでした。

まず1位を獲得したのはジャニーズ系。NEWS「チュムチュム」。初動売上12万4千枚は前作「KAGUYA」の14万枚(1位)からダウン。

2位はavex系の男女混合ダンスユニットAAA「Flavor of kiss」。7ヶ月連続リリースシリーズの第6弾で、グリコ セブンティーンアイス キャンペーンソングのエレクトロダンスソングなのですが、これといって特徴なく無難にまとめている印象が。初動売上3万7千枚は前作「アシタノヒカリ」の4万2千枚(4位)よりダウン。7作そろえるとライブに招待される企画もあるのですが、さすがに失速気味。

3位はアニソン。QUARTET NIGHT「エボリューション・イヴ」。アニメ「うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVEレボリューションズ」挿入歌。アニメキャラクターによる4人組ユニットだそうです。フュージョン風のアレンジはそれなりに耳を惹くものの、アニメキャラのアイドル性を前に押し出したボーカルは、やはりファンではないと聴いていてキツイものが。初動売上は2万6千枚。ここ最近、リリースが連続していた「うたの☆プリンスさまっ♪」がらみですが、今回は3週ぶりのベスト10入り。3週前のランクインした寿嶺二(森久保祥太郎) 「うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVEレボリューションズ アイドルソング 寿嶺二(NEVER…)」の2万枚(3位)よりはアップ。

続いて4位以下の初登場ですが、まずはニコニコ動画がらみ。アルスマグナ「夏にキスしていいですか?」が5位初登場。ニコニコ動画で活動するコスプレダンスユニットだそうですが、事実上の男性アイドルグループ。この曲も平凡なアイドルソングといった様相。初動売上1万9千枚は前作「ミロク乃ハナ」の1万4千枚(9位)からアップ。

6位にはゲームソング。ジータ、ルリア、ヴィーラ、マリー「キミとボクのミライ ~GRANBLUE FANTASY~」。モバゲー上のソーシャルゲーム、GRANBLUE FANTASYのキャラクターによるキャラソン。もともとエイプリルフールの企画として配信された楽曲がCD化されたそうです。かなりベタなJ-POP系のアイドルソングなのは、エイプリルフールの企画というあえて狙ったお遊びゆえでしょうか?

で、7位から10位までは女性アイドルソングが並びました。7位にHR「夏色キャンディー」、9位あゆみくりかまき「蜜蜜蜜」、10位青山☆聖ハチャメチャハイスクール「NEVER MIND」とまずは女性アイドルグループ。

HRは福岡のローカルアイドルグループ。これがメジャーデビュー作だそうです。初動売上1万4千枚は前作「希望の蕾」の1万3千枚(5位)から微増。あゆみくりかまきは3人組のアイドルユニット。メンバーのうち「くりか」はDJという位置づけだそうで、DJプレイも披露するというユニットだそうです。ただこの曲に関しては、よくありがちなギターロック風アレンジのアイドルポップといった感じで、特にDJがいることの意味は感じられません。フジテレビ系アニメ「パンチライン」エンディング・テーマ。初動売上1万枚は前作「鮭鮭鮭」の9千枚(11位)から微増で初のベスト10ヒット。

最後青山☆聖ハチャメチャハイスクールはロックリスナー狙いが少々露骨なナンバー。初動売上1万枚は前作「メチャハイの逆襲~BEYOND THE DARKNESS~」の8千枚(9位)よりアップ。この作品がメジャーデビュー作になるのですが、最近、こんなネタがニュースになっていました。まあ、こちらのネタ元自体、三文ゴシップ誌なんで何とも言えない部分もあるのですが、「アイドル戦国時代」だのといってメディアではチヤホヤしていますが、これだけいろんなグループが出てこれば質が悪いものいろいろと出てくるよな、と思ってしまいます。

ちょっと色合いが違うのが8位初登場ニコル「Something Special」。昨年1月に脱退した韓国の女性アイドルグループKARAの元メンバーによるソロデビュー作。楽曲的には10年くらい前のR&Bポップスといった雰囲気で、無難で聴きやすいけどインパクトは薄いような。初動売上は1万1千枚。KARAの直近のシングル「サマー☆ジック」が初動5万2千枚(2位)だったので、それに比べるとやはり分が悪いような。

そんな状況の中、ロックバンドとして孤軍奮闘したのが4位初登場MONOEYES「My Instant Song E.P.」。the HIATUS/ELLEGARDENで活動する細美武士を中心となるロックバンドのデビュー作。アメリカのロックバンドALLiSTERのボーカリストであり、最近ではスコット&リバースとしての活動でも知られるスコット・マーフィーの参加も話題となりました。タイトル曲「My Instant Song」は全英語詞の軽快でキュートなメロが心地よいギターロックチューン。初動売上は2万枚。the HIATUSとしての直近のシングル「Horse Riding EP」が初動1万5千枚(10位)なのでこちらよりはアップ。まずまずの滑り出しとなりました。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2015年6月 | トップページ | 2015年8月 »