「ロックを聴いた」という気持ちよさを感じる
Title:Wonder Future
Musician:ASIAN KUNG-FU GENERATION
ここ数日、一応「ギターロックバンド」の作品を立て続けに聴いていたのですが、どの作品もシンプルに分厚いバンドサウンドを押し出したアルバムではなく、もっとポップス寄りだったりストリングスアレンジだったりといった作品を聴いてきました。それだけに今回、アジカンの2年8ヶ月ぶりの新譜を聴き始め、いきなり分厚いバンドサウンドが飛び込んできた時点で、「うんうん、やはりロックの心地よさはここだよ!」ということをまずは実感しました。
今回のアジカンの新譜は、アメリカ・ロサンゼルスにあるフー・ファイターズのプライベートスタジオ「Studio 606」にて全曲レコーディングされた、ということでも話題になっています。そのためでしょうか今回のアルバムに収録されている楽曲はバンドサウンドの音にキレがあるように感じました。迫力あって、アルバムを聴いていてその場で奏でられているように感じるリアリティー。
1曲目「Easter/復活祭」から切り込むようなギターリフからスタートし、軽快なテンポのギターロックサウンドがとにかくカッコいいナンバー。アジカンの新たなスタンダードナンバー誕生を予感させます。2曲目「Little Lennon/小さなレノン」もギターリフを主導した、まさにロックらしいナンバーで、ロック好きとしては聴いていてなにより気持ちよさを感じます。
中盤以降も「Planet of the Apes/猿の惑星」もノイジーで疾走感あるサウンドが心地よいですし、中盤の主軸「Standard/スタンダード」はアジカンらしいポップなメロディーのギターロックが楽しめるナンバーになっています。
今回の作品、全体的にシンプルなアレンジで「ロック」という部分を前に押し出したような作品が多かったように感じました。それはやはり「Studio606」を使用したことにより、アジカンとしてのロックをあらためて模索した結果でしょうか。ロックのアルバムとして非常に心地よさを感じる傑作だったと思います。
一方、今回の作品で話題になったのは歌詞。最近、ボーカルのゴッチは、Twitterなどで左寄りの政治的発言を行うなど話題となっています。本作に関しても一部では「政治的」という指摘もあるみたいですが、ただ、私が聴いた限りにおいては、特に今回のアルバム、「政治的」な部分を前面に押し出したようには感じませんでした。
確かに、例えば「Caterpillar/芋虫」の歌詞で
「淀んだグレーの工場街でまとめて顔を削ぎ落とす
個性なんて必要ないさ
家畜のように飼い慣らす
そんな未来が近いだなんて
冗談だって言えるのかい
そんな時代は来ないだなんて
胸を張って言えるのかい」
(「Caterpillar/芋虫」より 作詞 後藤正文)
という歌詞は、現在の資本主義批判のような文脈は感じられますし、全体的にリベラル寄りな部分はあるようには感じられます。ただ、特定の政治勢力を批判したり、特定の思想を明確に批判したりするようなスタンスは楽曲からは感じられません。そこらへんはほどよくエンタテイメントとのバランスを取っているようにも感じました。
特定の政治的思想を楽曲に反映することは個人的には悪いこととは思いませんが、確かにリスナーを選んでしまう可能性があることは事実。そういう意味では今回のアルバム、広い層にちゃんと聴いてもらえるようなアルバムになっていましたし、難しいこと抜きにロックという音楽を楽しめるアルバムになっていました。繰り返しになりますが、ロックという音楽の気持ちよさを感じることが出来る傑作です。
評価:★★★★★
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