今度はサポートメンバーを加えて
Title:共鳴
Musician:チャットモンチー
2011年の高橋久美子脱退以降、2人組バンドとして活動を続けるチャットモンチー。その後、ボーカル橋本絵莉子の妊娠、出産のため一時期活動を休止していましたが、約2年半ぶりのニューアルバムがリリースされました。
前作「変身」はサポートメンバーを入れず、2ピースバンドとして2人きりで作り上げたアルバムになっていました。それに対して今回のアルバムは逆。サポートメンバーを積極的に入れることにより、2ピースバンドでは作れなかったような幅広い作風の曲をつくっています。そのサポートメンバーもユニークなことに、ハイスタの恒岡章、the chef cooks meのメンバーとして活動している下村亮介によるサポートメンバーを「男陣」、シンガーソングライターの世武裕子、DQSやnelcaのメンバーとして活動している北野愛子のサポートメンバーを「乙女団」とそれぞれ名付けてアルバムを作り上げています。
「男陣」による曲としては「きみがその気なら」や「私が証」のような分厚いバンドサウンドやへヴィーなギターを前面に押し出した、2ピースでは表現できないような、よりへヴィーなバンドサウンドを聴かせるような曲が多かったように思います。逆に「乙女団」としては、80年代アイドルの曲を意識したという「最後の果実」やピアノやストリングスを効果的に入れてきた「隣の女」のような、バンドサウンドを聴かせる一方で、世武裕子の爽やかなピアノの音色を効果的に聴かせる作品が並んでいました。
要するに「男陣」はより男らしく、「乙女団」はより女らしい部分を出してきた印象。もっともこれについては、女性陣だけで力強い演奏を聴かせるのならば、チャットモンチーの2人だけで可能、ということが前作「変身」で証明済な訳ですから、それだけ2人だけで出来ないサウンドにこだわった、ということなのかもしれません。
ただ一方で本作でも2人のみでつくられた作品も収録されており、サンプリングを取り入れてチャットモンチー流HIP HOPに挑戦した「ぜんぶカン」は、サポートメンバーによるロックナンバーを多く収録しているからこそ逆に収録できた挑戦的なナンバー。またアルバムは2人のみの演奏によるギターロックナンバー「ドライブ」で締めくくられており、そういう意味でもチャットモンチーは2人組バンドなんだ、という決意は今回のアルバムでも強く感じました。
また、今回のアルバムでもうひとつ、大きな成長を感じたのはその歌詞でした。
いままでのチャットモンチーの楽曲で目立ったのは女の子の素朴な恋心を歌にのせたような曲でした。一方、今回のアルバムでは都会を生きる、心にどこか「孤独さ」を抱えた女性を描いた歌詞が多かったように思います。例えば自分を装いつくっている女性を描いた「隣の女」や東京という大都会の中でのミュージシャンとしての決意を歌った「いたちごっこ」など、いままでのチャットモンチーとは異なる側面を感じる歌詞が多く収録されており、さらに大人の女性へと成長した彼女たちの姿を感じられました。
もっともいろいろとやろうとする音楽が多すぎてちょっとまとまりに欠けるように感じられた点。歌詞もいままでと比べて一度聴いて印象に残るようなインパクトあるセンテンスがない点、マイナスポイントも少なくはありませんでした。ただ、それを補って余りあるチャットモンチーのバンドとしての可能性を感じられたアルバムでした。アルバム毎に進化を続ける彼女たち。次のアルバムも楽しみです。
評価:★★★★★
チャットモンチー 過去の作品
生命力
告白
表情
Awa Come
YOU MORE
チャットモンチーBEST~2005-2011~
変身
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