歌詞の持つパワーを感じる
Title:URCゴールデンベスト
今回紹介するのは、URCレコードからリリースされた代表曲を収録したベスト盤。「URC」とは、「アングラ・レコード・クラブ」の略で、1969年に設立された、当初は会員制という形で活動を行っていた、日本最初のインディーレーベルとも言われているレコードクラブ。もともと関西フォーク系のミュージシャンが中心に設立されたそうで、60年代から70年代にかけての学生運動を背景としたプロテストソングが多く収録されています。
基本的に左翼的な思想の労働歌や反戦平和をテーマとした曲が多く収録されており、そういう意味では「癖」のあるレコードクラブと言えるかもしれません。ただ、一方でこれらの曲を聴いて感じたのは、彼らの歌う言葉の力の強さでした。
ここ最近の均一的な歌詞は、嘲笑と共に揶揄されることが少なくありません。もちろん、今dも優れた歌詞の曲を歌うミュージシャンはたくさんいます。ただその一方でどうしようもないくらい薄っぺらい歌詞の曲があふれているのも事実です。
一方でこのベスト盤に収録されている曲は、どれも重いテーマ性をリスナーにいかに自分の言葉を届けるか考えつくされた歌詞が並んでいます。基本的にアコースティックギターがメインのフォークソングなだけに、メロディーやアレンジはシンプルなのですが、それだけに歌詞が心にずっしり重く残るような曲が目立ちました。
ただプロテストソングといっても大上段に構えて反戦平和を歌う、というよりもどこかユーモアを交えながら歌っているのが特徴的。例えば加川良の「教訓1」のように
「命をすてて 男になれと
言われた時には ふるえましょうヨネ
そうよ 私しゃ 私しゃ 女で結構
女のくさったので かまいませんよ」
(「教訓1」より 作詞 加川良)
なんて、「国のために命を捨てるな」という重いテーマ性ながらもどこか歌詞にはユーモアセンスが感じられたりします。
もちろんそんなプロテストソングに限らず、早川義夫の「花が咲いて」のようなサイケ、金延幸子の「み空」のような美しい女性ボーカルを聴かせるソフトロック、ザ・ディランⅡ「プカプカ」のようにスモーキーな雰囲気も漂うブルースなどバラエティー富んだ作品も。またなぎら健壱「悲惨な戦い」のような、今聴いても笑えるコミックソングなんかも収録されています。
またその他の歌詞で特に印象に残ったのが中川五郎の「腰まで泥まみれ」。パッと聴くと軍隊が主人公の反戦歌のような内容なのですが、実は「時代が変わったことに気が付かず、自分の経験でしか物事を測れない人たち」を揶揄した曲。今でもこういう上司、普通にいそうだなぁ・・・と感じてしまいます。もっとも、この曲にリアルタイムで喝采を送っていた人たちが、今や、この曲に出てくる「隊長」になってしまっている人も少なくないんだろうなぁ。
そしてそんな曲たちは、どの曲にも、自分たちの曲をリスナーに伝えたいという想いを感じました。また、だからこそ楽曲から強いパワーを感じます。ある意味、このリスナーに伝えたいという楽曲、今のヒット曲からは少なくなってしまったのではないでしょうか。安易な懐古志向は禁物ですが・・・ただこういう伝えたい気持ちを強く持ったミュージシャンが、今の時代にももっともっと出てきてほしいなぁ、と感じてもしまったアルバムでした。
評価:★★★★★
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