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2015年5月14日 (木)

格の違いを感じる

Title:葡萄
Musician:サザンオールスターズ

前作「キラーストリート」から約9年半。途中、活動休止や桑田佳祐の食道ガンといった今度が不安になるような出来事も挟みつつ、ついにリリースされました。サザンオールスターズのニューアルバム。2013年の活動再開からも2年が経過しており、ファンとしては待ちに待ったアルバムといった感じでしょう。

そんな久々に聴くことがでたサザンの新作ですが、聴いてまず感じたのはその格の違いでした。正直言って、そんじょそこらのバンドじゃあ、まず一生作ることが出来ない水準のアルバム。だっていきなり4つ打ちのダンサナブルな「アロエ」からスタートしたかと思えば、昭和のキャバレーロック風な怪しげな空気がむんむんと立ち込める「青春番外地」への突入し、さらにメロウなシティーポップ「はっぴいえんど」と続くんですが、まずこれだけバリエーションある展開ながらもどの曲もインパクト十分。かつ、ちゃんとサザンらしさが楽曲からは流れていて、バラバラといった印象を受けません。

この音楽性の広さ、そしてその広い音楽性を、上澄みだけ掬い取るのではなくちゃんと自分たちの音楽としているスタンス、さらにはそれにもかかわらずインパクトあるポップにまとめあげているという事実。正直、このアルバムを聴いて、「やはりサザンはすごい・・・」とうなってしまいました。

その後もバラエティー富んだ作風は続きます。ハードロック風の「Missing Persons」、タンゴ風の「天井桟敷の怪人」はどこか漂うエロティシズムな雰囲気も魅力的。「天国オン・ザ・ビーチ」は昭和のコミックバンドが歌っていそうな、コミカルなポップソングに仕上げていて、とてもユニーク。また、個人的に大好きな原坊ボーカルによる昭和歌謡曲路線「ワイングラスに消えた恋」も実に魅力的な名曲。様々なタイプの曲が並んでいながらも、基本的にはサザンらしい王道を行くような楽曲ともいえる訳で、ファンにとっては壺をつきまくられるような展開になっていたかと思います。

また今回、そんなサザンらしさを感じる楽曲が並ぶ中、一方ではかなり明確なメッセージ性を感じさせる作風になっています。昨年の紅白で歌った後、いろいろな意味で話題となった「ピースとハイライト」も今回のアルバムにもちろん収録されていますが、「平和の鐘が鳴る」でも明確に平和にむけてのメッセージを歌い上げています。これらの曲に共通するのは、平和を率直に願い気持ち。不必要に争いを招くような論調が残念ながら目立つ現在だからこそ、復帰後最初のアルバムに強いメッセージ性を込めたように思います。

また同じメッセージ性が強い曲として「Missing Persons」もそうでしょう。北朝鮮の拉致問題を歌ったこの曲は、横田めぐみさんの名前も登場します。ただ、この曲でも北朝鮮と戦争をするのではなく、話し合いと外交技術での解決を求めている歌詞が非常に印象的でした。

こういうメッセージ性の強い曲をポップなメロディーにのせてサラリと歌い上げられるのも彼らの実力でしょう。凡百のミュージシャンが歌えば、単なる説教臭い曲になってしまうような曲も、アルバムの中で違和感ないポップソングとして並んでいます。

そんな訳で、様々な側面からサザンオールスターズというバンドのすごみ、格の違いを感じさせてくれるアルバムでした。う~ん、やはり彼らはすごいミュージシャンだ・・・。文句なしの傑作です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Outside of Melancholy/fhana

ポストロックバンドFLEETでも活躍する佐藤純一らによる4人組ユニット。基本的にアニソンを中心に活動をしているバンド。本作では初のベスト10ヒットとなったこともあり、はじめて聴いてみました。

楽曲的には一言で言うとベタなJ-POP。メロディーには懐かしさを感じる反面、売れ線狙いのインパクト重視による単調さを感じてしまいます。ボーカルも高音主体の平坦なボーカルで、こちらは90年代の小室系やavex系そのまま。良くも悪くも90年代を引きずった楽曲といった感じ。

ただ一方、ポストロックバンドとしての活動もしている佐藤純一がサウンドプロデュースを手掛けるだけに、サウンドは要所要所に凝った部分も見受けられるのはユニークなところ。メロディーがはじまると単なる「伴奏」になっている部分もあるものの、ちゃんと聴かせるサウンドになっていました。

全体的にはいかにもイメージ通りの様式化された「アニソン」的な部分はありつつ、そのベタさも含めてそれなりに楽しめることの出来るアルバムにはなっていたと思います。個人的にはサウンド面でもうちょっとぶっとんじゃっても受け入れられるんじゃないかなぁ、と思うのですが。

評価:★★★★

男心DANCIN'/及川光博

しばらくTHE FANTASTIXとの共同名義による企画盤的なアルバムが続いていたため、ミッチー単独名義ではちょっと久々となる新作。本作の特徴は、全編EDMのナンバーが並んでいること。軽快で男性フェロモン出しまくりなダンスナンバーは彼らしいなぁ、と思いつつ、正直、「いまさらEDM?」と思ってしまったのも事実。また、以前のナンバーのリミックスによるセルフカバー曲も多く、純然たる新曲は少な目というのもマイナス要素。ただ楽曲のインパクトは強く、ライブでは盛り上がりそうだなぁと思いつつ、最後まで楽しめるアルバムではあったのですが。

評価:★★★★

及川光博 過去の作品
RAINBOW-MAN
美しき僕らの世界
喝采
銀河伝説
ファンタスティック城の怪人
さらば!!青春のファンタスティックス

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アルバムレビュー(邦楽)2015年」カテゴリの記事

コメント

 日曜日にミッチーのライブに行ってきました。ファンクラブに入っている友人の同行だったため、まさかの2列目。
 ライブ(彼の場合はショーという方が的確ですが)はやはり楽しかったですよ。良くも悪くも最近の彼のアルバムはライブのセットリストのサンプルになっていますね。いまだに、千人規模のホールでライブができる地力はさすがです。

投稿: げどー | 2015年5月15日 (金) 01時41分

>げどーさん
お、ミッチーのライブに行ってきたんですね。さらに前から2列目とはうらやましすぎます。彼の最新のアルバムはあきらかにライブを意識しているだけに、今回のライブツアーはやはり盛り上がったんでしょうね~。うらやましい。私も久しぶりにまたミッチーのライブに行きたいです!

投稿: ゆういち | 2015年6月 6日 (土) 22時20分

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