一世を風靡したスカパンクバンドの記録
Title:SKA BRAVO
Musician:KEMURI
今年で結成20周年を迎えるスカパンクバンドKEMURIのオールタイムベスト。KEMURIと言えば言わずと知れた、日本における「スカパンク」の代表的なミュージシャン。「結成20年」といっても途中、メンバーの交通事故死という悲劇の後、活動休止。さらには2007年には一度、解散も経験。その後、2012年に再結成し、今を迎えています。
スカパンクというと、ホーンセッションに奏でられた軽快なスカのリズムにのせたパンクロック。ただ、どうしてもリズムパターンは似たような感じになってしまい、勢いがありライブでは盛り上がりそうだけど、一本調子で単調、というイメージがあります。
実際、彼らのアルバムに関してもそういうイメージを持ってしまった作品もあるにはありました。今回のベスト盤でも、やはりKEMURI節と言われればその通りだけども、似たようなタイプの曲が少なくなかった、というのも事実です。
ただ、今回のベスト盤で彼らの代表曲を聴くと、やはりKEMURIというバンドは非常に魅力的なバンドだなぁ、ということを実感します。そう感じたのは、まず意外と、といっては失礼なのかもしれませんが、スカパンクというカテゴリーの範疇ながらも、様々な引き出しを持っているという点。しんみり横ノリのレゲエチューンである「Slow Lights」が一番わかりやすい例なのでしょうが、それ以外にも「Ato-Ichinen」はパンク以上にポップ色が強い作品になっていますし、「Along the longest way…」はギターロックの色合いが濃いパンクナンバーになっています。
そういうバリエーションの豊富さも魅力的だったのですが、それ以上に魅力的に感じたのは、ホーンセッションが奏でる軽快なリズムと、ガツンと来るバンドサウンドのへヴィネスさの絶妙なバランスでした。このアルバムの1曲目に収録されており、彼らのデビューアルバム「Little Playmate」の1曲目でもある、まさに彼らのスタート地点である「New Generation」などはまさに典型例。軽快なサウンドの中に流れるインパクトあるバンドサウンドが耳に残るナンバー。「I am proud」などもへヴィーなサウンドが印象的なパンクロックに仕上がっていました。
彼らは自らのバンドスタイルを「P・M・A(Positive Mental Attitude =肯定的精神姿勢)」と称していますが、そんな彼らの前向きな歌詞も魅力的。もっとも、英語詞が多い彼らの歌詞は、聴いていてその内容がダイレクトに入ってこないものも多いのですが、「ima-sorewo-hikarini-kaete-susume!」のように日本語詞で、ポジティブな歌詞が印象的な曲もちゃんと収録されています。楽曲自体、陽性の楽曲がほとんどであって聴いていて楽しくなってくるような曲ばかりで、そんな楽曲たちも大きな魅力となっています。もちろん「前向きな歌詞」といってもJ-POPによくありがちなノーテンキな前向きソングとは違います。
さらにオールタイムベストといいつつ、全14曲入りでわずか40分強という長さもいいですね。最初から最後までサクッと聴けてしまうのも魅力的。上にも書いた通り、どうしても似たタイプの曲も少なくないのですが、1曲あたり3分程度の短い楽曲が並んでいるだけに、そこらへん気にせずに、最後まで一気に聴けてしまう構成なのもこのベスト盤の大きな魅力に感じました。
そんな訳でKEMURIというバンドの魅力を存分に伝えてくれた、非常にすばらしいベスト盤でした。彼らがもっとも人気があった時期が2000年代初頭でしたので、ここ最近の若い世代はパンク好きでも聴いたことない方もいるかも・・・そういう方にこそ、是非とも聴いてほしいベスト盤。また、昔からのファンにとっても新録の曲も多く、再度聴きなおすにはもってこいの1枚です。
評価:★★★★★
KEMURI 過去の作品
ALIVE Live Tracks from The Last Tour "our PMA 1995-2007"
RAMPANT
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