天才ブライアンの新作
Title:No Pier Pressure
Musician:Brian Wilson
ご存じ、THE BEACH BOYSの中心メンバーとして数多くのヒット曲を産みだしたブライアン・ウィルソンのニューアルバム。ガーシュウィンやディズニーの楽曲のカバーアルバムや、THE BEACH BOYSとしてリリースしたアルバムはあったものの、純粋にソロのオリジナルアルバムとしては7年ぶりとなる新作になります。THE BEACH BOYSとしては2012年には現存のメンバーが集結してオリジナルアルバムをリリースしライブツアーも行ったものの、その後なぜかメンバーのうちマイクとブルースがブライアンと袂をわかち、それぞれ別々の活動をスタートさせてしまいました。
そんなブライアンのニューアルバムの大きな特徴は、数多くのゲストが参加しているところ。THE BEACH BOYSのメンバー(だった)、アル・ジャーディン、デヴィッド・マークス、ブロンディ・チャプリンが参加しているほか、SHE&HIM、2012年に「We Are Young」を大ヒットさせたロックバンドFUN.のボーカル、ネイト・ルイスが参加するなど、新旧のミュージシャンが参加しています。
今回のアルバム、評判はかなり高いようで、そうでなくても前作「That Lucky Old Sun」は個人的に大ハマリした傑作だっただけにかなり期待をもって聴いてみました。が、正直言って最初に聴いた時は「あれ?それほどでもないかも・・・」という印象を抱いてしまいました。
おそらくその大きな理由はアレンジ。今回のアルバム、アレンジに関してはパッと聴いた感じでは地味め。一昔前のAORなアレンジといった雰囲気。もちろんブライアンらしい、隙のない楽曲の雰囲気にもピッタリのアレンジを聴けるのですが、比較的シンプルなサウンドでアレンジを聴かせる、という感じでもなく、例えば「Runaway Dancer」みたいな80年代を感じさせるようなダンスアレンジの曲なんかがあったりして、ちょっと古さを感じてしまうような部分も。そこらへんのアレンジが、最初このアルバムを聴いていまひとつかも、と感じてしまった大きな要因でした。
ただその後、2度3度と聴くとその印象が徐々に変わっていきました。やはり素晴らしかったのはブライアンの書くメロディーラインの素晴らしさ。現在72歳の大ベテランである彼ですが、彼の書くメロディーの瑞々しさは全く衰えを知りません。特にアルバム後半に美メロの傑作が並んでおり、コーラスラインが美しい「The Right Time」、女性カントリーミュージシャンのケイシー・マスグレイヴスが参加したカントリーテイストが軽快な「Guess You Had To Be There」、ストリングスとホーンの音色が美しく、どこか懐かしさも感じる「Tell Me Why」あたりが、特に印象的。その他の曲に関しても、もちろんブライアンらしいメロディーを聴かせる傑作アルバムだったと思います。
新たな領域に挑戦した、というよりも彼らしいポップなアルバムを自然体で作り上げたアルバムといった感じの本作。それだけに派手さはありませんし、目新しさもありませんが、ブライアンのメロディーセンスの良さが光りまくっていたアルバムだったように思います。特に彼みたいなメロディーセンスに関しては「天才」としか言いようがないミュージシャンがこういうアルバムをつくると、無敵ですね。さすがの一言しか言いようのない傑作です。
評価:★★★★★
Brian Wilson 過去の作品
That Lucky Old Sun
Reimagines Gershwin
In The Key Of Disney
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