ゆるゆるなサウンドにユーモアたっぷりの社会批判
Title:RUFF GUIDE TO...RANKIN TAXI
Musician:RANKIN TAXI
ジャパレゲの大御所、RANKIN TAXIの6年ぶりとなる新作。以前から政治色の強い作品をリリースしてきた彼ですが、東日本大震災の後は反原発を表に押し出した活動をしてきました。そんな中発表された「原発がっかり音頭」は、被災者を揶揄したということで反原発サイドからも反発を受けたりして話題にもなりました。そんな彼が、東日本大震災後、はじめてリリースしたアルバム。良くも悪くも話題となった「原発がっかり音頭」は収録されていませんが、反原発をはじめ、かなりメッセージ性の強いアルバムに仕上がっています。
ただ、彼の作品の特徴としては政治色が強くても、決して大上段に振り上げてアジテーター的な歌詞を繰り広げるわけではありません。基本的にはユーモアを含んだ歌詞でちょっと斜めから揶揄したような歌詞が特徴的。例えばこのアルバムの中で反原発を歌った「愛の賠償責任」は原発事故に端を発した男女の別れをユーモアに描いていますし、「4号機つぶれたらorz」はネットスラングをタイトルに組み込むといったユーモアさを感じさせます。
反風営法の「FIRE ROCK」や、安倍首相を強烈に批判する「ボンボオヤジ」などもあくまでも歌詞の内容はコミカル。唯一、日米関係を批判的に描いた「誇り高く生きるためにPt.1」はかなりストレートな歌詞になっていますが、全体としてはクスッと笑える諧謔的な歌詞が特徴的。ここらへん、政治的内容をユーモアセンスというオブラートに包む手法に、ベテランミュージシャンならではの余裕のようなものを感じました。
また、こういうユーモアたっぷりの歌詞も含め、全体的にゆるゆるな雰囲気が漂っているのも特徴的で、ジャパレゲといっても一般的にイメージされそうな湘南乃風のような暑苦しさは皆無。かなりラフなサウンドはレゲエが苦手という方でも難なく受け入れられそうですし、今回の作品に関しては「イタブアンの娘」をはじめ、かなりブラジル音楽の方面に彼の興味が移っていることを感じます。
ただ一方ではかなり癖の強い部分も多く持っており、「KKPK」や「CCPP」はかなりストレートなエロ歌詞で、かなり笑える反面、正直、お下劣(笑)。また、マリファナ讃歌の「なんてったってマリファナ」などはかなり賛否わかれそうな歌詞だったりします。また政治的なメッセージ性を持つ歌詞にしても、揶揄した歌詞にするために、少々単純化しすぎでは?という部分も多く、例えば安倍批判の「ボンボオヤジ」にしても徹底して安倍をコケにした歌詞は、最初から安倍首相を嫌っている層には受けるかもしれないけど、その他の層に訴求していく力はかなり薄いように感じます。
そういう意味ではかなり好き嫌いはわかれそうな内容で、ともすれば「自分たちで盛り上がればよい」という閉鎖的な側面も否定できない部分も感じました。そして、この手の閉鎖性って、ここ最近のリベラル系勢力の最大の弱点だったりするんだよなぁ・・・。そこらへんの閉鎖性含めて、自分の好きなようにやっている、という部分は、魅力になっている部分も否定はできないんだけど・・・。
評価:★★★★
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